若い世代で再評価されているミュージシャンの一人、森高千里

若い世代で再評価されているミュージシャンの一人、森高千里

 昔に流行っていた楽曲が、世代を超えて再び聴かれる事がある。現在、一部の小学生の間で、2003年にリリースされた、大塚愛「さくらんぼ」の替え歌が流行っているという。この楽曲は、昨年からJR西日本の大阪環状線・桜ノ宮駅の発車メロディとして使用され、話題にもなった。

 ここ数年は、80年代や90年代の音楽のリバイバルが若い世代で起きているようだ。90年代で言えば、森高千里や大黒摩季、華原朋美たち。ロックバンドでは、最近再始動したTHE YELLOW MONKEYを筆頭に、GACKTが所属していたMALICE MIZER、黒夢、オレンジレンジなどなど。また、ZARDの楽曲は毎年、高校野球の甲子園や、24時間テレビなどでも歌われ、色あせることなく今の楽曲として歌い紡がれている。

 渋谷のライブハウスで働く音楽関係者は「若い世代が90年代の音楽が初めて聴き、新鮮に感じているようです。プレイヤーのなかにも今風にアレンジしてライブで披露する人もいます」と話していた。

 いつの時代もそれと似たような現象は起きる。例えば、90年代にヒットした、SHAZNA「すみれ September Love」の元は一風堂の楽曲。2000年代にヒットした、島谷ひとみ「亜麻色の髪の乙女」はヴィレッジ・シンガーズの楽曲。同じく2000年代にヒットし、いまや盆踊りの定番曲にもなっている氷川きよし「きよしのズンドコ節」はザ・ドリフターズや小林旭達が歌っている。

 印象深いのはEXILE。「Choo Choo TRAIN」(ZOO)や「銀河鉄道999」(ゴダイゴ)などをカバーし、それらは今の時代でもヒットに。また、昨年1月~3月にフジテレビ系で放送された、杏・長谷川博己出演のドラマ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』では、1962年リリースのザ・ピーナッツ「ふりむかないで」がオープニングテーマで使用され、話題になった。

 サウンドにはその時代の特色が出る。ギターサウンドは特に顕著に表れ、それが時代を感じさせる。しかし、メロディ自体は色あせることもなく、リアレンジ次第で生まれ変わることもある。先に挙げたカバーソングもその時代にリアレンジされて、新たな息吹を得てヒットした。

 20年以上の活動歴があるミュージシャンに話を聞くと共通して話題になるものがある。当時、ファンだった人が子供や孫を連れてライブを見に来てくれる、それだけでも嬉しい、という内容だ。音楽に限らずカルチャーは、親や年上からの影響を大きく受けることがある。長年、活躍しているミュージシャンはこうして、世代ごとに聴かれ、継がれて今も尚、最前線に立ち続ける。

 憧れのミュージシャンに影響を受けた人々のなかから、やがてミュージシャンになる人もいる。そのミュージシャンのスタイルにどこか懐かしい面影があるならば、少なくとも幼少期に親やまわりが聴いていた音楽に影響を受けたものであると考えられる。

 それは体に染みついた音楽観であり、彼らの根幹ともいえる。その人の背景にどのような音楽的ルーツがあるのか、辿っていくのも音楽の面白味の一つと言える。

 先日、リオ五輪での閉幕式でおこなわれた次回開催都市・東京都によるパフォーマンスでは、ピチカート・ファイヴの楽曲などが使用され、話題になった。2020年東京五輪に向けて、日本の音楽を世界に発信する機会が増える。これを機に、改めてこれまでの音楽に聴き触れて、歴史や魅力を再認識するのも良い機会と言えそうだ。

 そう綴る私は休日、20も歳の離れた姪に「なんでその歌知っているの?」と言われながら、その曲を一緒に口ずさんだ。音楽は世代を超えて人々と繋がるものだと改めて実感するのであった。(文・木村陽仁)

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