自らの「存在理由」を示したexist†trace(撮影・Rina Asahi)

自らの「存在理由」を示したexist†trace(撮影・Rina Asahi)

 【ライブレポート】5人組ガールズロックバンドexist†traceが昨年12月26日に、渋谷TSUTAYA O-WESTでワンマンライブ『ONE MAN SHOW Reason for the existence #“FINAL ACT#”』を行った。

 彼女らは、ジョウ(Vocal)、miko(Vocal,Guitar)、乙魅(おみ:Guitar)、猶人(なおと:Bass)、Mally(Drums)からなるガールズロックバンド。ビジュアル系音楽をルーツに持ち、中性的なルックスを特長としている彼女らは、近年は幅広い音楽性の中で自己の個性を追求しながらも、ロックらしい躍動するポジティブなイメージを強く見せ、ライブを中心に人気を博している。今年は『ONE MAN SHOW Reason for the existence』と銘打ったイベントを開催、原点から未来へというテーマのもと、4・7・9月とワンマンを展開していた彼女らは、そのファイナルをこの日に迎えた。

 イベントのタイトルにもある「Reason for the existence」=「存在の理由」とは何か? existというキーワードをバンド名に持つ彼女らの“永遠の課題”ともいえるその疑問の答えを、この日のライブから探ってみた。

撮影・Rina Asahi

撮影・Rina Asahi

 定刻を10分ばかり過ぎた頃、ポスト・グランジバンドLimp Bizkitのプレーによる映画『MI2(ミッションインポッシブル2)』の挿入歌「Take A Look Around」が会場に流れ、フロアより観衆からの強烈な歓声がステージに投げかけられていた。そしてexist†traceのメンバーはステージに現れた。このSEは、近年の彼女らのステージでは定番曲だが、怪しくミステリアスな雰囲気と荒々しいビートのミックスは、ある意味、exist†traceのイメージそのものを表しているようにも見えた。

 ジョウが「いくぞ!」という叫びに続き絶叫、いよいよステージはスタートした。オープニングナンバーは「liquid」。厳かでヘヴィなビートと、ダークな雰囲気のハーモニーは、激しさを増すステージの中で、彼女らのルーツにあるものを感じさせ、ミステリアスな雰囲気を醸し出していた。続く「RESONANCE」も、様式的な美しさを激しいロックサウンドと融合させたもの。この流れの中には、彼女らの根底にある物語が語られている様相とも見られた。

 「今夜はexist†traceにしか表現できないステージをぶつけていくから、みんなも思う存分に暴れて、2015年最高の締めくくりにしてくれ!」とジョウが観衆に語りかける。2015年の総括を含めながら、2016年の彼女らの意向を示したこの日のライブ。彼女ら自身の気合いの入れ方も尋常ではない。続いて「SHOOTING STAR」が始まると、フロアは彼女らの打ち鳴らすビートに、されるがままといった感じだ。観衆は、その“美酒”を思わせる魅力的な音に酔っていた。

撮影・Rina Asahi

撮影・Rina Asahi

 「ほらもっと手拍子!」「いいか、一瞬一瞬を思いっきりぶつかっていけ!」「飛べ!」。もうこれ以上はないほどに盛り上がっているステージに向かって、ジョウはさらに「こんなもんじゃないだろう!?」とばかりに煽りを入れる。彼女の求める光景には限界がないようだ。ときにジョウ一人で、また別のときはジョウとmikoのツインボーカルによるスタイルで、さまざまな物語を演出する。その表現の幅の広さやパフォーマンスには、音楽のステージでありながら、まるで舞台演舞の一幕のようにも見える。単に歌っているだけではない。この2人のボーカリストの姿はまさに「演じている」「表現している」という見え方が相応しくもあった。

 中盤、「契約」を機に、ステージの展開は変化を見せた。この曲の前までの展開が「動」なら、この曲からは「静」。躍動する音で観衆を酔わせながら、一方で自分の音をしっかりと確立し、その世界観を表現できる強みがある。激しいビートの中でもメロディをしっかりと聴かせ、そして、「静」を表現する中でも聴くものを心躍らせるものを持っている、そんな揺るぎない信念こそexist†traceの魅力といえるだろう。力強さ、弱々しさ、情感と、その歌声にさまざまな表情を見せるジョウのヴォーカルワークに、観衆は微動だにせずじっと耳を傾けていた。

 ステージは後半に入ると、最高のクライマックスを迎えるべく再びパワフルなナンバーへと突入した。メタル感たっぷりの力強い疾走ナンバー「THIS IS NOW」から、ホイッスルの音が気持ちを高ぶらせる「シグナル」、さらに「お前ら、一緒に限界の先を見ようぜ!」そんなジョウの叫びから「TRUE」へ。

撮影・Rina Asahi

撮影・Rina Asahi

 詞の一節「限界の先へ」というキーワードは、彼女らが信条とする言葉の一つ。まさに限界を突破せんとする思いは、この日のステージでも炸裂していた。いよいよステージも大詰め、激情感あふれる「RAZE」に続いて、ラストの「ダイアモンド」へ。自身の目標を表すかのようなそのタイトル。彼女らの未来を最高に輝かせるがために、懸命なプレーを見せる。そしてその姿に追従する観衆の姿が、会場にはあった。

 さらにステージを降りても鳴り響くアンコールに応え、再び現れた彼女らは、この季節にピッタリの爽やかなナンバー「スノーフレイク」、さらにアクティブな新曲「DREAM RIDER」と、観衆の気持ちをグッとつかむキラーナンバーを連発した。そして来年度への躍進を改めて誓い、ラストはサビを観衆とともに合唱、最高のときを迎えた「VOICE」より、不屈の魂を示すかのようなナンバー「『終わりのない世界』」へ。

 「この5人だからこそ、成し遂げられることがある」。アンコールでジョウは語った。それこそが「Reason for the existence」の答えともいえるのではないか。唯一無二の存在を目指して、妥協なく突き進むexist†traceの、2016年のさらなる躍進に期待したい。(取材・桂 伸也)

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