SMAPが築いた先駆者としての功績、平坦ではなかった道のり
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SMAPの解散が発表され、1週間が経過した。各メディアが大きく報じる様子からは、改めてSMAPという存在の大きさや影響力のすごさを思い知らされた。現時点では、まだメンバー5人揃っての会見はおこなわれていないが、稲垣吾郎を皮切りに木村拓哉、中居正広がそれぞれのラジオ番組で解散について言及し、日を追うごとに事実であることを突きつけられている。
いまでは国民的アイドルとして君臨するSMAP。しかし1991年のデビュー当時はアイドル氷河期と呼ばれるほど、決して恵まれた環境ではなかった。男性アイドルグループの先駆者として歩んできた道のりは、決して平坦なものではなく苦悩の連続だった。彼らの変遷をたどると、なぜこれほどまでにファンの支持を得ているのかが見えてくる。
男性アイドルの在り方を変えた先駆者
1991年のCDデビューから25年間。結成から数えれば28年という、とてつもなく長い時間のほとんどを第一線で活躍してきたSMAP。男性アイドルグループとしてここまで息の長い活動をしているのは前代未聞のことで、音楽CDのミリオンセラーにバラエティ番組への進出、ソロでの活動と、SMAPが築いてきたものは計り知れない。
KAT-TUNの中丸雄一も、解散が発表された14日放送の日本テレビ系『シューイチ』で「男性グループとはどういういったものかという方向を提示したモデルケース、先駆者だと思う。少なからず、同じ事務所の後輩は影響を受けている」と讃えている。
歌って踊ることはアイドルの主軸だが、SMAPがデビューして直面したのは音楽番組の衰退期だった。なにより、社会現象級の人気を誇った「光GENJI」の存在があった。
稲垣吾郎は2014年に出演した番組でデビュー当時の頃を「僕らの1つ上の先輩は光GENJIさんだったんですけど。“YOUたちは光GENJIのメンバーの1人にも6人はおよばない。ファンの数が”と、はっきり言われた記憶があります。だから頑張らないといけないな、と」と振り返っている。
また、木村拓哉は、SMAP初のコンサートを「オープニングの幕があいたら、2階のスタンド席に2人しか観客がいなかった」とも回顧した。苦戦を強いられた彼らは、バラエティや俳優業へと舵を切ることで活路を見出す。
その道もまた決して楽なものではなかった。中居正広と俳優の故・今井雅之さんのケンカ話に象徴されるように、当時はまだアイドルが他の分野で活動することに対して風当たりが強い時代だった。それは“アイドル出身”という色眼鏡で見られる事を、今なお後輩たちの口から聞こえてくるだけに、当時のアウェーぶりは容易に想像がつく。しかし、こうした逆風にもめげることなく、ひたすら突き進んできたSMAP。
98年の『夜空ノムコウ』、2000年の『らいおんハート』でミリオンセラーを記録。2003年には『世界にひとつだけの花』でダブルミリオン達成の記録を樹立した。NHK紅白歌合戦では、中居が単独で紅白の司会を務めたり、2003年にはグループで大トリを務めたりと、お茶の間での認知度もあがっていった。コンサートも、史上初の5大ドームツアーに、動員数1000万人を突破するなど、前人未到の記録をいくつも打ち立てている。
「継続は力なり」を地で行くSMAP
知名度があがればあがるほど、世間の感心も高くなり、常に行動や発言に注目が集まっていた。グループとしては、メンバーの脱退や不祥事、結婚と様々な局面に立ったが、25年間グループとしての活動を休止することはなく、彼らなりの誠意を以て乗り越え、活動を続けてきた。
いくつかのメディアで「勤続疲労」が解散の理由の一つとして挙げられていたが、グループの人気が高まり、個人の活動が盛んになるにつれ、常に“国民的アイドル”らしい振る舞いを暗黙のうちに求められてきたように映る。自由に発言しているように見せつつも、実は影響を考慮した上での発言も多かったのではないだろうか。
先日、年内での終了が伝えられたばかりだが、96年4月にスタートした冠番組『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)も20周年を迎えた。毎週月曜夜10時、テレビには当たり前のようにSMAPの姿があった。コントに料理、ライブ、時には体を張ったチャレンジもあり、ステージ上とはまた違ったSMAPの一面が見られた。
中でも「BISTRO SMAP」のコーナーは、人気タレントや俳優、国会議員など国内でも錚々たる面々が出演し、さらには海外のビッグネームたちがゲストに名を連ねた。
フランスを代表する俳優、アラン・ドロンに、トム・ハンクスやブラッド・ピット、ロバート・デ・ニーロなどのハリウッドスターから、マドンナやレディ・ガガなどのビッグアーティスト、さらには元ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフ氏などなど、バラエティ番組とは思えないほどの豪華な顔ぶれだった。
