角野隼斗

 角野隼斗(すみのはやと)と望月馨監督が1日、都内で行われた映画『角野隼斗ドキュメンタリーフィルム 不確かな軌跡』公開記念舞台挨拶に登壇。「カーネギーホール大ホール」でのソロリサイタルデビューが決定した今の心境や、本作で描かれているこれまでの出来事について語った。

【写真】『角野隼斗ドキュメンタリーフィルム 不確かな軌跡』公開記念舞台挨拶の模様

 ピアニスト、角野隼斗は、日本の学問において理系の最高峰である東京大学理科一類に進学しながらも、クラシック音楽界で世界的に活躍する異端のピアニスト。昨年 3月にはベルリンに本拠を置くソニークラシカルと日本人4人目の世界契約を果たし、同年10月30日にはデビューアルバムがワールドワイド・リリースされ、20代にしてクラシック音楽界でのトップアーティストの地位を築いた。また“Cateen(かてぃん)”名義で活動するYouTubeチャンネルの登録者数は143万人を超えている。

 映画『角野隼斗ドキュメンタリーフィルム 不確かな軌跡』は、ピアニストとして世界を相手に戦う角野隼斗とは一体何者なのか。これまでにない音を奏で、聴衆を惹きつけるのは何故か。そんな姿に3年間にわたって密着。今まで明かされなかった素顔、現在の思考、挑戦し続ける姿を追ったドキュメンタリー映画。

 本作の話を聞いたとき、角野は、「お話をいただいたのですが、しばらく渋ってて。面白くないんじゃないの? と最初は言っていたような気がするんですけど…」とあまり乗り気ではなかったという。

 続けて、「ドキュメントといっても映画なので、映画というのは相当なものですから、これはなかなかのストーリーがないとなと思っていたけど、それを作りに行くのも違うし、本当のことでなければいけない。でも武道館公演が決まって、それはなかなかない機会ですから、これを収めていただくのがいいのかなと思いまして、引き受けました」と、昨年7月に行った日本武道館公演が、ドキュメンタリーフィルム制作の決め手となったと明かした。

 今回のドキュメンタリーも含めて想定していたことだったのか聞かれると、「目標というのも元々そんなにはないんですけど、評価とかも含めて想定外でしょう」と語った。

 作品を観て角野は、「あまり自分が過ごしている風景や、話してる様子を見るのも気恥ずかしいんで、チラ見したんですけど面白くて良かったなと思います」と安堵した様子。「そんなに喜怒哀楽が表に出るタイプじゃないんで、そういうドラマはこの映画には期待できないですね」と観客を笑わせた。

 3年間での変化に監督は、「2021年頃は、ちょっとピリピリしていたときはあったかもしれない。淡々とされているんですけど、次に会ったときは、振る舞いなど柔らかくなっていてすごくびっくりしたの覚えています」と話す。年月が経つにつれどんどん柔らかくなっていって。ただ、昔から一貫して角野さんがよく言うことが『今までにない音楽を作りたい。皆さんに提供したい』というのは、ブレないなと思いました」と、密着した3年間の様子を明かした。

 普段の角野を見て感じたことについて監督は、「ポーかフェイスですかね?」と話すと、角野は「人狼(ゲーム)とかめっちゃ下手ですよ」とそんなことはないという。

 監督は角野について、舞台袖とか、ライブの本番の廊下を歩いている瞬間というのは、ものすごい圧を感じながら、僕も横から撮っていました。角野さんは話しかけられないような状況になります」と撮影を振り返った。

 角野は「ポーカーフェイスで思い出すとすれば、何か大きい場面の前後とかで真面目な質問をされると、恥ずかしくなってはぐらかすときがあるんです。それを映画として編集するのは大変だったと思います」と述べた。

 「カーネギーホール 大ホール」でのソロリサイタルデビューについて、「嬉しいです。それはなかなかあることじゃないですか? 3年前なんか想像すらしていなかったですから。2023年にニューヨークに移住しますけど、そのときだってアメリカの仕事は何も決まってないし、そこで演奏活動ができるかどうかも不確かでしたが、一つ一つ丁寧に進んでいきたいという気持ちです」と意気込みを語った。

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