6人組男性グループSixTONESが11月2日、シングル「Good Luck!/ふたり」をリリースした。本作はグループ初の両A面シングルで、表題曲の2曲はジェシーが『最初はパー』(テレビ朝日系)、京本大我が『束の間の一花』(日本テレビ)と、それぞれ主演を務めるドラマのW主題歌となっている。ここでは、今作でシングル8作目となるSixTONESの新曲について音楽面から迫りたい。

笑顔の調和「Good Luck!」

 「Good Luck!」は、“叶えたい夢がある人へ、たとえ失敗しても、カッコ悪くてもいいから、ありのままの自分で笑ってがんばろう!”というメッセージが込められた応援ソングだ。SixTONES史上最高の笑顔が弾け、飾らぬ魅力であふれている。

 導入からポジティブ要素全開のサウンドがシャワーのように降り注ぐ。そして同時に、「やあみんな! この歌は全ての夢追い人に捧げます 心配しないで よし、行こうぜ!(英歌詞訳)」というメッセージが耳に飛び込み、思わず、キラリと光るSixTONESの笑顔を思い浮かばせてくれる。

 音にフォーカスすると、光沢感が映えるブラスセクションが明朗に鳴り響き、80’sリバイバルサウンドをバージョンアップさせたような濃い輪郭のビートが打たれる。それらのアプローチからは、SixTONESがそれぞれの道を進む人たちの背中を押してくれる景色が浮かび上がる。

 そんな「Good Luck!」の楽曲面における最大の特徴は、歌は真っ直ぐ、ビートはクッキリ力強く、ピアノ、エレクトリックギター、ブラス、ベース、コーラスと、全てのパートがカンタービレ(歌うように、表情豊かに)で調和している点はではないだろうか。

 そういった視点で再度「Good Luck!」を聴くと、<飾らずいきましょう>というサビの一節の想いが、歌に、サウンドに、より明瞭に現れていると感じられ、<ありのまま進め Good Luck!>と歌うSixTONESの想いをより深く広く受け取ることができるかもしれない。

「ふたり」のさりげない音楽的魅力とは?

 SixTONES各メンバーの歌唱力と表現力が壮大に展開される「ふたり」。グループ初の両A面シングルということもあってか、本曲は「Good Luck!」とはガラッと真逆のテイスト。SixTONESの優しく切ない歌唱がたっぷり聴けるしっとりとしたシンプルなバラードチューンでありながらも、そのサウンドは奥深い。

 メインパートであるピアノ、アコースティックギターは叙情的にプレイされ、ビートの音数は最小限でありつつもツボをおさえた構築となっている。

 それらの点からうかがえる “引き算の美学”を感じさせるアンサンブルは、さりげなくも注目できる音楽的ポイントではないだろうか。その効果は、歌の世界観の広がりと楽曲全体の抑揚に深く関わっている。各パートが最小限のエリアで最大限のプレイをすることにより、温かさも切なさも表現されるSixTONESの歌唱と美しいハーモニーを彩っているのである。

 具体的には、例えばサビでは「もう少しリズムの音数が多めでもいけるのでは?」という解釈もあるかもしれないが、そこは「ストリングスが優雅に広がり、ボーカルとの兼ね合いもあるため、意図的にビート数を控えめにしているのでは?」という推測もできる。

 その加減により、ファルセット混じりの透明感のあるSixTONESのボーカルを真っ直ぐ受け取ることができる。さらに、サウンド的には、さりげなく心地よく鳴るアコースティックギターの高音域までもしっかり聴き取れる絶妙な音像のバランスを生んでいる。

 少々細かい点かもしれないが、これらの部分が非常に熟練されていることにより、一層SixTONESの歌唱力が楽曲の前面に押し出されていると捉えられるのではないだろうか。

様々な音楽で表現してきた軌跡

 SixTONESは、デビュー曲の「Imitation Rain」ではYOSHIKIプロデュースによるアレンジマジックが光る中、ダイナミックかつドラマチックな歌唱をみせた。

 発表シングルを時系列に追うと、「NAVIGATOR」ではシンフォニックで近代的な空気感の中で妖艶な一面をみせ、「NEW ERA」では疾走感漲るロックサウンドで更なる勢いを高めた。そして、清涼感に満ちたポップバラード「僕が僕じゃないみたいだ」をメロディアスに歌い上げ、「マスカラ」ではトリッキーなアコースティックサウンドとHIP HOPビートが融合したチルな一面を展開。さらに「共鳴」では爽快なBPMでジャジーな表情を滲ませる。前作シングル「わたし」では、しっとりとしたビート上で広がる大人の色気を漂わせた。

 デビューから振り返ると、SixTONESの楽曲は多種多様なサウンドテイストに対応し、あらゆる音楽性を血肉として、表現してきた軌跡があることに気づかされる。

 そのような「多様な音楽的要素の中で表現する力」がますます備わり、歌唱と音としてアウトプットされるからこそ、今作のストレートな楽曲の魅力がSixTONESからリスナーへ真っ直ぐ届くのではないだろうか。【平吉賢治】

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