メンバーは手料理を振るまい、ゲストとのトークを楽しみ、時にはモノマネを披露したり、ゲストによっては一緒にステージに立ってパフォーマンスを披露したりと、形式張ったスタイルではなく彼ららしいやり方でもてなした。誰が来ようとも、なんでもやってのけてしまう姿を見ていると、改めて希有な存在であることを実感させられる。
アラフォーでもトップスター。これだけでもすごいことなのに、決してその座に胡座をかくことなく、コントもすれば体も張る。いくつになっても挑戦を続ける姿からは、継続することは挑戦であるということを教えられた気がする。
SMAPの愛
度々、事務所内での派閥が噂されていたが、事務所の後輩たちと共演や交流が多いのもSMAPだ。共に寮生活をしていたTOKIOやV6のメンバーをはじめ、バックで踊っていたKinKi Kidsらを筆頭に、後輩メンバーたちとのエピソードは数知れず。
「BISTRO SMAP」に後輩が登場すれば、まるで兄弟のように接し、新人グループが登場したときには、笑いを交えつつもグループ名やメンバーの顔が視聴者によく伝わるように、さりげなくアシストをしていた。
他にも、後輩のコンサートの演出を担当したり、フォーカスがあたらないメンバーのプロデュースを買って出たり、後輩の番組に出演したことだってある。
その優しさは後輩だけに向けられたものではなく、『SMAP×SMAP』でのスペシャルトークライブでは度々、一般的には知られていない実力派ミュージシャンや音楽ユニットを招いた。そうすることで彼らの才能を世に伝える役割も果たしていた。
そんな深い愛は、芸能界に限ったことではない。多忙にも関わらず、プライベートで被災地へ出向き、炊き出しを手伝う姿は度々伝えられてきた。番組の最後に復興支援を何年も呼びかけるなど、自分たちのスタイルで復興支援を続けている。誰に対しても常に愛情を持って接するSMAPの姿は随所でみられた。
番組で行った5人での旅行も、映像を通してみえてきたのはグループの普段のポジションや役割だった。特に『ベスト・フレンド』で涙した中居は、「10人が突っかかってきても、俺、絶対SMAP守れるよ」という発言し、リーダーとしての並々ならぬ覚悟と愛が伝わって来た。
2014年7月、『27時間テレビ』(フジテレビ系)の最後を飾った27曲ノンストップライブでのこと。生放送のライブ中に体調を崩した中居は、途中で座り込むこともあった。そんな状況にありながらも中居は、休憩を挟みつつも力一杯踊る姿にプロ魂を感じた。その一方で、異変に気がついたメンバーは、さりげなく立ち位置を微調整したり、大きく手を振って会場を盛り上げたりした。咄嗟のことで打ち合わせができないにも関わらず、阿吽の呼吸でフォローにあたった。会場にいたファンも同様、息を切らして歌詞が出ない中居に代わって、誰に言われるでもなくファンが歌うことでつないだ。メンバー間はもちろん、SMAPとファンの関係がよくわかる印象的なシーンだった。言葉よりも姿勢で語る、そんな姿に心を打たれた視聴者も多いのではないだろうか。
願うは5人の言葉
苦労の末に誰もが認める国民的アイドルへと成長したSMAPだが、そんな彼らでもどうにも解決できないことが世の中にはあるのだと思うと、もどかしさや悲しさ、寂しさ、怒りにも似た複雑な感情がこみ上げてくる。
これまでの活動や、ファンの言葉から見えてくる人物像は、けしてエゴに満ちたものではない。ファン思いで、メンバー思いでありという直接的なものから、テレビなどの間接的なものでも、笑いや役柄を通して、観る者の人生や生活に影響を与える、国民的アイドルとはこういうことかと教わった。
そんな彼らが、「解散」という重い決断を下したということはよほどのことだろう。SMAPが築いてきた活躍の場を妨げたもの、彼らの意欲を奪ったもの、そうした雰囲気を生み出したもの、それはどんなことだろうか。
「#SMAP25周年に300万枚の花束を」――これはファンがツイッターで広めた『世界に一つだけの花』の購買運動のハッシュタグだ。その甲斐あってCDセールス300万枚が目前に迫っているという。大きなうねりを前に、あまりにも無力な自分が情けなくなるが、ファンの精一杯の愛情表現には周囲も励まされる。これほど多くの人から愛されるグループが、解散の道を選んだことが惜しくて仕方ない。
これからも名曲の数々を5人揃って歌い続けて欲しいし、5人の姿をいつまでもお茶の間から楽しみたい。もし本当に、本当に解散をしてしまうならば、どうか色んな縛りを振り切って、最後は自分たちの言葉で想いを伝える場を設けて欲しいと願う。いまはただ、5人の言葉を待ちたい。(文・柚月裕実)

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