シーンから抜け出したい、THE ORAL CIGARETTES 未来繋ぐ“非公式”
INTERVIEW

シーンから抜け出したい、THE ORAL CIGARETTES 未来繋ぐ“非公式”


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年02月14日

読了時間:約20分

ロックシーンから抜け出したいという想いからバンドのコアな部分を押し出したアルバム『UNOFFICIAL』

 4人組ロックバンドのTHE ORAL CIGARETTESが2月1日に、通算3枚目となるフルアルバム『UNOFFICIAL』をリリースした。昨年発表のシングル「DIP-BAP」「5150」を含む全10曲を収録。自分たちへ一石を投じる。ロックシーンという枠から飛び出すかのように新たな“オーラル”のカタチを掲示。その背景にはライブなどで培ってきた技術と自信などが反映され、彼らが理想とするバンドの核心に迫っている。ニューアルバムにはどのような想いを込めたのか、4月から始まるワンマンツアーと6月におこなわれる日本武道館への意気込みなどを4人に聞いた。

『DINING』と『UNOFFICIAL』というタイトルがあった

「UNOFFICIAL」初回盤 ジャケ写

――今回のアルバムは問題作かと思いました。一般的に3枚目のアルバムはターニングポイントになる事は多いと思いますが。そうした狙いもあったのでしょうか。

山中拓也(Vo/Gt) 例えば『FIXION』みたいな音楽性を5年くらい続けてたとしても、それはきっとロックシーンの一部分にしかなりえない作品なんだとずっと思っていまして。僕らはメジャーデビューの頃からロックシーンというものに凄くコンプレックスがあったんです。そこに良い意味でも上げてもらったんですけど、お客さんに「フェスの中のオーラル」とか、「ロックバンドがいっぱいいる中でのオーラルが好き」というテンション感でいて欲しくなかったんです。

 これから伝えたい事も含めて、ロックシーンから抜け出したいという事もあったんです。だから早く自分たちの音楽を単体で聴いてもらえる様になりたかったんです。その為には「もっとコアな部分を出していかないと抜けられないだろうな」と思ったんです。あと、ファンへの信頼感みたいなものが凄く大きかったですね。

――それはライブからも伝わってきます。ファンを選別しにきたという印象も受けました。

山中拓也 去年の『FIXION』(2016年1月発売のセカンドアルバム)はフェスなどを観に来てくれるグレーゾーンの人達も一緒に巻き込んでいこうというのを目的に作った作品でもあったんです。今作に関しては、自分達のコアなファンから「やっぱりオーラルって素晴らしいよね」と言ってもらえる事によって、外に伝えていこうという、内側から外にどんどん押し出していくイメージなんです。

――なぜ『UNOFFICIAL』というタイトルに?

山中拓也 もともと『DINING』と『UNOFFICIAL』というタイトルがあったんです。『UNOFFICIAL』という方は、ステージに立っている自分がオフィシャルだとしたら、そこから降りた時、アンオフィシャルな部分。プライベートな部分で感じた歌詞が今回の楽曲では多くて、『UNOFFICIAL』というタイトルにしようかなと最初に言っていたんです。

――候補に『DINING』ですか。

山中拓也 周りの意見や雰囲気に流されて自分の意見や行動を決めたりしてしまっていることを、何か良い例えはないかなと考えた時に、「食事もそうだな」と思ったんです。僕らって欲望というものをよく歌っているじゃないですか?

 欲望の強さを歌いたいんですけど、食事って昔の人はお腹が減ったら木になっている実を食べて、海に行って魚を捕って食べてと、自由にやっていたのが本当の欲望だと思うんです。今の食事を満たす欲望って、右手にナイフ、左手にフォーク、前菜から食べましょう、最後はデザートでシメましょう、と決まっちゃっているし。

――現代はマナーというものがあるので自由度は少ないですよね。

山中拓也 それって、誰が決めたのかも分からないもの、知らないうちに自分達はそこに則ってやってしまっているという。それが文化を作ってきたんですけど、どんどん、そういうのがエスカレートしていく事によって、文化が何か変な方向にいっちゃうんじゃないかなという心配があったんです。

 何でそんな心配があったかと言ったら、自分達のフロアとか、フェスとか行った時とかにも、凄いそれを感じたりもしたんです。CDでこのアーティストを聴いたら、このアーティストもお勧めとか、だんだんそれに則っていってしまっていて、お客さんがそれを“公的なもの”と勘違いし始めているんじゃないかなと凄い思ったんです。

