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今年ソロデビュー25周年を迎えるINORANが、通算16枚目のフル・アルバム『IN MY OASIS Billboard Session』をリリースした。 本作は2019年からINORANがBillboard Liveで行なってきたアコース ティック・ライブ・シリーズの世界観をより多くの人に伝えるべく、Billboard Live YOKOHAMAでライブレコーディングを実施した。収録曲はリアレンジを施した既存楽曲に加え、新曲「Glorious Sky」やシンディ・ローパーの「Time After Time」のカバーも収録。そして、ライブでも共演したR&Bボー カリスト傳田真央がスペシャルゲストとして「Glorious Sky」、「Time After Time」、「Fading Memory」3曲のレコーディングに参加している。インタビューでは7月9日から同作を携えたツアーもスタートさせたINORANに、ライブレコーディングを行うことになった経緯から、本作を制作するにあたって感じていたことなど話を聞いた。(取材=村上順一/撮影=木村武雄)
その時にしか訪れない景色
――ライブレコーディングをすることになった経緯はどんなものだったのでしょうか。
アニバーサリーという意識ももちろんありますが、昨年の秋から冬にかけてビルボードでライブを開催したんですけど、その時にスタッフから「このアレンジのアルバムを作ってみたらどう?」という話があがってきました。それを聞いて、ビルボードでは何度もライブをやらせてもらっていますし、僕もいま音源化するのも良いかなと思いました。
――ライブアルバムはスタジオアルバムとは違う空気感がありますが、プライベートでもライブアルバムは聴かれますか。
そこにしかないグルーヴ感や空気感があるライブアルバムは好きですね。若い頃はレッド・ツェッペリンなどのライブ盤も好きで聴いていました。そういったものはスタジオアルバムで作るのは難しいんです。音が割れていたり録音環境が良くない作品もあるんですけど、それもリアルな感じで好きでしたね。
――今回の作品はライブレコーディングではありますが、お客さんを入れたものと趣は異なりますよね?
そうですね。今回のレコーディングは、照明や音響も通常のライブと同じようにやりました。ライブスタッフ、レコーディングスタッフなど全員がそこに集まってライブアルバムを作る感じで制作しました。
――ライブレコーディングという手法は初めてですか?
いえ、過去にリリースした『Watercolor』というアルバムは、収録した曲のほとんどを新木場STUDIO COASTでライブ録音しました。もちろんそこで録ったものにスタジオでオーバーダビングはしていますが、ベーシックな部分はライブレコーディングで作ったアルバムなんです。その時の良い印象が強く残っていたのも、今回のライブレコーディングへの布石になったんじゃないかなと思います。
――ライブレコーディングということもあり空気感をすごく重視された感覚がありました。
音楽に限らず美しいものというのは、景色だったり、手をかけこだわり続ければ、永遠に美しいものもあると思う。でも、その時間にしかないもの、その時に見たものは運命だと思うんです。例えば夕陽の写真を撮って、もう一回同じように撮ったとしてもそれは違うもので、その瞬間は2度と訪れない。音楽にもその時にしか訪れない景色というのはあって、今回はそういう作品にしたかったんです。
――一期一会な部分が強く出ていて。
そうですね。最初は、ビルボードライブとは何だろうと考えた時に、少ない音数であの空間でライブをやって自分の音楽は成立するのか? と思うこともあったんですけど、何度かビルボードでのステージを重ねていくうちに特別な場所になっていく感覚があったんです。それは楽曲のアレンジやパフォーマンスではなくて、あの場所にある空気感なんですよね。あの場所でプレイしてオーディエンスと共有する意義をビルボードライブではすごく強く感じて、その空気感をパッケージするべきじゃないかと思いました。
――傳田真央さんとのコラボもこの作品の注目ポイントですが、コラボされることになった経緯は?
スタッフからの紹介です。なので面識はなかったんですよ。
――傳田さんはLUNA SEAがルーツにあると仰っていて。
すごく嬉しいですね。傳田さんは、僕が女性ボーカルを曲に入れたいとなった時に選ぶタイプのボーカリストではなかった。だからこそ、自分のカテゴリーにハマっていなかったし、今も良い意味でハマってはいなくて、結果的にすごく良かったと思います。それは、歌うことへの姿勢だったり、声の出し方やスキルもそうです。自分の想像を超えてくるような感覚がありましたね。
――レコーディング前に打ち合わせされて?
