第4代目の歌姫に輝いた岡田奈々

 AKB48グループの中で最も魅力的な歌い手を決める『第4回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』の決勝大会が12日、千葉・舞浜アンフィシアターで行われ、AKB48兼STU48の岡田奈々が4回目にして初めて歌姫に輝いた。

 名前が呼ばれた瞬間、拍手が鳴り響いた。「大丈夫ですか?」と驚く岡田奈々は「このイベントが私を強く成長させてくれました。毎年くじけずにやってきて良かった」と喜びを噛み締めた。

 第1回大会から優勝候補の一角として大会を盛り上げてきた。元AKB48の矢作萌夏(第2回大会優勝)やSTU48の池田裕楽(第3回大会優勝)という後輩が優勝したときも隣で笑顔で優しく見守った。だが、今回は違った。

 「これまでは楽しかったらいいなとか、盛り上がればいいなと思っていましたが、今回はどこかで自分が主役になりたいなというちょっとわがままが出てしまいました」

 それには理由がある。昨年は、エイベックスに移籍。更に、AKB48としては転機となる「根も葉もRumor」でセンターを務めた。

 「これまでは自分が真ん中じゃなくても支えられたら良いなという思いが強かったんですけど、センターや事務所移籍でソロ活動が増えていくことを実感していくなかで、みんなに頼りすぎるのではなく個人としても成長しないといけないと思いました。今年は盛り上げるだけでなく、自分個人として成長した姿を見せたいと思いました」

EGOIST「名前のない怪物」を歌う岡田奈々

 この大会が最後と決めていた。「その考えは変わらないです」。覚悟を決めた臨んだ。

 決勝大会1回戦で歌ったのはEGOIST「名前のない怪物」。安定したテンポやピッチを取るのが難しい曲だが「前回の自分を超えたいと選びました。難しくて歌いこなすのができなかった曲。でも歌い切りたかった」。岡田が作る歌の世界、そしてそのテンポ感にカメラのシャッターも踊った。

最終決戦、ファイナルで「未完成」を歌う岡田奈々

 そして、勝ち抜いた8人で競うファイナル。歌ったのは家入レオの「未完成」。シンプルなサウンドのなかで頼りになるのは自身の歌声。感情の高まりは必要だが力み過ぎてはならず、且つ繊細に表現しなくてはならない難度の高い曲だ。「何歌おうか探している時に巡り合えた曲で、好き嫌いなく選びました」。歌い終えた岡田は「めっちゃ気持ち良かった!」と笑顔を見せたが、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、涙を流した。

 応援に駆け付けた向井地美音は、岡田が歌う「未完成」を聞き、涙ながらに「アイドルとしての奈々ちゃんではなく、個人の奈々ちゃんが見られたと感動しています」と称えた。

 岡田は優勝が決まった瞬間も「いいんですか?」と信じられない様子だったが、そう言葉に出るほどレベルが高い大会だった。大会が終えた後の取材でも「嬉しい気持ちと現実をまだ受け止められていない気持ちです」とまだ夢のなかにいるような気分という。

EGOIST「名前のない怪物」を歌う岡田奈々

 優勝の要因は「自分でも分からないです」と答える岡田だが、努力が実を結んだことは明白だ。前回のファイナリストらで結成された「Nona Diamonds」でゴスペラーズの黒沢薫から直接指導を受けたことも大きい。個人としてもYouTubeチャンネル「落とし穴チャンネル」で様々な楽曲に挑戦してきた。込める思いを思いだけで歌うだけではなく、養われた技術力があって生まれる表現力。そして歌の余白。それが曲に深みを付けた。

 黒沢からこの大会でかけられた言葉が印象的だったという。「これからソロ活動をしていく中で、自分のダメなところも受け入れることが大事。努力し続けることも大事だけど、良いことも悪いことも受け入れてやっていかないと」。それが個性、いわゆる“味”になるのであろう。

 「デビューして10周年ですし、事務所さんにソロデビューさせてくれないかなって思ています。でもまずは自分の実力を付けたいです。まだまだなのでもっと表現力を付けたいです」

 「私の1位が48グループにプラスになれば!」と最後までグループ全体を考えていた岡田。だが、過去の優勝者は2人(野島樺乃、矢作萌夏)は卒業しているが、「まだ卒業という感覚はなくて、この1年試行錯誤して判断したい」とも語り、「この結果に恥じないように活躍したいです」と気を引き締めた。

EGOIST「名前のない怪物」を歌う岡田奈々

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 仲が良い村山彩希と決勝大会前にカラオケで2時間練習した。喉を潤すため唐揚げも食べた。その村山も審査員特別賞を受賞した。“ゆうなぁ”の愛称で知られるほど仲のいい2人。これまでチーム4で一緒だったが今回の組閣で岡田が離れる。その「4」という数字。第4回大会で優勝、仲のいい村山と共に決勝大会に臨めたこと、そして、子のように慕うSTU48から岡田を除く4人がファイナリストに選ばれた。ファイナル歌唱順で引き当てたのは「7」だったが、これらから「4」と言う数字に奇縁を感じる。【取材・撮影=木村武雄】

岡田奈々

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