――それはCDに限らず、人が勧めたものを良いと思う、自主的ではないということといいますか。コントロールさせられている感はありますよね。主導性が薄れてきていると。

山中拓也 そこでOFFICIALという言葉が出て来て、このDININGというので伝えたいことと、UNOFFICIALというところで伝えたいのは一致するのかもしれないな、というのを思ったんです。他の人が「あのバンドがいい」「そうなんだ! じゃあ聴いてみよう」とか「う〜ん…みんなが言ってるからいいのかも」となってしまっている人達って凄く多いと思うんです。

 それってきっと、その人が将来的に素敵な未来に繋がる、その人が本当に出会うべき音楽に繋がるのかなと思ったら、やっぱそうじゃないなと僕は凄く思ったんです。その“公的”と勘違いしちゃっている部分から、ひとつ抜け出したUNOFFICIALな部分で、もっと私的に色んなものを見て欲しいんです。

 音楽じゃなくても、もっと私的に判断をしていって欲しいなと思って、僕らもステージから降りたUNOFFICIALという部分で発信しているのだから、みんなも色んな人、リスナーがいる中から、UNOFFICIALな部分でもっと発信してきて下さいという。UNOFFICIAL同士がちゃんとぶつかっていく事によって、もっともっと素敵な、お互いが自己表現し合える素敵なフロアになっていくんじゃないかなと。そういう願いを込めて、『UNOFFICIAL』というタイトルにしました。

ストレート過ぎるものは、昔は恥ずかしがっていた

――今作の曲が出揃った時、皆さんはどういった感想でしたか?

あきらかにあきら(Ba) 一つステージが上がったなという思いがありました。規模が大きくなって、より深いものを作れたなと。やはりファンへの信頼感というのが大きいんですけど、質より量を取ろうとした作品ではないんですよね。今は凄く質の良いお客さんが付き始めたと思っているので、その質のまま、同じ熱量で返してくれる人を増やしていきたいなと思ったので、そういう作品に仕上がったと思います。

――そういった内容の話し合いをメンバー同士でしたのでしょうか?

あきらかにあきら 「作品として規模は大きくしたいね」という話は、曲作りの段階から皆で話をしていました。武道館も控えているし、これからどんどん大きい所でやっていくという事をイメージしたら、今までと同じ曲作りのやり方だったらどんどん視野が狭かったりするし、大きい所での説得力に欠けるんじゃないかと思ったんです。スケール感の大きい曲をイメージして作りました。

――シゲ(鈴木重伸)さんはどう感じましたか?

鈴木重伸(Gt) 1年間色んな経験をさせてもらって、やりたい事が本当に増えたんだなとアルバムを通して感じました。昔だったら躊躇していた様な曲も、ちゃんと深い所まで作り込める様になったのが2016年なのかなとも思いました。

――躊躇するような楽曲とはどんな曲でしょう?

鈴木重伸 ストレート過ぎるものは、昔は恥ずかしがっていた所があったんです。

――逆に照れ隠しというか、そういうのが出ている曲あったという感じでしょうか。ストレートではなく、ちょっとひねくれた感じにしたり?

鈴木重伸 そうですね。「曲の構成を面白くしないと、このストレート具合は恥ずかしいね」って2、3年くらい前は言っていたんですけど、多分そこに対して歌える自信が、メンバー総意で出て来た頃が2016年だったんです。そこに対して「これは清々し過ぎない?」という感じもなくなって、そういう曲も出せる様になってきたのが、自分達は色々変わってきたのだなとアルバムを通して思います。

――以前は“清々しさ”というのは求めていなかった?

鈴木重伸 自分達とは何なのかという「主になるもの」がよく見えてなかった時は、楽曲の構成の面白さだったり、音の気持ち悪さとか、そういう所に自分達が重きを置いて「自分達だ」という芯を置いていたんですけど、今はその芯がだんだん違う所に割合が増えてきているのが以前との違いなのかなと思います。

――そうなってきた理由はやはりライブでしょうか?

