谷村新司主宰フェスに加山雄三ら、大人たちの夏野外

「オトナ世代も参加出来る野外イベントをやりたい」と呼びかけた谷村新司とそれに呼応した加山雄三(撮影・KEIKO TANABE)
テレビ音楽番組『地球劇場』(BS日テレ)が発信する初の野外イベント『地球劇場フェス2015』が8日、横浜・赤レンガパークで行われた。このイベントは、番組司会進行の歌手・谷村新司が「大人な世代も参加できる野外イベントをやりたい!」という思いのもと、親交のあるミュージシャンに声を掛けたことで実現したという。連日続いている猛暑も陰りを見せ始めた夕刻、会場には、野外フェスとしてはどちらかというと年齢層の高い、イベントのテーマでもある「大人な」観衆が席を埋め、スタートを切った。ミュージックヴォイスではこのイベントの模様を以下にレポートする。 【取材・桂 伸也】
■「日本にこんなバンドがいたのか」かつて谷村が驚愕したゴダイゴ
イベントの先陣を切ったのはゴダイゴの面々。2006年の再始動から活発な活動を続けている4人は、リズミカルなドラムより代表曲「モンキーマジック」でステージをスタートした。そのワクワクするようなハーモニーとイントロに、席に座りイベントを楽しんでいた観衆は徐々に立ち上がり、「大人な」ロックの楽しみ方を満喫していた。
かつて世間を席巻したゴダイゴの「MAGIC」は、まさにここでもその真価を発揮。谷村が初めてゴダイゴを見たときに「日本にこんなバンドがいたということに驚いた」と、衝撃を受けていた様子を語っていたが、単に彼らのプレーを見、聴くだけですっかり納得できてしまう。そんな上質な空気が会場に充満していた。
続く「ビューティフルネーム」もまた、懐かしさを感じさせるとともに、その曲のメロデイやハーモニーなどには今でも新鮮さを感じさせる魅力で彩られている。司会の谷村新司が「ゴダイゴのメインディッシュ」と呼んでいた4曲で観衆を魅了し、ラストは大ヒット曲「銀河鉄道999」で序盤の盛り上げをしっかりと作り上げた。
■恐るべき「新人バンド」THE King ALL STARS
続いて登場したのは、御大・加山雄三と、彼と比較すると「若手」なロックミュージシャンが集い結成された新バンド、THE King ALL STARSの登場だ。2013年に行われた『ARABAKI ROCK FEST.2013』での共演がきっかけで結成されたこのグループは、今年正式にデビュー、各地で行われているこの夏のロックフェスを大いににぎわせている。
まさに創世記のサウンドを彷彿させる「Sweetest of All」を熱唱する加山の姿は、「若大将」というイメージとは異なった印象を見せていたが、若い世代のロックミュージシャンに全く引けを取らないくらいにカッコよさのオーラを全身から放出させていた。
対して「MONKEY CRAZY」、そして映画「パルプ・フィクション」や最近では「TAXI」シリーズのBGMで有名なナンバー「ミザルー」と、サーフミュージック風のインストでは見事にギターでのメロディプレーを披露。
さらにTHE King ALL STARSのオリジナル曲「continue」、新曲「Simple Say」と、全くスペシャルバンドらしからぬ、個々の個性をうまく融合させた新鮮なサウンドを披露し、さらに会場の空気を熱くした。
■日本と世界の架け橋を目指す「地球劇場」
続いて谷村に紹介され登場したのは、インドネシアで日本語のミュージカルを創作しているグループen塾の面々。
「地球劇場」では、ASEAN(東南アジア諸国連合)の10カ国で日本語を学んでいる学生たちに、番組で収録された歌を、日本語学習の教材として役立ててもらおうというプロジェクトを推進しており、その意味において、このイベントの意味にもっともふさわしいゲストであるといえる。
そんな彼ら、彼女らが、日本に対する絶え間ない愛情を込めた歌「桜よ~大好きな日本へ~」を、美しい4人のハーモニーと、美しい4人の日本語で披露。日が落ち始めたこの日のステージを美しく彩った。
■谷村とゆかりの深いアーティストがデュオで共演
