みんなと同じような思いを声に、キュウソネコカミ 時代の代弁者
INTERVIEW

みんなと同じような思いを声に、キュウソネコカミ 時代の代弁者


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年08月23日

読了時間:約9分

人気漫画の実写映画化ブームを憂いて制作された一筋縄ではいかない楽曲について語るキュウソネコカミ

 5人組ロックバンドのキュウソネコカミが23日に、4枚目のシングル「NO MORE劣化実写化」をリリース。2009年に、大学の軽音楽部内のメンバーにより兵庫県で結成。ダンサブルなサウンドと世の中の不条理を風刺する歌詞で人気を集め、インディーズ時代から数多くのフェスにも出演。2014年にアルバム『チェンジ ザ ワールド』でメジャーデビュー。今作は「愛する原作が金儲けに利用されるのは、原作ファンとしてすごく悲しい」と、昨今の人気漫画の実写映画化ブームを憂いて制作された一筋縄ではいかない楽曲。ヤマサキ セイヤ(Vo、G)は「みんなと同じように思うことがあるので、それを声に出した」と語る。今回はヤマサキ セイヤとヨコタ シンノスケ(Key、Vo)に、楽曲制作時の意識やライブ活動に賭ける想いなどを聞いた。

こんなに面白いテーマは自分たちがやりたい

「NO MORE劣化実写化」通常盤

――「NO MORE 劣化実写化」は、人気コミックの実写映画化に対する、誰もが思うことを素直に歌っていますね。思っても曲にするアーティストはいなかったので、それがすごく爽快でした。レコード会社もさぞ困ったでしょう。

ヨコタ シンノスケ レーベルさんの英断です(笑)! 去年は、普通に心にくる曲や、きっと多くの人から良い曲だと言っていただける曲が出来たと思って。だから次のシングルは、強めの言葉を使いながら、みんなが「え?」と思う展開を持った、ちょっと振り切った曲を出したいと最初から考えていました。

ヤマサキ セイヤ でもこの曲は、決してすべての実写映画をディスっているわけではなくて、ディスっているのはあくまでも“劣化実写映画”です。数年前から人気の漫画や小説の実写映画化が続いていて、ネットでもいろんな意見が飛び交っているじゃないですか。過去には、実際にファンを悲しませた劣化実写映画もあったわけですし。俺らにも大好きな漫画があって、みんなと同じように思うことがあるので、それを声に出した感じです。

ヨコタ シンノスケ 最近は、こういった世間を皮肉るような歌詞を書くバンドもぼちぼち増えて来ているので、放っておいたら誰かに先にやられちゃうのではないかと思って作りました。だって、こんなに面白いテーマは、絶対に自分たちがやりたいじゃないですか!

――人気漫画の実写映画化は、原作対してにいかに愛を注げるかだ! みたいなことを、曲の中では問うているわけで。

ヨコタ シンノスケ 映画は文化だから、まず原作へのリスペクトがあってこそ、だと思います。でも一部の映画は、商売が先に来すぎている場合があって。それによって内容が改変されたり、ファンの気持ちとは逆の方向に行ってしまうものもあって。そうやって自分たちの愛する原作が金儲けに利用されるのは、原作ファンとしてすごく悲しいことですからね。

――でもそれは、視点を変えるとバンドでも言えるのでは?

ヨコタ シンノスケ そうですね。タイアップ曲を作る時がそうで、タイアップ側の都合に合わせ過ぎてしまうことで、そのバンド本来の味が失われて、聴いてくれるファンを悲しませてしまうこともあると思います。幸いなことに、俺たちが今までにやったタイアップは、好きにやらせてくれることがほとんどで。「本当にこれで大丈夫ですか?」と、こっちが心配になってしまうくらい。

――カップリングに収録の「家」という曲は、まさしくそのタイアップ曲ですよね。

ヤマサキ セイヤ これは、クライアントさんの要望に100%応えた曲です!

