未来も一緒に作っていきたい、Kalafina 新たな扉を開いた新譜
INTERVIEW

未来も一緒に作っていきたい、Kalafina 新たな扉を開いた新譜


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年04月05日

読了時間:約14分

 美しい三声のハーモニーで人気の女性3人組ボーカルユニットのKalafina(カラフィナ)が4月5日に、通算20枚目となるシングル「into the world/メルヒェン」をリリースする。表題曲の一つ「into the world」は、NHK総合テレビ『歴史秘話ヒストリア』エンディングテーマで、3人は「自分たちの新たな扉を開き、新たな一歩を踏み出させてくれる曲。今リリースするのに相応しい」と話す。楽曲を切り口に、旅や春の思い出などを聞いた。

「into the world」には、未来を一緒に作っていきたい気持ちを乗せて

「into the world /メルヒェン」(アナログ盤)アートワーク

――「into the world」は、スケールの大きな楽曲。大海原にこぎ出すようなイメージですね。

Keiko 昨年4月からNHK総合『歴史秘話ヒストリア』エンディングテーマとして流れている曲で、今回のCDリリースを告知させていただいたときは、多くの方から「待っていました!」とお声をいただきました。自分たちとしても、ようやくみなさんのお手元に届けることが出来て、本当にうれしいです。リリース後は、きっとみなさんの日常にもっと溶け込んでいくものになると思います。

 この曲は、聴いてくださった方それぞれで、その方の人生や経験が反映され、その方自身と向き合うことが出来るものだと思っています。これから、みなさんの感想が聞けるのが、とても楽しみです。

――タイミング的に、どうして今の時期にリリースすることに?

Keiko 来年10周年を迎えるので、それに向けた活動ということで、みなさんとの密な時間を作っていきたいし、みなさんの声もたくさんお聞きしたいと思っていて。そんなとき、「into the world」という曲が、自分たちの新たな扉を開き、新たな一歩を踏み出させてくれると思いました。そういう部分で、10周年を目前に迎えた9年目という今にリリースするのが、とても意味のあることだと思いました。

Hikaru 歌い出しは私が歌っていて、そこでは一つ決意表明みたいな気持ちを表現しています。昨年秋に開催した『Kalafina Arena LIVE 2016』で歌ったときは、最後に歌った曲だったのですが、自分では、それまで一緒に時間を作ってきたみなさんと、もっと先を見たいという気持ちで歌わせていただきました。今回のシングルリリースに際しては、これからの未来も一緒に作っていきたいという気持ちを乗せています。

Wakana 『歴史秘話ヒストリア』で聴いてくださったお客様からは、「自分自身奮い立つような気持ちになった」「勇気が湧いた」など、いろんなお声をいただきました。『ヒストリア』の番組制作のみなさんからも、「新しい番組作りを開拓し、視聴者を楽しませる番組を作っていくという部分で、その気持ちを後押ししてくれる勇気をもらった」という言葉をいただいたと、プロデューサーの梶浦(由記)さんから伺いました。

 私たち自身も、レコーディングのときもライブで歌うときも、自分たち自身に訴えかけるような気持ちで歌っています。そうやって、みんなが同じように感じることができる曲は、なかなかないのでとても貴重だと思います。

大洗水族館の年間パスポートが期限切れに!

――まだ見ぬ土地への旅というのも、この曲の一つテーマにあると思いますが、みなさん旅自体はお好きですか?

Keiko 大好き。

Hikaru 好きですね。

Wakana ツアーやキャンペーンで、3人で旅することが増えて、余計に旅が好きになりました。見たことがないものを見られるのは楽しいです。ただ、プライベートで旅に行けるだけの、まとまった時間が取れないのもあって。

――個人的な旅は、やはりなかなか行けないですか。

Wakana 私はぜんぜんです。

Keiko 私は、けっこうさらっと行きます(笑)。主に食べ物と温泉が目的ですけど、違う土地に行くだけで気持ちが変わります。

Hikaru 私は、一人旅が好きです。行く場所は決めておいて、途中で寄り道したりします。このお店、かわいいからちょっと入ってみようかなって。思いつきで、自由に行動できるのが一人旅の良いところ。目的の場所に行けなくても、次にまた来る楽しみが増えますし。

――Keikoさんは、温泉とかは前から予定を立てるのですか?

