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女優の桜庭ななみが、3月10日(金)より全国公開中の映画『有り、触れた、未来』に出演。交通事故で交際相手を亡くした元バンドマンで、保育士の佐々木愛実を演じる。本作の監督・脚本は『グッモーエビアン!』『九月の恋と出会うまで』等で知られる山本透。「コロナ禍の閉塞的な社会で、 自殺者や不登校児童が増えるなか、命の大切さを伝える力強い作品を作りたい」と、本作の為に集まった総勢22人の若手俳優からなるプロデューサーチーム【UNCHAIN10+1(アンチェインイレブン・アシスタント】と共に企画から資金集め、制作まで、自主映画としてゼロからスタートした。出演は、桜庭ななみ、手塚理美、杉本哲太、仙道敦子、 北村有起哉など、気鋭の俳優陣が命の大切さを問う群像劇。インタビューでは、主演を務める桜庭ななみに、撮影を通して感じたこと、いま役者として大切にしていることを聞いた。【取材・撮影=村上順一】
普通というのを意識していた
――撮影に入る前に準備したことは?
ギターと歌の練習を2カ月ほど行ったのと、台本を読み込むことでした。自分が経験したことがないことが多かったので、想像してみたり、現地に行ってやりとりしたりしながら役を作っていきました。
――印象に残っているシーンは?
ライブシーンは特に印象的でした。歌の練習をしているときは、どうやってここまでテンションを持っていこうと不安があったのですが、現地の方と触れ合う中で自分の気持ちに嘘をつかず前を向いていく姿というのを、お芝居をしていて感じたので、それを演奏シーンにも繋げることができました。監督が脚本と演奏した曲の歌詞も書かれているのですが、歌詞のメッセージは映画のメッセージでもあるので、それを大切に伝えたいと思いながら演じていました。
――桜庭さんはピアノを弾かれますが、ギターはいかがでした?
ギターは全く弾けなかったので、1から教えていただきました。なので、劇中で演奏した曲しか弾けないんです(笑)。ライブは映画の最後を飾るシーンなので不安もあったのですが、この作品で伝えたいメッセージが含まれた歌詞というのはすごく素敵だなと思いましたし、自分も前向きになれました。歌と太鼓と演劇が重なって、いいシーンになりました。
――この作品は生きることへのメッセージが詰まっていますが、撮影を通して死生観の変化はありましたか。
生きていることが当たり前だったので、生きるということについて深く考えたことはなかったんです。今回の撮影を通して、「生きることは死ぬことでもある」と気づかされちょっと怖くなりました。大切な人が亡くなったり、そういう時間をどう過ごすのかというのも、撮影の中で考えました。だからこそ、寄り添うことってすごく大切で、生きることについてより考えるようになったと思います。
――震災について思うこともあったのでしょうか?
愛実のセリフに、「大人が元気じゃなかったら、震災後に生まれた子どもたちにもそれが伝わってしまう」という言葉があるのですが、10年以上経った今でも傷は癒えてはいないんだと改めて感じました。
――そんな桜庭さんが生きているなと実感する瞬間は?
美味しいものを食べているときです! 実家に帰省したときにお刺身を食べたのですが、それがすごく美味しくて、幸せを感じていました。
――今回、オール宮城ロケだったとお聞きしていますが、そこでの食事も堪能されて。
はい。宮城でお寿司を食べたのですが、ネタがすごく大きいんです。東京だとすごくお値段が高くなってしまうと思うのですが、リーズナブルな値段で気軽に食べられます。もっと宮城を楽しみたいと思いましたし、現場でのエネルギーになっていました。
――先ほど、歌やギター演奏は大変だったとお話しされていましたが、それ以外で苦労されたところは?
愛実は10年前に事故で付き合っていた(安田)和樹(演・松代大介)を亡くしてしまって、時間が過ぎていく中で、その思いをずっと抱えているというよりは、心の奥底に和樹がいる、日常が流れているようなイメージで愛実を演じたいと思いました。良い意味で普通というのを意識していて、和樹が心の中にずっといる、というような感じではなかったんです。でも、心の奥底には彼がいるんですよ。そのバランスはすごく難しかったです。
愛実は一緒に成長したいと思える人物
――子どもたちに命について尋ねるシーンが印象的でした。桜庭さんはあのシーンをどう感じていましたか。
子どもたちの純粋な意見を聞き出すことがテーマとしてあったので、どう話したら興味を持ってくれるのか、聞き方とかもすごく難しくて。そういう本を読んだりもしたのですが、想定していたものとは全然違う回答が返ってきたりして驚きました。
――保育士の役ということで、お母様も喜ばれたのでは?
喜んでくれました。お芝居をした後に、母はこんなにも大変なことをしているんだと気づかされました。子ども用の椅子は小さいので腰を曲げて対応することもあったのですが、それを体験してみて、楽しいことばかりではないなと。子どもの目線になることは難しいことで、改めて母を尊敬しました。でもちょっと照れくさいので、保育園のシーンは母に見られたくないです(笑)。
――お母様に相談されたりしたんですか。
はい。子どもたちからこういうことを聞き出したいんだけど、どう質問すれば良いのか聞きました。結局、どんな言葉が返ってくるかわからないとのことで、アドバイスは特になかったんですけど(笑)。
――共演者の方が沢山いらっしゃいますが、どんな会話をされましたか。
愛実の友達、大島蒼衣を演じた舞木(ひと美)さんとよくお話しました。愛実と蒼衣は何でも話し合える仲だと思ったので、2人でのシーンは楽しい感じになったら良いなと。舞木さんと距離感についてなど色々お話しできたので、会話するシーンは自然にできたのかなと思います。話しかけてくださった舞木さんの人柄の良さもあって、現場でも友達のように接することができたと思います。
――アドリブもあったのでしょうか。
「そのまま喋ってて」みたいなシーンはけっこう多かったです。居酒屋のシーンがそうなんですけど、不思議と自然に楽しく話せました。
――役者として大切にされていることは?
自分が演じる役を好きになることです。日頃から大切にしている観点で、お芝居の軸になっていることです。その人物を一番私が理解することを大切にしています。
――どんなに憎い役でも好きになる努力を?
はい。過去に奥さんがいる方を好きになる役を演じたことがありました。いわゆる不倫なので、外から見たら気持ちの良い役ではないと思うんですけど、私がその役を演じる時は「自分が一番正しい、その人の考え方があるんだ」と思うようにしています。こういった難しい役のときこそ、より好きになる努力をします。
――今回の愛実のような人物は、すんなりと好きになれたのでは?
一緒に成長したいと思える人物でした。演じてみて、撮影が進んでいくなかで、どんどん愛実の気持ちに寄り添えたと感じていますし、良い時間を過ごせたと思います。
(おわり)
ヘアメイク…SAKURA
スタイリスト…井阪恵
作品情報
映画『有り、触れた、未来』
3月10日(金)より全国ロードショー
監督・脚本:山本透
出演:桜庭ななみ、碧山さえ、鶴丸愛莉、松浦慎一郎、宮澤佑、金澤美穂、岩田華怜、谷口翔太、舞木ひと美、高品雄基、高橋努 麻生久美子、淵上泰史、入江甚儀、萩原聖人、原日出子、仙道敦子、杉本哲太、手塚理美、北村有起哉
原案:齋藤幸男「生かされて生きる-震災を語り継ぐ-」(河北選書)
プロデュース:UNCHAIN10+1(アンチェインイレブン)
制作プロダクション:Lat-lon
配給:Atemo
公式サイト: https://arifuretamirai.wixsite.com/home
アメリカンビスタ/上映時間:132分
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