バカにされたからこそ歌える曲も、ЯeaL 1年の変化が表れた新曲
INTERVIEW

バカにされたからこそ歌える曲も、ЯeaL 1年の変化が表れた新曲


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年03月08日

読了時間:約9分

当時あじわったさまざまな経験での想いやこの期間での変化が反映された「カゲロウ」

 4人組ティーンズバンドのЯeaLが、3月1日に通算3枚目となるシングル「カゲロウ」をリリースした。バンドは中学生の時に結成。同世代のなかでも群を抜く演奏力と、作詞作曲を手掛けるRyoko(Vo&G)の切れ味鋭いセンスを武器に、地元大阪ではネクストブレイクバンドとして注目され、メジャーデビュー前に『SUMMER SONIC 2015』へ出演を果たした。メジャーデビュー作「秒速エモーション」と前作「仮面ミーハー女子」でその存在感を見せつけた彼女たちが送る新譜は、TVアニメ『銀魂.』オープニングテーマ。約1年前に書いたといい、当時あじわったさまざまな経験での想いやこの期間での変化が反映されているという。この曲を通してみる彼女たちの心模様とは、そして、メジャーデビュー1年に寄せる想いとは?

強気なことを言うけど豆腐メンタル

ЯeaL「カゲロウ」通常盤ジャケ写

――「カゲロウ」は『銀魂』に合わせて書いたんですか?

Fumiha いいえ、書いたのはけっこう前です。デビュー前からあったよな?

Ryoko うん。曲はあって、歌詞も1コーラスだけ書いてあったんです。それで今回、2番とオチサビを書き加えて、今の形になりました。私、「少年ジャンプ」がすごく好きで、当時は勝手にジャンプ系アニメのオープニングテーマになったらいいなって、想像して書いていたんです。だから『銀魂.』に合わせたわけではないけど、ずっとジャンプの何かに使われたら良いな〜と思っていて。それが今回、念願が叶って採用されたという。

――では1番と2番では、約1年の気持ちの開きが?

Ryoko そうなんです。1番の歌詞はデビュー前に書いたので、すごくネガティブな気持ちなんです。デビュー前の不安やトラウマが消えなくて、そのことを書いていて。それから1年半くらい経て、楽しいことやさらに苦しいことも乗り越えて書いた2番の歌詞やったので、結果的に前を向いた曲になりました。1曲を通して、今までとこれからの両方の気持ちを描けた歌詞になったし、あの当時では書けなかった歌詞なので、今ですごく良かったと思っています。

――「カゲロウ」は、忘れてしまいたいほどの経験や、消したくても消えないものの象徴として歌っていて。では、ЯeaLにとっての「カゲロウ」とは?

Fumiha 他のバンドからナメられたこととか。

Ryoko 「自分たちで曲を書いてないんじゃないか」とか、「自分たちで演奏してないんじゃないか」と言われて。「所詮、ガールズバンドだろ!」とか、「どうせ売れへんやろ!」とか。本当にいろんなことを言われてきたんです。

 楽屋で孤立した経験もあるので、メンバー全員こんなにひねくれてしまって(笑)。でも最近は良いと言ってくれる人が増えて、それはすごくうれしいんですけど、今でもバカにした人たちを見返したいとか、言ったことを後悔させたいという気持ちもあるし。そういう強気なことを言いながらも豆腐メンタルなんで、すぐ心が折れちゃうところもあって。

Aika 当時は、いつも対バンは男の人ばかりで、私たちが楽屋に入るとシーンとなってしまったりとか。

Yurika ライブを始めたころは、まだ中学3年生だったし。「ガキのくせに!」みたいな感じやったと思います。

Ryoko でも今思うと、それで良かったのかな? バカにされてナメられたからこそ、絶対に売れてやるんだ! という気持ちが余計にメラメラと燃えたし。順風満帆ではなかったからこそ、歌えるものも絶対にあると思うので。

――今、たくさんガールズバンドがいますけど。

Ryoko 私、根が男なんで。漢と書いて“おとこ”と読むみたいな(笑)。だから、あまり気にしてないというか。

Fumiha ガールズバンドというところには、誇りを持っていて。でも、その中に埋もれたくはないですね。自分たちがいちばんカッコイイと思っているし、そもそもキャピキャピしてないから、ガールズって感じでもないし(笑)。

売れるバンドをやりたいと思って結成

ライブのもよう

――「カゲロウ」のC/W曲「ひらり舞う」は卒業ソングで、歌と間奏のギャップがカッコイイですね。

Ryoko 高2のときに書いた曲で、デビューシングル「秒速エモーション」のC/Wに入れようと思ったんですが、デビューシングルがさくらをテーマにしていて、世界観が被るということで温めていたんです。で、「春やし今やろ!」ということで、録り直して入れました。

Aika 演奏は、これでも引き算したほうなんですけどね。

Ryoko 青臭さを表現したくて、あえての引き算で。飾りすぎないようにして録りました。

――もともと楽器は?

Ryoko みんなこのバンドを始めたときが最初で、個々に独学です。それに最初からオリジナル曲を作ってやっていたので、コピーとかもしたことなくて。

Fumiha スタートが全部一緒なんです。

――そもそも誰がバンドをやろうと?

Ryoko 私です。言いそうですよね?(笑)私が、売れるバンドをやりたいと思って、オープンキャンパスで知り合ったYurikaがギターを持ってるというので誘って。ネットの掲示板に「私についてきたら売れるんで!」と書いていたら、Fumihaが連絡をくれて。それでドラムは、当時受験で忙しかったAikaを誘って。Aikaには一度断られているんですけど、何度も連絡したらやってくれるってなって。

Aika 釣られたり引きずり込まれたり、良い迷惑です(笑)。

――売れるというのは、どうなったら売れたって思う?

