「バーン・アウト(燃え尽き)」する感覚を植え付けた大阪出身の3人組ロックバンドBURNOUT SYNDROMES(名古屋公演の模様)

「バーン・アウト(燃え尽き)」する感覚を植え付けた大阪出身の3人組ロックバンドBURNOUT SYNDROMES(名古屋公演の模様)

 大阪出身の3人組ロックバンドBURNOUT SYNDROMESが去る11月25日に、東京・渋谷CLUB QUATTROでライブツアー『BURNOUT SYNDROMES 全国ワンマンツアー ヒカリアレ~未来への祈りを合図に火蓋を切る~』の東京公演をおこなった。11月9日にリリースしたメジャーデビュー後初のフルアルバム『檸檬』を引っさげて全国7カ所を回るというもの。TVアニメ『ハイキュー!!セカンドシーズン』のオープニングテーマの「FLY HIGH!!」などアンコール含め全21曲を熱演。メジャーデビューから目まぐるしく活躍を展開した彼らの、その一端を示した東京公演の模様を以下にレポートする。

「大切な一日にしましょう」彼らの思いが、冒頭から観衆に伝わる

ツアー初日名古屋公演の模様

ツアー初日名古屋公演の模様

 定刻を少し過ぎた頃、彼らの姿を見るべく集まった人、人でいっぱいになった会場は、静かに暗転、そして会場の右側にあったスクリーンに映像が流れ始めた。某有名テレビ番組をパロディにした、彼らのドキュメンタリー仕立ての映像だ。その一つ一つの展開に、自然に笑顔がこぼれる観衆。やがて彼らの代表曲「FLY HIGH!!」のピアノバージョンのメロディとともにエンドロール、続いてスクリーンは黒くなり「間もなく始まります。準備はいいですか? 大きな拍手を聴かせて」というメッセージが映し出される。一斉に大きな拍手を挙げる観衆たち。そして「大切な一日にしましょう」というラストワードとともに、スクリーンは始まりの序章を告げた。

 いつの間にか廣瀬拓哉 (Dr)はステージに現れ、映像が終わるとともにジャングルビートを刻み始めた。そして徐々にステージスタートの緊張のなか、熊谷和海(Vo, Gt)と石川大裕(Ba)がいよいよステージに登場。「みなさま、お待たせ!」お立ち台に立った石川が叫び、観衆の興奮をさらに煽る。そして顔を見合わせた熊谷と石川が意を決したように、自分の楽器をかき鳴らすその瞬間、ワクワクするようなリズムはマーチに変わり、ステージは「Bottle Ship Boys」でスタートした。

 一心不乱にマイクに向かって歌いながら、ギターをかき鳴らす熊谷。そんな熊谷の声を何倍にも大きくするかの如く、時にお立ち台に上がりながら観衆の気持ちを煽る石川。その二人をずっと後ろで見守るように支える廣瀬。3人という構成で一見ストレートにも見えるサウンドの中、最大限のイマジネーションを働かせて、会場の熱を一度、また一度と上げていく。

 「一緒に歌おうぜ!」激しいリズムでまた熱気を誘った「エアギターガール」に続き、石川が叫ぶ。そんな掛け声とともに熊谷の奏でるギターのアルペジオ。曲は「FLY HIGH!!」。まだステージが始まりそれほど時間も経過していないというのに、早くもシンガロングを見せる観衆。観衆にとってみれば「いつだろうと、この曲が流れたのなら歌わずにはいられない!」そんな魅力を曲に感じているに違いない。後サビに入ると、一時廣瀬も手を止め、観衆のサビをたどるコーラスの声をさらに鮮明にする。そして「ありがとう!」という熊谷の声とともに曲のエンディングへ。いつまでも響いていくかのように印象付けられたそのメロディと言葉が、さらにフロアの観衆の気持ちをステージにくぎ付けにしていった。

明確なイメージを持つボーカルライン

ツアー初日名古屋公演の模様

ツアー初日名古屋公演の模様

 熊谷のメロディは、まるで真っ白のキャンバスの上に墨塗りの筆跡がどんどん置かれていくような、明確な印象を受ける。もちろん3人が織りなすサウンドへの様々なアプローチもあるが、すべてはその筆跡で表されたものを、さらに明確に表現するために存在する。汗だくで激しいステージパフォーマンスを繰り返す石川の一挙一動、それすら熊谷の声の響き、そしてその響きから見えてくる言葉、その言葉に込められた思いを、聴くものに明確に伝える一手として機能している。

