女性ボーカリストのメイリアとコンポーザーのtokuによるユニット・GARNiDELiAが、23日に7枚目のシングル「Desir(デジール)」(※「Desir」のeはアキュート・アクセント付きが正式表記)をリリース。2010年に結成し、動画サイトを中心にした活動を経て、2014年にシングル「ambiguous」でメジャーデビュー。以降、人気アニメのテーマソングを数多く担当し、海外でも人気を獲得している。「Desir」は、TVアニメ『Fate/Apocrypha』のエンディングテーマ。同曲について「長く歌い続けられる曲になるよう王道のアレンジを心がけた」と話す。彼らの今の音楽観は? メイリアの歌にかける想いや、海外へも目を向けた制作について語ってもらった。
今どきのアレンジをしては今しか聴けない
――数多くアニメ化されている『Fate』シリーズのテーマソングを担当するのは、初めてだそうですが、それはすごく意外ですね。
メイリア 「やっとキター!」という感じで(笑)、すごく嬉しかったですね。
――では、今までの『Fate』楽曲をたくさん聴いて、どういうものにしようかと、すごく考えたわけですね。
メイリア 全部聴きましたよ。それで、どうやったら私たちらしく出来るか考えました。『Fate』シリーズは、すごく人気でファンも多い作品なので、その作品の持つイメージを壊さずに、いかに自分たちの味を出していこうかと。
――イントロのストリングスは、『Fate』シリーズに通じるなと思いました。
メイリア そうそう。その上で、いかに私たちらしさを出すか。
toku それで今回は、デジタルを全面に押し出したサウンドよりも、純粋にメロディを聴かせるものが良いだろうと思いました。
――王道のミディアムバラードで、がっつり歌い上げて聴かせている。でもその分、いつものGARNiDELiAと比べると、少しおとなしめになったのかと思いましたが。
toku 今まで、こうやったら「お〜!」と言ってもらえるだろうと思ったりしながら、いろいろな曲をやって来て。今回は、そういう狙いすますような感じは、やめようと思いました。
と言うのもこの曲は、きっとこれからもずっと歌い続けていくことになるだろうなと思ったので、今どきのアレンジをして今しか聴けないようなものになってしまうのは、もったいない。それには、王道感があったほうが良いなと思いました。
メイリア この曲は、きっと生で聴いてもらったほうが、数倍グッと胸に響いてくると思います。歌にフォーカスしてアレンジをして、サウンドで聴かせるより歌を聴かせる、歌で魅せるみたいなことをテーマに作ったので。だから歌詞も、すごく強い言葉を選んで使っています。ライブで聴いたら、すごくヘヴィに聴こえると思うし、体感がまったく違うと思いますね。
――タイトルの「Desir」は、フランス語で「願望」という意味ですが、なぜフランス語に?
メイリア TVアニメ『Fate/Apocrypha』でメインとなるキャラクターが、フランスのジャンヌ・ダルクなので。それに、言葉の響きも美しくてすてきだなと思って付けました。
――歌詞に星に関したワードが出てくるのは、GARNiDELiAらしいところですよね。
メイリア ファンの方は、GARNiDELiAと言えば宇宙を連想してもらえるようになったので、その期待には応えたいし。それに、「願い」をテーマに書こうと思った時、夜空を見上げて星に願いをかけることは、誰もが想像することだと思ったので。メロディの美しさをより引き立たせるためにも、夜空を思い浮かべるようなシーンがあったらすごく良いなと思いました。
歌が上手くても必ず売れるわけじゃない
――GARNiDELiAは、海外でのライブも多いので、毎回海外シーンも意識した楽曲作りをしていますが、「Desir」の歌を聴かせる王道のシンプルな編曲も、海外シーンを意識してのことですか?