Ryoko 「バンドって言ったら誰?」って、誰に聞いても名前が挙がるような存在になること。ガールズバンドの中で誰々じゃなく、男女含めたバンドの中で、必ず名前が挙がるような感じと言うか。ゆくゆくは世界にだって行きたいし、世界で日本のバンドと言えば? じゃなくて、ビルボードに毎回入るくらいの存在になりたいです。

Fumiha 目指せピコ太郎さんやな。ジャスティン・ビーバーさんにぜひ“イイネ”してほしい(笑)。

――C/Wのもう1曲「満月の夜に」は、ラブソングですね。

Ryoko いちばん新しく作った曲です。ラブソングだけど、会えない相手を思って歌っています。ЯeaLの曲って、一貫して切なくて。どれだけのラブソングでも、基本的に報われないとか、離ればなれとか、そういうのが多いんです。

Fumiha でも、今までのラブソングと比べたら、これはいちばんストレートやもんな。

Aika いつもは、オブラートに包んで遠回しなんで。

Ryoko 前は、好きな気持ちも言えてなかった曲ばかりだったので。

歌は飾らず素直でいたい

ライブのもよう

――今後は、どういう曲を歌っていきたい?

Ryoko 孤独とか愛とか、確信的なものを歌っていきたくて。本音と言うか、それこそリアルなものと言うか、物事の裏側を歌っていきたいです。前回のシングル「仮面ミーハー女子」のリード曲は、SNSのことをテーマにしていたし、その前の「秒速エモーション」のカップリング「Outsider」は、世の中に対する愚痴のような曲だったし。

 私、すごくひねくれているんです(笑)。「満月の夜に」みたいに、純粋に相手を思うこともあれば、苦しい思いをすることもあったり、それこそもう辞めたいとか、何かも嫌だという日もあって。きっと誰でもそういういろんな気持ちを抱えていると思うので、そういうすべての感情に寄り添えるようなバンドでいたいです。だからこそ歌は、飾らず素直でいたいです。

――「カゲロウ」は最終的に前向きだったり、「満月の夜に」では主人公が気持ちをストレートに伝えていたりして、裏側とか愚痴とは違うものになりました。それは、少し大人になったということ?

Ryoko かもしれないです。この1年でいろいろ経験して、少し気持ちに余裕ができたのかも。前は卑屈で、売れたいとか聴いてほしい気持ちばかりが前に出ていたけど、そういう気持ちも引き算することができるようになったと思います。

 「カゲロウ」はすごくシンプルにできたし、「ひらり舞う」もあのころの気持ちを大切にして、曲に合った形になったし。「満月の夜に」がごてごてにならずにできたのは、きっと成長の証しなんじゃないかなって。

――デビューから1年の成果が現れ、新しい一歩を踏み出すシングルになったと。この1年で、印象に残っていることは?

Yurika この1年は、早かったけどすごく中身が濃かったですね。関わってくれる人や、見に来てくれる人がすごく増えて。それも、徐々に増えていく様子を間近に見ることが出来たことが、すごく良かったと思っています。

Aika 特に印象に残っているのは、昨年3月27日に大阪城音楽堂で行った「ЯeaL“史上最大無謀なデビューレコ発ライブ”at 大阪城野音~ゆずれない想いが野音にある!~」です。悔しい結果になったんですけど、その悔しさがあったから、今があるのかなって思っています。

Fumiha 私は、その後にやった「秒速エモーション」の対バンツアーが、いちばん印象に残っています。大阪野音が終わって、1カ月くらいスタジオで練習するだけの日々が続いて、「こんなことだけやっていて大丈夫なんかな?」って思っていたんです。それこそ野音が、「ああ〜」って感じで終わっているから、余計に不安で。だから、「秒速エモーション」のツアーも、「誰も来てくれないんじゃないか?」って、すごく不安だったんですけど、蓋を開けたらすごくたくさんの人が来てくれて。

Ryoko そうそう。どの会場も満員やって。そのときは、すごく救われたし、ライブに支えられていることをすごく実感しました。ライブやお客さんの大切さは、頭では分かっていたけど、それを体感した1年だったと思います。SNSでもЯeaLについてつぶやいてくれる人がすごく増えたし。そういう目に見えるものが、すごく力になった1年です。

 ずっともやもやしていたような気がする。ずっと支えてもらっていた1年だった。夢って、結局は自分たちのためなんだけど、自分たちの夢を叶える姿を楽しみにしてくれる人たちがいる。だから今度は、私たちが寄り添って側にいてあげられるバンドになって、恩返しをしていきたいです。

(取材=榑林史章)

 ◆ЯeaL(リアル) 作詞作曲のRyoko(Vo./Gt.)を中心にYurika(Gt./Cho.)、Fumiha(Ba./Cho.)、 Aika(Dr./Cho.)で、2012年に結成。地元の大阪を拠点に、2013年からライブ活動をスタート。インディーズ時代から評価が高く「SUMMER SONIC 2015」に出演。2016年3月にシングル「秒速エモーション」でメジャーデビュー。3月27日に大阪城野外音楽堂で「ЯeaL "至上最大無謀なデビューレコ発ライブ" at 大阪城野音 ~ゆずれない想いが野音にある!~」を開催した。

ライブ情報

『ЯeaLデビュー1周年記念企画 ЯeaL Яock Яevolution vol.5 ~ЯeaL vs Gacharic Spin~』
3月12日(日)東京・渋谷TSUTAYA O-WEST

『ЯeaLワンマンツアー2017』
5月27日(土)大阪・心斎橋BIGCAT
6月11日(日)愛知・名古屋CLUB UPSET
6月17日(土)福岡・福岡Queblick
6月25日(日)東京・渋谷TSUTAYA O-WEST

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