変化したキラーチューンの概念、THE ORAL CIGARETTES 焦点は来年
INTERVIEW

変化したキラーチューンの概念、THE ORAL CIGARETTES 焦点は来年


記者:村上順一

撮影:

掲載:16年11月15日

読了時間:約12分

一旦ゼロになった創作欲から苦悩の末に完成した「5150」

一旦ゼロになった創作欲から苦悩の末に完成した「5150」

 インタビュー後編はMVの撮影裏話や、「5150」のジャケットのうさぎと山中拓也(Vo.Gt)の関係性について、更に長いツアーで溜まった疲れやストレスの発散方法、そして、ライブで『キラーチューン祭り』をおこなっている彼らの“キラーチューン”の定義の移り変わりなど、幅広く話を聞いた。

寂しがりやなので動物に例えたらうさぎ

Vocal&Gtの山中拓也(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

Vocal&Gtの山中拓也(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

――MVでは曲の世界観が見事に表現されていますが、撮影はいかがでしたか?

山中拓也 大変でしたよ…。

中西雅哉 土砂降り…。本当は、天気の良い日にそこで撮りましょうという予定だったんですけど「今日、台風来ているよ?」みたいな(笑)。

――MVの雨は自然の雨だったのですか?

中西雅哉 そうなんですよ。

山中拓也 自然発生だし、想定外の雨です(笑)。

――確か雨のシーンは30分で撮り終えたんですよね?

山中拓也 そうです。家が燃えている間に撮り終えなければならなかったので。

―楽器は大丈夫でしたか? 皆さんメインの楽器を使っていたようでしたが。

山中拓也 楽器のスタッフが来てくれていたので、撮り終わったらすぐケアしてくれまして。

あきらかにあきら 乾燥剤とか突っ込みまくりました。楽器もフェスの大雨を経験してそれを乗り越えているので、楽器も強くなっていっているんです(笑)。

――それは心強いですね(笑)。そして、ジャケットデザインですが、なぜ、うさぎが車のドライバーを?

山中拓也 今回は僕の事を歌っているというのもあって、僕は寂しがりやなので動物に例えたらうさぎなんです。

――よく見るとけっこう怒っているうさぎですね。

山中拓也 そうですね。かわいくはないですね。精神異常なので(笑)。

――なるほど。シリアスめにしたのですね。そういえば、うさぎは1羽だと寂しくて死んでしまうと言われていますが、そうでもないらしいですよ?

一同 えええ〜!?

――イメージよりは強いみたいです。

Gtの鈴木重伸(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

Gtの鈴木重伸(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

山中拓也 じゃあ、余計似ているかもしれないですね!

中西雅哉 ん?

山中拓也 寂しがりやだけど、俺は寂しくても死なないじゃん?

中西雅哉 寂しくて死なれたらたまったもんじゃない(笑)。

――皆さんは寂しいとか一人が嫌だったりしますか?

中西雅哉 僕は全く無いですね。映画『アイ・アム・レジェンド』を観た時に、俺だったら一人でもいけるなと思いましたもん。

――無人島でも余裕ですか?

中西雅哉 そうですね。一人でも大丈夫な術を持っているので。

――拓也さんは無理?

山中拓也 無理ですよ。真っ先に海に身を投げて死にますよ(笑)。一人だったら耐えられないです。一人になりたい時はあるけど、無人島に行って「ここで一人で暮らして下さい」なんてなったら、俺はまさやん(中西雅哉)みたいに火をおこしたり魚を捕ったり出来そうにないし!

――中西さんは火をおこせるんですか?

中西雅哉 僕はサバイバルが大好きなので。

――拓也さんはそんな寂しがりやには見えないですけど…。

山中拓也 でも僕、根暗ですよ。昔メンバーに「俺どんな風に見える?」と聞いたら真っ先に「根暗」って返ってきましたもん。

あきらかにあきら まあでも根暗も根明(ネアカ)も意外と表裏一体というか、どっちにもなり得ると思うんです。根がどっちなのか分からなくなるというか。人格は一つなんですけど、周りの環境によって人格がちょっとずつ変わると思うんです。

――興味深いですね。遠くから観察していたいですね。拓也さんは追い込まれると燃えるタイプ?

山中拓也 追い込まれたら燃えますけど、そのぶん病みますよ(笑)。病んで病んで、これ以上は無理というところになって巻き返せるタイプだと思います。

――それを解放させているのがライブだったり?

山中拓也 そうですね。ツアーを回っていて思うんですけど、ライブで解放はするんですけど、やっぱりライブ以外の所でどうしてもストレスは溜まるんですよね。家に帰れないというだけでも凄くストレスが溜まったし。ライブがあっても消せないストレスというのはあって、それはまた違う所で発散しなければならないと思います。

ストレス発散方法

Bassのあきらかにあきら(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

Bassのあきらかにあきら(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

――みなさんのストレス発散方法は?

