INTERVIEW

池松壮亮×ナオミ・スコット

「恋に完璧なストーリーはない」2人が語る愛とは


記者:村上順一

写真:提供

掲載:22年11月14日

読了時間:約8分

 池松壮亮とナオミ・スコットが、Amazon Original ドラマ『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』(Prime Videoにて独占配信中)エピソード 6 「彼は私に最後のレッスンをとっておいた」 に出演。ナオミ・スコットは旅の資金を貯める為に、ロサンゼルスに滞在するイギリス 人のエマ、池松壮亮はアメリカの大学で博士課程を取ることを目標としているマモルを演じる。

 『モダンラブ』は、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたコラムを基に、愛にまつわる物語を描いた。2019年にアメリカで製作された同作が、舞台を東京に移し『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』として新たな7つの物語を紡ぐ。

 エピソード 6 「彼は私に最後のレッスンをとっておいた」は、日米合作映画『オー・ルーシー!』で監督を務めた平柳敦子氏がメガホンを取った。インタビューでは、全編ロサンゼルス で撮影したという同作の撮影エピソードから、この作品のテーマともなっている愛について、池松壮亮とナオミ・スコットの2人に話を聞いた。【取材=村上順一】

恋に完璧なストーリーはない

ナオミ・スコット

――『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』に出演が決まったときの心境は?

池松壮亮 『モダンラブ』はコロナ禍でよく観ていたのですが、まさか日本で企画が立ち上がるとは思っていませんでした。僕がいただいたお話がすごく面白くて、本当にこの企画自体がいいものだなと思いましたし、ぜひ参加したいと思いました。

ナオミ・スコット 私は日本が大好きなので日本人のスタッフと一緒にお仕事ができて本当に嬉しかったです。

――脚本を読んでどのような感想を持ちましたか。

池松壮亮 まず、ニューヨーク・タイムズに掲載されたそのお話がとても良かったです。日本で恋愛ものというと、ティーン向けのものが量産されていますけど、人を想う気持ちを正面から30分という尺で描いていて、ものすごく好感を持ちました。

ナオミ・スコット 現代における愛、本当にこの人が運命の人なのか、というテーマをもったスイートなお話ですごく良かったです。共感ポイントも見つけることができました。脚本の中ですごく惹きつけられたのは、マモルのセリフ「愛は努力」だというのがあります。それがいま置かれた状況を反映していると思います。正しい選択をする、誰かにコミットすることを恐れている状態にエマはあったわけです。そこで彼女が学んだのは「恋に完璧なストーリーはない」というものでした。何かを育てる時は水やりをしなければいけないとマモルは言いますが、そこは文化と反する部分、西洋の愛とは真逆をいっているような気がしました。どっちの道を進んだらいいのかわからないという人に共感してもらえると思います。あと、敦子さんは『タイタニック』のダンスをやりたがっていました。2人の出会いがロマンティックな瞬間であるはずが、現実はそうではないのも面白かったです。

――平柳監督とのお仕事はいかがでした?

池松壮亮 以前『オー・ルーシー!』を観ていたのですが、素晴らしい作品で印象に残っていました。日本で何か作品を撮ってくれないかなと思っていたところに、監督と出会うことができました。平柳さんはサンフランシスコ在住で単身で渡米して国際結婚をされていて、今回のドラマを誰より知っているところがあったと思いますし、同じ日本人として、アメリカで戦っている姿を見ることができて光栄でした。

ナオミ・スコット 敦子さんと一緒にお仕事ができて本当に楽しかったです。すごく直感の方だと思いましたし、その直感を私も信じました。とてもコラボレーションすることを重視している方で、求めていることが明確でしたしエゴもなかったんです。

――平柳監督と交わした会話で印象的だったことは?

池松壮亮 沢山お話したんですが、言葉というよりも一緒に笑い合った日々のことの方が鮮明に残っています。ロスで全て撮影したんですけど、慣れない環境に飛び込んだので、平柳さんが真ん中にいてくれて本当に良かったです。エマとマモルを接続し、ナオミさんと僕を心からサポートしてくださいました。

ナオミ・スコット 私たちに「自分自身を出して表現してほしい」と言っていただいたのが印象的でした。何かを作りたいという人が集まっていたので、アーティストとしてもそうですけど、友達として一緒に時間を過ごすことができたことが良かったです。一緒にいて楽しい人ですし、ユーモアに溢れた方でした。10時間も同じセットの中にいて、みんなが疲れている時にユーモアがあるのは大切なことですから。

言葉だけが人と繋がる方法ではない

池松壮亮

――さて、撮影に臨む前に池松さんはナオミさんのことをある程度イメージされていたと思うのですが、クランクアップする頃には印象は変わりました?