ヨコタ シンノスケ タマホーム「20代の家」CMソングで、タイトルも歌詞も「家」しか言ってなくて(笑)。でも、先方からは「素晴らしい曲をありがとうございます」と、お手紙をいただきました。何パターンか出した中で、いちばん突拍子も無かったものがこの曲で、万が一にでもこれを選んでもらえたら良いな〜とは思っていたけど、実際に選んでもらえて、正直まさかでした(笑)。

ヤマサキ セイヤ しかもこの曲が、ライブではめちゃめちゃ盛り上がる! 短いし、誰でも一瞬で盛り上がれるし。1度のライブで5回やる時もあって。お客さんが「イエー」と言ったら、反応してやらないといけない、みたいな。お客さんが何度も「イエーイエー」言っていると、ずっとやらないといけない。もはやネタです(笑)。

楽しみ方が分かればめっちゃ楽しい

キュウソネコカミ

――こういうキュウソのルーツとなった、憧れのバンドなどはいましたか?

ヤマサキ セイヤ 僕らが憧れたバンドは、ミイラズさんですね。サウンドは、UKバンドのアークティック・モンキーズっぽくて、でも歌詞は世間をディスった内容を歌っていて。そのミイラズに憧れてバンドを始めたので、最初の頃は「ミイラズっぽい」と言われました。

ヨコタ シンノスケ あと、胸にグッとクる系で、本音を言っているな〜と思ったのは、銀杏BOYSさんですね。

ヤマサキ セイヤ でも僕らは、決してミイラズさんなど憧れたバンドの“劣化版”とは思ってなくて。今は、れっきとした「キュウソネコカミ」というジャンルになれたと思っています。最初は確かに影響が表れていたと思うけど、どんどん自分たちなりのものを出して行った結果、すでに別モノになっていると言うか。

――別モノくらいまで行けば、劣化とは違いますよね。でも、シニカルな歌詞のテイストは、ミイラズさんから引き継いでいると。

ヨコタ シンノスケ そうですね。でも、ただシニカルさだけではなくて、よく聴くと「言いたいことはこれだけじゃないんだ」みたいな感じで、深読みをさせると言うか、いろいろな意味で受け取れることが出来る歌詞が良くて。一聴しただけでは分かりづらいところもあるけれど、でもそこには、今のキュウソがいろいろなことがやりたくて足掻いている感じも表れていると思うので、良いなと思います。これだけじゃないぞという。

――「NO MORE 劣化実写化」では、途中で転調してスローになる展開があります。そこはユーモアたっぷりで面白いのですが、ああいう急展開をバンドでやるのは、勇気がいるのでは?

ヤマサキ セイヤ フェスでやることを考えれば、そういう展開は必要ないですからね。せっかくのノリが止まってしまうので。でもフェスに出ていて思うのは、踊らせることを意識した曲やバンドが多くて、そういうバンドが大きなステージをどんどん勝ち取っていて。結局、音楽的に面白いことをやっているバンドは、あまりウケないのかなと。そこで俺らは、踊れると同時に曲としても面白い展開を採り入れて、別の楽しさも知って欲しいと思っていて。

ヨコタ シンノスケ みんながまだ見たことのない面白さを、一歩先のところから見せると言うか。お客さんの見たいものや聴きたいものに合わせる気持ち良さもあるけど、俺たち自身は他のバンドがやらないことにチャレンジしたいし、もっと冒険もしたいと思っているし。それでもついて来てくれたら嬉しいし。

ヤマサキ セイヤ こういう攻めたアレンジは、今では俺らの武器の一つになっていて。今までの曲でも、みんなが「はぁ?」と思う展開を持った曲はいっぱいありますから。しかもそういう変わった展開を持った曲のほうが、人気が高いことが多くて、今でもキラーチューンとして残っているし。

――「NO MORE 劣化実写化」は、ライブでやっていてどうですか?

