INTERVIEW

吉田美月喜

常盤貴子と母娘役 ファーストカットで「親子になれた」:『あつい胸さわぎ』でW主演


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:23年02月01日

読了時間:約5分

 吉田美月喜が、映画『あつい胸さわぎ』(まつむらしんご監督)で常盤貴子とW主演を務めた。演劇ユニット「iaku」の横山拓也氏が手掛けた作品の映画化。若年性乳がんをテーマに母娘の複雑な心象風景と恋模様を描く。吉田は乳がん検診の再検査通知を受ける18歳の千夏を、常盤はその母・昭子を演じる。母と2人暮らし。勉強に勤しみ、恋をし、バイトし…。青春を謳歌するごく普通の大学生だったがその日常が一変する。考えもしなかった非日常が日常に変わろうとする。そのハザマで揺れ動く主人公。それに至る感情の機微を吉田は見事に表現している。【取材・撮影=木村武雄】

等身大

――脚本を読んだ印象は?

 オーディション前に初稿を読ませて頂きました。もちろん企画書にも乳がんという事が書かれていたんですけど、それが家族や恋など複雑に絡み合っていく事を知っていましたので、結構構えて初稿を読んだらすごく温かい内容でした。年齢的な部分もありますが千夏に共感できる部分も多かったです。

――その上でどう演じようとされましたか?

 乳がん検診の再検査が通知された時の表情はもちろん大事にしましたが、千夏は18歳で複雑な年齢だと思うんです。私も高校卒業した時は「大人にならなきゃ」と思って。でも大人になれなくて。自分ひとりでは答えも出せない上に表にも出せない。その複雑さは意識しました。

――これまでもその年頃の役は演じてきていますが、等身大という印象を受けました。

 おっしゃる通り等身大です。年齢が一緒というのもあって「18歳の私」というぐらいそのままでいられました。それは常盤さんや前田さんたち周りのキャストの皆さん、監督、スタッフさんがそういう風にいられるようにして下さったと思うんです。すごく支えられた現場でした。

――すごく自然体で、役者に受け止められて弾かれていくピンボールの印象もありました。それは受け身の芝居だったということもありますね。

 そうだと思います。千夏の中でいろいろと葛藤していて、そういう年頃ですし、その姿が描かれていて。だからこそ周りからの温かさやいろんなぶつかり合いというのは、千夏に刺さるものがあったと思います。それは演じている私もそう感じました。

吉田美月喜

吉田美月喜

親子になれたファーストカット

――常盤さんは一緒にお芝居されていかがでしたか。

 本当にかっこいいです!初めてお会いする時は緊張もありましたが、いざ撮影に入ると本当の母のようで、すごく演じやすかったです。

――乳がんによって日常は激変しますが、それ以前の過程がすごく丁寧に描かれています。その過程で千夏という人間性がしっかり表現させていて、なかでも大事なのは母役の常盤さんとのシーン。最初の掛け合いでどういう親子なのかが分かって。あれはいつ頃撮ったんですか?

 クランクインして最初に撮りました。私としては「ちゃんと親子に見えるかな」という事と、関西ならではのテンポのいい掛け合いがちゃんとできるか不安もありました。撮影が始まってカットがかかった後、まつむら監督が「ちゃんと親子に見えた」と言って下さって。「これから頑張れる」と私の中でひとつホッとした場面でもありました。

昭子(常盤貴子)と千夏(吉田美月喜)©2023映画『あつい胸さわぎ』製作委員会

――そのシーンの前に常盤さんとはコミュニケーションを取っていたんですか?

 衣裳合わせの時に少しお話しさせて頂いたのと、まつむら監督から役の説明を受けた時ぐらいで、その時はそれほどお話は出来ていませんでした。

――それであのテンポ感が出るのはすごいですね。

 それはもう常盤さんのおかげです。声のトーンと関西の感じを常盤さんが出して下さったので、それに身を預ける感じでした。

――千夏というキャラクターは自然体でやった方がいいと自身のなかでも考えていたんですか?

 まつむら監督がオーディションの時にそう言って下さいました。

――常盤さんとの掛け合いもそうですが、そこで生まれた感情を出していくような?

 そうです。そういう部分でも周りの方に頼りっぱなしだったかもしれないです。ただ千夏はいろんな方から温かいものを受ける役でしたので、私自身も演じていていろんな感情を受けることができてすごく楽しかったです。

吉田美月喜

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奥平大兼は天才肌

――初恋の相手・川柳光輝役を演じた奥平さんとはいかがですか。

 年齢が近い(学年は奥平が1つ下)ということもあって気軽に話せました。ただやっぱり彼は天才肌だなって感じるんです。堂々とし過ぎて怖かったですもん!(笑)そんなことも言えるぐらいフランクに話せますし、奥平さんと(佐藤)緋美さん(千夏の友人・水森崇役)って似ている部分が多いなと感じました。堂々と自分を持っている感じとか、洋服もオシャレですし、緋美さんは音楽もやられていて。難しいことを2人で話していて、すごいなって聞いていました。

千夏の初恋の相手・川柳光輝役を演じた奥平大兼©2023映画『あつい胸さわぎ』製作委員会

――そんな奥平さんとの大学での最初のシーンは初々しさや恋心を見え隠れして良かったですね。あれはどういう気持ちでしたか。

 近しい関係でひそかに憧れているけどそれを出せない。あくまでも友達ですけどっていう感じの危うい感じを楽しみながら演じていました。

――奥平さんの真っ直ぐな演技に応えていく感じでしたか?

 そのシーンは自分から出したというものが大きかったかもしれないです。光輝って今までもずっとあんな感じだったと思っていたので、あのシーンでの千夏はドキドキしていてほとんど話を聞いてない感じだったと思うんです。なので受けるよりかは、自分から考えて出していったシーンかもしれないです。

吉田美月喜

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(おわり)

<作品情報>
映画『あつい胸さわぎ』
2023年1月27日(金)新宿武蔵野館、イオンシネマほか全国ロードショー
監督:まつむらしんご
原作:戯曲『あつい胸さわぎ』横山拓也(iaku)
脚本:髙橋泉
出演:吉田美月喜 常盤貴子 前田敦子 奥平大兼 三浦誠己 佐藤緋美 石原理衣
配給:イオンエンターテイメント/SDP
コピーライト:©2023映画『あつい胸さわぎ』製作委員会
公式サイト: https://xn--l8je4a1a7e6m7952c.jp/

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