「室外機の歌」がシュールと話題に、歌っているのは元中ノ森BANDの中ノ森文子
INTERVIEW

「室外機の歌」がシュールと話題に、歌っているのは元中ノ森BANDの中ノ森文子


記者:編集部

撮影:[写真]中ノ森文子「室外機の歌」話題に

掲載:15年01月25日

読了時間:約8分

[写真]中ノ森文子「室外機の歌」話題に<1>

インタビューに答えた中ノ森文子(撮影・編集部)

 元中ノ森BANDのボーカル、中ノ森文子(29)が“室外機”の目線で歌った楽曲「室外機の歌(いつも外から)」がネット上で話題を集めている。

 空調機大手のダイキン工業が「誰の目にも触れない室外機の存在をもっと知ってもらいたい」との思いで依頼。極暑や極寒にも耐えるその健気な姿を中ノ森が楽曲で代弁した。

 この音楽ビデオは昨年7月にYouTube上で公開され、プロモーションを一切行わないなかで累計20万回の再生数を記録。予想外の反響を受けて第2弾「冬のエアコンの歌」を制作、寒さと暖かさを男女の恋愛に見立てて歌ったところこれもSNS上で話題を集めた。

 中ノ森は、08年に解散したガールズバンド、中ノ森BANDのボーカル(当時の名義はAYAKO)。バンドは、2005年に日本レコード大賞の新人賞を、翌年には金賞を受賞。観月ありさ主演フジテレビ系ドラマ「鬼嫁日記」(05年)や同じく観月主演の日本テレビ系ドラマ「CAとお呼びっ!」(06年)などの主題歌を手掛けるなど人気を集めていた。

 ガールズバンド出身ともあってロックの印象が強い彼女だが、今回はフォークソング。加えて“室外機目線”というシュールなコンセプト。ファンや楽曲を聴いたユーザーからは「意外だ」「新たな一面が見れた」などの声が寄せられ好評だ。その彼女に、今回の楽曲を歌おうと思った理由や、制作秘話について話を聞いた。  【村上順一】

■ロックのイメージを変えるきっかけに

――今回の楽曲は中ノ森さんのイメージとギャップがありますね

中ノ森 世間的には「私=ロック」というイメージがついていて。私からすればロック畑をずっとではなく、色んな音楽を聴いたりもするので、ある意味、そうじゃないコンセプトの音楽としてはすごく嬉しかったですね。フォークというか、またちょっと違う感じのものだったので。

――中ノ森BANDでボーカルをされていました。そのためバンドのイメージも強いですよね。そうしたなかで今回の楽曲はロックという印象を取り除くのに良い機会だった

中ノ森 まわりからのイメージはロック。そもそも売り出し方がそうだったのでそのイメージが固まってしまっている。そうしたなかで、今回の企画のお話を頂いた時に『私がやらせてもらえるんだ』という新鮮さと嬉しさはありました。大抵の人は、私が歌っていると知れば『中ノ森さんは違うよね。ロックだから』という想像を抱いたと思います。そうしたなかで違う一面を見せることができた。すごく嬉しかったですね。

――室外機の歌はCM化されておりYouTubeでの再生数は20万回を超えました。この反響を聞かれてどう思いましたか

中ノ森 「本当に20万回再生されたんですか」と驚きました(笑い)。びっくりした、という言葉が一番当てはまりますね。

――反響の要因はどこにあると思いますか

中ノ森 収録後の音源確認で感じたことは良い意味での違和感。コンセプトや仕上がりも含めて。室外機の気持ちを歌っているというところに「なにこれ?」という良い違和感がありますよね。私もこういうシュールなものが意外と好きで、売れるとか売れないとかはよりも、絶対的にフック(引っ掛かり)があって見ていて楽しめる。クスって思えて「楽しめる」+「ビックリ」を感じさせる作品に仕上がったと思うので、確かに20万回は凄いと思いますが、でもそのくらい作品が素晴らしいので驚く反面「やっぱりそうだよな。みんなが喜んでくれているよね」と自信もありました。

――中ノ森文子としてのこれまでのイメージを覆せた楽曲でもあると

中ノ森 ロックをやっていた事が「嫌い」というわけではないので覆すということではなんですけど、新たなことに挑戦ができたということと、皆さんが頭の中で思い描いているイメージを外した状態になれるいう点で今回のオファーを頂けたところは大きいですね。新たな人との繋がりもできたし、何よりも私の母が一番喜んでいるんですよ。「こういう歌も良いんじゃない」って。感動しちゃって。

 親にも喜んでもらえたし、今までと違うものができたというのは新鮮で。歌い方も新たに出てきましたね。無機質な歌い方でメインを歌うというのはなかなかないじゃないですか。歌詞があったら感情を乗せて歌うというところの感情の部分をなるべくフラットにして。それによって創造している作品に近づけるんじゃないかな、と歌の捉え方や表現の仕方など新たな自分を見れたというのがありますね。

■室外機を無機質に表現

[写真]中ノ森文子「室外機の歌」話題に<3>

中ノ森文子とぴちょんくん(撮影・編集部)

