森山直太朗が『tiny desk concerts JAPAN』に出演し、熱気に満ちたライブを繰り広げた。普段とは異なるミニマルな空間で繰り出される本物のサウンドが、聴く者の五感を震わせる。この特別なライブは、9月1日午前0時10分からNHK総合で放送される。

 「tiny desk concerts」は、米NPR(National Public Radio)が2008年にネット上で始めた音楽コンテンツ。“小さな机で行うライブ”という新しい発想で、テイラー・スウィフトやBTSといった世界的アーティストも参加し、瞬く間にブームに。そんな“本家”のライセンスを受け、NHKでは2024年に『tiny desk concerts JAPAN』が始動した。Season1では藤井風、稲葉浩志(B’z)、KIRINJIらの出演。2025年4月からSeason2が開幕し、ASKA、石川さゆり、ちゃんみなと話題のアーティストが出演し注目を集めている。

 NHKのオフィスの一角に、小さなステージが設えられた。その空間を埋め尽くす約200人のスタッフが見守る中、拍手喝采とともに現れたのは、シンガーソングライターの森山直太朗。この名物企画に、番組サイドが「どうしても出て欲しかった」と熱望したのが、森山だった。

 ギブソンのアコースティックギターを抱え、森山が最初に奏でたのは、代表曲の一つである「さくら」。実はこの曲、当初のセットリストにはなかったという。リハーサルを終え時間的に、「まだ歌えそうだ」と急遽プログラムに組み込んだ。「さくら」の弾き語りは、凛とした歌声がオフィス全体を包み込み、この特別なステージの幕開けを飾るにふさわしい、静かで力強い熱気を生み出した。

ギターを奏でる森山直太朗

 森山の原点とも言える弾き語りから、バンドメンバーがステージに招き入れられた。フィドル(ヴァイオリン)、チェロ、バンジョー、マンドリンなどブルーグラスのユニークな編成で届けられたのは「生きとし生ける物へ」。森山は終始、心から楽しそうに体を揺らし、その姿に観客も自然と体が動かされる。

 MCでは「こんなにたくさんの人が来てくれるなんて」と素直な驚きを口にした森山。「オフィスで歌うのが新鮮で興奮しています」と語り、新曲「あの世でね」を披露。軽快なリズムに乗った演奏に、観客の手拍子が加わり、オフィスは徐々にライブハウスへと姿を変えていく。

 そして、聴衆をさらに深く引き込んだのが「夏の終わり」だった。マイクもスピーカーも通さない、美しく響くファルセットに心奪われる。“言葉”や”メッセージ”を超越したブルーグラスの演奏が躍動する「あの海に架かる虹を君は見たか」では、森山とバンドメンバーが織りなすダイナミックな音のうねりが、圧倒的な一体感となって聴く者の五感を震わせる。ラストは森山自身が影響を受けたカレッジフォークやカントリーソングの趣が色濃くでた「バイバイ」で締めくくった。

 この日のライブは、2022年から23年にかけて行われた年間100本を超えるツアーで培った経験値と、本物のサウンドを追求する彼のプロフェッショナリズムが、このミニマルな空間で結実した。終演後、「400メートルを全力で駆け抜けたみたい」と語った森山の表情は、喜びと達成感に満ちていた。

 そして、このライブで感じた一体感の秘密は、終演後の囲み取材で森山が明かした言葉から垣間見えた。森山は普段から生のサウンドを重視し、入念なリハーサルを行っているという。しかし、本番ではPAやその時の状況により、リハーサル通りにいかないことも多いと吐露。そのため、マイクやスピーカーを通さない今回のステージは、リハーサルで作り上げた音の雰囲気がそのまま再現でき、理想のライブができたと語った。そして、「バンドメンバーの見たことのない表情も見れた」と、喜びをかみしめるように話してくれた。【取材=村上順一】

森山直太朗

番組情報

『tiny desk concerts JAPAN 森山直太朗』

【放送予定】 9月1日(月) 0時10分-0時39分(※日曜深夜) <NHK総合>
※NHKプラスでの同時・1週間の見逃し配信あり

8月31日(日) 11時10分-11時39分、19時10分-19時39分 <NHKワールドJAPAN>
9月1日(月) 0時10分-0時39分、6時10分-6時39分 <NHKワールドJAPAN>

【出演】 森山直太朗

この記事の写真
村上順一

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)