どのパートを歌うかというのは傳田さんもアイデアを出してくれましたが、そんなに多くは話してはいないです。
――新曲の「Glorious Sky」は傳田さんと歌うことを意識されて制作された曲ですか。
今年の2月か3月頃に書いた曲なんですけど、セルフカバーアルバムとはいえ、新曲は入れたいと思っていました。傳田さんとのコラボレーションを前提に、ツインボーカルというのを意識して作った曲ですね。
――作詞は?
葉山(拓亮)くんに書いてもらいました。歌詞の内容は特にリクエストはしていなくて、日本語で書いてほしいということぐらいでしたね。デモテープは僕が英語で仮歌をうたっていたのですが、葉山くんが曲を聴いて感じたものを落とし込んでもらって、上がってきたものを見た時に、葉山くんらしい、僕には出てこない言葉が沢山あって、素晴らしい歌詞だなと思いました。言葉の響き方がじわじわ来ます。
――INORANさんが歌う中で、歌詞のフレーズで疑問点などあった時は、意味を尋ねたりもされるんですか。
葉山くんなりの見方だったり言葉の置き方があるので、あえて意味を聞いたりはしないんです。まずは、自分の捉え方で歌詞を自分と重ねた後に、意味や理由を聞いたりすると、深みが増すんじゃないかなと思っていて。なので、今の段階でどんな事を歌ったのか、真の意味は知らなくても良いのかなと(笑)。想いや願い、伝えたい、届けたいという気持ちを込めて曲を作るんですけど、完成した曲は違う反射をするんですよね。もちろん知りたい人もいると思いますけど、そこは自由でありたいと思う。そういう曲作りをしています。
一つの情報だけをインプットしているわけではない
――幅が広がりますよね。さて、シンディ・ローパーの「Time After Time」をカバーされていますが、なぜこの曲を選ばれたのでしょうか?
13歳の頃、僕が初めて購入したレコードがシンディ・ローパーのアルバム『She's So Unusual』で、その中で大好きだった曲の一つが「Time After Time」でした。色んなアーティストがカバーされているのでこの曲を聴くタイミングも多くて、いつか自分でもカバーしてみたいと思っていて。それは歌なのかギターなのかは決めてはいなかったんですけどね。
――ギターでカバーされる可能性もあったんですね! INORANさんがこの「Time After Time」を分析するとどんな魅力がありますか。
「Time After Time」は完璧な曲ですよね。もう疑うことのない名曲だから、ディテールがどうこうよりも、みんなの心の中で鳴っている、ずっと生き続けている曲なんだなと感じています。あと、僕の歌詞はポジティブなものが多いんだけど、この曲は失恋の要素もあって。この作品に収録したことで他の曲とのコントラストが出て良かったなと思います。
――本作『IN MY OASIS Billboard Session』はアコースティックアレンジとして楽曲が生まれ変わりましたが、ご自身の中で一番変化が大きかった曲は?
「raize」は特に変わったと思います。このアルバムを制作する前、今年3月にビルボードでライブをやったんですけど、その時に作ったアレンジで、自分ながらこれは面白い曲になったなと思っています。
――チェロがすごく印象的でオリジナルとは趣が違って新鮮でした。ちょっと気が早いですが、30周年に向けての意気込みをお願いします。
僕はやることが読めないミュージシャンだと思うんですけど、みんなにワクワクしてもらえるような、自分でも新しい発見をしながら、新しいものを作り続けたいと思っています。
――やることが読めないというところにすごく共感してしまったのですが、INORANさんはインプットしたものをアウトプットされる時にその片鱗を見せない印象が僕にはあるんです。INORANさんが好きなギタリストもそうなんですけど、それは意識的にそうされているのでしょうか。
そう感じるのはシンプルに自分と混ざってしまうからだと思います。僕は一つの情報だけをインプットしているわけではなくて、格好いいな、素敵だなと思った様々なものの集合体がアウトプットされていて、それは形あるものではなく、スピリットだと思いますね。
――INORANさんのフィルターがめちゃくちゃ濃いのかなと思いました。
そうだといいんですけどね(笑)。
(おわり)
ライブ情報
「INORAN IN MY OASIS Billboard Session」
7月27日(水)・28日(木)Billboard Live YOKOHAMA
8月2日(火)・3日(水)Billboard Live OSAKA
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