伝える作業もアートの一つ、Home Sessions主宰が語る日米の違い
INTERVIEW

伝える作業もアートの一つ、Home Sessions主宰が語る日米の違い


記者:木村武雄

撮影:Home Sessions主宰が語る日米の違い【2】

掲載:16年03月19日

読了時間:約14分

Home Sessions主宰が語る日米の違い【1】

YouTube Space Tokyoのプログラムに参加する「Home Sessions」主宰者のSAMさん

 女性による動画制作を支援するプログラムを、YouTube Space Tokyoが始めた。この企画に参加するのは、料理のレシピ動画が国内外で人気のOchikeronさん、ひたすら食べる動画で話題の木下ゆうかさん、Kawaiiをテーマにファッションやメイクなどの動画を発信するKumamikiさん、芸人としての活動も続けながら鉄道や子育て動画を制作する鈴川絢子さん、そして、様々なアーティストやシンガーソングライターを紹介するチャンネル「Home Sessions」。この5組は、YouTube Space Tokyoが提供するスタジオセットを使い、それぞれの番組を制作する。今回は、Home Sessionsを企画するSAMさんにインタビュー。アメリカでのCM制作から学んだことや、作品作りについて日米で異なる価値観、そして、Home Sessionsの役割について話を聞いた。

単身渡米、映像制作に従事

――SAMさんのこれまでの歩みを教えてください。

 日本人とアメリカ人のハーフで日本で生まれて日本で育ちました。2010年に高校卒業してすぐにアメリカに渡って、あるレコード会社のなかのプロダクションで、テレビCMや映画の広告を作る仕事をしていました。小さい頃から音楽に触れていて、アメリカでもバンドをやったりレコーディングもしていたので、それが僕の音楽のバックグラウンドになっているんです。2012年くらいに日本に戻ってきて、日本でもその仕事は続けているんです。そして、2013年11月にHome Sessionsを始めたんです。

 素晴らしい歌声や演奏技術を持っている方は沢山いるのに、出ていけるリソースがないなと思ったので、彼らをサポートしたいという思いでYouTubeを始めたんですよね。最初は僕の友達のパフォーマンスを録画して、1カ月に動画2本を上げていたんです。それが思っていた以上に好評だったのでこのまま続けようと思ったんです。YouTubeでやっていこうと思ったのは友達がやっていたからなんです。その友達もYouTubeで既に成功していたので「YouTubeというのはかなり強いツール」だなと思って、僕もYouTubeは良く観るので、これなら他の人も検索してくれるかなと始めたんです。

――そのレコード会社のプロダクションではどんなことをしていたのですか。

 僕はその会社で3Dグラフィックを担当していたんです。

――それでHome Sessionsの映像は作り込んでいる感じが出ているんですね。

 そうですね。その仕事を続けるためにカメラとか機材も揃えたので。自分で全部購入しました。

――アメリカのどの都市に住んでいたのですか。

 ワシントン州のシアトルです。

――野球では、イチロー選手が所属していたシアトルマリナーズの本拠地ですが、野球の観戦などは?

 野球は行かなかったですね。アメフトはよく観に行ってましたね。

――ご趣味は?

 音楽と映画、あとゴルフですね。特に音楽が好きで、暇があったら楽器を弾いてばかりいます。最近はギターを弾くことが多いんですけど、たまにピアノも弾きます。一番最初に始めた楽器はドラムで12歳ぐらいからやっていました。なので、一番できる楽器はドラムなんですよ。2番目はピアノですね。

――楽器のことをそれだけ知っていると映像編集のカット割りにも影響してきますよね。

 カット割りは音楽を知っているか知らないかで大きく影響しますね。

5人の女性シンガーに迫る

Home Sessions主宰が語る日米の違い【4】

インタビューに応えるHome Sessions主宰のSAMさん

――さて、Home Sessionsは、YouTube Space Tokyoが展開する、女性がスタッフや出演者として参加する動画の制作を支援するプログラムに参加することが決まりました。5人の女性シンガーが、ニューヨーク風ベッドルームのセットで、女性の力強さや美しさを表現するミュージックビデオを制作するという内容ですが、まずこの経緯を教えてください。

 このプログラムは、YouTubeが女性クリエイターをサポートする企画なんです。女性が参加する動画の制作を支援することで、女性にとってのインスピレーションになるような作品を生み出していきたいという思いで始まった企画なんです。

 僕もアイデアを提案させてもらって、5人の女性シンガーソングライターのライブパフォーマンスやインタビューを取り上げて「なぜ音楽をやっているのか」など深いストーリーまでわかるような企画があったらどうかなと思って。YouTubeがその提案に賛同してくれて、サポートしてもらうことになりました。そのプロジェクトは3月から4月までのシリーズになります。

――5人の女性シンガーはどのような方々ですか。

 大学生や社会人、プロのミュージシャンを目指している人など様々です。彼女たちは仕事をしながらYouTubeなどでアーティスト活動をしているんです。音楽で上がっていきたいという思いでやってきている人たちですね。

――無名の方を押し上げていくのは大変なことだと思うのですが、この5人のシンガーをどのように観せていくのでしょうか。

 YouTubeでは有名も無名も、流行りをコントロールすることが出来ない世界だと思うんです。YouTubeというプラットフォームは、有名じゃない人でも上がっていけるような仕組みになっているので、それを武器に宣伝していきたいと思っています。今回は僕だけではなくて、マネジメントなどを担当してくれている4人の女性クリエイターたちとコラボしているんです。彼女たちはYouTubeでは有名な人たちで、お互いの動画をシェアしてサポートする作戦を考えています。そこを通してたくさんの人に動画が広げていくプランになっています。

――日本でもYouTuberの存在は認識されてきていると思いますが、無名の方が有名になる土壌はしっかりしたものではないと思います。YouTuberと一般大衆が繋がり切れていないと言いますか。それをどのように結んでいきますか。

 僕らは、このHome Sessionsであったり、音楽の企画を通してYouTuberというのは「ふざけている人たちだけではないんですよ。僕らでも力があるんですよ」というのを観せてきたんですよ。ソーシャルメディアをやっている大きな群衆を動かせるようなものをもっているというのを社会に伝えてきたんです。ただのパワーじゃなくて、これを使って人を助けることができるというひとつのムーブメントが出来たら良いなと思っています。いろいろなチャリティープロジェクトだったり企画を通して、動画だけじゃなく実際に手を貸して助けてあげる企画にも繋がれたら良いなという思いもあるんですよね。

――海外ではYouTubeがかなり進んでいて、ビッグアーティストとのコラボは当たり前のようになっています。ニュースメディアも、テキストだけ伝えるということではなく、必ずと言っていいほど、映像が使われています。日本はまだまだという気がしますが、どのくらいで世界に追いつくと思いますか。

 もう追いつける気はしているんですよね。追いつけるか追いつけないかではなくて、やりたいか、やりたくないかの問題だと思うんですよね。本当にいろんな人にアピールしたければやっているはずなんですよ。ただ、今のやり方が居心地良くてやっていけるから、新しいことを敬遠している人たちが多いのでそうなってしまうんですけど、「これだけじゃもったいないでしょ」という人たちがどんどん上がってきているので、そんなに遠くはないんじゃないかなと思うんですよね。それはYouTubeではないかもしれないですけどね。

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