INTERVIEW

原田優一×太田基裕

ミュージカル「ダブル・トラブル」で伝えたいこととは?


記者:村上順一

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掲載:22年09月04日

読了時間:約8分

 ミュージカル『ダブル・トラブル〜2022 夏〜』が、7月28日より都内3劇場で開催。同作は、ボブ&ジムのウォルトン兄弟によって書かれたミュージカルコメディ。本作の出演者は2名のみ、演奏はピアノだけ。歌って踊って曲を書くボビー&ジミー兄弟を演じながら、およそ10人もの人物を2人で演じる。昨年はハリウッドチーム、ブロードウェイチームの2組で公演が行われた本作だが、再演となった今回はSeason A(浜中文一、相葉裕樹、日野真一郎(LE VELVETS) 、横山賀三)、Season B(林翔太、寺西拓人 )、Season C(林翔太、寺西拓人 、原田優一、太田基裕)で展開し、それぞれの『ダブル・トラブル』を魅せる。インタビューでは、Season C(9月5日〜9月13日まで自由劇場で開催)に登場する原田優一と太田基裕の2人に再演への想いから、この作品を通して伝えたいことなど、多岐に亘り話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

空気感がわかったところで練り直せる

原田優一×太田基裕

――再演が決まった時の心境はいかかでした?

太田基裕 素直に嬉しかったです。前回の公演の時に、「再演とかあったらどう思う?」と原田さんに聞かれて、その時から「やりたいですね」という話をしていました。それが現実になったのがすごく嬉しくて。

――昨年の公演を振り返るといかがでした?

原田優一 稽古中は2人とも顔面が蒼白になるくらい大変でした。前任者がいない中で僕らが初演だったので、2チームで励まし合いながらやっていました。手探り状態から始めて、お客さんがどのような反応してくれるのか、やることが多すぎて客観的になかなか見れていなかったんです。最初は頂上にたどり着くのかすら、わからない山登りみたいな感じだったんですけど、お客さんのスタンディングオベーションのおかげで絶景が見れました。

――再演するにあたって前回とはどのような違いを出したいと思っていますか。

原田優一 前回やってみてお客さんとの一体感がわかりました。今回はその空気感がわかったところで練り直せるんですよね。

太田基裕 どこを丁寧にやればさらに楽しんでもらえるか、というのがわかった感じがしています。

――ポイントが変わるわけですね。

原田優一 今回はお互いをもっと知ったうえで作れます。

太田基裕 ただ、この作品の難しいところは、あざとくやったらおかしくなるじゃないですか。その辺りのさじ加減かなと思っていて。そのバランスというのは原田さんがすごく上手なんですけど、再演の時に難しくなるかもしれないと思っていて。そこは稽古しながらバランスを考えていきたいと思っています。前回は必死にやっていた中での面白さがあったと思うんですけど、保守的になってもダメですし、本当に難しいです。

原田優一 舞台裏がバタバタなのでこのまま行ってしまうとあまりにもジェットコースター的だな、と思いながら舞台をやっていた時もありましたし、逆に置きにいっているなと思う時もあるわけです。人間関係が複雑な登場人物ばかりなので、それを伝えようとするがあまり丁寧にやりすぎてしまったところもありました。裏がバタバタでもお客さんがついてきてくれるというのは前回の動画を観て感じましたし、お客さんもその勢いみたいなものを求めているんだなと。そこはお客さんに伝わると信じてやってもいいんだなと思いました。

太田基裕 表に出ているものが全てではないというのがすごく面白いですよね。裏側をお客さんが想像して重ね合わせて観るというのも、この舞台の面白さなのかなと。

原田優一 お客さんも息が上がるような舞台だと思うので、皆さんも体力をつけて観に来てもらわないとね(笑)。

――約1年ぶりですが、セリフなどまだ覚えていますか。

太田基裕 セリフは全然思い出せないんですけど、意外と歌詞は思い出せるかもと思いました。でも、稽古に入れば身体には染み付いていると思うので、すぐにセリフも思い出すんじゃないかなと思います。

原田優一 2人しかキャストがいないので、あーでもない、こーでもないと話し合いながらできました。「これってどういう意味だろうね」というところから始まって、ゼロから話し合いながら作ったので、動きの意味、意図や動機などは覚えています。

――演出のウォーリー木下さんとはどのようなやりとりを?

原田優一 ウォーリーさんは役者から出てくるものをすごく大事にしてくれます。「こうしたいんだけど」とお話しすると、それを採用してくださるんです。この役をどのようにゴールに持っていくかという道のりが相談できる方です。

太田基裕 すごく自由にやらせていただける方です。逆に俳優側にどうしたいかというものがないと困ってしまうかも。自由というのはちゃんと意志がないと成立しないのかなと思います。

原田優一 そうそう。稽古が終わる時にウォーリーさんから「何かありますか?」と絶対聞かれるんですよ。僕は大体その時に手を挙げて「なぜここはこうなるんですか」というのを聞いていました。もしかしたらウォーリーさんは「大丈夫です」という言葉を期待していたのかも知れないですけど(笑)。この作品は登場人物のジミーとボビーが自分達で本を書いて、曲も作って演じているんですけど、日本版ではそれを僕らが演じることになるので、一つフィルターが出来てしまいます。本人たちではないから、どうしても伝わりづらいところがでると思ったので、本読みの時にウォーリーさんに相談して、前説のコーナーを前回作ったんです。「太田と原田です。これからジミーとボビーになります!」といった感じで説明して、本編に入るというのを提案しました。

――今回、他のチームの稽古を見学したりは?