鈴木重伸 ライブもそうですし、色々な景色を見て来た中で色んな経験をしてきて、次に見たい景色が出て来たんです。具体的に「こういう景色が見たい」と思える様になってきた事で、よりビジョンを見やすくなったと思います。

中西雅哉(Dr) 改めて「THE ORAL CIGARETTES」というサウンドとかジャンルがあるとすれば、THE ORAL CIGARETTESというものが明確に出たアルバムになったと思います。もちろんずっと自分達の楽曲には自信もあったし、プライドを持ってやっていたんですけど、やりたい事をどんどん形にしていく中で、「躊躇する必要もないな」という思いがこのアルバムから感じられます。

 ポップであったりバラードであったり、HIP HOPの要素が入っていたりと、どれをとってもTHE ORAL CIGARETTESになるなという事もありますし、何より歌詞も変わったし。それを表に自信を持って出せるという事が凄く大きな一歩だと思うんです。バンドのスケールも大きくなって、より大きなステージに行く為には必要なステップだと感じるんです。オーラルはBGMとか「ながらミュージックじゃない」という事は凄く感じますね。

――確かに歌詞の面で、昔は「LOVE」の様な歌詞は書きませんでしたよね。最近書かれたものでしょうか?

山中拓也 「5150」を作っている段階の頃です。

――楽曲の立ち位置的には「Everything」というところかと感じますが、今作の「LOVE」を聴いてTHE ORAL CIGARETTESというバンドの壁をまた一つ壊してきたなと思いました。完成時からアルバムのラストと決めていたのでしょうか?

山中拓也 「5150」を作る前に「LOVE」という元の形が一旦出来上がっていたんです。今の形とは全く別のサウンドで歌詞も違う感じだったんです。そのサウンドが、ストレートではなく、ちょっとひねくれた部分を出していたサウンドだったんです。<LOVE 1人で笑う事はできない♪>という歌詞だけは残っていて、他のところではちょっとドロッとした事を歌って、サウンドもベースがスラップをやりまくったり、マイナーコードを使いまくったりと。「5150」が出来る前の形はそういう楽曲だったんです。「5150」が出来て、その作品が気付かせてくれたという事もあったんです。

――「5150」が難産だっただけに。

山中拓也 そうなんです。実際にオーラルが何でこれだけたくさんの人が付いて来てくれる様になったのかって、サウンド面ももちろんあるんですけど、MCで言っていた言葉だったり、人と人としてどうやって繋がってきたか、「オーラルとお客さんとのストーリー」とか、そういうのがファンやリスナーにとって大事な事だったんだなと、「5150」で知る事が出来たんです。

 だから、ストレートな想いがあるんだったら、それをちゃんと楽曲に乗せて伝えるのが素敵なんじゃないかなって気付けたんです。「LOVE」の<1人で笑う事はできない♪>という、今までの僕からは出て来ないフレーズが出て来たんだから、それをもっと振り切ってサウンド面も一から立て直そうという事で、一回あった形を全て崩して、メジャーコードもいっぱい使ったりして。

しっかりと伝えてくれるボーカリストの方が自分はカッコいいと思った

――MCも一つのファクターになっているという話でしたが、MCでは思っていることをストレートに言いますよね?それは最初から「これを伝えたい」という事を決めているのでしょうか?

山中拓也 その場の空気感も考える様にはしています。どういうお客さんが集まってくれたのだろうかなど。でも全部を加味した上で嘘だけはつかない様にしようという事は最近凄く思っている事なんです。フェスに出たての頃は色んな人の目を気にしちゃっていたんです。でも、それを気にしていたからこそ全部を抑えちゃっていた部分があったんです。

 でも今は、その人の目も気にした上で自分が本音を吐く為にはどんな言い回しをしたら良いのかとか、どうしたらしっかり伝わるのかとか、そういう考えるレベルが変わってきたなと最近は思います。

――意識が変わってきたのですね。

山中拓也 もともと僕らは客席のフロアにいた側だったんですよ。バンドを組む前はライブキッズだったので、ステージに立って言葉を吐く人の説得力って凄い大事だなって感じていたんです。だから「良い事を言ってる風で薄っぺらいな」という人はすぐ分かるんです。そういう人には絶対になりたくないと思っていたんです。

 だから、「俺はこう思っているんだ」と、しっかりと伝えてくれるボーカリストの方が自分はカッコいいと思ったんです。そういう先輩達や色んなミュージシャンを見てきて自分が得た事なのかもしれません。

