GLAYのギタリストHISASHIが12日、10月11日から13日にかけて原宿・表参道エリアで開催されたイベント『FENDER EXPERIENCE 2025』に登場。このイベントの企画の一つである「MEET THE MASTER BUILDERS」に登壇し、フェンダーカスタムショップのマスタービルダー、アンディ・ヒックス氏と共に、自身の理想とするカスタムギターの公開オーダーを行った。

 【写真】GLAY・HISASHIが理想のギターを語った「MEET THE MASTER BUILDERS」の模様

 フェンダーカスタムショップは1987年に設立されたフェンダー最高峰のブランドであり、カリフォルニア州コロナの工場で、選ばれたビルダーたちが伝統と最新技術を融合させ、一本一本ハンドクラフトで楽器を製作している。

 今回HISASHIのパートナーを務めるアンディ・ヒックス氏は、ハリウッドのGuitar Craft Academyでギター製作を学び、フェンダー傘下のジャクソンやグレッチのカスタムショップでも経験を積んだ後、2022年にマスタービルダーに就任した。アンディは、フェンダーは家族以外で「自分の人生そのもの」だと語り、HISASHIとのコラボレーションを光栄に思うと述べた。

 HISASHIはオーディエンスから感じる雰囲気に「お前、あまり“フェンダー味”がないな...」と、自身にフェンダーのギターを使用しているイメージがないことに自らふれ、「それは正しい(笑)」と会場を笑わせた。

 とはいえ80年代のロックとバンドブームの中で音楽を始めたHISASHIは、当初、複雑な機能を持たないギターを選んでいたが、1999年にニューヨーク、スタテンアイランドにあるショップ「マンドリンブラザーズ」で購入したストラトキャスターが彼のファースト・フェンダーとなったことを明かした。

 そのギターでRed Hot Chili Peppersの「Can't Stop」のカッティングを披露し、会場を沸かせた。また、フェンダーが用意したHSH仕様のギターでGLAYの「BRIGHTEN UP」のオケを使用し、バッキングからリードトーンまで多彩な音色を聴かせてくれた。

 今回のオーダーで、「僕的にはこれがギターの最終形じゃないかな」と話すHISASHIが掲げたコンセプトは、ストラトキャスターとレスポールタイプの長所を融合させた「ハイブリッドな一本」だ。

 彼が特にこだわったのは、ピックアップ配列だ。HISASHIは、HSH(ハムバッカー・シングルコイル・ハムバッカー)構成をリクエストした。一般的にはSSH(シングル・シングル・ハム)が人気だが、HISASHIは「見た目」を重視し、あえてHSHを選択。アンディ・ヒックスも、ジャクソンでの経験からHSHに問題はないとし、「ヘビーな音も出つつ、ストラトの音も出る」と、その汎用性の高さを評価した。HISASHIはピックアップのカラーもゼブラ柄(白黒)を希望した。

 さらにHISASHIは、演奏の「余力」を求めて、通常ストラトキャスターでは珍しい高い音までカバーできる24フレット仕様に興味を示す場面も。ストラトは通常21フレット、もしくは22フレット仕様が多い。彼はこれを「100km出る車で100kmで走りたくない。120km出る車で100kmで走りたい」という独自の比喩で説明した。HISASHIは、ストラトの美しさを保ちつつ、HSHで24フレットを実現するため、モックアップ作成を含めてアンディに一任することを決断した。

 ボディカラーについては、「薄塗りのシースルーブラック」を要望。さらに照明が当たるとうっすらと紫に見える「ブラック・パープル」のシースルーカラーを希望した。

 その他、HISASHIは指が当たってしまうという理由から、ボリュームノブの位置をカスタマイズ。そしてアーム(トレモロ)を使わないが、スプリングによる「バネ鳴り」効果は生かしたいという、ギタリストならではの細やかな要望も伝えた。ギターの神様エリック・クラプトンも同様の「バネ鳴り」を活かしたセッティングで、HISASHIは「俺、クラプトンだ(笑)」と笑顔。

 そして、この公開オーダーで最も印象的だったのは、HISASHIがアンディに求めた特別なリクエストだ。完成するギターに、アンディによる個人的な何か“爪痕”を残してほしいと依頼した。これは、二人の出会いの物語と、ギターの歴史を刻むためのパーソナルな要望であり、アンディは「必ず何か残します」と快諾した。

 終始、楽しそうだったHISASHIは、ギター製作を通して「人と会うことが大事だ」と振り返った。オンラインだけでは生まれなかったであろうピックアップのHSH仕様や「爪痕」といったアイデアが、リアルな対話の中で生まれたことに言及し、「摩擦があってそれが熱になってエネルギーになって新しいものが生まれる」(HISASHI)と、今回のコラボレーションの意義を強調した。

 完成したギターは、HISASHIが現在進行中のGLAYのアルバム制作や、ステージでの使用が期待される。

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