奇数拍子を基調としたリズムでMaison book girlの世界へいざなった単独公演『Solitude HOTEL 3F』(撮影=稲垣謙一)

 4人組ニューエイジ・ポップ・ユニットのMaison book girl(メゾンブックガール=ブクガ)が去る5月9日に、東京・赤坂BLITZで全国ツアー『major 1st album『image』release tour 2017』のファイナル公演『Solitude HOTEL 3F』をおこなった。ツアーは4月5日にリリースされたメジャー1st アルバム『image』を引っさげて、4月2日の新潟・LIVEHOUSE柳都SHOW!CASE!!を皮切りに、全国6公演をおこなった。『image』に収録された全曲を本編で披露し、アンコールではメジャーデビューシングル「cloudy irony」など6曲を披露。奇数拍子を基調としたリズムでMaison book girlの世界へとオーディエンスの心を導いた。また、終演後にはニューシングルを7月19日にリリースすることを発表した。

『image』をライブで再現

ライブのもよう(撮影=稲垣謙一)

 ステージ前には紗幕(しゃまく)がかかり『Solitude HOTEL 3F』の文字が投影されていた。会場である赤坂BLITZは開演時間が近づくにつれ、人々で満たされていく。しっとりと流れるピアノの旋律が、これから始まるライブへの高揚感を煽っているようだった。

 定刻を少々過ぎたところで暗転すると、アルバム『image』のオープニングを飾るインストナンバー「ending」が響き渡った。そして、紗幕の先に4人の姿。メンバーのシルエットが映し出されるなか、「sin morning」へ。シルエットのみでのパフォーマンスから、ラストのサビで紗幕が落ち、黒い衣装に身を包んだ4人が姿を現した。歓声が沸き上がるなか、7拍子のリズムが心地よいグルーヴ感を与える「end of Summer dream」へ。奇数拍子の振り付けは新鮮な動きをオーディエンスに与える。

 印象的なループサウンドが中毒性を高めた「veranda」では、眩ゆい光が瞬く。そのフラッシュは、オーディエンスの脳裏にパフォーマンスを焼き付けるようだ。音に絵をつけるように踊る4人。<裏切られて♪>のリフレインが耳に残る「faithlessness」。会場全体で奏でた一体感のあるクラップ(手拍子)もライブのスパイスとなっていた。

 ここで、インストナンバーの「int」へ。映像とダンスのコラボレーションでアーティスティックな世界観を魅せる。歌がないことにより、彼女たちの動きの表現力が際立つ。流動的に展開していくステージングは、オーディエンスもその楽曲の持つストーリーに、吸い込まれていくようにステージを見つめていた。

 続いて、子供達が遊ぶような振り付けが印象的だった「townscape」。ノスタルジックな感覚を見るものに与える。そして、アグレッシブなサウンドの「karma」に突入。迫り来るビートに乗ってフロアも盛り上がっていく。「screen」、「blue light」と惹きつけられる踊りで魅了し、アルバムのエンディングを飾る「opening」を届けた。

 コショージメグミ作詞によるポエトリーディング。4人が横一列に並び、本を片手に物語を紡いでいく。ピアノの叙情的なフレーズをBGMに4人は丁寧に情感を込め、詞を届ける。オーディエンスも声に耳を傾け、静かにステージを見つめていた。余韻を残すかのように本編を終了し、4人はステージを後にした。

この手を絶対に離さないように

ライブのもよう(撮影=稲垣謙一)

 アンコールを求める声に、再びステージに登場したメンバー達。コショージは感極まりながらもオーディエンスに感謝を告げ、「想像以上にすごい景色!」と改めて多くのオーディエンスを見て、喜びを噛み締めた。

 ここで、メンバーがひとりずつ今日までの想いを語った。

 和田輪は「ずっと自分に自信がなさすぎて……。でも自分を貶すのは良くないなと思って、みんなの自慢の和田輪になれるように頑張ろう思えた」とツアーを経て意識が変わったことを報告。

 矢川葵は「今までは一人で考えて行動するのが好きだったんです。でも、オーディションに受かって、Maison book girlに入れてもらえて、3年近くやってきて一緒にツアーも回れて、人と密に何年もやってきて苦じゃないのは初めてかもしれない。この3人と会えたのは運命じゃないかと思う。この3人となら、やっていけると毎日思います。ここにいる人たちも運命だと思う」とメンバーやファンに運命という絆を感じていると話した。

 井上唯は「メジャーデビューしてから(ブクガについて)考える時間が増えた。実家に帰っても考えるのはMaison book girlのことで、地元があんなに大好きだったのに、東京に早く帰りたいと思えるほどMaison book girlが好きになった」とグループ愛が高まったと言い、「私が好きなMaison book girlをもっと広めていきたい」と涙を堪えながら語った。

 最後にコショージは3人と手を繋ぎながら「この3人に助けられてばかり。今日集まってくれたみんなの顔を見たら、この手を絶対に離さないようにしようと思いました。アイドルの2年半はバンドに置き換えると、犬年齢みたいな感じで7年ぐらいの価値があると思う。ずっとずっと手を離さないようにするので、応援宜しくお願いします」とこれからの決意を話した。

 MCを終え、アンコール1曲目に届けたのは、彼女たちのメジャーデビュー曲である「cloudy irony」。力強く蹴り上げる振り付けがアクセントとなり、アグレッシブに展開。そして、複雑な拍子ながらも、オーディエンスも体を弾ませた「lost AGE」、軽快なリズムに乗って掛け声とともに一体感を楽しんだ「snow irony」。楽曲の盛り上がりに比例するかのように、オーディエンスも前方へと押し寄せ、リズミックなクラップが印象的な「bath room」と一気に5曲を駆け抜け、本編とはまた違った趣を見せたセットリストで盛り上げた。

 ここで、メンバーと会場全体で記念撮影をおこない、コショージが「今日の景色をみんなの角膜に閉じ込めて、一生消えませんように!」と強く願いを込め「last scene」を最後に届けた。最小限の照明でのパフォーマンス。薄暗いステージは目を凝らさないとメンバーの姿もよく見えない。そして、最後に希望へと続く扉を開けたかのように、眩い光が後方から4人を強く照らし、『Solitude HOTEL 3F』は大団円を迎えた。メンバーがステージを去った後、ホワイトノイズが轟くなか、スクリーンに7月19日にニューシングルをリリースすることを発表。歓声とともにライブの幕は閉じた。

(取材=村上順一)

セットリスト

5月9日 東京・赤坂BLITZ

01.ending
02.sin morning
03.end of Summer dream
04.veranda
05.faithlessness
06.int
07.townscape
08.karma
09.screen
10.blue light
11.opening

ENCORE

EN1.cloudy irony
EN2.lost AGE
EN3.bed
EN4.snow irony
EN5.bath room
EN6.last scene

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