自分の言葉、意思を発する事が出来ない時代になってきているんじゃないかなと思った

――1曲目の「リコリス」は彼岸花ですよね? 彼岸花ってあまり良いイメージではないという印象もあるので、何か思うところがあったのかなと。

山中拓也 基本的に精神は不安定ですよ。安定している時なんてないので。それこそ「リコリス」を書いたタイミングで、SNSなどに不満を持ち始めていた時期だったんです。SNSみたいな発信をするツールが増えてきたのに、発信出来る量は減っていってるなと思って。

 いっぱい言える分、たくさんの人に見られてるから、そこで言えなくなる事もたくさんあるなと。その時期はそういう事を感じていたんです。でも「それ何で言ったらアカンの?」って言って、色んな反感を得て。俺はそれが耐えられる様になったから別に大丈夫だけど、「皆もきっとそういう事あるよね?」って昨年の春のツアーでずっと言っていたんです。自分を押し殺して周りの空気に合わせるとか。「KY」という言葉が何年か前に流行ったくらい、自分の言葉、意思を発する事が出来ない時代になってきているんじゃないかなと思ったんです。

 それって良くない事だと思うし、衰退にしか向かわないなと思ったんです。その時のMCでは「意思を持たないんだったらただのロボットと一緒だと思いますよ」「それだったら、辛いとか楽しいとかいう感情を全部捨てちゃった方が楽になると思います」という話をしていたんです。

――確かにロボットと一緒ですね。

山中拓也 それでツアーが終わって楽曲を書こうと思った時に「ロボット」という所、もっと違う表現はないかなと思った時に出て来たのが彼岸花だったんです。彼岸花の花言葉に“死人”(しびと)という意味も込められているんです。<私は骨まで染み付く彼岸花♪>という歌詞の部分があるんですけど、やっぱり言いたい事が言えないんだったら、本当に彼岸花・死人と同じようなものだよと。

 「本当にあなたが想像している輝かしい未来というのは、あなたが口から発する誠、真実の部分が一番大切だと思います」という事を伝えたかったんです。ある人から聞いたんですけど、彼岸花は絶対に同じ季節に花を咲かせるらしいんです。それも凄く素敵だなと思いまして。“死人”っていう花言葉を持ってる花なのに、絶対にある季節には花を咲かせるのだと。それって人の希望に繋がると思ったんです。

 だから、今は“死人”って自分の事を思っちゃってるかもしれないけど、絶対にどこかで花が咲くタイミングがあなたにもありますという事を、「彼岸花」という言葉だけでも充分過ぎる程伝えられると思ったんです。

――彼岸花に希望があるって素敵な話ですね。

あきらかにあきら 僕には書けない歌詞だなと最初に思いました。自分の意志を言葉に出来る人は強いなと思うし、こういう人がフロントマンで良かったなとも思うし、これからのオーラルの意思表示なんかも、こういう曲があるからこそずっと発信し続けられるのだろうなと思うので、大事な1曲が出来たなと思いました。

「あなたにも光が射しますよ」という想いが込められたMV

THE ORAL CIGARETTES

――MVは爽やかなイメージもありましたが、先ほどの話の「希望」という部分が反映されている?

山中拓也 そうですね。最後に「希望」というものを持って来られる様になったのも、自分達の中の成長だと思っています。昔はほとんどそのまま「妬み」「辛み」をツラツラと連ねて楽曲が終わりというのが多かったんです。最後にリスナーに対してしっかり「あなたにも光が射しますよ」という想いが込められる様になったのも成長だと思ったんです。それをMVに落とし込みたかったんです。

 最初は白黒で、だんだん色が付いて最後は壮大な所へ、というのは、歌詞と同じ事を映像にしたかったので、それを監督と話したんです。映像を制作する人とも意思疎通が出来る様になってきたなとも思いました。

――MVのシーンの草原の様な所でやるのも初めてですよね?

山中拓也 そうですね。規模感なんかもあれで伝わったんじゃないかなとも思ったんです。自分達のステージが一つ上がって規模を大きくしたいという所も、壮大に撮ってくれたのもそうだと思うんです。

――場所はどこでしょうか?

山中拓也 伊豆の高原ですね。朝の4時半から(笑)。

中西雅哉 朝が早かった分、昼過ぎには終わりましたね。

――「Shala La」のMVは今までのTHE ORAL CIGARETTESのイメージと合致するものがありました。縛られているシーンがありましたね?

山中拓也 3時間くらい縛られていました。周りの女性陣の演技が凄かったので、自分がしんどいということだけで止めてもらう訳にもいかなくて。頑張りました…。

――その時、皆さんはどうされていましたか?

