ミリヤ・峯田・大友、意外な組み合せで起きた化学反応
映画のイベントで歌う加藤ミリヤと峯田和伸(9月1日=都内、小池直也撮影)
加藤ミリヤと峯田和伸が歌う、映画『ピース オブ ケイク』(田口トモロヲ監督、全国公開中)の主題歌「ピース オブ ケイク -愛を叫ぼう-」。作曲したのは、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽を手掛けた音楽家の大友良英氏だ。今月1日に都内で行われた公開直前上映イベントでは大友氏指揮のもと、ミリヤと峯田が生歌唱して場を盛り上げた。この取材で記者が注目したのは大友氏とミリヤ、峯田の意外な組み合わせだ。
まず説明しておきたいのは、“大友良英”というカメレオンの様な映画音楽への姿勢である。彼自身の音楽性は、フリージャズと呼ばれるギターやレコードプレイヤーでノイズを発生させて演奏するような前衛的なものが主だ。
しかし、サウンドトラック制作時はそういう顔を抑圧してキャッチーな要素を散りばめた作りで『あまちゃん』などの名劇伴を制作してきた。
その彼が、同じサントラでも、今回の様に人まで披露するライブなどになると、“本性”が見え隠れして面白い。ノイズが効いたギターやフロアを突き刺す様な鋭いバンドの音がそこかしこで現れては消えていた。
そして今回、その大友氏が作曲した楽曲に、女子高生のカリスマである加藤ミリヤと青春パンクのパイオニア・峯田和伸が詞を付けたものが主題歌なのだ。ある意味では奇跡的なコラボレーションだ。
大友氏がもともと持っているノイズアーティストとしての面はある意味で「パンク的」と言ってもよい。だからこそ、峯田が合流したというところまでなら理解はできる。
しかし、ここで一番の異化効果をもたらしているのは歌姫・加藤ミリヤの存在だ。良い意味でトゲトゲした大友氏と峯田のコンビに、ヒップホップR&Bベースの加藤ミリヤが加わることで興味深い化学反応が起きたのだ。
普通にしていたら、まず交わらなかったはずの“両者”を結びつけたのがこの映画なのである。こういうことが不意に起きるから企画物は面白い。
このミラクルについて峯田もステージ上で「引き合わせてくれた『ピース オブ ケイク』に感謝しています」と話していた。こういうクリエイティヴなやりとりがもっと日本の音楽の中に増えることを願う。 【文・小池直也】