ЯeaL、約3年ぶりのアルバムは意思の集大成 成長した3人の思考に迫る
INTERVIEW

ЯeaL

約3年ぶりのアルバムは意思の集大成 成長した3人の思考に迫る


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年10月02日

読了時間:約12分

 スリーピースガールズバンドのЯeaL(リアル)が9月16日に、2ndアルバム『ライトアップアンビバレンツ』をリリースした。アルバムとしては10代最後の作品となった前作『19.(ナインティーン ピリオド)』から約3年ぶり。バンドサウンド全開の「Dead or Alive」や「強がりLOSER」、このアルバムの世界観をより濃いものにしているという「36.8」や「サイレンサー」など、ボーナストラックのカバー曲含め全16曲を収録した。インタビューでは『ライトアップアンビバレンツ』に込めた想いを聞くとともに、20歳を越え大人に成長した3人の変化に迫った。【取材=村上順一】

日常に寄り添えるような活動ができるように

Ryoko

――約3年ぶりにアルバムがリリースされましたが、今の心境は?

Fumiha もう「やったー!」という感じです。やっとアルバムを出せると思いました。

Ryoko 当初は5月にリリースする予定でした。コロナ禍で延期になってしまい、もしかしたらリリース自体がなくなってしまうんじゃないか、という危機感もあったので。なので「やったー!」というのがすごくハマります。

――不安もありながらのリリースだったんですね。ステイホーム中はどんなことを考えていましたか。

Aika みんなそれぞれ配信とかやっていたんですけど、私はすごいドラマーが集まったトークセッション『Zildjian Japanese Artist Roundtable』に参加させていただいたり、リモートでレコーディングして、新曲を作ったりもしていました。このコロナ期間中だからこそできたこともありました。

――その中で学んだことはありましたか。

Aika トークセッションだったので、もっと喋れるようになろうと思いました。

――トーク力のアップが課題なんですね。Fumihaさんはどんなことをやられていたんですか。

Fumiha ベースの練習をしつつなんですけど、私もトーク力とコミュニケーション能力を高めたいなと思っていました。なので、感情の出し方の練習をおうちでしていました。私、人と対面した時に感情が全然出ないんです…。

――最初の「やったー!」は練習の成果なんですね(笑)。

Fumiha 頑張っている最中なので、これからに期待してください(笑)。

――Ryokoさんはリモートで送ってもらった音をミックスしたりと忙しかったみたいですね。

Ryoko ソロプロジェクトの動画を作ったりとか、いろいろ作業はしていました。この先、どうなっていくのかという不安もありましたし、その中でЯeaLの指針を考えていました。例えば、ライブだったらこういう曲があったらいいんじゃないか、とか。曲を書けないということはなかったんですけど、何を伝えたらいいのか、バンドのモチベーションをどこに持っていけばいいのか、分からなくなってしまって…。

――動いていないと分からなくなることもありますよね。

Ryoko でもコロナ禍で新しくバンドも変化していくし、この日常も受け入れていこうと思いました。私は生きる=バンドなんですけど、これまではバンドをやるために生きる、という感じでしたが、それも変化していけたらいいなと思っています。今まではバンドをやらなければいけない、という使命感があったんです。

――と言いますと?

Ryoko バンドができていることが当たり前ではなかった、と気付かされました。またこういうことが起きて、バンド活動ができなくなる状況が来た時に、自分たちのライフスタイルの中に音楽というものがあって、それを表現していけるようにすれば、活動の幅ももっと広がるんじゃないかなと思いました。だから、いま配信をやってみたりしているのもその一つなんです。これまで私たちはあまり生活感は出してはこなかったんですけど、みんなの日常に寄り添えるような活動ができるようにシフトしていけたらと思っています。

――気づきもあって変化の途中なんですね。さて、前回のインタビューの時に歳を取ることが怖いとRyokoさんが仰っていたのですが、今はどうですか。

Ryoko 以前は本当に怖かったです。10代でなければいけないということに不安があって。歳を重ねて考え方が変わるのも怖いですし、早く武道館に立たなければ、売れなければと生き急いでいて。でも、今は変わっていくことが楽しいと思えています。『ライトアップアンビバレンツ』が完成して良い歳の取り方をしている、人間として成長できているなって。30代の自分もすごく楽しみなので、もう怖くはないんです。

――Ryokoさんは精神年齢が10代の時から高かったとお聞きしているんですが、ここに来てその差が縮まってきた感じも?