原田優一 前回、ハリウッドチームが何をやっているのかすごく気になったんですけど、惑わされるかもしれないので覗くのをやめたのを覚えています(笑)。

太田基裕 こっちはこっちみたいな(笑)。

原田優一 でも、心は揺れるんです(笑)。浜中(文一)さんはジャニーズの方なので踊りを覚えるのもすごく早いんですよね。だからこっちはコツコツやろうねみたいな(笑)。

太田基裕 そうは言っても原田さんは踊りを覚えるのも早かったですよ。僕はけっこうテンパるので焦っていたんですけど、原田さんがドシッと構えてらっしゃるので、すごく安心感はありました。

原田優一 最初の頃は「まだ大丈夫」とか余裕を見せる感じで言っていたんですけど、時間が経ってだんだん「やばくなってきたね」って(笑)。

――追い込みをかけることになるんですね。他のグループはどう見ていますか。

原田優一 寺西(拓人)さんの舞台はまだ拝見したことがないんですけど、林(翔太)さんが出演されていた舞台「イン・ザ・ハイツ」は拝見させていただいたことがあって、歌えるし、踊れるし、ルックスも良くて、『ダブル・トラブル』に決まったと聞いてピッタリだと思いました。前回、ハリウッドチームと本読みの時は一緒だったのですが、最終的には予想を裏切るようなものになっていたので、今回も蓋を開けてみたら「こうなったのか!」というのを楽しみにしています。

それぞれが持って帰るものは違う

原田優一×太田基裕

――今お二人が役者として追求されていることは?

原田優一 その時によって変わるんですけど、今は「伝えること」です。僕は長崎県の子どもたちにミュージカルを教えていて、その子どもたちやお客さんに対してもそうなんですけど、どうしたら伝わるのかというテーマがあります。子どもは特殊で言葉で伝えようと思っても難しくて、体を使ったり誇張して伝えるんです。

――ジェスチャーを交えて伝えるんですね。

原田優一 「例えばね」と話して、その「例えば」がわからないこともあります。それはお客さんに対しても共通しているところはあります。コロナ禍で人とコミュニケーションが取りにくくなって、デジタルな感じになりアナログなことが難しくなりました。それもあって人とのコミュニケーションについて、表現者として永遠の課題だったことにいま向き合っています。舞台では限られたセリフと時間の中でいかに伝わるように出来るかということを追求しています。

太田基裕 僕もどう表現して伝えていけばいいのか、というのは常に考えていることです。その答えはまだ自分の中で試行錯誤している感じです。やってみてもし伝わらなかったら好みじゃなかったで終わってしまうこともあると思いますが、それで諦めてしまったら意味がないですし、自分なりのオリジナリティ、感性を持って豊かなものを、どれだけお客様に届けられるのかというのを追求しています。もっと精進して素敵な表現が見つかればいいなと思っています。

――そんなお二人がこの作品で伝えたいことは?

原田優一 それはすごく考えるんですよ。でも、みんな感じることが違うんだと『ダブル・トラブル』で感じました。ハリウッドで夢破れて、またニューヨークに戻ったにも関わらず、やっぱりブロードウェイだよね、という歌があるのですが、ハリウッドで成功したことではなく、夢に敗れてニューヨークでのことを歌う意味合いが、お客さんの中でも着地点が違うんだなと。舞台が終わった後、それぞれが持って帰るものは違うんだろうなと思います。

太田基裕 すごく人間臭さが出ている部分でもありますよね。ハンドメイド感があると言いますか、この作品にはすごくアナログを感じます。嘘がない作品で温もりがこの作品から滲み出ているような気がしています。前回それがお客さんに伝わったからいい空気感が生まれたのかなと思います。

原田優一 今、もっくんが言ってくれたようにアナログ感というのが一番の売りなのかなと思っているので、ぜひ劇場で、生で観ていただきたいです。

――最後にお2人の活動の原動力は?

太田基裕 僕は来ていただくお客さんの笑顔ですね。それが見れると次の舞台も頑張ろうと思えますから。『ダブル・トラブル』でたくさんの笑顔が見れることを願っています。

原田優一 僕はいま教えている子ども達の成長です。自分が100%正しいことを言っているわけではないですし、手探りで考えながら教えていますけど、それが子どもたちの成長につながったんだなと思うと、すごく原動力になっています。

太田基裕 その子ども達にも『ダブル・トラブル』観て欲しいですね。

原田優一 うんうん。全国でやりたいよね。

(おわり)

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