Keiko いいえ、時間があったらさくっと。女子は、温泉とか食べ物とか、好きなもの目的ですぐ動ける生き物なので(笑)。食べ物系なら、旬のものを食べたいって思うし。そういう旅って、大人だから出来る醍醐味だと思いますね。

――Wakanaさんは、最近行ってないとのことで。時間が出来て行けるなら、どこに行きたいですか?

Wakana 去年は大洗水族館に行って、そこは日本一サメがいる水族館で、私はサメがすごく好きなんです。それで年間パスポートを取ったんですけど、結局それっきり行かないまま期限切れになってしまって。だから、今年は絶対に行きたいです。

Keiko 年パスは、もう買っちゃダメだよ。

Wakana え〜何で? 写真付きで、持っているだけでちょっとレア感があるんだけど。

Hikaru 買うと、いつでも行ける気になって、結局行かないからもったいない(笑)。

――ツアーという旅では、移動時間も貴重だと思います。みなさんはどんな風に過ごしていますか?

Keiko 私は、だいたい何かしらの作業をしています。それか、その日にやるライブの曲を頭から全部聴いて、1ステージ分シミュレーションします。それをやると、気持ち的に安心するんです。

Hikaru 私はだいたい寝てます(笑)。

――ゲームのやりすぎですか?

Keiko Hikaruはそんな子じゃありません。しているかもしれないけど(笑)。

Hikaru してないです! 遠足の前の日みたいに、ソワソワして寝られなくて。

Keiko で、ゲームをすると。子どもか!

Hikaru しません! って言いたいところですが……あまりにも眠れなくてゲームしちゃうこともありますね(笑)。

Wakana 私は、Keikoと同じように1ステージ分聴くときもありますし、当日入りのときはMCの確認をしていることが多いです。前日入りとかのときは、夜移動していることが多いので、ホテルに着いたらすぐに寝ます。私、12時前に眠くなるので。…って、子どもか(笑)!

Hikaru あ、自分で突っ込んだ(笑)!

Kalafinaが1オクターブ外して歌う!?

「into the world /メルヒェン」(期間生産限定盤)ジャケ写

――「メルヒェン」は、OVA『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』のエンディングテーマですが、楽曲はKalafinaさん節といった感じの曲調。

Keiko そうですね。ダークファンタジーな要素があって。でもこの曲は、ビートが気持ちいい曲で、そこに言葉がどんどんハメられていく感覚が聴かせどころでもあります。自分たちも、言葉のハメ方やアクセントの付け方の部分で、サウンドに気持ちよく乗れるように心がけて歌いました。

 こういう世界観が出来上がっている曲のときは、その世界の音色やリズムによって、声色をどっちに持っていこうかなど、技術的なものをサウンドに寄せるのが大前提なので、そういう部分では少し面白いレコーディングではありました。

――『クビキリサイクル』(編注=西尾維新デビュー作・OVA)は、皆さんご覧になったのですか?

Keiko レコーディングの時はまだ情報があまりない形でレコーディングしました。後にアニメーションを見て、みんなで「すごく難しい内容だね」って。

――だから歌詞も、すごく難しいですよね。

Keiko 一筋縄ではいかないストーリーなので、それがとても表現されています。あと、歌詞に何度か「箱」というワードが出てくるのですが、その箱は、聴いた人それぞれでの解釈で違うと思うのですが、何度も出てくるので、歌っていて印象に残りましたね。

――気になったのは、「1オクターブ外して僕らは歌う」というフレーズです。Kalafinaさんが、ハモを外すわけがないと思って。

Keiko なるほど。外す、という言葉をどう解釈するかですね。外すは、ピッチを外すという意味だけではなく、1オクターブ下を歌うという意味にも捉えられます。これも聞く方それぞれの解釈でいいんじゃないかな。

Wakana オクターブ違いのことです。

Keiko 私はWakanaちゃんのオクターブ違いを歌うことが多いんですが、実際に1オクターブ外すという言い方します。しかも私が歌っているパートなので、「いつも1オクターブ外して歌ってま〜す!」という感じなんですけど。

――ああ、そういうことなんですね!

