三阪咲「歌い方を研究した」新曲で大事にしていた“昭和感”
INTERVIEW

三阪咲

「歌い方を研究した」新曲で大事にしていた“昭和感”


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:24年03月11日

読了時間:約7分

 シンガーの三阪咲が、2月16日に新曲「tamerai」をリリース。三阪はSNSをきっかけに注目を集め、高校サッカーのテーマソングや、恋愛リアリティーショーのテーマソング等を務めるなど、今、Z世代・若年層を中心に注目を集める女性シンガー。ジャンルに捉われず、 幅広い楽曲を歌いこなすソウルフルかつ突き抜けるような歌声で多くの人を惹きつける。「tamerai」は80年代のポップスを感じさせるナンバー。三阪の歌声も楽曲に寄り添いながら、今までとは違った一面を覗かせている。インタビューでは、「tamerai」の制作の裏側から、3月31日にEX THEATER ROPPONGIで開催されるワンマンライブ『SAKI MISAKA ONE MAN LIVE 2024 “一心同体メモリーズ”』について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

“いなたさ”を大事にしている

村上順一

三阪咲

――1年半ほど前に取材させていただいたとき、読書から得たインスピレーションで歌詞を書くこともあるとおっしゃっていましたが、それは今も続いていますか。

 ちょっと変化がありまして、今は普段の生活の中で感じたことから歌詞を書くことが多くなりました。また、ミュージックビデオなど映像作品をよく観ているのですが、動画サイトでおすすめに上がってきて初めて知って、「こんな楽曲もいいな」とかインスピレーションを受けることがあります。

――「tamerai」はどのように歌詞を書かれていったのでしょうか。

 実はデモを送られてきた段階から仮タイトルが大文字で「TAMERAI」だったんです。「ためらい」ってすごくいい言葉だなと思い、そこから膨らませていきました。

――タイトルを小文字に変えたのはなぜですか。

 私は人生の中で“いなたさ”を大事にしているのですが、小文字で「tamerai」にしたら、いなたさが出るなと思ったからなんです。

――いなたいという言葉は垢抜けない、泥臭いなどネガティブに聞こえてしまう一面を持っているワードだと思っているのですが、三阪さんはどう感じていますか。

 どちらかというとネガティブな印象に近いです。格好いいものを作ろうとしすぎると、ガチガチに格好よさが出てしまい、それが逆にいけてない感覚がありますが、例えばレザーのパンツにバーバリーのジャケット、でもインナーをあえてカジュアルになものにして、ちょっと外すことでいなたさが出る、それが格好いいなと思うんです。他にも撮影などで洋服がクールな感じだったら変なポーズにして、ちょっといなたさを出してみたりします。

――そのいなたさをタイトルや歌詞に落とし込んでいるわけですね。

 はい。歌詞に<お揃いのマフラーに 頬が誘われたら>というフレーズがあります。私の中で余白を意識して書いていました。

――曲調が80年代を彷彿とさせますが、三阪さんのような20代に80'sサウンドはどのように感じていますか。

 昨年の夏頃から昭和の曲にハマっていて、中森明菜さん、松田聖子さん、杏里さんが特に好きで聴いていました。「こんな曲を歌ってみたいです」とアレンジャーの江口亮さんにお伝えしたら、上がってきたデモ曲の中に「tamerai」の原型があり、聴いた瞬間にこの曲を歌いたい! と思いました。イントロからインパクトがすごくありましたし、80年代を私は生きていないのですが、懐かしさも感じましたし、同時に新しさも感じました。

――曲はライブ披露などを経て成長していくものだと思っています。どんな曲になっていったら嬉しいですか。

 今まで私が歌わせていただいた曲はキーが高い曲が多かったのですが、「tamerai」はキーがミッドレンジなので、聴いた方が口ずさんでみたくなるような曲になっていったらいいなと思っています。

――ご自身が気に入っているフレーズはありますか。

 すごく女の子らしさがある歌詞になっています。<夜は息が詰まるほど 溢れる言葉並べていた>というフレーズが特にお気に入りです。

――歌詞はタイトルから広げたとのことですが、どのような情景をイメージして作られましたか。

 昨年リリースした「2」と「冬だより」は秋冬をテーマにした曲だったので、次は冬から春をイメージした歌詞を書こうと思い、仮タイトルから世界観を広げていきました。それは連想ゲームみたいな感じで、“ためらい”から想像するのは恋、恋といえば伝えたいことを伝えられないはがゆい感じ、そういう風に考えて書いていきました。

 また、昭和っぽさが自分の中でとても大事な要素だったので、伝える方法はメールなどデジタルなものではなく、アナログな手紙にしてみたり、会いたいけど会えないといった状況を想像しながら歌詞を書きました。

――昭和のことも研究されました?

