TRIPLANE、変化の兆しが詰まった『四次元飛行』に迫る
INTERVIEW

TRIPLANE

変化の兆しが詰まった『四次元飛行』に迫る


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:22年03月30日

読了時間:約10分

 結成20周年を迎えるロックバンドのTRIPLANEが3月23日、通算11枚目となるフルアルバム『四次元飛行』をリリースした。2002年に結成され、2004年に「スピードスター」でメジャーデビュー。アニメ『ONE PIECE』エンディングテーマ「Dear friends」や北海道日本ハムファイターズ「10th Season プロジェクト」テ ーマソング「ファイターズと共に」、映画「仮面ライダージオウ NEXT TIME ゲイツ、マジェスティ」の主題歌「Brand New Day」をはじめ数々の楽曲がタイアップとして起用。今作『四次元飛行』は様々なチャレンジが盛り込まれた作品で、バンドの過去と未来が感じられる1枚に仕上がった。インタビューでは結成20年で何を想うのか、バンドはこの先どこに向かっていくのかなど、多岐に亘り4人に話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

情熱が消えていってしまう危機感

『四次元飛行』ジャケ写

――結成20周年、おめでとうございます。この20年という期間はどう感じていますか。

江畑兵衛 ありがとうございます。ハタから見て他のバンドが20年続けているのをみると、すごいなと思うんです。でも、僕らはバンドを続けることを目標にやっているわけではないので、長くやっているといった感じもしていなくて。

――バンドとしてのターニングポイントは?

江畑兵衛 沢山ありますが、一番は事務所もレコード会社も辞めて独立したときです。自分たちらしく上を目指したいなと。その独立がなかったらバンドを辞めていた可能性もあったかもしれないです。

――独立しなければ辞めていたかも、というお話がありましたが、この20年では解散の危機も?

江畑兵衛 バンドで揉め事もそんなにはなかったので、解散の危機というのはなかったです。独立するちょっと前は、以前所属していたレーベルと自分たちが思い描いていたものにズレが生じてしまって、活動の停滞感がありました。この感じが続くと自分の中の情熱が消えていってしまうのでは? という危機感はありました。昔は自分たちで独立して活動するなんて想像したこともなかったんですけど、そうでもしないと自分の音楽人生は終わるかもしれないと。メジャーという大きな船から小舟に変わって何ができるのか、という不安はありました。

――KJさんはどう感じていますか。

KJ 僕は2019年からなので、このバンドではまだ3年くらいなんです。昔からTRIPLANEの名前は知っていたので、僕の以前の活動からの期間をかけてやっと出会えたバンドで、運命的なものを感じるし、この先の20年、前を向いていくと言った方が気持ちは強いかもしれないです。

――ちなみに加入する前と今とではバンドのイメージ、ギャップはありましたか。

KJ こんなにお酒を飲むバンドだとは思いもしなかった(笑)。最初のイメージは江畑は刺激物とか食べないような、すごくストイックなイメージがあったんです。それを感じたのは僕が加入して初ライブの前にラーメンを食べに行った時のことです。僕はライブ前だから刺激のあるニンニクは控えようと話したんですけど、江畑は「全然気にしないよ」って(笑)。

――江畑さんは喉が強いんですね! 武田さんの20年は?

武田和也 若気の至りと言いますか、ひょんなことから自衛隊が音楽に代わって、同級生と一発当てようぜ!みたいなスタートでした。江畑の才能に惚れて人生が変わったんです。まだ自分たちの夢が形になっていないので、それがずっと続いている感じなので、20年というのは実感がないです。

――個人的なターニングポイントは?

武田和也 バンドを始めた時ですね。僕だけ楽器未経験でスタートしてしまったので。

広田周 武田は僕らとしか演奏したことがないまま、メジャーデビューしてしまって。みんなと同じ気持ちで、描いていた夢を追っかけていて。ありがたいことにいろんな人に助けてもらっているし、離れてしまった人もいますが、それでも気にかけてくれている人もいて、そういった方たちに恩返ししたいという気持ちです。

――夢というのは?

広田周 ホールやドームツアーです。ライブでたくさんの人の前で演奏したいというのは、今でも変わらない夢なんです。もちろん今も大きな会場でライブはさせてもらっていますが、その時に生きがいを感じています。

江畑兵衛のこれまでと、これから先が詰まっている

村上順一

TRIPLANE

――11枚目のフルアルバムがリリースされました。アルバムタイトル『四次元飛行』というのも印象的なのですが、どんな想いを込めて?

