LACCO TOWERが8日、メジャー2作目となるアルバム『心臓文庫』をリリースした。「LACCO TOWERとは何だろう」と自問自答を続けてきたなかで、生の心の内側を素直に物語として表現することができたというのが今回の10曲。結成14年目にして初めて曲に「ありがとう」(相思相逢)という言葉も出てきた。彼らの「不変」と「変化」が重なり合った作品とも言える。本作に込めた想いとは。そして、彼らの根幹をなす考えとは。今回は松川ケイスケ(Vo)と塩崎啓示(Ba)に話を聞いた。
心臓から出た一冊一冊
――アルバム『心臓文庫』を作り終えての感想はいかがですか。
松川ケイスケ いやあ、大変でしたね(笑)。『心臓文庫』というタイトルを最初に用意して、それに向かって曲を集めたという感じではなくて、今回も真一ジェット(key)が作ってくれた元の曲をみんなでアレンジして、最後に僕がタイトルをつけたという感じなんです。
ただ、真一ジェットも結構たくさん曲を作ってくれるんですけど、彼の中のジャッジも結構厳しくて、リード曲の「未来前夜」もレコーディングの前夜にできた曲ですし。意外とスケジュールは皆、カツカツ。でも、大変だったと言っても体育祭の準備みたいなテンションでしたね。後ろ向きな大変さというよりは、前向きな大変さを今回はいつもよりも感じられたかなと。
――制作期間はどれくらいだったんですか。
松川ケイスケ 元々前から作ってとっておいた曲も今回2曲くらい入っているんですよ。それを入れると結構長いんですけど、抜いて考えると…どれくらい?
塩崎啓示 前回のアルバムの制作が終わってからやっていたので、1年くらいかな。どの曲がシングルになるかまだ決まっていないままコンスタントに作って、録って。作って、録って。
松川ケイスケ ずっと曲作りまくっていた気がしますね。最近はやっぱりリリースするにあたっての取材とかもあるので、あまりないですけど。
――ボツになった曲もありますか?
塩崎啓示 相当ありますね。
松川ケイスケ 僕らも知らないんですよ。
塩崎啓示 何となく1コーラスだけという、素材みたいなものは自分が知っているだけでも10曲以上あるかな。皆で聴いてからボツになったり、真一ジェットの中で全員に持っていくほどでもないとか。
松川ケイスケ 「こんなんもあるよ」という時もありますね。
塩崎啓示 そうそう。「こんなんもあるよ」で聴かせるよりもひとつ上の段階が、ウェブに上げて皆が聴ける様にするってことなんです。その時は「あ、これもうやるんだな」と思いますね。1人、2人が聴いて「これいいじゃん、やろうよ」と言ってもウェブには上げない時もあるので。
――先に曲ができるということですね。
松川ケイスケ 歌詞は全部後ですね。今回で言うと、僕がギターを弾きながら作った「珈琲」という曲以外は全部曲が先にできていました。楽曲をある程度聴いて、そこからまずタイトルを考えるんですよ。本を書く時とかと似ているのか分からないですけど。先にどういうものかっていうタイトルをドンって置いて。そこから色々膨らむ気がするんですよね。
例えば「蜂蜜」という曲は「蜂蜜」と付けた時に、まあ、どうにでもなるタイトルじゃないですか。甘い感じでも「ぶんぶんぶん」みたいな感じでも書けますし(笑)。でも字体の感じから、いやらしい感じの大人の恋愛を書こうと決めました。
曲を聴いた後、タイトルを決めてから字体の感じからインスピレーションを受けて書く場合がほとんどですね。でも逆に「タイトルをこれにしたいな」という時もあります。例えば「世界分之一人」という曲は、それはもう「世界分之一人」というワードをどこかで使いたくて仕方がなくて、元の曲を聴いた時に「あ、これにしよう」と作った曲なんです。
――では「心臓文庫」というタイトルはどこからインスピレーションを得たのでしょうか。
松川ケイスケ アルバムタイトルは何曲かできた段階で考えるか、全部できてから最後に考えたりする場合が多いです。今回は、今までの歌詞の書き方よりももうちょっとだけ自分が素直になれた様な気がしていて。
メジャー1作目とかって「自分たちはこうじゃなきゃいけない」という様な、良い意味でも悪い意味でも固定観念みたいなものがあったんです。でもここに来て、変わっていいところと変わっちゃいけないところの境界線が何となく見えてきた。もちろん年齢を重ねたっていうのもあると思うんですけど。
アルバムの一番最後の曲「相思相逢」で、多分ほぼ初めてだと思うんですけど「ありがとう」という歌詞がLACCO TOWERの中で出て来たんですね。あんまりそういうのを今まで出したことがなかったので、そこに踏み込めたのも自分がより素直になれたところなのかなって気がします。
本当に、生の心の内を物語として出せている感覚があったので、そういう意味も込めて「気持文庫」と言うよりは「心臓文庫」というか。より生の自分の心の状態を呼んでもらえるような作品に仕上がりました。楽曲的にもおそらくそうだと思います。
――もじったり、言葉遊びでつけたわけではないんですね。
松川ケイスケ 今回はないですね。その方法もちょっと考えたりしましたけどね。昔は「心枯論」とか解体心書」とか心が入っていて。
塩崎啓示 でも「心文庫」にしちゃうと違うなというのが僕たちの中であって。臓器の臓を付けることはエグさっていうか、印象が全然違うじゃないですか。ジャケットを見てもらえば分かると思うんですけど「心臓の中を全部とって、その一冊一冊」みたいなアルバムですね。



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