 昭和の曲はたくさん聴きましたし、歌い方も研究しました。今回のレコーディングでこのパートはこの人みたいに歌ってみようとか考えていました。たとえば松田聖子さんの歌声を聴いたときに、優しさと温もりがある歌声だなと感じ、感銘を受けて、そういうニュアンスを取り入れてみたりしています。

――ちなみに三阪さんは普段手紙は書かれますか。

 私、手紙を書くことが好きなんです。何かプレゼントをするときは手紙を添えますし、ライブ前にはバンドメンバーさん全員に手紙を書いています。

――手紙でもらうことも?

 はい。ファンレターを手紙で送ってくれる方がいます。家に小学校5年生から貯め続けているファンレターを入れたボックスがあるのですが、それは宝物です。

――斬新なファンレターはありました?

 「いま三阪のライブを観てる。1 曲目は◯◯でやばい!」みたいなファンレターは面白かったです。その時の感情が入っているのが斬新で、ホットな手紙でした。私の中でそんな発想はなかったので驚きました。(笑)。

――三阪さんがためらう瞬間とは?

 ライブのMCでこれ言っても大丈夫かな? とためらうことがあります。(笑)。

――あはは(笑)。レコーディングはいかがでした?

 詞が完成してからレコーディングまでの時間がけっこう短く、2〜3日ほどしかなかったのですが、歌い方、表現の仕方をしっかり考えて臨みました。「tamerai」のレコーディングは私の中で過去最速で、1時間半ほどで録り終えることができ、迷いがなかったレコーディングでした。

三阪咲が印象的だったライブとは?

村上順一

三阪咲

――3月31日にEX THEATER ROPPONGIでワンマンライブ『SAKI MISAKA ONE MAN LIVE 2024 “一心同体メモリーズ”』が開催されます。どのようなステージになりそうですか。

 先日セットリストが決まって、演出も決まってきました。楽器もたくさん持ちますし、踊ったり、新曲などこれまで以上に曲数をたくさんやるので、とてもボリューミーなライブになると思っています。いつもライブに来てくださっている方は新しい私を観ていただけると思います。また、最近の新曲もたくさん歌う予定なので、初めてライブに来てくださる方は、楽しみにしていただけたら嬉しいです。

 また、今回バンドメンバーも新しい方々とご一緒させていただきます。音源の同期も少なくして生演奏主体でやる予定ですので、緊張感のあるグルーヴを皆さんに届けられるんじゃないかなと思っています。ライブのタイトルは『 “一心同体メモリーズ”』なのですが、来てくださる皆さんはもちろん、バンドとも一心同体という意味もあります。

――タイトルは三阪さんが考えられたんですか?

 はい。これまでライブのタイトルは英語が多かったのですが、日本語でいなたさを出したいと思い、『 “一心同体メモリーズ”』がかわいいなと思いました。みんなが手を繋いでいるイラストからイメージが膨らんでいって、ライブタイトルにちなんだグッズも、男女問わず使えるものを作ったので、楽しみにしていてほしいです。

――ちなみに三阪さんがこれまで観てきたなかで、感動したライブ、忘れられないライブはありますか。

 小学校4年生のときに観に行ったSuperflyさんのライブがいまも強く印象に残っています。それは初めて観に行ったライブでした。Superflyさんのようになりたくて歌をはじめたので、ライブを観てすごく感動しました。私の曲「キミに会いたくなるんだよ」でギターを弾いてくださったギタリストの草刈浩司さんが、当時Superflyさんのバックでギターを弾かれていて、レコーディングのときに「私、あのライブ観に行ってました!」とお伝えすることができて、すごく嬉しかったです。

――三阪さんの歌を聴いて、歌手を目指している方もきっといますよね。

 「歌手になりたくて、咲ちゃんの曲をカラオケで毎日歌っています」などのメッセージをもらうのですが、とても嬉しいです。人は影響し合いながら生きていると思います。日常の中で小さな影響はいっぱいありますが、ライブは大きな影響を与えてくれるものだと思っています。ライブを通して、何か感じてもらえることがあれば、すごく素敵だなと思っています。

(おわり)

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村上順一
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