DOBERMAN INFINITY(以下、DI)が10月28日、東京ガーデンシアターで『DOBERMAN INFINITY LIVE TOUR 2022 “LOST+FOUND”』の東京公演を開催した。公演内ではヴォーカリスト・KAZUKIが、2023年春にソロ活動を本格始動することが発表された。

 本ツアーはDOBERMAN INFINITYの約4年3カ月ぶりとなる4thアルバム『LOST+FOUND』を引っさげ、全国11カ所12公演で行われたもの。“遺失物取扱所”という意味のタイトルを掲げた本作が、ライブでどのように表現されるのかが見どころだ。11公演目となる東京公演はツアーのセミファイナルということで、各地を巡って練り上げられたステージングにも期待が集まっていた。DIによる数々の“喪失と発見”が詰まった本公演をレポートする。

 満員に埋まった東京ガーデンシアターは、開演前からすでに期待と熱気に包まれていた。そして、赤いレザージャケットを着たKAZUKI、白を貴重としたSWAYとP-CHO、黒に身を包んだKUBO-CとGS、『LOST+FOUND』のアートワークと同期した衣装でメンバーが登場した。

 アルバムのタイトル曲である「LOST+FOUND」でステージの幕が開き、冒頭から客席を煽っていくDI。オーディエンスもライトを激しく振ってそれに応える。生バンドの演奏もパフォーマンスの迫力をさらに後押ししていた。さらに「We are the one」「Backstage Freestyle」とラッシュをかける。

 4人のラップとKAZUKIのメロウな歌声がコントラストを生む「Battlecry」、スピード感とコミカルなカーレーシングのMVも思い出される「I am Who I am」と攻めの姿勢を崩さない。「SO RICH」に続く「RULES」はセンターの照明だけを使い、5人がバースごとに入れ替わって、ひとりずつ登場するような演出が見どころだった。

 「Updating Life」では、SWAYが「ついて来いよ東京!」と叫ぶ。バンドのロックな演奏にも焚きつけられ、会場全体で赤いタオルが振り乱れた。さらにサングラスを外したKAZUKIが〈この世界に正解なんか無いって〉というライムをクールに歌い出す「GOOD DAY」では、メンバー5人が楽し気に手を振りながらパフォーマンス。

 ここで駆け抜けた前半戦の熱量を緩めるように、優しい音が会場を包んで「6 -Six-」へ。それぞれの青春を歌い上げてから、切ないピアノとともにKAZUKIがMCで語る。

「僕たちは間違いなく特別な時代を生きて、今まであったはずの当たり前が、ある日突然なくなる恐怖を感じた人も多いと思います。でも本当は当たり前なんてなかったはず。たくさんの“失ってからじゃないと気づけない大切なもの”を、この時代は教えてくれているのかもしれません。忙しいから、照れくさいから、また今度でいいやーーどうして、あの時たったひと言を惜しんだのだろうと後悔する前に、大切な人に『ありがとう』や『愛してる』を伝えられるのは、今日が最後かもしれないということを忘れないように、この曲を作りました」

 その想いが詰まった「もう二度と」。マイクリレーはGS、P-CHO、KAZUKI、SWAY、KUBO-C、そしてまたKAZUKIという順番で、それぞれの想いが3連符のフロウのなかに滲む。KAZUKIのソウルフルで繊細な表現も光る。しみじみと観客は聴き入っていた。

 メンバーが退場し、アウトロのコーラス部分から、バンドのコーナーにフェードイン。本日の演奏陣はSWING-O(Key)、DJ HAL(DJ)、田中“tak”拓也(Gt)、近藤章裕(Cho)、YUI (Cho)、熊代崇人(Ba)、与野裕史(Dr)。腕利きなバンドメンバーによる安定感抜群のセッションが展開された。

 その後、衣装を替えたDIが5本のスタンドマイクの前に現れ「Citylights」でステージ再開。続いて「今日は素敵な女性がたくさん来ています! 皆さんの頑張っている姿、リスペクトです。そんなSUPER LADIESに贈ります」とSWAYが前置きして、シティポップ調な「Superlady」を披露する。