江畑兵衛 僕がつけたんですけど、英語のタイトルとか色々考えました。アイデアに煮詰まってきた時に、改めて僕らは4人だよなと思い、そこから四次元という言葉が出てきました。そして、自分たちの活動のイメージが飛行しているものに近いんですよね。どんな空間を飛行しているのかといえば誰も知らない説明もできないようなところを飛行している、と思いこのタイトルにたどり着きました。

――広田さんはどんなアルバムになったと感じていますか。

広田周 アルバムをリリースするというのは僕らはツアーがやりたいからなんです。ちゃんと新しい曲で、どんどん挑戦していきたいという意志があります。そして、自分たちの変化を楽しみたいというのもあって。今作では新しい曲調への挑戦も沢山あり、ドラムの音もすごく変わったんじゃないかなと自分では思っています。

――特に印象的だった曲は?

広田周 僕らのレコーディングはすごく特殊で完成形をわからないままレコーディングしていくんです。楽曲を作っている兵衛の中にイメージはあるんですけど、僕が聴くものにはメロディもなかったり、ちょっとしたコードぐらいしかない状態です。

――曲の断片しかない。

江畑兵衛 「アイラブユー」という曲はデモで渡した時と完成したものでは原型をとどめていないですし。ドラムしか残っていないくらいで。

広田周 それを僕らは17年やっているので、慣れていて。その中でたまにリズムが打ち込んである場合があって、今作では「Triumph -red and blacks-」がそうでした。自分では考え付かないようなリズムで、「こんなのできるのか」と思いながらも練習していたので、挑戦という意味で「Triumph -red and blacks-」は印象的です。簡単に言うと一曲を通してドラムソロをやっているような曲です(笑)。

――このやり方だと他の人が加入するのはなかなか難しいでね。

広田周 この話をするといつもびっくりされるんですけど、僕らにとってはこれが普通なんですよ。レコーディングの当日朝6時くらいにデモが送られてきたりすることもあって。でも、完成系を知らないからこそ、トラックダウンの時はすごく新鮮で楽しいですよ。

KJ 僕は3年前に加入した時は「初回だから」と江畑が割と早めに音源を送ってくれました。でも、今はみんなと同じで(笑)。僕もレコーディングは歌詞がない状態、メロディもシンセ音という中で弾くんですけど、それもこの3年でだいぶ慣れてきて、歌ものというのが前提の曲たちなので、この歌詞ならこういうギターフレーズというのもあるんですけど、それもわかってきたかなと。

――初回の優しさがあったんですね(笑)。武田さんはアルバムの制作を振り返ると?

武田和也 「Triumph -red and blacks-」のデモを聴いた時に、これはベースを変えなきゃダメだと思って、5弦ベースにしました。僕はこれまでずっと4弦ベースでした。4弦ベースのままドロップチューニング(音程を下げるチューニング)で対応できますけど、このタイミングで新しいチャレンジをしても良いんじゃないかと思って。以前から4弦の一番低いE音より、もっと低い音が欲しい傾向が見えていたんです。それで今回5弦ベースを使ったら、全部5弦ベースのアレンジになっていて。なので、ずっと聴いてくれている人たちは重心が下がったと感じてもらえると思います。

江畑兵衛 5弦ベースにしてくれなかったら生まれなかった曲も沢山ありましたから。

――これはライブでも大変ですね。

武田和也 兵衛にはもっと自由に曲を作ってもらいたいので。ただ弦間が4弦と5弦では2ミリほど変わるので、慣れるまでが大変なんですけど、頑張ります。

――KJさんは今作はどのように感じていますか?

KJ 僕は加入してから3枚目のアルバムなんですけど、この作品を何年後かに振り返った時に、このアルバムから変化が起きてきたよね、と思ってもらえる作品なんじゃないかなと思います。「江畑兵衛がまた一つ突き抜けたんじゃないか」と思いました。未来につながるヒントが隠されていそうな作品になったと思います。

――ご自身の中で印象的だった曲は?