メイリア 海外はトラックがすごくシンプルなものが多くて、リズムに歌だけが乗っているような曲もたくさんあります。サウンドで余計な装飾をしなくても、歌だけで引っ張ることが出来るのは本当にすごいことです。
toku 海外のシンガーは、とにかく歌が上手いですからね。
メイリア 日本のリスナーは、言葉の世界観を大切にする傾向があって。海外は、ビートや歌い方を重要視している方が多い気がします。だからGARNiDELiAは、その両方の良さを併せ持った形でやって行けたら良いなと思っています。
――歌い上げて聴かせるという部分では、メイリアさんはすでに歌が上手いですけど、海外アーティストのようにもっと上手くなりたいと思うような願望がありますか?
メイリア 日々そう思っていますよ。今のままで満足してしまったら、続ける意味を失ってしまうと思っているので。
それに、歌が上手くても必ず売れるわけじゃないし、上手いから人の心に響くというものでもありません。だからこそ、海外アーティストの曲を聴いて「何でこの人の歌は、こんなに刺さるんだろう?」と考えるし。もちろん技術的な部分を研ぎ澄ませることは大切で、それもやり続けていくけど、その上で、どうやったらみんなの気持ちに寄り添えるか、どうやったらみんなに刺さる言葉を書けるかを常に考えています。
――実際に、それはどうやって向上させていくのですか?
メイリア 私は、SNSにいただくコメントや、いただいたお手紙をたくさん読みますね。いろんな世代の人たちが、今何を見ているのか知ることは重要だし、いろんな世代の人に響く言葉の研究にもなります。
言葉には、その人の人生経験が出ると思っています。世代とか立場とか職種とかに固執せず、「こういう考え方があるんだな」と思うこともそうだし、いろんな人の話を聞くように心がけてもいます。
――生まれてから今までの経験や、実際に経験していなくても、人から話を聞いて、共感したり心を震わせることが大事で、それが歌詞や歌に表れると。
メイリア それしかないと思っています。ただ頑張れと言われて頑張れる人は、そうそういません。じゃあ自分がそうなった時に、どう言ってもらえたら頑張れるだろうと。自分の経験をさらけ出すこともあるし、見せたくない部分もあるけど、それを見せることでみんなが頑張れるなら、私は見せても良いと思っていますね。
――メイリアさんは、聴いてくれる人と向き合うことで、歌詞や歌を作っていく。tokuさんが、楽曲を作る時も同じですか?
toku 僕は、第一に自分が作りたい音楽であるかですね。それを楽しんでくれるファンがいて、そのファンが聴いて楽しんでくれるかどうかです。
――ファンの聴きたいものが上か、自分の作りたいものが上かで言うと?
toku たぶんどちらか一方に振り切ることは難しくて、両者のバランスをいかにうまく取るかだと思います。それに加えて、レコード会社やタイアップのアニメ側の意向も必ずあって、そのオーダーにも応えたい。それらすべてのバランスを取ることが、もっとも大変なことですけどね。
ただ、それを窮屈には思ってなくて、良い意味での影響として捉えています。実際に、そういう外部からの影響がなければ、生まれなかった曲もたくさんあるわけですから。
シングルだけのストーリーを楽しんで欲しい
――カップリング曲の「ワスレナグサ」ですが、こちらはしっとりと始まりつつ、途中で疾走感が出て。とてもGARNiDELiAらしい曲だなと思いました。
メイリア これこそ、ザ・GARNiDELiAと呼べる曲だと思います。なぜならば、5年前に書いた曲で、インディーズ時代のライブでやっていた曲なので。
――インディーズ時代の楽曲を収録したアルバム『BiRTHiA』には、入ってなかったですよね?
メイリア 『BiRTHiA』は、動画サイトにアップされていた曲とインディーズのCDに収録していた曲を収録しています。この曲は音源化も動画でアップもしていなかったので。だから昔からのファンは、「懐かしい」と思ってくれると思います。
toku アレンジも5年前とほぼ一緒。そのままでも良い曲だなと思ったので。
メイリア 当時は、“らしさ”とかはまったく考えず、その時に作りたいものを作るという感じでした。それが今、GARNiDELiAらしいとされるものになったのは、結果的にという感じでしょうけど、すごく嬉しいことではありますね。
――それを今どうして音源化しようと?
