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俳優の栁俊太郎が、映画『他人は地獄だ』(公開中)に出演。格安シェアハウス「方舟」のリーダー的存在で、得体のしれない人物キリシマを演じる。本作はヨンキ原作の韓国発のWEBコミックで、日本ではLINEマンガで2018年8月から連載が始まり、国内累計閲覧数で7000万ビュー(2024年8月時点)を越える人気作品。2019年にはイム・シワン、イ・ドンウクという韓国2大スターで連続ドラマ化されたのも記憶に新しい。その原作を日本における完全ローカライズを施しつつ、原作のエッセンスは純度の高い形で抽出。八村倫太郎(WATWING)と栁俊太郎のW主演で緊張感あふれる日本のサスペンスホラーとして映画化。インタビューでは、実写化された映画『ゴールデンカムイ』(2024)で注目を集めている栁俊太郎に、サスペンスホラーである本作からどのようなメッセージを受け取ったのか。「社会問題を提起しているところがある」と語る真意について話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)
人間の気持ち悪さみたいなところに怖さを感じるようになった
――11月15日から本作の公開がスタートしましたが、反響はいかがですか。
少し前に完成披露試写会があって、そこでお客さんに観ていただきました。「怖くて、ちょっと目をつぶっちゃった」とか、そういった反響はいただいています。
――栁さんは本作のようなホラー系は大丈夫ですか。
昔観ていたときのようには怖がれないというのが正直なところです。お化けみたいなものより、「他人は地獄だ」のような人間の気持ち悪さみたいなところに怖さを感じるようになりました。
――昔はお化け系も怖くて。
そうです。でも、全然観られないというタイプではなくて、ホラー作品も劇場に友達と観に行ってました。
――劇場だと怖さは増しますよね。さて、タイトルからもわかるように他人の恐怖が本作のポイントだと思うのですが、栁さんはこの作品から学びや発見はありましたか。
この作品は社会問題を提起しているところがあると思いました。嫌な事件には目をつぶって生きてきましたし、これからもそういったネガティブなニュースには、なるべく目を向けたくないと思っています。目を背けたくなってしまうものを敢えて人に見てもらうというのは、人間が持っている狂気や怖さだと思います。目を背けたいけど、ちょっと離れた位置から見るのはちょっと楽しいと思ってしまうところがあるのかなと。
――劇中で登場するビンに入った虫に対して、外側から見ているみたいなことを話していましたよね。それとSNSが似ているところもあって。
そうです。ビンの外側から見て楽しいといった好奇心は人間は誰しもちょっとはあると思っていて。いまはSNSとかすごいので、自分の体はビンの外側だけど、思考はSNSというビンの中に入って、みたいな感じだと思いました。脚本を読んでどこかSNSと似ているなと思ったとき、本作を現代の問題に落とし込むならそういうことかなと思いました。
――SNSはすごく良いツールだと思うのですが、使い方次第では悪いものにもなってしまいますから。
自分が言いたいことは言えるけど、部外者面もできる、そういう怖さがSNSにあるのはわかってはいたけど、しっかり考えて使わないと改めて危険だなと思いました。
――それこそSNSは顔も見えない他人なので怖さはあります。どんな表情でこれを書いてるんだろうとか考えてしまいます。
しっかりネット上では触れ合っている、コミュニケーションを取っているわけじゃないですか。対話はできているけど、おっしゃる通り顔は知らないこともあって。SNSはビンの中、体はビンの外といった感覚で、『他人は地獄だ』で描かれる内容とも意外と近い部分があるなと思いました。アパートの隣の人物とか今回もそうだけど、それっていろんなところに通じるなと思いました。
――ちなみに栁さんは隣人は把握していますか。
密に話したりとかはないですけど、すれ違った時に挨拶はします。ただ昔、引越しをしたときに、隣の人に挨拶に行ったら、「大丈夫です」と断られたことがありました。菓子折りもちゃんと持って行ったんですけど。でも、今はそういう方がいても当然だと思います。