ナオミ・スコット 女優だって聞いていたのに、演技できなくて最悪だなと思ったでしょ(笑)。

池松壮亮 何言ってるの(笑)。出会ってから最後までナオミさんの印象は変わらなかったと思います。この取材の質問に回答している姿でわかると思うのですが、ものすごくヒューマニストと言いますか、最初から最後まで本当に愛情深い人でした。現場ではものすごく明るくてずっと歌っていました。一番近くでお芝居を交わして、いろんな姿を見させていただきましたけど、素晴らしい女優であり素晴らしい人格者だなと思いました。あ、印象が変わったといえば、ナオミさんがシンガーもやっていることを知らなくて、「すごく歌がうまいじゃん!」と言ってしまって、歌手に向かってなんてことを言っていたんだって(笑)。

ナオミ・スコット 壮亮さん、すごくスイートな褒め言葉をありがとうございます。私は言葉の壁がありましたが、彼は魂のこもった演技をしていたのが印象的でした。言葉の壁があるからこそ、お互いに目と目で見て意図を理解し合える。言葉がないところでも繋がることができるんです。でも、彼は優しいだけではなくて、少し皮肉屋さんのところがあります。あっ! いま皮肉っぽいことを言っていたな、とわかってしまうところが面白かったです(笑)。

――一緒に演じる中で発見や学びはありましたか。

池松壮亮 沢山ありましたし、ナオミさんという人柄に日々感動していました。言葉はわからないし、全てが通じ合えているわけではないんですけど、シンプルに、感覚的に、向き合うことができたと思いますし、僕が英語が喋れない中…。

ナオミ・スコット いや、もう英語が話せないとは言えないですよ。嘘つき!(笑)。

池松壮亮 あははは。

ナオミ・スコット 私は彼の英語をずっと聞いていたのですが、その日に学んだフレーズはおそらく理解はしていなかったと思うんです。それでもすごく自然に見せるのですごいなと思いました。ある意味完璧だったんですよ。マモルという人は生徒として英語を学びにきている過程にあるわけですから、すごく上手に表現していて感動しました。だからこそ私も一緒にお仕事がしやすかったですし、本当に言葉だけが人と繋がる方法ではないんだなと私は学びました。

池松壮亮 ナオミさんが逐一発音を教えてくれました。「Earth」の発音なんて50回くらい教えてもらいましたから。

ナオミ・スコット 一番努力をしたのは壮亮さんで、母国語とは違う言語であれだけの演技をなさったわけですから。私が手取り足取り教えたというわけではなく、壮亮さんは準備万端で臨まれていたと思います。私が反対の立場だったとして同じことができたかと言ったらできなかったと思います。私にとって英語は母国語なので良かったのですが、違う言語でセリフを言ってみろと言われたら自信はないです。

永遠に答えは出ない

ナオミ・スコット

――マモルはベタなセリフをエマに投げかけるのですが、そこに説得力を持たせるのはすごく難しかったのではないかと思います。説得力を持たせるためにどのような努力をされましたか。

池松壮亮 この作品に参加したいと強く思ったのは、コロナという経験、そして今なお世界で戦争が続いていること、その他各地でおこる破壊。それらのことが大きく作用しました。人とのつながりや、人を信じることすら奪われてゆくこの世界で、what is love for you ? ということを問い直すこの物語に、今の世界の希望を探しました。台詞に関しても、普段なら言葉にしないことかもしれないけど、目の前の壁をどんどん超えていくこと、相手をなんとか理解しようとすること、されようとすること、そういったことに対して逃げずに誠実に向き合い、努力し続けることがこの役や物語を作っていけるんじゃないかなと思いました。目の前のエマを信じること、キャラクターや物語を信じさえすれば、言えないことも言えたりするもので、その点はナオミさんという存在に助けられたと思っています。互いに虚構の中で物語を紡いでいける関係性を作れたなと思いました。

――エマの行動力についてナオミさんはどう感じましたか。

ナオミ・スコット 衝動的で面白いですよね。でも本当のエマは衝動的ではなく、もうちょっと臆病だと思うのですが、私は彼女と比べると衝動的ではないかもしれません。直感を信じるタイプではあると思うんですけど、その直感を信じずに失敗してしまう、その勘に従うべきだったと思うことの方が多かったんです。私はどちらかというと考えすぎるタイプなので、エマの本来の姿に似ていると思います。

 私は新しいことを試すことが好きですし、人に会うのも大好きです。自分が傷ついてもいいからやってみたいと思うところがあると思います。それは役者としてすごく重要な要素だと思っていますし、必ずしも常に安全である必要はないと思っています。私もエマと同じように失敗を恐れますが、自分を曝け出すということは徐々に上手くなってきていると感じています。むしろこの数年間は不得意だからこそやってみるという考え方に変わってきました。

――マモルが作品の中で「愛とは何ですか?」と、エマに問いかけますが愛についてどう考えていますか。

ナオミ・スコット 愛については“ミリオンダラークエスチョン”とも英語圏では言われているんですけど、それがわかれば誰も困らないですよね(笑)。私にとって愛とは人生のステージによって変わっていくものです。私には子供がまだいませんが、子供がいたら愛の意味も変わってくると思いますし、また違う愛の形になっていくと思います。私が結婚した当時、夫のことをよく知っていましたが、10年後には愛が育って違う形の愛になっているかもしれないですし、とても興味深い関係に進展しているかもしれないです。

池松壮亮 人類史を見ても未だ答えは出ていないですよね。答えはひとつではありません。愛は概念で、様々です。一人ひとりの捉え方によるもので、「映画とは?」あるいは「神様とは?」と聞かれるくらい難しい質問です。きっと探し続けて、見つけては見失い、また再発見する。探す努力が必要ですし、それこそが人生なんだと今は思います。

(おわり)

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