日はすっかり暮れ、暑さをしのぐ涼しい風が海から吹き込んで来たころ、イベントはいよいよ後半へ。谷村とゆかりの強いアーティストが続けて登場した。一人目は、谷村との共演の機会も多い平原綾香。
この日長崎からはるばる駆けつけたという平原は、代表曲「Jupiter」を熱唱した。すっかり日の落ちた会場の色と相まって、徐々に盛り上がる曲のメロディがスケールの大きさを演出。さらに谷村とのデュエットで「いい日旅立ち」をしっとりとした雰囲気で共演。お互いが紡ぎだす美しく、かつ情感のある旋律が、曲の雰囲気をさらに盛り立てた。
平原に続いて登場したのはさだまさし。谷村とはもう肉親ともいえるくらいに長く演武会付き合いを続けているミュージシャンの一人であるさだは、季節柄にもよく合った名曲「精霊流し」を、美しいバイオリンと共にプレー。
曲が持つ雰囲気、さだならではの持ち味をたっぷりとアピールし、観衆をしっかりと魅了した。そしてさだもまた谷村とともに「案山子」を2人で歌い上げ、優しい空気を観衆のもとへ振りまいた。
さらに続いて登場したのは、加山雄三。先程登場したTHE King ALL STARSとはまた違う、まさに「若大将」の雰囲気で「君といつまでも」を熱唱。「永遠の若大将」という彼の呼称が、完全に納得できてしまうくらいに、その曲の雰囲気、詞の雰囲気が加山自身とオーバーラップしてくる。
5年、10年と過ぎても、彼の持つ雰囲気、歌う姿は変わらないのではないだろうか?そんな思いすら湧いてくる、忘れられないひと時。そして再び谷村とともに「海 その愛」をデュオで熱唱した。
■ラストは「谷村劇場」研ぎ澄まされた旋律が人々を魅了
そしてイベントのトリとして、いよいよ谷村がソロにて登場。「遠くで汽笛を聞きながら」の、少しセンチメンタルながら、前向きな雰囲気の詞が、聴くものの気持ちを揺り動かす。さらにリズミカルなバスドラのリズムから、彼のグループであるアリスの代表曲「チャンピオン」へと続くと、観衆は総立ちで谷村の歌声に酔いしれた。
そしてソロステージのラストは「昴」。谷村の歌は、美しい中に強く込めた情感が見えてくる。その歌は、年を経る毎に美しさ、情感共に研ぎ澄まされているようにも見える。つまり、このとき聴こえた谷村の歌は、まさにファンにとって最高の歌だったといってもいい。そんな存在感のあるステージを作り上げ、彼は自身のパートを終えた。
いよいよ訪れたイベントのラストは、この日登場したすべての出演者による「サライ」。加山と谷村が曲を作り、23年が過ぎたというこの曲も多く歌い継がれ、名曲として程よく熟成された曲だ。すべてのアーティストが互いのプレーをねぎらうように、そしてステージを心から楽しむように顔を合わせ、笑顔で歌い上げたこの曲。まさに「劇場」のエンディングを飾るにふさわしい演出にて、また再びの共演を祈りながらステージは終幕を迎えた。
なお、この模様は9月12日午後7時からBS日テレ『地球劇場~100年後の君に聴かせたい歌~』で放送される予定。
■セットリスト
ゴダイゴ
01. モンキーマジック/02. ビューティフルネーム/03. ガンダーラ/04. 銀河鉄道999
THE Kign ALL STARS
01. Sweetest of All/02. I Feel so Fine/03. MONKEY CRAZY/04. ミザルー/05. continue/06. Simple Say
en塾(インドネシア人学生による日本語劇団)
01. 桜よ~大好きな日本へ~(歌唱)
平原綾香
01. Jupiter/02. いい日旅立ち(with 谷村新司)
さだまさし
01. 精霊流し/02. 案山子(with 谷村新司)
加山雄三
01. 君といつまでも/02. 海 その愛(with 谷村新司)
谷村新司
01. 遠くで汽笛を聞きながら/02. チャンピオン/03. 昴
イベントラスト
01. サライ(全出演者登場)
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