Wakana でも、私もそのフレーズはすごく好きですよ。1オクターブ外すという言葉の意味は、心を低く持って少し落ち着かせているのか、逆に高くすることでタガが外れたおかしな気分になっているのか、どちらにも受け取れると思っていて。

 『クビキリサイクル』というアニメは、登場人物みんなが疑心暗鬼になっている中で、誰だか分からない犯人が笑っている感じがあるんです。そこにこのフレーズがとても合っていて、そんな状況だったら、そりゃあ1オクターブ外したくもなるよなって(笑)。

――1音とか半音とか外してだったら、やばいですけどね。

Wakana それはそれで、気が高まった感じが表現出来て良いと思いますね。でも、そうやって、一節ずつ解明していきたくなる歌詞です。

Keiko そうやって、どんどんかみ砕いていってもらえたら、お客様ひとり一人の聴き方で、すごく面白くなりそうですね。

――Hikaruさんは?

Hikaru 最初に聴いたとき、とても不思議な世界観だと思いました。歌うときも、言葉を当てていくというよりも、文字を当てていくようなイメージを持っていて。たとえば「信じる」という言葉は、「し」「ん」「じ」「る」という1文字1文字を独立させて響かせて、並べたらたまたま意味があるみたいな考え方で歌っています。

――言葉を音としてリズムでも楽しめるし、歌詞の意味の解釈で楽しむこともできるし。

Keiko この曲は、どこをポイントに捉えるかで楽しみ方が変わるので、楽しみ方の自由度の高い曲だと思います。

――タイトルは、おとぎ話を意味する「メルヘン」のことですよね。

Hikaru ドイツ語だと「メルヒェン」なんです。

Wakana ちなみに「ヒェン」には別の意味もあって、ドイツ語で「〜ちゃん」なんです。だから、「Keikoちゃん」なら「Keikoヒェン」となるそうです。

Keiko 日本語にはなかなかない発音ですけど、ドイツ語ではよく出てくるお馴染みの発音だそうです。梶浦さんの言語感覚は本当にすごいので、私たちも毎回楽曲を歌わせていただくのが、すごく楽しみです。

――この曲は、きっとツアーでは歌われるんでしょうね。

Keiko 歌われるんでしょうね、きっと。と、書いておいてください(笑)。

――どっちなのでしょうか?

Keiko 大丈夫です。きっと、と書いて下されば。

Wakana 私たちからは、何もお答えできませんので(笑)。

Hikaru お楽しみに取っておいてください! あと、「メルヒェン」のMVも撮っていて。アニメ盤にしか付いていないんですけど、面白い作りになっています。

Keiko さっき「箱」の話をしましたけど、そういう閉鎖的空間みたいな、内なる世界というイメージの映像なのですが、「into the world」からの繋がりで、続けて楽しめるようになっています。何か繋がっているところが一瞬出てくるので、それは見逃さないでください!

Wakana 是非とも両方を見てください!

心の中で、ずっとハモっていました!

「into the world /メルヒェン」(初回限定盤A)ジャケ写

――3曲目に収録されている「春を待つ」は、季節感ぴったりで、ピアノのシンプルさも相まって、とても良い曲ですね。前のシングルに「夏の朝」という曲があって、あれも素敵でしたが、四季シリーズなのかと。

Wakana そうですね。季節を感じることによって、音楽にも広がりが生まれます。この「春を待つ」は、リリースのタイミングも春ですし、タイトルに「春」と付いているからこそ明確に、この曲を聴いて、いつかの春の思い出を蘇らせてもらえたら嬉しいです。

――あと驚いたのは、ハモりがなくてソロで繋いでいる曲だというところ。

Wakana こういうのは初めてです。

Keiko Kalafina特有の造語もありませんし。

Hikaru 新鮮ですよね。ここまでハーモニーをやって来たからこそ、今ここでひとり一人の声をフィーチャーすることに意味があるのかな? と思いました。他の2曲でコーラスワークをしっかり奏でているだけに、3曲目にこういう曲を収録することに、意味があるのではないかと思います。

――改めて、三者三様の声の特色や個性が、1曲の中でありありと分かるものになっていますね。

Keiko ずっと携わってくださっているスタッフさんや、梶浦さんご本人でさえも、「声が全然違うね」というリアクションをされていました。逆に、ここ最近どれだけ多くのハーモニーを歌って来たのかを実感しました。

 あと、最初にお話した9年目という大切な年に、それぞれの声を改めて聴いてもらえることは、とても感慨深いことだとも思いました。

――ここはハモりたかったとか、こうハモりたいとか、なかったですか?