鈴木重伸 ないっすねえ…。

山中拓也 シゲは本当にないよね! ライブがなかったらヤバいと思うよ。

――じゃあ拓也さんの療養中の時期はライブがなかったのでけっこう危なかったのでは?

鈴木重伸 そうですね。

あきらかにあきら 「無」だったよな。

中西雅哉 空気みたいになっていたもん(笑)。

鈴木重伸 生きる意欲が無くなっていましたね。

――それだけライブに懸ける比重は大きいのですね。

鈴木重伸 気付いたらそんな感じになっていますね。

――中西さんはいかがですか?

中西雅哉 僕はストレスを溜めないように日頃から過ごしていますね。走っている時がそうかもしれないです。内に秘めた感情が出る時は走っているかもしれません。

――ちなみに走っている時は音楽を聴きながらとか?

中西雅哉 そうですね。何も聴きたくない時はクリック(編注=メトロノーム)を聴いて走っています。

一同 え!?

中西雅哉 クリックを聴きながら走ると、しんどくてペースが落ちているときが分かるんです。その時は甘えが出ないんです。クリックとズレてくるから。

――ストイックですね!

あきらかにあきら テンポは何がいいの?

中西雅哉 前はBPM170が走りやすかった。バンドの曲だと「A-E-U-I 」とか「STARGET」が良かったんですけど。

鈴木重伸 はやっ!

中西雅哉 最近はそれだと遅いと思ってきて、180くらいに。

――X JAPANの曲だと「Silent Jealousy」ぐらいですね!

鈴木重伸 もうダッシュじゃん(笑)!

中西雅哉 しんどく走れる感じがいいんです。

――「M」ですか?

中西雅哉 「S」ですね。Sの自分がいて、自分にMな事をやらせると。

あきらかにあきら サド・マゾ理論だな…。

――両方が上手いバランスで。

中西雅哉 だからしんどくなって止まろうとしている自分と、「え? もう止まるの? ふーん...」みたいな自分がいて。

――あきらさんはどうですか?

あきらかにあきら 甘えられる人に甘える事がストレス発散法です。まさやんとかは甘えても怒らないというか。「ハイハイ!」って感じで。だからまさやんにひたすらもたれるだけでストレスが発散されます。

山中拓也 確かにツアーでそういう場面をよく見ているな! よくもたれているなと(笑)。

あきらかにあきら 酔いにまかせてシゲにむあぁ〜ってしたり。

中西雅哉 何か俺の所に充電しにくるんですよ(笑)。

あきらかにあきら パワーをくれるんで(笑)。

キラーチューンとは何ぞや?

Drの中西雅哉(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

Drの中西雅哉(撮影・Viola Kam (V'z Twinkle Photography)

――カップリング曲ですが「アクセス×抗体」、これは言葉の響きから?

山中拓也 そうですね。最初は響きから。メロディは出来ていたのでそれに合わせてインパクトのある言葉をという事で、語呂の良さを選んでタイトルを付けた感じです。

――「5150」とはまた切り離した感じの曲?

山中拓也 別にそこまでリンクさせてはなかったかなという感じです。今までのTHE ORAL CIGARETTESという感じのパターンかもしれません。出来上がった当初は「5150」も「アクセス×抗体」も「ミステイル」もキラーチューンにしようと言っていたので、今までTHE ORAL CIGARETTESがずっとやってきたキラーチューンな感じ、歌詞の世界観と演奏でもあったので、それをここでもう一度押し出しても面白くないなという事で、リード曲にするのはヤメて、2、3曲目にしたんです。

――確かにどれもリードトラックでもおかしくないですね。キラーチューンや王道的なアプローチという事は意識して制作をしているのでしょうか?

山中拓也 キラーチューンになりうるなと思ったら意識はしますね。そういう曲は今までポンポン出てきていたんです。あまり考えなくても。「ミステイル」とかは30分くらいで作ったんじゃないかな…。

――それは早いですね。

山中拓也 そういうパターンも多いですね。

――キラーチューンやリードトラックになりうる曲の定義などはあるのでしょうか?

山中拓也 最近は変わってきちゃっているんですけど、「狂乱 Hey Kids!!」くらいまでは、今までにない面白さがあったり、シゲのギターリフが効いているというのがあったり、メロディが絶対にサビで爆発しているという、その3点がしっかり自然に入ってきていたら、それはキラーチューンとして作り上げていくという感覚が昔はありました。今年は全くそんな感じはないですね。考えに考えてやっているという感じです。

――キラーチューンという概念が無くなってきているというのもある?

山中拓也 若干、訳が分からなくなってきていますね。「キラーチューンとは何ぞや?」と。バラードでもキラーチューンはキラーチューンですし。最近はもうその概念はないです。デビュー当時とかはあった気がします。

――今作のレコーディングでのエピソードは何かありますか?

