新しい音楽を作りたかった、サンボマスター 徹底した音の響き
INTERVIEW

新しい音楽を作りたかった、サンボマスター 徹底した音の響き


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年05月19日

読了時間:約14分

踊ることはプロテストでもあり、ステートメント

木内泰史

ーー歌詞や曲名には、踊る、ダンスという言葉がたくさん出て来ますが、ここにはどんな想いが込められていますか?

山口隆 いつの時代も、ダンスミュージックから新しい音楽が生まれます。ライブキッズのダイブやモッシュも、踊ってると言えば踊ってると言えるし。踊るということは、非常にネガティブなものや、自分たちを食い荒らそうとするものに対抗するのに、すごく有効なものだと思うんです。

ーー抗うための手法の一つと。

近藤洋一 踊ることって、決して日常的なものってわけではないんです。日常的に踊っていたら、ただのヤバイ人だし。大声を出して叫ぶのと同じくらい、踊ることって強烈な行動だと思います。自分の内面をさらけ出すことでもあると思うし。

山口隆 「心躍る」という言い方もあるし。踊ることは、プロテストでもあり、ステートメントでもあると思います。

 でも、そんな重く受け止める必要はなくて。ジェームス・ブラウン(※編注=米ソウルシンガー、“ファンクの帝王”と呼ばれた)を聴いたら、単純に元気が出るじゃないですか。良い曲だと思ったら自由に楽しんで、その上で身体が動いてくれたらいいし。

ーー「パンク」という言葉もたくさん出て来ますが、パンクはみなさんのルーツでもあるわけで。みなさんの中におけるパンクという言葉や音楽は、先ほどのダンスに込める意味合いと似ていますか?

山口隆 僕は、ものすごく近いと感じています。パンクには、人を差別しない優しさがあります。僕らがインディーズのとき、いわゆるパンクのライブハウスでやっていて。僕らは革ジャン着てるわけでも髪を立ててるわけでもなかったけど、ジャパニーズハードコアの先輩バンドたちは、俺たちを見てくれとかで、一切差別せず受け入れてくれました。だから、僕はパンクという言葉には、そういう優しさも感じます。

ーー「ハートコアパンク」という曲は、そういうことなんですね。

山口隆 そうそう。

ーーちなみに今朝、通勤ラッシュの電車に乗ったら、辛そうな顔をしたサラリーマンだらけで、「みんなにこのアルバムを聴かせたいな」と思いました。

山口隆 ライブには、そういう「大人キッズ」がたくさん来てくれて、彼らのはっちゃけ方がハンパなくて。見ていると嬉しくなります。

近藤洋一 朝の通勤電車で、女性専用車両みたいにモッシュ専用車両を作って、そこでこのアルバムを聴いてくれたら良いんですよ。満員電車もモッシュと考えれば楽しくなりそう(笑)。

山口隆 それヤバイね。絶対楽しいと思う!

サンボマスター

ーー初回盤付属のDVDには10-FEETのTAKUMAさん、東京スカパラダイスオーケストラ、和田アキ子さんなど、いろんなアーティストとのライブでのコラボを収録していますね。

近藤洋一 みなさんすごい方ばかりですけど、ビートたけしさんがポイントです。これは是非見てほしいです。

山口隆 2015年に開催された「第8回したまちコメディ映画祭in台東<ビートたけしリスペクトライブ>」で、たけしさんが「浅草キッド」を歌って、僕らがバックを務めさせていただいたときの映像です。僕らにとっては神様みたいな人ですから、すごく光栄でした。それを収録できたのが、すごく嬉しいです。

木内泰史 たけしさんが歌いながら、ドラムセットに向かって怖い顔をして歩いて来て。「何だ? 何だ?」と思ったら、ドラムセットの台に足を引っかけてコケるという、お約束をやってくれて(笑)。ものすごく自由でお茶目で、最高でした。絶対に見て欲しいです。

ーーそして、1stアルバムを発売した記念日の12月3日には、日本武道館公演を開催します。実は初武道館というのが、意外でした。

山口隆 僕らは武道館を目標にするよりも、全国の土地土地のライブハウスでやることを目標にして来たバンドで、それは今も変わらないです。でも、武道館をやることで、こんなに喜んでもらえるなんて、これほどありがたいことはないですよね。自分たちがやれることの喜びよりも、みなさんが自分のことのように喜んでくれたことが、1万倍嬉しかったです。みなさんのためにも、良いライブをしなきゃなと思ったし。

 4月におこなった、日比谷野音公演のときに武道館の発表をしたんですけど、武道館って書かれた垂れ幕がドーンと降りたとき、歓声が本当にものすごくて。あの瞬間は、まさしく「YES」って思いました!

木内泰史 想像していた以上の歓声で。まだ実感はないですけど。我がことのようの喜んでくださる方が、こんなにもいるんだということが、本当に心強かったです。

近藤洋一 やっぱり自分たちがお客さん側だったときは、好きなアーティストのライブを武道館で見たいと思っていましたから。そういう感覚で、みなさんが僕らのをことを見てくれていると分かって、すごく嬉しかったです。

(取材・撮影=榑林史章)

 ◆サンボマスター 山口隆(唄とギター)、近藤洋一(ベースとコーラス)、木内泰史(ドラムスとコーラス)。2000年に大学の音楽サークル内で結成。2003年にオナニーマシーンとのスプリットアルバム「放課後の性春」でメジャーデビュー。これまでに『新しき日本語ロックの道と光』を始め、9枚のアルバムなどをリリース。シングルは「オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで」など20枚をリリースしている。2005年には「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」が、ドラマ『電車男』主題歌としてヒット。2015年の映画『ビリギャル』主題歌「可能性」を手掛け話題に。ボーカルの山口隆は、福島出身のアーティストらと「猪苗代湖ズ」として福島の復興活動にも尽力している。

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