中西雅哉 モニターを見ながら「凄い景色だな」と。

――このアイディアは監督が?

山中拓也 そうですね。女性の欲望の強さを描きたいという話を監督としていて、「拓也くん、食べられたらいいんじゃない?」みたいな(笑)。「どういう事だろう…?」と思いながら、机の上に縛られてああいった形に…。

――メンバー皆が縛られるという可能性もあった?

山中拓也 途中、4人とも縛られてという案もあったんですけどね。

――あきらさんが嫌がりそうですよね。

あきらかにあきら その案の後に「もう僕らは食べられた後ということ」で、拓也は今から食べられると(笑)。拓也の脳味噌を3人が食べるという変な案も出て来たり。

――それでジャケットに脳味噌が?

あきらかにあきら リンクさせようという話もありましたが、結果的にですね。

山中拓也 アルバムのトレーラーで出てくる東京タワーの色も、ジャケットの色も「リコリス」の色も、結果的に全部良い感じでリンクしたんですよね。

初めてバラードと対峙して、いざ自分達で表現する事の難しさが分かった

「UNOFFICIAL」通常盤 ジャケ写

――レコーディングで大変だった曲は?

鈴木重伸 「不透明な雪化粧」はリズム隊から録って、バッキングを録って、その後に僕が録ったんですけど、更にその前に壮大なストリングスが入っていたんです。既にその段階でボリューム感があって、そういう状況でギターを録るという事が僕は初めてだったんです。けっこう手こずりましたね。音数をいかに減らしていかないと、という感じだったので。アコギも入ってましたし。

――これも先ほど仰った「引き算」ですよね。

鈴木重伸 そうです。最初に考えて持って来たものを弾いていたらゴチャゴチャしたものになっちゃったりして、その場でああでもないこうでもないと、結構時間がかかりましたね。

中西雅哉 僕は全体的に苦労したなという事はあるんですけど、制作していく上で毎回「自分への課題」「持っておきたいテーマ」がありまして。

――中西さんはアスリートですからね。

中西雅哉 脳味噌もアスリートだなと思いながら(笑)。一番のテーマは「歌に寄り添う」とか「楽曲のテーマ」というところなんですけど、それに対してファースト・インスピレーションでやった時に、「もうちょい行ける所がある」とか、細かい所を追求したくなる欲が増えてきたんです。PC上で細かい詰めの作業をするんですけど、スタジオで個人練習をして再現した上で更に細かい部分を詰めて行くんです。だからけっこう時間もかかるんです。

――実際にドラムをプレイするまでに時間をかけているんですね。

中西雅哉 そうです。レコーディングまでが凄く大変で。歌詞やメロディも変わっていく中で、自分の守備範囲内だけで収めると、あまり進化していないなと感じてしまうので、「自分の守備範囲を広げる作業と制作」を常に同時にしているんです。レコーディングを経てちょっとずつ自分の守備範囲も広くなっていってるなと感じます。

――「Shala La」のエンディングのビートはいきなりでびっくりしましたが、これは中西さんのアイディア?

中西雅哉 あれは拓也なんです。「狂乱 Hey Kids!!」でもそういう感じなのはあったりしたんです。自分の今までの守備範囲外だったんですけど、それを取得する為にツインペダルを練習しました。

――あきらさんはレコーディングはどうでしたか?

あきらかにあきら 僕はバラードが苦労しました。弾いていたフレーズが他の楽器と音が当たるとか、実際録ってみないと分からないというのがあって急遽変更したりしたんです。バラードのノリをやった事がなかったので。弾き方も、立って弾いたり座って弾いたりして探り探りでした。初めてバラードと対峙して、いざ自分達で表現するという事の難しさというのが分かりました。バラードをナメていたので(笑)。

――そうだったのですか?

あきらかにあきら 速い曲の方が難しいと思っていたんですけど、実際バラードは難しくて仕方ないという事が分かりました。

――立って弾いてレコーディングする事もあるんですね。

あきらかにあきら 立って弾いた方がグルーヴが出やすいんです。「Shala La」とかそうだったんです。シャッフルや横ノリは立って弾いた方がノリが出やすいんですけど、バラードは座って落ち着いて弾きました。噛み締めながら。

――ちなみに得意なリズムやノリは?

