その日しかない音に面白さ、OKAMOTO’S ライヴバンドとしての美学
INTERVIEW

その日しかない音に面白さ、OKAMOTO’S ライヴバンドとしての美学


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年05月30日

読了時間:約18分

聴き手の想像によって変わる

オカモトコウキ

――今作はライヴアルバムとのことですが、日比谷野音公演のBlu-rayはオマケですか? 完全収録で豪華な感じですが。

ハマ・オカモト 一応どちらもメインといえばメインです。野音のファイナル以外もマルチトラック(レコーダー)を回していた箇所がいくつかあって、CDの方には野音以外の会場のものも入っています。ライヴ音源をCD化すること自体が初めてなんです。

――ライヴ音源という、映像ではない所の魅力とは?

オカモトショウ その日しかない音だったり、スタジオ盤が無いような曲のライヴ盤だったら、それが一番何度も聴ける耐久性のあるものになる訳じゃないですか? そういう面白さはあるなと。ジャズのアルバムを聴いていても思うし、MC5(米ロックバンド)も1stアルバムがライヴ盤だったり。

オカモトレイジ 映像が無いと客席や会場の感じが分からないから、聴き手の想像によって全然変わるというのが面白さなんじゃないですか? 映像があったら簡単に全貌が分かってしまいますし。

――漫画と小説くらいの違いがあると言う方もいますね。マルチトラックを回していた所というのは全箇所ではないですよね。初日の千葉LOOKは回していたようですが、やはり初日は回していた方が良い?

オカモトコウキ 初日は回しておいた方がいいかもしれないです。

オカモトショウ しかもアルバムの1曲目がそうなんです。47都道府県1本目の1曲目から始まって、最終日の最後の曲で終わるという流れです。

オカモトコウキ 47都道府県を回ったららそれなりに演奏に変化もあるだろうし、最初と最後を分かりやすく録っておいたらいいのではないかという事で。セットリストはほぼ変わらないので、録ってみて「どういう風に変わっていくのか」という自分達の興味もありました。

――「青い天国」は以前から、かなりライヴで披露してきている曲ですよね?それでも最初の千葉LOOKでの「青い天国」の演奏と、最後の野音での演奏は違った?

オカモトレイジ やり尽くしているからこそ少しフレッシュにしたくて、序盤ではアウトロを変えたりしているんですけど、それをやらなくなって元の状態に戻るという事がありました。

――ツアーを経て一番変わった点は?

ハマ・オカモト 特に前半はやる度に「ここはこうだからこうしよう」という話し合いをするので、それをすごく意識してやっている期間を経て、悪い意味ではなくだんだんと柔らかくなって元に戻っていく感じという意味では、一定ではないという感じなんです。どこが良いという単純な事でもなく、最後の方だったから良いかと言われたら、意外と中盤の方が良かったりもします。

オカモトコウキ 会場によっても変わってくるので、立ち振る舞いにしてもその会場のお客さんの位置を考えて変えていくということも意識しながらやっていきました。色々な事が積み重なって最終形態になるという感じでした。

――見せ方もフレキシブルに変えていったのですね。

オカモトコウキ 47本中の46本はライヴハウスでやって最後は野音だったので、そこも全然違う点でしたし。

間違えたりしたままの録音である事が美学

――また曲によって音像が全然違うのが面白いです。「ROCKY」はスタジオ録音のものですが、ライヴ録音との差異があまりなくて。OKAMOTO’Sはやっぱりスタジオ盤でもライヴを意識しているというのが伝わってきました。

オカモトレイジ そこは意識しましたね。スタジオ盤は4人だけで成立させる音像で音作りしたレコーディングでした。

オカモトショウ 「ROCKY」に関してはあまりたくさん演奏することなくベーシックを録り終えました。これ以上やったら上手になっちゃうからって。この曲は演奏が上手過ぎても伝わらないし、「ある種の熱量が乗っかっている状態でないと駄目だね」と話し合いながら録っていきました。

――もっと上手く録りたいという欲求抑えるのは大変じゃないですか?

オカモトショウ ルーツとして聴いてきた音楽の影響で、あまりそういうところにこだわりがなくて。もちろんある程度は必要なんですけど。昔のレコードを聴いていると、咳き込んだ声が入っていたり、少し間違えたりしたままの録音である事が美学になっているという気がします。

 「一発で録って直しもしない方が潔くてカッコいいんじゃないか」という所から始まったのですが、最近は「製品だしビシっと整理整頓するべきじゃないか」と、ようやく考え始めたという感じです。「ROCKY」はツアーを象徴する楽曲ですし、ライヴありきの曲だからということもあいまって、音像はいわゆるスタジオ盤という感じとは真逆の方向で制作しました。

ライヴアルバムのフェイバリット

ハマ・オカモト

――今回CDのライヴ音源としてこの6曲を選んだ背景は?

オカモトショウ 7、8年活動してきて曲も溜まってきて「どれから聴けば良いの?」という人に分かりやすく、「この辺りが、自分たちがライヴでやっているベストっぽい所」という事が分かったら良いなというのが主な選曲理由です。だから総分数も短くして、予習をしやすくしています。ケータイなんかで検索したらパッと出る所に最新の音源として分かりやすいものを夏前にリリース出来たらいいなということもあります。

――初めてOKAMOTO’Sに触れる方々への指南書というか、そういう役割もあるんですね。皆さんにとってのライヴアルバムの名盤は?

ハマ・オカモト ザ・フーの『Live at Leeds』。

オカモトレイジ ラモーンズの『Loco Live』とレッド・ホット・チリ・ペッパーズ『LIVE AT SLANE CASTLE 』。レッチリは『Live in Hyde Park』もいいな。

オカモトショウ ビル・エヴァンスの『Waltz for Debby』もいいよね。

――けっこうライヴアルバムは聴きますか?

ハマ・オカモト 僕は好きです。

オカモトレイジ 俺はあまり聴かないかな。

オカモトショウ ライヴアルバム俺は好きですよ。

オカモトコウキ ダニーハサウェイなどは好きですね。

オカモトショウ あとはサム・クックの『Live at the Harlem Square Club, 1963』。ジェームズ・ブラウンはライヴアルバムばかり売れてシングルが売れないと悩んでいたらしいです。

――その時代の音源はスタジオ盤よりもライヴアルバムの方が強烈なものが多いですよね。

オカモトショウ スタジオ録音が得意な人とライヴが得意な人と、どちらもいるんだと思いました。

――ミュージシャンからしたら「ライヴの方が良い」と言われる方が褒め言葉として捉えられるという印象があるのですが。

オカモトショウ そうかもしれないですね。

――ライヴの方が良いバンドは長い目で見ると強いなと。やっぱりOKAMOTO’Sはライヴ強くしていきたいという思いはありますか?

オカモトショウ OKAMOTO’Sしかやった事がないので分からないところもありますが、バンド毎に選べないというか、自動的にスタジオ演奏かライヴ演奏か、どちらかが強くなるんじゃないかと思います。自分たちの場合は単純にライヴの方が得意なのかなと。曲によってはライヴを意識して仕上げるものもあるし。ライヴの方が強いと“最後”が強いかもしれない。何か起きても4人でステージに出て演奏が出来る。機材トラブルで何かの音が足りないとなっても臨機応変にパフォーマンス出来るとすると、歳をとっても強そうというか(笑)。

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