Fumiha 全然縮まってないです(笑)。若干落ち着いたけれども年上という感覚が、まだまだ強いです。

Ryoko 普段の私とЯeaLの時の私では違うんです。音楽活動をしている時の私は達観しているところがあって、そこは全然変わってないと思います。2人はそのときの私のことを言っていると思うんです。

――Fumihaさんは年齢を重ねることに思うことはありますか。

Fumiha 私はずっと若いままでいたいです。でも、歳を取るごとにベースは上手くなっていくと思うし、新しいものに変わっていくのでそれは楽しいんですけど、自分自身は若いままでいたいんです(笑)。

――身体は若い時の方が元気もあっていいですよね。だんだんどこかしらガタがきますから…。ドラムは体力勝負なところもあると思うので、Aikaさんも歳は取りたくないと思ってますか。

Aika いま、私23歳なんですけど筋肉痛の治りがすでに遅いんです…。「Dead or Alive」のMV撮影でドラムを叩いたんですけど、いつもだったら次の日には筋肉痛になっても治ってるんです。でも、今回1週間ぐらいずっと痛くて…。いつもと違う何かを感じていました。なので、若いに越したことはないかもしれないです。

『ライトアップアンビバレンツ』意思の集大成

Fumiha

――何回も撮るので、大変ですよね。さて、今作は16曲とボリューミーな1枚になりましたが、この曲数は当初から決まっていたんですか。

Ryoko 「未来コネクション」をリリースしたあたりから、アルバムのコンセプトはあって、光と影が入り乱れている、統一感のある作品にしたいというのは3年前から決めていました。それでこのアルバムに必要な曲数を決めて、曲順を考えていきました。ボーナストラックの5曲は1年ほど前からYouTubeに上げていたもので、好評だったのでいつか音源に入れたいと思っていました。このアルバムを購入していただいた方への特典みたいな感じなんです。

――収録曲でRyokoさんのソロプロジェクトである名無(Namu)の「Discord」が収録されているのも面白いです。

Ryoko ЯeaLの楽曲は全て私が作詞作曲しているんですけど、RyokoがЯeaLであって、ЯeaLがRyokoなんです。バンド感がなかったり、テイストは違うんですけど、曲や歌詞を聴いていただければRyokoの曲だと思ってもらえると思って、収録させていただきました。この曲がЯeaLと名無の架け橋になってもらえたらいいなと思いました。

――このアルバムのフックになっているようにも感じました。1曲目の「Light Up Ambivalenz (inst)」から、このアルバムの世界観を決定づけているので、どんな曲が来たとしてもブレない強さを感じます。コンセプチュアルさが強調されていると言いますか。どんなアルバムに仕上がったと思っていますか。

Ryoko ありがとうございます。3年前から光と影が濃いアルバムにしたいと思っていたので。1stアルバム『19.』が10代の集大成だとしたら、『ライトアップアンビバレンツ』は自分が伝えたい意思の集大成だと感じています。

――さて、今作で特にお気に入りの曲を教えてください。

Aika 全曲好きなんですけど、特にお気に入りは「Dead or Alive」です。いつもЯeaLの曲も歌詞もめちゃくちゃいいんですけど、特に歌詞が刺さったのが「Dead or Alive」でした。1番のAメロとBメロは特に共感できます。共感性羞恥という言葉を最近知ったんですけど、他人の嫌な思いや恥ずかしいことなどを見ると自分も同じような感情になってしまうことなんです。SNSとか見ていると私もそういう気持ちになってしまうので、SNSがすごく怖かったんですけど、この「Dead or Alive」を聴いて、この曲が色んな人の心に刺されば良いなと思いました。

Ryoko 「Dead or Alive」の歌詞はどこまで書くか悩みました。世の中に対しての怒りはあるんですけど、それを今まで具現化はしてこなかったんです。書いてもオブラートに包んで書いていました。SNSで生死に関わることを発信するのは簡単なんです。でもそれが行動に結びついてないことの方が多い気がして。

――RyokoさんはSNSで「いいね」の数で判断されてしまう社会について苦言を呈していましたよね?

Ryoko はい。SNSだけで人格を判断されるのも嫌ですし、「いいね」の数だけで正しいと思われるのもおかしいなって。誰かに自分を殺されてしまうのか、それを無視して自分は生き残るというのは自分自身で選んでいかないといけないなと思いました。現状に対してえぐった歌詞を書けたと思っているので、この曲を聴いた人が希望を感じてもらえたら嬉しいです。歌として1曲目に持ってきたのも、今私が強く言いたいことはこれだ! という意思表示なんです。

 誰も救ってはくれないから自分のことは自分で救えと歌っているので、この曲を聴いて傷ついてもいいと思います。絶望する人もいるかもしれないですけど、そこからがスタートで、どうやって自分を守っていくのか、というきっかけになるのも悪くないんじゃないかなって。私たちも同じだし、「一緒に戦って行こうよ」という思いも入っています。

――Aikaさんも刺さったみたいなので、きっと共感してくれる人は多いと思います。さて、Fumihaさんのお気に入り曲は?

Fumiha 私は「サイレンサー」がお気に入りなんです。完成した音源を聴いた時の衝撃がすごくて。デモの段階ではここまでエモい曲になるとは思っていなかったんです。

――良い曲ですよね。この曲は上京して、Ryokoさんが感じたことが書かれています。

Ryoko 人の移り変わりだったりとか、大阪と違うと感じるところが多かったんです。これまでも街になじみたくない、という曲は書いてきたんですけど、上京して20歳になって自分たちも「ああはなりたくない」、と思っていたものになってきてしまっているなと。東京にたくさん人はいるけれど、果たしてこの人たちは目的はあるんだろうか、と考えてました。それを衝動的に歌詞に起こしたものが「サイレンサー」なんです。たぶん同じように思っている人も多いんじゃないかと思い、その人たちに届けば良いなって。

――「サイレンサー」というタイトルも新鮮です。

Ryoko 無機質で静かな感じを表現したかったんです。いろいろ調べていたなかで、サプレッサーとかもあったんですけど、一番しっくりきたのがサイレンサーでした。今までの曲は歌詞の中にタイトルが入っていたんですけど、そのパターンではないものが出来たのも自分の中では新しいです。

絶対に飛ばさせるか!