『チャイルド・プレイ』のチャッキーをイメージ
――さて、今回、キリシマの怖さを出すために、なるべく動かないということを実践されていたとお聞きしましたが、あまり瞬きもしないなと思いながら観ていました。
そこは意識していました。容姿は人間なんだけど人間味がない。たとえば夢の中で会ったことはあるけど、実際は会ったことはない、夢の中で顔を見たけど、夢から覚めると覚えていないといった、そういう怖さってあると思っていて。芝居をしているときも人間と喋っているんだけど、変な違和感を与えたいと思いました。監督からもそういうリクエストがありましたし、僕自身もそうしたいと思いました。
――どこか人形みたいでしたね。
映画『チャイルド・プレイ』に登場するチャッキーをイメージしていたところもありました。昔から人形が喋ると怖いなと思っていて、そういった要素もちょっとつけたいなと思いました。
――顔のアップになると異質感が倍増するのはそういうところが大きかったんですね。
最近自分の芝居を見ていたら、目で感情を伝えようとしている自分がいると思いました。僕の瞳の色は茶色なので、目からどうしても人間味が出てしまうんです。対峙しているのは人間だし、演じたときに癖として人間味がどうしても出てしまうから、それが出ないように黒目を多めにしていました。
――ちなみに栁さんのお気に入りのシーンってありますか。
自分が出ているシーンよりも共演者、アパートの住人がやばすぎて、僕は鈴木(武)さんと星(耕介)さんの2人が最高に面白くてツボでした。映像で観るとすごく狂ってるから怖いのですが、あのキャラクター性というのは、よく描かれているなと思いました。
――ちょっと笑っちゃったりしないですか。
あまりにちょっと過剰なアクションのときは、笑ってしまいそうな感じありました(笑)。
――キリシマは基本ポーカーフェイスでいなければいけないので大変そうです。共演者の方とはどのようなお話を?
う〜ん何を話していたかな? でもすごく仲良くワイワイしていたのを覚えています。それこそ、劇中の焼肉のシーンはすごく気持ち悪いと思うんですけど、虫が入ったビンを横に置いたまま、みんなで楽しく話してましたから。
――そういえば虫が入っているビンの中に手を入れてましたけど、あれは本物?
本物です。生きているゴキブリの中に手を突っ込みました。ただ、その後にゴキブリの足を千切るシーンがあるのですが、あれは死骸です。でも、ちゃんと本物なんです。
――作り物じゃないんですね...。ゴキブリに触れるのは大丈夫なんですか。
大丈夫みたいです(笑)。普通のゴキブリは全然平気ではあるのですが、あの大きさのゴキブリを目の当たりにするのは初めてでビックリしました。また、最初ゴキブリだとは聞いてなかったんです。現場に行ってから「えっ、めっちゃデカいゴキブリじゃん」って(笑)。余談ですけど、マダガスカルにいるゴキブリみたいで、購入すると一匹500円くらいするそうです。
――あはは(笑)。でも、栁さんはゴキブリにも臆さないので、一家に1人いてほしい存在ですね。
僕がいたら頼もしいと思いますよ(笑)。
――まだこれから映画を見る方もいらっしゃると思います。そんな方々に向けて一言お願いします。
こういった作品が苦手な方もいるかもしれません。ホラーでおばけ的な怖さじゃなくて、人間の生身の怖さというか、気持ち悪さみたいなのも強い作品です。グロテスクなところもありますが、好奇心の強い方は観てもらえたら、より楽しめる作品になっていると思います。
――栁さんのように今の現代社会と通じるところなど何かに気づく可能性もありますよね。
でも、そういったものを見つけてしまうと、より怖くなってしまうということは伝えておきたいですね。隣人とかすごい気になってしまったり、私生活に支障が出てきてしまう可能性もあるので、あまり考えすぎずに観てほしいなと思います。割とライトな感覚で観た方がいいかなと。純粋にスクリーンに広がる恐怖を感じて、楽しんでもらえればと思います。
(おわり)
ヘアメイク:望月光(ONTASTE)
スタイリスト:伊藤省吾(sitor)
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