あきらかにあきら 今作なら「WARWARWAR」です。特にこの曲は、皆でセッションでほぼゼロから作ったイントロでもあるんです。拓也が持ってきた材料だけあって、他はみんな適当にやれ、みたいな(笑)。

――自由度が高い作り方ですね。歌詞のテーマは、そのまま戦争ですか?

山中拓也 そうです。戦争の事を歌っています。

――それには何かきっかけが?

山中拓也 「戦歌」は様々なアーティストがいっぱい歌っているじゃないですか? どれもすごいシビアな歌になっているなと思っていまして。そのイメージを取っ払える戦争の歌って、自分で作れるんじゃないかなと思ったんです。俺らは戦争を経験していないから、戦争なんて絶対に語れないなと思っているし。そういうのあまり好きじゃなかったんですよ。どこかで地震が起きました、と言ってそこにいた人の思いを代わりに歌うように。

 だから、戦争の歌もそういうイメージがあったので、ファニーな部分を出した戦争の歌って無いなと。自分の世界観で頭の中で「戦争ってこういうものなんだろうな」と。色んな歴史とかも学生の時に勉強してたので、その時に「こんな状況だったんだ」と、自分の頭の中にあるここにいる人の今の心情とか考え方とか、どこに宗教観を持ってしまっているんだろうとか、そういうのを色々考えて、そのまま頭に浮かんでいる絵を全部そこに落とし込んで。

 戦争の事を書こうと思ったのも、もともと最初のループさせているフレーズをサイレンでやろうと思っていたんですよ。高速道路でサイレンの音を聴いてあのフレーズが浮かんだので、サイレンの音からのファニーな戦争歌があってもいいんじゃないかなと凄い思って。もちろん歌詞は、戦争を馬鹿にした様には歌っていないですし。

――皆さん歴史は好き?

山中拓也 好きですし、僕ら一応進学校に通っていたので(笑)。

あきらかにあきら 拓也はやっぱり文系。僕よりも歴史は勉強していたのを見ていたので。めっちゃ歴史は覚えていたよね?

山中拓也 世界史ね。その知識がすごく活かされたかと言ったらそんな事はないんですけど(笑)。

――ここからツアーが始まって6月には日本武道館公演が控えていますが、意気込みは?

中西雅哉 もちろん僕達THE ORAL CIGARETTESというものを確立していきたいし、ステージを大きくしていきたいし、国内に留まりたくないなという前向きな、色んな気持ちも前からあるんですけど、そういう事がちゃんとお客さんに伝わる活動と言うか、ちゃんと行動していきたいという気持ちが強くなってきています。僕らのメッセージがちゃんと伝わって受け取ってくれている人に対して、ちゃんと責任を持って活動していって、それの規模拡大というか、仲間を増やしていってステージを大きくしていきたいと思います。

鈴木重伸 何より体調ですかね。それぞれが重大な疾患を煩うのを見て来ているので、やはり身体が資本かと…。

――シゲさん体調で何かあったんですか?

鈴木重伸 僕は何もないんですけどね。1、2週間病院に入るという事は、これ以降は起こったら大変だと思うので、日頃からの体調管理に気を付けていかないとなと思うんです。

山中拓也 自分もシゲの話を聞いて本当にそうだと思いますね。万全の体制でライブに挑みたいと思いますし。そこで思いっきり歌って、良い演奏をして、その時のベストを尽くせるのが最高だなって思います。

あきらかにあきら 体調はもちろんですけど、メンタル的にもそうかもしれないなと思いました。心身共に健康でいる事。変に武道館を気負い過ぎてもアレですし。かといって油断し過ぎても良くないし。適度な緊張感を持ってそれまで着実に、今までやってきた通りに、今までやってきて成功してきた感覚で、武道館をちゃんと成功させて、「次はもっと大きいステージで観たいよ」という声が聞こえるようなステージにしたいと思うので精進します。

(取材=村上順一)

作品情報

2月1日 リリース

New Album「UNOFFICIAL」

初回盤:3000円(tax out)
通常盤:2500円(tax out)

収録曲:

1.リコリス
2.CATCH ME
3.悪戯ショータイム
4.5150
5.WARWARWAR
6.エンドロール
7.DIP-BAP
8.Shala La
9.不透明な雪化粧
10.LOVE

<初回盤DVD内容>

2016年11月22日に行われたZepp Tokyoでの「THE ORAL CIGARETTES唇ワンマン2016」ライブ&ツアードキュメンタリーを収録(約90分収録)

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