すごい数のマイクでドミノ倒しが出来そうだった
ーー歌詞に関しては、書き方も変わりましたか?
山口隆 2年経てば、人間の気持ちも自分たちが住んでる環境も変わるので、その影響はあったと思います。
今回こういう音を作りたいと思ったのも、歌詞が嘘くさくならないように、人に「YES」と言うのであれば、自分たちの中にもそれだけの理由がないといけないし、そのための音でもあるわけで。
ーー全体的にいつもよりマイナー調の曲が多い気がしました。
山口隆 ああ、センチメンタルな感じはあるかもしれないです。それこそ、気持ち的なものだと思いますね。最後の「Stand by me & you」なんかは、“おしゃれコード”を使っていて、いつもと雰囲気が違うし。
ーーソウルミュージックの雰囲気ですよね。
山口隆 そうそう。レコード会社の人に「今回のアルバムはこういう感じです」と最初にこれを聴かせたら、「もうちょっとロックな曲はありませんか?」と言われたくらいです(笑)。でも、やっぱり新しいロックを作りたくて、こういう曲を作ったんです。
ーータイトルに「& you」と付いているところが、一人じゃないんだぞという感じが出ています。常に一緒に、聴く人に寄り添ってくれている感じですね。
山口隆 そのためのアルバムですからね。偉大なアルバムはすべてそうです。ローリングストーンズの『You Can't Always Get What You Want』とか。マーヴィン・ゲイも「What's Going On ?」と、人に呼びかけています。
ーー「Sad Town, Hot Love」は、切なさが胸を締め付ける感じがあり、すごくグッときました。
木内泰史 Macのプロツールス(※編注=音楽編集ソフト)の同時再生トラック数は、128までなんですけど、この曲は128では足りなくて。それだけ、とにかくいろんな音が入っています。ダビング数も多かったし、ひたすらアイデアを詰め込んだ曲です。
山口隆 マイクの数がすごかったよね。一個倒したら、バタバタバタってドミノ倒しが出来るんじゃないかってくらいの数だった。
木内泰史 部屋の隅とか、俺の後ろにも置いてあって。何を録るの?と思うようなマイクもあった。
近藤洋一 ドラムだけでマイクが24本。それにギターでも、ほんの一瞬しか出て来ない音があって、一瞬でも出てくれば4トラック使いますから。どんなに短いフレーズでも、細かく音を変えているので。じっくり聴いてほしいです。
ーー「反撃の時間はじめ」は、どこかレッド・ツェッペリン(英ロックバンド)ぽくもありました。
山口隆 最初のリフがね。ブラジルから帰って来たばかりのときに、思いついたんじゃないかな。大陸的で、ブルーノートスケール(※編注=ジャズやブルースなどで使われる音階)じゃないコードで作ってみたいと思って作りました。
ーーまた「ワルになりたい」は、ベースと歌だけで続いていくような、サンボマスターさんにはなかった感じで、すごく衝撃でした。
山口隆 あれは、マシンっぽくやってるけど、全部生音なんです。
近藤洋一 これは「空間にどういう説得力を持たせるか」に重きを置いて作りました。アルバムの中では、いちばんエディット感があるかもしれないです。
ーーソニック・ユース(米ロックバンド)とか、90年代のオルタナティブ感も何となく感じました。
山口隆 ああ。確かにアルバムの中で、どこかに90’sへのリスペクトを出したいというのはありました。
近藤洋一 静寂と轟音のコントラストが、90’s的ではあると思います。
木内泰史 僕ら、90’sのオルタナはどんぴしゃですからね。