大好評のうちに終了したNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の主題歌「アルデバラン」が2021〜22年を代表するヒット・ソングとなったAI。その大ヒット・ソングとニュー・アルバム『DREAM』を引っ提げて、全国約30公演前後を巡る全国ツアー『AI DREAM TOUR』を敢行。記念すべき初回公演が、5月14日、サンシティ越谷市民ホールで行われた。(※一部ネタバレあり)
 
 ダンサー4名を従えて登場したAIは、オープニングからバキバキのダンスで攻めまくる。今回のツアーの見所は、ズバリ<ダンス>。実は今回のツアーのために、世界的トップ・コリオグラファー/芸術監督のルーサー・ブラウン(ジャネット・ジャクソン、クリスティーナ・アギレラ、Big Bangなど)と、エリサンドラ・キニョネス(ジャスティン・ビーバー、ジェニファー・ロペスなど)の2人をLAから呼び寄せたというのだから、その気合いの入れようがよくわかるだろう。彼らのみならず、日本からも『情熱大陸』で特集された人気振付師/ダンサーのRIEHATA(『DREAM』にはシンガーとしても参加している)やKING OF SWAGのDeeらトップ・コリオグラファーが振り付けを担当しており、超強力なバックアップのもと、今回のセットが完成したわけだ。そりゃあ、ゴリゴリ&バキバキのダンス・ショウになるわけである。加えて、今回のバック・ダンサー4人は、ルーサー・ブラウンらが審査員を務めたダンサー・オーディションによって、1,000人以上の応募の中から選ばれた精鋭であり、その実力は折り紙付きといったところ。そんな彼らと作り上げるステージは、まさに<エンターテインメント>そのものであり、特殊照明で華やかに彩られた舞台の上で繰り広げられるショウに、観客は開始早々引き込まれていった。

(撮影=cherry chill will.)

 オープニング・ナンバーの「Not So Different」や、「もう20年前の曲だよ!」と紹介しつつソウルフルに歌い上げた「最終宣告」、観客と共に拳を突き上げながら歌う様が本当にカッコいい「Independent Woman」などを迫力あるダンスと共に次々と披露したのち、人気曲「Story」や「ママへ」「パパへ」といったミディアム〜スロウを熱唱。こういった歌詞をじっくり聴かせるミディアム〜スロウもライヴの聴きどころであり、AIの真摯でハートウォームなメッセージに胸打たれた人も多かったことだろう(「『ママへ』を作ったなら『パパへ』も作らなきゃダメでしょ!」というMCからもAIの優しさが伺える(笑))。

 中盤最大の見せ場は、『SOUL TRAIN』よろしく、70sなセットが登場してのディスコ/ブギー・パート。衣装も曲のアレンジも振り付けも70年代風となっていて(ジェイムス・ブラウンのマント・ショーのような演出も!)、ディスコティックな音世界にその場にいたみんなが心から楽しんだことだろう。AIの指導のもとディスコなダンスをみんなで踊ったりと、会場の一体感も素晴らしく、このみんなで楽しめる感じもAIのライヴの醍醐味だなと思った次第だ。

(撮影=cherry chill will.)

 後半もダンスを前面に押し出したアップ・チューンがメイン。例えば今回披露した「MORIAGARO」はジェレマイ、「Welcome to my city」はエリック・ベリンジャー&ジュニア・リード、「Let it go」はスヌープ・ドッグといった、元々はアメリカ&ジャマイカのアーティストをフィーチャーした楽曲であり、音もド直球のUSヒップホップ・サウンド。AIに対して「Story」や「アルデバラン」といったイメージを強く持っている人には、ゴリゴリのベース・サウンドの上で激しいダンスをしながら英語で歌うAIにビックリしてしまうかもしれない。けれどその両方ともAIであるし、その両方を完璧にできるのがAIなのだ。とりわけライヴではテレビ番組などでは見せないハードな面を見ることができて、とても興奮してしまう。これが味わえるのもライヴに来た人だけの特権というわけである。

(撮影=cherry chill will.)

 新作『DREAM』でもラストを飾るメッセージ・ソング「We Have A Dream」で一体幕を閉じ、観客の大きな拍手に煽られてアンコールへ。アンコールでは豪華ゲストが登場して会場を盛り上げつつ、「アルデバラン」「ハピネス」を披露。2曲とも今この時代だからこそ一層響く曲であり、だからこそ最後に持ってきたのであろう。この2曲を聴きながら世界のみんなが幸せになることを思わずにはいられなかったし、ライヴを観てそう思わせてくれるAIの凄さを改めて思い知った次第だ。なかなか不安が拭えない日々が続いているが、この日この空間は間違いなく幸せと笑顔で溢れていたし、AIが希望の光を灯してくれていたように思う。この先半年以上続くAIのロング・ツアー<AI DREAM TOUR>、ぜひ足を運んでいただいて、一人でも多くの人にこの幸せな空間を体感してほしい。(Text by 川口真紀)

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