 さらに熊谷のギターとボーカルを契機に、次々と奏でられるBURNOUT SYNDROMESの楽曲群。16ビートに8ビートの曲の中で、石川のベースはさらに巧みにフィルやパターンのバリエーションなどを織り交ぜ、サウンドに彩りを与えていく。しかしあくまで彼らの音の中心は、熊谷の声。ファルセットを織り交ぜたり、時に単なる語りとなってみたりとそのサウンドは様々な変化を見せるが、とどのつまりは、どこでも「熊谷の声」が中心にある。どんなリズム、ハーモニーがそこにあろうと、聴くものはその声を探り、言葉を探り、突然出てくる「語り」にさらに気持ちを集中していく。

 後半に入ると、「墜落/上昇」「リフレインはもう鳴らない」「文學少女」と、さらに彼らの強い思いを詰め込んだ曲が続いていく。勢いはそのままに三拍子への変化や熊谷と石川のコーラスハーモニーなど、サウンドに厚みを持たせ観衆を熱狂の渦に巻き込んでいく。「みんなの元気な声を聴きたい!」「最高やね、最高!」そんな観衆を石川はさらに煽り、語り掛ける。彼らがここまで来られたのは、まさしくファン一人一人がいたからこそ、そんな熱い思いが言葉の端々からあふれる。「いつ何があるかわからへん、でも皆さんがいれば大丈夫! やっとこうやって会えたんやから! みんなのこと、本当に誇りに思っています!」その言葉に、観衆は熱い拍手で気持ちを返す。そしていよいよ「ヒカリアレ」から怒涛のラストスパートへ。

新たな「燃え尽き」を求めて

熊谷和海(名古屋公演の模様)

熊谷和海(名古屋公演の模様)

 いよいよ訪れたエンディング。「辛く悲しいことが多い今の世の中、私利私欲だけではのり越えられないことってあると思う。でも、大切な人のことを思い浮かべると、実はどんな苦しいことでも乗り越えられるんじゃないか?」この日を迎えた感謝の言葉とともに、自身の胸の内にある思いを打ち明ける熊谷。自身を「青春文學ロックバンド」と呼んでいる彼らだが、その意の一端を彷彿させるようなこの言葉が、観衆の胸の内に響く。その響きをそのまま歌にしたようなアコースティックギターのしらべから、ラストナンバー「Sign」で、彼らの「青春文學劇場」は終わりを迎えた。

 しかし鳴りやまぬアンコールに応じて、再び登場した廣瀬が「みんなを楽しませるために来たのに、楽しいです!」と、改めてこの日の礼を告げる。そしてムソルグスキーの「展覧会の絵」のメロディ、ハーモニーを活用したイントロから「檸檬」、一足早くクリスマスの楽しみを届けるべく「月光サンタクロース」、そしてバンドからファンたちへのメッセージを込めるような「ラブレター。」で静かにこの日の幕を閉じた。

 彼らのライブが終わった瞬間に感じられる解放感は、まさに彼らのバンド名が示す通り「バーン・アウト(燃え尽き)」するような感覚だ。本来この言葉は、精神的に鬱々とした気持ちを引き起こす要因として表現されるものだが、この時感じたものは、全く真逆で爽快な気分。おそらくこの日会場を訪れた観衆も、同じ気持ちだったことだろう。そして、またいつか再び「バーン・アウト」させてくれる熱いライブを期待する。そう、まさに観衆はまた彼らの新たな「バーン・アウト」を求めているのだ。

セットリスト

『BURNOUT SYNDROMES 全国ワンマンツアー ヒカリアレ~未来への祈りを合図に火蓋を切る~』
11月25日 東京・渋谷CLUB QUATTRO

01. Bottle Ship Boys
02. エアギターガール
03. FLY HIGH!!
04. PIANOTUNE
05. セツナヒコウキ
06. むー
07. 君は僕のRainbow
08. 君のためのMusic
09. エレベーターガール
10. I am a HERO
11. 墜落/上昇
12. リフレインはもう鳴らない
13. 文學少女
14. ヒカリアレ
15. 人工衛星
16. LOSTTIME
17. ナイトサイクリング
18. Sign

EN1.檸檬
EN2.月光サンタクロース
EN3.ラブレター。

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