Keiko 私は、心でずっとハモってます(笑)。「ああ、ハモりたいな」と思いながら、心の中で上に行ったり下に行ったりしてハモってますよ。

Hikaru 知らないうちにハモられていたのか(笑)!

Wakana いつもなら、ここでフワ〜と上にいって、造語が出てくるのになって。あったらそこを歌いたいなって思いますね。

Keiko でも考えてみると、みなさんがカラオケで歌うとき、いちばん歌いやすい曲です。ハモが好きな人は、自由にハモを付けられる楽しさもある。みなさんが、好きに料理が出来ます。

Hikaru 1人でも歌ってもらえるし、Kalafina史上もっとカラオケで歌いやすい曲です(笑)。

――ライブでは、ハモるバージョンをやってみるとか、面白そうじゃないですか?

Keiko ハモりません。

――ファンはそういうのも聴いてみたいんじゃないですか?

Keiko これはこれでいいんです! 他の曲でたくさんハモってますから(笑)。

――ちなみに、Kalafinaさんにとって春は、どういう季節ですか?

Keiko 実は昨年、初めて春にツアーをおこなったんです。アコースティックでしたけど、「Spring tour」と銘打ってツアーをおこなったのは、それが初めてでしたが、春ツアーの清々しさをとても感じたのを覚えています。春をイメージしたセットリストだったのですが、私たちの曲のなかで、明るい爽やかな曲や、始まりを感じさせる春にぴったりの曲が、こんなにも増えたんだと実感して。自分たちの曲を振り返ることに繋がって、すごく良い経験でした。

Hikaru お客様も、ほっこりした感じで身体を揺らしながら聴いてくださっていました。

Wakana 最後には桜の花吹雪が舞う演出もありました。

Keiko そうやって季節感を持たせることで、お客さんも「去年の春はKalafinaのツアーに行ったな」とか、思い出してもらいやすいし。私たちも「札幌と仙台に行ったね」と、すごく思い出しますし。

 今回も、4月スタートなので、春ツアーになりますね。ちょうど入学式があるのと同じタイミングなので、みなさんの新生活のスタートと共にツアーのスタートを切れるので、今年の春はたくさん思い出が作れそうで楽しみですね。ツアーの合間で、お花見に行けるところもあるだろうし。

Hikaru 時期と場所によって、まだ桜が咲いているところもあるだろうし。

――3人で花見に行ったことは?

Wakana それが、ないんです。

Keiko いつかのキャンペーンのときが、桜前線とバッチリ合っていて、行った地域ごとに桜が見られたことがあって。そのときは、お花見キャンペーンみたいでしたよ。

Wakana 今回は、4月23日の北海道が、ギリギリでどうかな? きっとまだ咲いてないだろうな〜。

Keiko でも、そのほうが「春を待つ」にはぴったりです!

(取材=榑林史章)

 ◆Kalafina 梶浦由記プロデュースによる、劇場版『空の境界』主題歌プロジェクトとしてスタートし、2008年にシングル「oblivious」でデビュー。メンバーは、Wakana、Keiko、Hikaruの3人。『魔法少女まどかマギカ』シリーズや『Fate/Zero』シリーズなど数多くのアニメテーマソングを手掛けていること。三声のハーモニーを駆使したコーラスワークと、クラシックからロックまで取り入れたスケールの大きなサウンド、そして異国感溢れる独自の言語を多用した歌詞というオリジナリティ溢れる世界観であることからも、海外でも高い評価を得ている。

ライブ情報

「Kalafina “9+ONE”」
2017/4/15(土)
千葉・森のホール21
2017/4/16(日)
千葉・森のホール21
2017/4/23(日)
北海道・わくわくホリデーホール
2017/4/30(日)
愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2017/5/2(火)
大阪・フェスティバルホール
2017/5/3(水・祝)
大阪・フェスティバルホール
2017/5/7(日)
神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
2017/5/13(土)
埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2017/5/14(日)
富山・オーバード・ホール
2017/6/3(土)
東京・東京国際フォーラム ホールA
2017/6/4(日)
東京・東京国際フォーラム ホールA
2017/6/10(土)
宮城・会場仙台サンプラザホール
2017/6/17(土)
福岡・アルモニーサンク北九州 ソレイユホール
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