 SWAYは、少々ドキッとする歌詞の楽曲「有無」でも「俺らとみんな、今夜あるのかないのか教えてください!」と大胆に挑発。声が上がらないので明確には分からなかったが、ライトの揺れ方を見る限りでは「アリ」のようだった。

 「Don't stop the music」ではステップを見せながら、そして「JENGA」ではバックバンド勢のソロもフィーチャーしながらパフォーマンス。細かいブレイクをきっちり演奏するミュージシャンたちの心意気にも拍手を贈りたい。さらに「DO PARTY」「SAY YEAH!!」「SUPER BALL」「FLAMMABLE 」と、立て続けにアゲアゲな展開で観客の心を鷲掴みにしていく。

 MCを挟んで緩急をつけた「夏化粧」でしっとりと聴かせ、本編最後は「LOVE IS」。SWAYは「愛する喜び、愛される喜びをみなさんに教えてもらいました。みなさん、ありがとうございます!」と叫んだ。

DOBERMAN INFINIT

 ほどなくして、アンコールは「オトコ白書」でスタート。ジャマイカのミュージシャンが演奏する本場のスカグルーヴの上に“笑える男の生態”がラップされた同曲だが、ライブではコミカルさ増し増し。終始クールな美声を貫いたKAZUKIも、いつか先輩4人のように自分の過去を笑いながら歌ってほしいものである。

 その彼が「これからも大切にしたい曲」と話して歌われたのは「ずっと」。壮大な最後のサビへ、全員が1フレーズずつ繋いでいく場面はドラマティックだった。

 ここで本公演のライブ音源リリース、DVD発売を告知する映像が入る。そして、もうひとつの告知として、KAZUKIらしきシルエットが歩いているビデオが流れ、息を呑んで見守ると、2023年からKAZUKIのソロ活動がスタートするという発表がされたことで、客席からは大きな拍手が贈られた。メンバーも「超楽しみ」と祝福。新たな展開にも期待したいところだ。

「しょうもない感情をLOSTして、自分が自分でいられる場所をFOUNDしました。皆さんも自分らしくいられる環境で毎日を楽しく過ごしてください。もし、しんどいなと思ったらまた遊びに来てください。俺らが思い切り楽しませるので。こんな時代に負けんなよ!」(KUBO-C)

KUBO-C

「アリーナツアーをやって、これからというときにコロナ禍になったのでつまづいてしまったかもしれません。でもゼロから始めればいい。ここから積み上げて、最高の景色を皆さんと見たいです。もう僕たちは止まることに飽きました。全速力で突き進んでいきます」(GS)

GS

「僕はラッパーとしてのゴールを決めてないです。限界までまで想いを伝えたいと思います。『LOST+FOUND』というテーマが、もっと自分のリリックで誰かの人生を変えたり、背中を押せるラッパーになりたいと改めて思わせてくれます。また気合い入れてラップを書いてくるので、その時はよろしくお願いします」(P-CHO)

P-CHO

「アルバムを作ってツアーを始めて、この3カ月だけでも色々なLOSTとFOUNDがありました。自分たちも変わり続けるし、変わりたくないものもある。このツアーでもらったパワーをもとに、また熱いアルバムを作って、またツアーをしたいと思います。僕たちもやるべきことをやっていくので、皆さんも夢や目標に向かって頑張ってください。俺もまた頑張っていきます。次こそは声が出せると思うので、その時は今日よりもヤバいパワーでまた遊びましょう」(SWAY)

SWAY

「この世界に入って9年、思い描いていた理想と比べて自分が未熟だと焦りを感じることもあります。でも、それに向き合って、もがいて生きないと前進できないことを『LOST+FOUND』の制作で理解できました。僕たちDOBERMAN INFINITYも毎日不安があったり、迷いつつ、最後に誰よりも高く飛んでやると信じて、5人で力を合わせてしぶとく戦っています。逃げ出したくなる日があっても、僕たちが同じ気持ちでともにいますから、頑張っていきましょう!」(KAZUKI)

KAZUKI

 胸が熱くなるそれぞれのメッセージを経て「始まりの途中」で、東京公演は幕を閉じた。このツアーが終わってからも彼らのLOSTとFOUNDの日々は続いていくだろう。しかし、今日のステージが彼らの輝かしい未来への布石となることを願うばかりだ。

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)