ライブの模様(撮影・柴田恵理)

ライブの模様(撮影・柴田恵理)

 ザ・クロマニヨンズの真島昌利(Gt.Vo)と、ヒックスヴィルの真城めぐみ(Vo)と中森泰弘(Gt.Vo)によるバンド、ましまろが10月6日に、東京・SHIBUYA CLUB QUATTROで『ましまろ“ほーぼーツアー2016”』の東京公演をおこなった。通算2枚目となるフルアルバム『ましまろに』を引っさげてのツアーは9月18日の福岡・Gate’s 7を皮切りに、10月15日の北海道・cube gardenまで全12公演をおこなった。この日の東京公演は、ホッピーの入ったジョッキ片手に現れ、リラックスした雰囲気のなか、アンコール含め全18曲を披露。終盤では真島の爪弾いたギターからザ・ビートルズの「Blackbird」を真城とワンコーラス演奏。3人の人間性が存分に出たアットホームなライブを展開した。

ジョッキ片手にステージに登場

 開演を待つオーディエンスの耳には、懐かしいオールディーズサウンドがBGMとして流れこむ。そのサウンドはましまろライブの序章のようだった。

 定刻になると、ゆっくりと暗転。オープニングSEがかかるなか、メンバーがホッピーの入ったジョッキを片手にステージに登場した。各々楽器が待つ定位置に着くと、中森のエレキギターをフィードバックさせたサイケデリックなサウンドから「朝」へ。そこに真島のアコースティックギターの煌びやかなサウンドと、真城の打楽器によるリズムが合流し、真島の存在感のある歌声が響き渡った。

 続けて、真島がブルースハープを装着し、中森のスライドバーによる粋なメロディラインが心地よい「さがしもの」、真島と真城のハーモニーが独特のコントラストで彩った「したたるさよなら」とましまろの奏でる音で会場を満たしていった。

 夏を感じさせる軽快なリズムの「はだしになったら」を披露。真城の歌声と笑顔に何とも安心を感じさせてくれる楽曲。リズム、メロディ、ハーモニーこの3つが絶妙に絡み合う。真島と中森のウーアーコーラスも印象的だった。「ナポリの月」では海に月が映り込む夜の風景が見えてきそうなサウンド。真島のアコギによるトレモロ奏法がマンドリンのような感覚を与え地中海の風を運んできた。

真島による謎かけ

ライブの模様(撮影・柴田恵理)

ライブの模様(撮影・柴田恵理)

 MCコーナーでメンバー紹介。中森の紹介時には、会場から「中森さ〜ん」とコールが起き、照れる中森が印象的であった。真城が真島を紹介すると真島が突如「渋谷とかけまして、ボクシングの試合と解きます」と謎かけを披露。会場から「その心は」と合いの手を入れられると「KO(京王)もあります」と見事な謎かけで会場を沸かした。真城から「いつも謎かけを用意していただいてありがとうございます。前の晩寝てないみたいですからね」と冗談まじりに制作状況をバラす場面も。

 アットホームなMCが終わり「しおからとんぼ」へ。中森のアルペジオが美しく響き、真島の少しぶっきらぼうな歌と真城の優しい歌声が包み込む。そして、ブルージーな「海と肉まん」。泥臭いサウンドで今までとは違った世界観を見せた。中森の憂いを帯びたギターソロに真島もシャウトで盛り上げ、それに呼応するかのようにオーディエンスも歓声をあげる。演奏が終わると真島が「中森くんギター上手」と絶賛。

 ここでベースの伊賀が「整いました!」と申告。「渋谷とかけまして、ましまろライブと解きます。どちらもごった返してます」と謎かけに会場から拍手。真城に煽られ中森も「渋谷とかけまして、自動車保険と解きます。どちらも等級(東急)があります」と披露し大きな歓声が上がった。

 続いては、真城のムーディーで切なさを感じる歌声が感傷的な気分にさせた「けあらしの町」、前作にはなかったような曲「わたりどり」。鳥が大空を飛んでいるような優雅なサウンドでしっとりと聴かせてくれた。演奏が終わると叙情的なそのサウンドに感化され真城も涙ぐんでしまう。

 真城が「この曲のテンポだしは真島さん!」と指名し、真島のカウントから「妙なねじれ」へ。軽快なビートによってオーディエンスもそのリズムに合わせ小刻みに揺れている。真城も「やっぱり作者のテンポは良いですね。ベストテンポ!!」とご満悦。続いて絶妙なバウンス感が心地よい1stシングルの2曲目に収録されている「公園」を披露。目を閉じれば匂いや景色まで見えてきそうな演奏は、聴いている観客をノスタルジックな気持ちにさせた。

 ライブも後半に差し掛かり、なんともほっこりとさせる「成りゆきまかせ」。オーディエンスもその安心感のある音に笑顔に。そして、「ローラー・コースター」とましまろメンバーの人間性が色濃く出た楽曲に酔いしれた。

ノーベル賞と養命酒

ライブの模様(撮影・柴田恵理)

ライブの模様(撮影・柴田恵理)

 「ご年配の方が睡眠薬が入らないと言ってくれたんですよ。それがすごく嬉しかった。これってすごい曲なんじゃないかな」という楽曲の話の最中に、その楽曲の持つ癒しの効果に「ノーベル賞!」と声が会場から上がると、真城は「養命酒?」と聞き間違い。そのナチュラルなボケから1stシングル「ガランとしてる」を披露。そのエピソードからも想像できるようにレイドバックしたサウンドが会場を満たしていった。子守唄でも聴いているような温もりのある歌声。

 ボサノバとジャズをミクスチャーしたような、ましまろの個性が存分に出た個性あふれるサウンドの「遠雷」へ。深みのあるハーモニーと真島のMartinから繰り出されるギターソロも光る。ここで、ザ・ビートルズの「Blackbird」をつま弾き始めた真島。そこに真城の歌が参加し、ちょっとしたセッションコーナーをサプライズ披露。真城は「なんか公開練習しちゃった」と申し訳なさそうに話したが、その歌と演奏に大きな拍手と歓声が送られた。そして、本編ラストは「ひき潮」をまったりと奏で本編を終了した。

 アンコールを求める手拍子が会場に響き渡る。再びステージに登場した3人。ボブ・ディランの「Knockin' on Heaven's Door」を日本語でカバーした「天国への扉」を独特な和訳で真島の感情を叩きつけるような歌声が響き渡る。<トントンあの世のドアをノック♪>この語感が耳から離れない。

 そして、最後に1stアルバムから「ずっと」を披露。どこかフレンチポップのエッセンスを感じる楽曲に心が安らいでいくようだった。演奏が終わり客席をステージ中央から見渡す真島の姿が強く印象に残る。

 キャリアがなせる余裕の中で演奏される曲たちは、至福のリラックス空間であった。旧知の仲の3人からあふれ出る絆や信頼が音に出ているようだった。一見緩い感じで進行していくステージだが、1曲終わるごとにこまめに楽器をチューニングする姿からは、演奏へのこだわりを強く感じたとともに、細かいことの積み重ねによってこのレイドバックしたサウンドが成り立っていると感じた夜であった。

セットリスト

 
ましまろ“ほーぼーツアー2016”

1.朝
2.さがしもの
3.したたるさよなら
4.はだしになったら
5.ナポリの月
6.しおからとんぼ
7.海と肉まん
8.けあらしの町
9.わたりどり
10.妙なねじれ
11.公園
12.成りゆきまかせ
13.ローラー・コースター
14.ガランとしてる
15.遠雷
16.ひき潮

ENCORE

EN1.天国の扉
EN2.ずっと

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