――室外機の立場になって歌うという心境は

中ノ森 まず「無機質」というのが一つです。感情的に歌うのは伝わらないんじゃないかな、と思ったので。無機質に歌うことで切なさとか…室外機そのものは人間ではないんですけどね。自分も室外機にスポットを当てたことがないので(笑い)。歌詞を読んで室外機ってすごい大変だな、という同情から入った感じですね。でも、そこから勇気をもらって、ただ勇気をもらっての表現の仕方として感情を一定にするという。機械の部分もありつつでも、そこには心もあるんじゃないなか、と。その間をうまく表現したかったんです。

――歌手の中では中ノ森が一番、室外機の気持ちが分かっているかもしれないですね

中ノ森 そうですね(笑い)

――知る限り室外機目線で歌った方はいないですよね

中ノ森 そうかもしれないですね(笑い)。皆さんにこの歌を聞いてもらった後で、室外機を見た時に胸がキュンとした、という意見もあって。ちょっとでもそういう視点から物を考えられるようになったということは、人としても成長できたんじゃないかなって思います(笑い)。物を大切にする子供が生まれてくるんじゃないかな、とか。擦れてる大人でももう一度子供の時のような気持ちを取り戻せるんじゃないかな、とか。

――教育にも良いってことですね

中ノ森 自分を見つめ直す歌でもあるんです。普段感じている自分の器と室外機を比べたら小っちゃい小っちゃい(笑い)。

――深い歌なんですね

中ノ森 文句1つ言わずにね雪に降られたり、犬におしっこを掛けられたり強風に耐えたりといろんなことに耐えてるわけですからね。それに比べたら自分はちっぽけですよ。

■歌手人生はジェットコースター

――「中ノ森文子」で検索すると関連ワードで室外機も出てきます

中ノ森 え~!! そうなんですか。そういえば、大体「あの~」と尋ねられた時って「中ノ森BANDの~」がほとんどなんですけど、この前は「あの~」の後に「あれですよね!」って言われたので「またバンドのかな」と思い先手打って「そうですバンドの」って答えたら「室外機の方ですよね?」って言われて(笑い)。自分もビックリして、先に「バンドの~」と言ってしまった自分が恥ずかしかった(笑い)。やっぱりあの動画は1回観ただけでも頭に残るんでしょうね。

――歌手としてのご自身のこれまでを室外機に例えるとどうですか

中ノ森 人生は結構ジェットコースターだったので、そいう意味では室外機の気持ちはより分かるかも知れないですね。人生の波は緩やではないので自分の過去と照らし合わせながら考えていくうちに、より室外機の気持ち近づけましたね。

――室外機に例えると中ノ森さんにとって冬の時期はいつ頃にあたりますか

中ノ森 それを取材で面白く話すのは難しいな。言えない事ばっかりが頭の中に駆け巡るというか(笑い)。でも、辛かった事も過ぎてしまえばそう思わなくなるタイプなので。それよりも毎年のこの冬の寒さの方が辛いですね(笑い)。人生の中でみんなそれぞれあると思うんですけど、過ぎてしまえば今後は嫌なことを繰り返さないようにしようと思うので前向きな方ですね。

――今年の活動のテーマは

中ノ森 自分の中で「中ノ森文子」はこうじゃなきゃいけない、とか可能性を自分で狭めたくはないですね。去年は、新たな仕事だったりいろんなことに挑戦ができたので、今年は一緒にお仕事するうえで喜んで貰うというの含め持続ですかね。持続が一番難しいですよね。頭の中で自分という物をカテゴリー化して狭まくないようにしたいなと思っています。なんでもできれば良いってもんじゃないけど可能性は常に大きくね。

――では最後にファンの方々に一言お願いします

中ノ森 「いつも外から」の動画を見て頂ければ全てを分かってもらえると思いますので、ぜひ見てください。

■中ノ森の歌唱力にびっくり

[写真]中ノ森文子「室外機の歌」話題に<2>

インタビューに答えた中ノ森文子(撮影・編集部)

 インタビューでは中ノ森に加えて制作サイドにもレコーディング時の話を聞いた。

制作サイド 中ノ森さんが歌ってくれると聞いて「本当に歌ってくれるんですか」って驚いてしまったのが本音です。この歌はシュールなんです。歌のトーンも含めてあまりこう歌い上げちゃうと暑苦しくなるんですよ。「そこはもうそのぐらいの感情のトーンでうまくいける」みたいな。収録の時も2テイクから3テイクぐらいでいきなり真ん中のストライクゾーンにズバーンと。中ノ森さんの歌唱力に助けられた、と思います。

中ノ森 キャラ設定はいろいろ考えたんですけど中ノ森文子ではないというか。シュールさが伝わらないといけないのでいつも通り感情を込めてロックでいけば良いという問題でもなかったので、ニュアンスっていうのはすごく考えましたし、自分もフックがあって面白いのが好きということもあって。そういう意味では会わずとも意思の疎通は早かったのかも知れないですね。

制作 そうですね。最初から「こういうことですよね」というのが早かったので凄いびっくりしました。

中ノ森 楽しく仕事ができるものっていいじゃないですか。もらった時に「あ~これからがんばらなきゃな」と思うのか、「これやりたい」と思うのかで全然モチベーションも変わってくるし。その中でやりたいと思える仕事だったので本当に楽しかったです。スタッフさんも本当にすばらしく素敵な方たちだったので、打ち上げも楽しかった(笑い)。

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[写真]中ノ森文子「室外機の歌」話題に
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