KJ 「妄想飛行」です。TRIPLANEであり、今までのTRIPLANEではないと言いますか。この曲には江畑兵衛のこれまでと、これから先が詰まっている気がしていて、レコーディングしている時から「この曲すごい」と思ってましたから。

シンプルな状態でどこまで聴かせられるか

村上順一

TRIPLANE

――江畑さんはどんな作品になったと思いますか。

江畑兵衛 僕はこの作品がどんなアルバムになっているのか、まだわかっていないですね。今も毎日10曲通して聴くんですけど、見えてきていない。これで良かったのか、やりたい事がちゃんとできたのか。いろんなことを考えて作っていたんですけど、ゾーンに入っているような状態で生まれた曲、アイデアが出てきたものの連続と言いますか、なぜこうなったのかわからない曲もあったり。もちろんわかるものもあるけど、過去一でそういう感じの曲が多かったと思います。

――アルバム制作の核になった曲はありますか。

江畑兵衛 アルバムの核になる曲というのは割と先にあるんですけど、今回はそれがなくて。どれを核にしていこうか、という感じもあったので、今までと作り方も違いました。ただライブで演奏していく中で育っていって、自分が予期せぬ形で、曲の役割がわかったりするんです。それはライブを意識して作っているからで、アルバムが完成した段階ではわからないことも多いんです。

――楽曲制作の中で印象的だった曲は?

 「NOT YET」はこんなにスムーズに出来た曲はないですね。ピアノを弾きながら仮歌をスマホのボイスメモに録音して、3分くらいで出来てしまった感じなので、このアルバムの中でも異色です。完成までのスピード感があってすごく好きな曲です。

――前作と比べると歌い方の変化を感じました。

江畑兵衛 歌い方は変えました。レコーディング環境も変わって、今までは爆音で聴かないとテンションが上がらないので嫌だったんですけど、今回はすごく小さな音でモニターして自然と出てくるような声、語りかけるような歌を意識してレコーディングしました。すごく納得のいくものが出来たと思います。レコーディングの日程は基本決まっているので、その日の体調がどんな感じなのかわからないんですけど、今回のレコーディングスタイルはその影響も少なくて、これは自分の中で正解だったと思います。今後の指標にもなりました。

――ご自身の耳にも優しいですよね。

江畑兵衛 本当にそうです。なので、普段音楽を聴いている環境も耳に優しいイヤホンに変えましたから。他の人が聴いたら「何これ」っていうくらいエッジがないです。僕はスピーカーで作業はしない、長時間イヤホンやヘッドフォンで作業するので、そういったものを選んで、普段からその音に慣れるようにしています。

――歌声を変えたいという想いは昔から?

江畑兵衛 歌声を変えたいということではなくて、理想を追い求めた結果です。自分の声の良いところと嫌なところがあるんです。その自分が嫌だと感じている部分は腹に力を入れると比較的出しやすくて、でも、その嫌な部分を出さずに理想の高い音を出すにはテクニックが必要だと思いました。

――最後に今皆さんが追求していることは?

広田周 僕はバンドのマネージメントのようなこともやっているのですが、常にバンドのことを考えていて、どうやったら上手くいくのか、少しでも良い方向に行くように、というのを追求しています。

武田和也 僕はやっぱり5弦ベースです。今作には今までになかったフレーズが沢山詰まっていますし、運指も新しいものも出てきました。なので、6弦ベースにも興味が出てきましたから。

江畑兵衛 おっ、これでベースでコードもいけるな(笑)。

広田周 それってもうギターじゃん(笑)。

――確かに(笑)。では、KJさんの追及されていることは?

KJ 僕はギターです。僕は歌があってのギタリストだと思っていて、歌がなかったら僕の存在意義はないというくらいに思っています。歌の背中を押すような、如何に江畑兵衛の歌に追従する音を出せるか、というのを追求しています。

江畑兵衛 僕は歴史です。歴史の勉強は学校で習った程度しかないんですけど、戦国時代は好きでしたが、他は興味がない部分もあったりして。でも、当時興味がなかった時代の話や世界史にいま興味があります。歴史は全てが今に繋がっているじゃないですか? 例えば何かを紐解くと、ここに繋がっていたとか、自分が知らないことが実は繋がっていたというのが面白くて。

――音楽で追求していることは?

江畑兵衛 音数を減らすことです。シンプルな状態でどこまで聴かせられるかというのはテーマとしてあります。僕はどちらかというとデコレーションしていくタイプなので、素材の味だけで勝負する曲というのも、これからのチャレンジとして興味があるので、追求していきたいです。

(終わり)

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村上順一
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