メイリア 「Desir」を筆頭に、このシングルは1枚を通して「願い」をテーマにしています。「ワスレナグサ」は、失ったものに対する願いを歌っているので、テーマに合うなと思って。同様にもう1曲のカップリング曲「Special Girl」も、片想いをしている女の子の、好きな人と一緒になりたいという願いが込められています。
――シングル単位で毎回そういうテーマを考えているのですか?
メイリア 毎回考えています。例えば昨年のシングル「約束-Promise code-」は「和」がテーマで、前回のシングル「SPEED STAR」は「光」をテーマにしていました。
シングルCDを買うことに、意味を持たせたいと思っています。シングル1枚を作品として、シングルだけのストーリーを、みんなに楽しんで欲しいです。
――それはジャケットやビジュアルも含めてですね。
メイリア パッケージを手に取ってもらうための、もっとも大事な要素の一つと考えています。今回は、幻想的で美しい絵を撮りたかったので、デザイナーさんと相談しながらロケ地を選びました。森の中でスモークを焚いて、そこに自然の木漏れ日も映り込んで…、とても幻想的で美しい写真が撮れました。
でも、蜂が飛んでいて、すごく怖かったです。私たちが蜂の住処にお邪魔させていただいているので、それは怒るよな〜と思いますけど…。私の周りをずっと飛んでいて、それで撮影が中断してしまったなんていうエピソードもあります。
――曲の話に戻りまして、「Special Girl」はダンサブルなR&B系の雰囲気の曲ですね。
メイリア 私のルーツが、ジャズやブラックミュージックのダンスサウンドなので、私の歌としては本来こういうものが得意です。それで、こちらの一面もみんなにちゃんと聴いてほしいなと思って。
――近い系統の曲では、アルバム『Violet Cry』に収録の「NEON NIGHT」がそうで、ライブではステッキを使ったパフォーマンスが印象的でした。「Special Girl」も、どんなパフォーマンスをしながら歌うのか、ライブで聴きたいですね。
メイリア そう思ってもらえると、うれしいです。私もどんなダンスにしようかと、今から考えるのが楽しみです。
――でもこういう曲調は、tokuさんとしては作る頻度が少ないのでは?
toku こういうダンス曲は、そんなに得意というわけではないので(笑)。
メイリア ダンス曲は、私から提案することが多くて。「こういう曲をやりたいので、こういう感じで作ってください」と。それで「リズムはこうで」など説明する横で、tokuさんが話を聞きながら打ち込んでいって。「こんな感じ?」「もうちょっとここは、こういう感じで」と、やりとりしながら、その場で作っていきます。
――では最後に、今回のシングルは「願い」がテーマということなので、今のGARNiDELiAの「願い」は?
toku メイリアが理想としている、映像などを使ったステージ演出を完全な形で表現したライブステージを作ることです。ただ、それは大きな会場でなければ実現出来ないので、となると武道館以上のレベルが想定されるわけですが。近い将来、しっかりそのレベルに達して、理想のライブをやってみたいです。
【取材=榑林史章】
◆GARNiDELiAとは 女性ボーカリスト・メイリアとコンポーザーtokuの二人によるユニット。動画サイトを中心にした活動を経て、2014年にアニメ『キルラキル』のオープニングテーマを収録したシングル「ambiguous」でメジャーデビュー。メイリアはファッションモデルとしても活躍し、GARNiDELiAのアートワークも担当。tokuは作曲家・アレンジャーとして、様々なアーティストへの楽曲提供やプロデュースもおこなっている。昨年は「約束 -Promise code-」のカップリング曲「極楽浄土」のダンス動画が、中国を中心に2600万回以上の再生回数を記録し、海外でも人気。今年は上海、ドイツ、アメリカなどでもライブをおこなっている。
作品情報GARNiDELiA 【初回生産限定盤】(CD + DVD)1500円(税抜)VVCL-1101〜2 ▽CD収録内容 ▽DVD収録内容 公演情報▽GARNiDELiA stellacage Asia Tour 2017 ▽ニコニコ超パーティー2017 ▽ANIMAX MUSIX 2017 YOKOHAMA |