「カタカナにする、しない」はいつも話し合ってる
――アルバムタイトルがアルファベットで「I STAND ALONE」で、楽曲がカタカナで「アイスタンドアローン」なのはなぜでしょうか。
松尾レミ 私は歌うときは日本語で表現しているんです。例えば歌詞の中で、英語の発音で歌うなら英語の方が良いと思うんです。でも私は日本語としてのカタカナで歌っているので、曲の方も歌詞になぞらえてカタカナにしました。でも、アルバムタイトルとしては英語で付けたいなと思ったんです。
亀本寛貴 そういう「カタカナにする、しない」はいつも話し合ってます。
松尾レミ こだわりなんです。「美しい棘」も「棘(いばら)」と言っても色々漢字があるじゃないですか。普通なら「茨」だと思うんですけど。でもこの「棘」はトゲとも読める。私にとっての「いばら」はトゲでもあるし、一般的なチクチクするものの集合体、という2つの意味を持っているんです。「茨」だと後者のイメージしかない気がしていて。それよりも、花の1本のトゲさえも表現したいので「棘」を選びました。
「お月様の歌」も「さま」をひらがなにするか、漢字にするか。「うた」を「歌」にするか「唄」にするかというのも考えて作ってます。「様」も絵本ならたぶん、ひらがななんですよ。でも、私がこの曲に思っているイメージは稲垣足穂の『一千一秒物語』。そのなかでは全部「お月様」という漢字で表現されているんです。なのでそれになぞらえました。「うた」も「唄」というのは童謡とかの感じなんですけど、「歌」の方がもっとフラットかなと思って選びました。
――サウンド面で、サイケデリックとか70sみたいな事をやるのは「過去との対峙」や「機材の問題」などの葛藤を生むのではないかと思いましたがいかがですか。
亀本寛貴 僕は今26歳なんですけど。物心ついた時にはビジュアル系や小室哲哉さんが流行った時代でした。それを聴いて育って、楽器を始めて、その中で色々なロックを知っていって。それでバンドを始めて今、格好良いと思っているから、今やっても大丈夫だと思うんです。逆に音楽のネタを1、2年前から持って来たら絶対NGで、それは5年、10年でも駄目じゃないかなと思うんです。やっぱり50年くらい前から持ってこないと、結局、今聴いて新しいものというのは難しいなと思っていて。
ミュージシャンのROLLYさんが「色んな女性シンガーの曲を聴くとだいたい同じような歌手から影響を受けている様に感じる。でも、今ジャニス・ジョプリンに影響を受けて真似してる人がいたら僕は面白いと思う。ジャニスは50年前の人で、もういないから今逆に新鮮」という様な事を書いていたんです。僕も「確かにそうだな」と思いました。
先ほど「ロックというフォーマットができ上がっている」という話をしていましたけど、それが出来ていても「古い事を今やったから、古い」ではないと思うんです。常に時代を感じて「今これが良いんじゃない?」というセンスやアンテナを常に持っていないといけないなと思っています。僕は「これイケてない?」くらいにしか考えてないです。
――映画『ラ・ラ・ランド』にも感じた事ですが、古いものを「当時を知らない若い世代が、今の機材でやる」という面白さを感じました。機材はどんなものを使っているんですか?
亀本寛貴 普通に新しいものもあれば、古いものもあります。でも、それは「出したい音に合わせて」ですね。同じものを揃えても、ああいう音にはならないと思うんです。逆に「出来たらすごいな」と思います(笑)。当時のジミー・ペイジみたいな音にはどうやってもならないと思うので、自分のイメージに近づけられるものを「これかな?」と選んでいるだけなんです。だから別に新しくても、古くても良いなという感じで、“今出して”良いなと思う音を選ぶだけです。
あとは、僕がバンドを始めた頃はギターソロがないバンドがほとんどだったんです。BUMP OF CHICKENさんとか、ストレイテナーさんとかコード弾きとかアルペジオが多いんです。それを受けた時に、僕らが何をすべきかというと「単音のリフだ! ギターソロだ!」という事になって。それで「ジミ・ヘンドリクスやジミー・ペイジの時代に戻るのが新鮮」というところにいってるんじゃないかと。でもギターは燃やせないですね(笑)。安いのだったとしても、抵抗があります。
松尾レミ 燃やすときは日本製の安いものを焼いてるという話がありますよね。でも可哀想になっちゃうな、ギターが。作った人の事も考えると。ザ・フーのライブ映像とか観ていると心が痛くなるもん。
――この新作を引っ提げたライブも決まっています。
松尾レミ そうですね。大阪と日比谷で野音ライブが2カ所決まっています。今回は、数は回れないんですけど、2カ所で大きくやろうかなと。ワンマンライブとしては初の野外なので、どういう風にお客さんが観えるのかなとか、その逆でお客さんがどう私たちを観るのかなっていうのが凄い気になります。
あとは雨が降ったとしても、晴れたとしても、曲毎に吹く風が違うし、段々暗くなっていくとか、飛行機が飛んでるとか、自然の舞台美術にもミラクルが起きればいいなと思います。凄い楽しみです。
セットリストもまだ何も決めてないですけど、時間に合った歌を選びたいなと思っています。野外でやるという良さを感じられるライブにしたいので、大きな心で揺れながら自由に音を楽しんで頂きたいなと思います。
それから今回のミニアルバムに続くフルアルバムは、まだ全貌は自分たちもわかってないですけど、より深みに入った表現にしたのが3rdアルバムかなと思って頂ければと。
亀本寛貴 あと前回の『Next One』に収録されている『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌の「怒りをくれよ」が、すごく速いロックだったんです。今回の「美しい棘」はその真逆の様な曲なので、次のアルバムではまたそれとも違うキラーチューンを提示したいなと思っています。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
松尾レミ いつもGLIM SPANKYは好き勝手にやっているんですけど。それがどうリスナーに届くのかなというのも気になるところです。そして私たちは5年後、10年後の日本のロックの土台、引き出しが少しでも増やせればなと思っています。若い人にも、親世代にも普遍的にずっと聴いてほしいと思います。
亀本寛貴 前作を聴いてくれていた方が聴いても「こう来たか」と思ってもらえるでしょうし、むしろ今までのGLIM SPANKYに引っかからなかった方も、是非聴いて頂ければと思います。
(取材=小池直也、撮影=冨田味我)



















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