中西雅哉 「5150」と「ミステイル」でツインペダルを使い始めました。

あきらかにあきら 「アクセス×抗体」もそうだよね。

――確かに今作はバスドラがガンガン鳴っています。

中西雅哉 そこが今回の制作で一番苦労した点ですね。

――基本的にツインペダルは使わない?

中西雅哉 今まで全く使わなかったです。去年くらいからスタジオで制作した後に持ち帰ってPCで客観的に作るやり方をしているんです。前は「DIP-BAP」など、2バスっぽく聴こえるフレーズを、フロアタムを叩いてプレイしていたりしていたんですけど、「これはツインペダルでやりたいフレーズだな」と自分の中で出てきたんです。それでやっぱり合うなという事で、ついにツインペダルが出る時期が来たな、という事ですね。

山中拓也 「アクセス×抗体」は、僕以外のメンバーが元々あった楽曲の形よりガラッと変えてきましたね。「Aメロ全部もう一回考え直して」って言われて。「えっ?」って(笑)。メンバーから上がってきたのが良かったので、「これだったら俺がAメロを変えた方が良いな」と思ったんです。

――今まではそういった事はなかったのですか?

山中拓也 「ここまで変わるか?」という程のはなかったですね。

――キーまで変わったりもするのでしょうか?

山中拓也 キーも変わる時ありますよ。最初、自分でも全然想定しないで作っていくので、4人でやって歌って「めっちゃしんどい」ってなったらキーを下げます。半音くらいですけど。ここまでキーを変えると曲調が違いすぎるとなると変えないですけど。一番良いところを見つけたりするようになりました。歌えなかったら意味ないので(笑)。

――キーで無理をして喉に差し支えると大変ですしね。拓也さんは毎年入院しているみたいですし。

山中拓也 そうなんです(笑)。今年はまだ入院してないんですけど。

――今年は乗り切れるのでは?

山中拓也 もうちょっとですね!

あきらかにあきら 今年はまさやんが入院したよね?

中西雅哉 入院ちゃうわ(笑)!入院一歩手前ね。でもあと一日遅かったら…。

――どこが悪かったんですか?

中西雅哉 急性腎盂炎(きゅうせいじんうじんえん)というやつで。腎臓に菌が入って40度くらいの発熱が。

――危なかったですね…。皆さん今年あと少し、入院しないで頑張って欲しいです。それでは、最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

山中拓也 2016年まで、THE ORAL CIGARETTESは「すごい良いペースだね」とか「飛躍しているね」とか言ってもらっているんですけど、正直自分達ではそこまで「ボーン!」と行っている感覚はなくて、今はずっとバネを縮めている状態だと思っているんです。そのバネをどれだけ縮めて、いつ爆発させようかとずっと狙っているんです。その爆発するというタイミングを2017年に持っていけたら凄くいいなと、そこを理想にしています。

 来年のワンマンツアーというのは、僕達が大きい舞台にどんどん立っていくという所で期待していてほしいというのがあるんです。自分達が2016年までずっと伝えてきた事、大切にしてきた部分というのを、お客さんがまた改めて感じてくれる2017年になるんじゃないかなと凄く思っています。ここからの1年というのはお客さんに凄く期待して欲しいです。THE ORAL CIGARETTESは大きく飛躍するし、お客さんをもっといい所に連れて行きたいという気持ちで頑張っていきます。

(取材・村上順一)

作品情報

New Single「5150」
11月16日 リリース
初回盤 1600円(tax out)AZZS-54
通常盤 1200円 (tax out) AZCS-2056

▽収録曲
M1. 5150
M2. アクセス×抗体
M3. ミステイル

▽初回盤DVD内容
初のホール公演となった地元・奈良でのワンマンライブ『THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンライブ〜故郷に錦を飾りまSHOW!!〜」からライブ映像を5曲収録。

01. エイミー
02. 気づけよBaby
03. マナーモード
04. DIP-BAP
05. A-E-U-I

ライブ情報

▽THE ORAL CIGARETTES唇ワンマンTOUR 2016〜キラーチューン祭り東名阪ワンマンの巻〜
11月15日(火)愛 知・Zepp Nagoya
11月16日(水)大 阪・なんばHatch
11月22日(火)東 京・Zepp Tokyo
※全公演ソールドアウト

▽THE ORAL CIGARETTES唇ワンマンTOUR 2017
4月6日(木)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
4月8日(土)高松 festhalle
4月9日(日)高知 CARAVAN SARAY
4月11日(火)札幌 PENNY LANE 24
4月12日(水)札幌 PENNY LANE 24
4月16日(日)仙台PIT
4月23日(日)新潟 LOTS
4月27日(木)福岡 DRUM LOGOS
4月28日(金)福岡 DRUM LOGOS
4月30日(日)広島 CLUB QUATTRO
5月4日(木・祝)Zepp Nagoya
5月12日(金)大阪 Zepp Osaka Bayside

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