ヨコタ シンノスケ みんな、最初は戸惑っていますよ(笑)。

ヤマサキ セイヤ 「何じゃこりゃ?」みたいな(笑)。でも、楽しみ方が分かれば、めっちゃ楽しくなるのがキュウソです。

ヨコタ シンノスケ 他のバンドのファンが見て、「ちょっと異常だな」と思われるくらいのほうが良いと思っています。「こんな謎のワードで、何でコール&レスポンスが盛り上がるの?」みたいな。

――<ヤンキー怖い>みたいな(笑)。

ヨコタ シンノスケ そうそう。<スマホはもはや俺の臓器>も(笑)。<ウォーウォー>みたいな、何も考えずに楽しめるコール&レスポンスと比べたら、ハードルを一段上げてしまっている部分もあるのですが。そのハードルによって、次はもっと楽しめるようにまたライブに行こう、予習するためにCDを買おう、と思ってもらえたら嬉しいです。

ファンなら100%爆笑

キュウソネコカミ

――活動の中で一番重きを置いているのは、やはりライブですか?

ヨコタ シンノスケ そうですね。音源を録る時も、必ずライブでやることを意識しています。

ヤマサキ セイヤ 俺らのようなバンドは、ライブで稼ぐしかないですから。CDがドカーンと売れるイメージは、まったくないので(笑)。

ヨコタ シンノスケ ライブですごい演奏をして、CDでその曲のもっとすごいところを出してと、二重三重で楽しんで欲しいので。

ヤマサキ セイヤ キュウソのCDは、絶対に買ったほうが良いですよ。めっちゃ手が込んでいて、こんなにオモロイから、みんなも買ったら良いのにな〜といつも思っています。

――今回は、初回盤のパッケージが凝っていますね。

ヤマサキ セイヤ コミックっぽくしたくて、背表紙の文字の入れ方など、めっちゃこだわりました。買ってくれた人に100%楽しんでもらうために、いろんな仕掛けがしてあります。その分、採算が取れていないので、マジで売れてくれないと困るけど(笑)。

ヨコタ シンノスケ ミュージックビデオは「NO MORE 劣化実写化」に引っかけて、架空のコミックを俺らの主演で実写映画化するという設定で撮っていて。初回盤には、その架空の原作漫画の名場面も付きます。

――そのMVは、最後には映画のセットをダンボールで作って、いつもの感じになるというオチもあって。

ヨコタ シンノスケ そうそう、いつものやつです(笑)。キュウソって、どの曲も最初は「ケンカを売っているのか?」と思うことを歌っておいて、最後に「言いたいことは、実はそれだけじゃないよ」と歌うのが流れで。MVは、それをすべて体現した作品になっています。DVDには、MVの流れで俺らが俳優になりきってコメントしている映像も収録していて、ファンなら100%爆笑です。聴いたら絶対に面白いし、見たら絶対に面白いので、ぜひ手に取って欲しいです。

ヤマサキ セイヤ ただ、ジャケットを見ても、誰のCDかよく分からない。これは、俺らの“あるある”です(笑)。

【取材=榑林史章】

◆キュウソネコカミとは 2009年に、大学の軽音楽部内のメンバーにより兵庫県で結成。メンバーは、ヨコタ シンノスケ(Key、Vo)、ヤマサキ セイヤ(Vo、G)、ソゴウ タイスケ(Dr)、カワクボ タクロウ(Ba)、オカザワ カズマ(G)。2012年に初の全国流通盤としてアルバム『10代で出したかった』をリリース。2014年にアルバム『チェンジ ザ ワールド』でメジャーデビューした。ダンサブルなサウンドと世の中の様々なことを風刺した歌詞で人気を集め、フェスでは引っ張りだこの人気。

CD情報

キュウソネコカミ
4thシングル「NO MORE 劣化実写化」
8月23日発売

【初回限定盤】(CD+DVD)1500円(税抜)VIZL-1197
【通常盤】(CD)1000円(税抜)VICL-37296
※初回・通常盤とも初回プレス分にツアー先行予約シリアルナンバー封入

▽CD収録内容
01.NO MORE 劣化実写化
02.イキがいいのだ
03.家

▽DVD収録内容
(架空の)実写版「滅びのレッカ」 メイキング
おまけ “海賊盤ダメダメキャンペーンビデオ撮影”
「NO MORE 劣化実写化」 Music Video

公演情報

▽キュウソネコカミ 「ヒッサツマエバ〜とぎなおし〜'17-18ツアー」

10月24日 群馬・高崎 club FLEEZ
10月25日 栃木・宇都宮 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
10月27日 東京・SHIBUYA O-EAST
他、全29カ所

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