Aika

――続いての「36.8」はタイトルが面白いですね。

Ryoko 「36.8」というのは体温で微熱を意味しています。恋愛というのは全てが劇的ではない、お互いが好きでも絶妙な距離感で終わってしまうものもあるなって。そういった恋愛における2人の“微熱”を切り取りたかったんです。この曲は信号待ちの中で、その恋愛を思い返している1秒、2秒のことを歌っています。頭と終わりが同じ場面で、その間は全て回想シーンなんです。たらればを考えているんですけど、そこにとらわれず「前に進んでいこう」というメッセージが込められています。

Fumiha 私は外で聴いていたんですけど、ピアノが流れてきた瞬間にこの曲の主人公になりました。この曲が終わるまで、信号が変わらなかったらいいな…と思ったくらい、世界に入り込んでしまって。結果、信号が変わったので渡ったんですけど(笑)。

Aika 私、普段はバラードをあまり聴かないんですけど、この曲はお気に入りでずっとリピートしてます。

Ryoko これまで私の今日に対して2人は、歌詞が難しくてよくわからない、とか言っていたんですけど、今回のアルバム曲のデモを送ると「めっちゃいい」と言ってくれるので嬉しいです。

Fumiha え〜今までも言ってたよ(笑)。

Ryoko 今まで以上に褒めてくれるんです(笑)。

――Ryokoさんの特にお気に入りは?

Ryoko 全部なんですけど、今作に収録した新曲は思い入れが強いかもしれません。「Dead or Alive」はЯeaLとしてすごくよくできたと思っていますし、「サイケデリックダンス」はЯeaLのライブ感を投影していたり、「36.8」や「サイレンサー」はこのアルバムをより濃いものにしてくれている曲だと思います。全曲肝ではあるし、アルバムの流れが最高だなと思います。あと、「未来コネクション」や「光になれない」といった既存曲もアルバムに入ったことでより輝くと言いますか。このアルバムに収録されるためにあったんじゃないかなと思えるくらいなんです。

――どの曲が欠けてもアルバムとして成立しない感覚があるんですね。ちなみに皆さんは普段アルバムは通して聴きますか。今はアルバムでもサブスクなど単曲で切り取って聴く人も多いみたいなんですけど。

Ryoko 私はそもそも普段音楽をあまり聴かないんです。職業柄、聴けなくなってしまって…。でも、リサーチとして色んな曲を聴くようになったんですけど、アルバムを聴いていると、「この曲は飛ばそう…」という曲があるんです。それはどんなに好きなアーティストのアルバムでもそれはあって、私はそうさせないようにしたい、「絶対に飛ばさせるか!」という強い意志を持ってアルバムを作っています。

―ちなみにアンケートなどで無人島に持っていく1枚は? といった質問がありますが皆さんが選ぶとしたら、どんなアルバムですか。

Fumiha う〜ん難しいですね。バンドを始めた中高生の頃に聴いていたアルバムは、どれも思い入れが深くて、今でも好きです。ポケモンのアルバムは無条件にテンションが上がります。

Aika 私はONE OK ROCKさんの『人生×僕=』というアルバムです。

Ryoko 確かそのアルバム、昔メンバー全員に「これ聴いて!」と勧めてくれたアルバムだよね?

Aika そうそう(笑)。みんなにお勧めできるくらい好きなアルバムで、無人島に持っていくなら『人生×僕=』です。

Ryoko 私はandropさんの2011年にリリースされた『relight』とDECO*27さんの『GHOST』です。これはずっと聴いていられるくらいお気に入りの2枚なんです。iTunesはよく聴いていた楽曲を抽出してくれる機能があるんですけど、2015年〜16年に掛けて一番聴いていたのが、この2枚のアルバムでした。

――andropさん、アルバムとしての完成度も高いですよね。

Ryoko andropの内澤さんが映画音楽を担当されていたんですけど、前情報なしで映画を観に行って、音楽がすごく良くて感動したんです。気になって調べたら内澤さんで。私はサントラを作るのも好きなので、同じように映画とかテレビで音楽に興味が湧いてもらえて、調べたらЯeaLのRyokoにたどり着くような感じになっていきたいなと思いました。

――最後にどのような姿をファンの皆さんに見せていきたいと思っていますか。

Ryoko コロナ禍を経てバンドの在り方を考え直す時間になったんですけど、音楽、バンドは続けていきたいと思いました。ЯeaLはЯeaLのまま色んな生き様を、ЯeaLらしさを持って表現できたらと思っています。これからも野望を忘れずにたくさん音楽を作って行こうと思っているので、ずっとЯeaLを見ていてくれたら嬉しいです。

(おわり)

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