Saucy Dogが9月29日、バンド初となる単独ホールツアー「Saucy Dog ワンマンライブ 全国ドッグラン!! “今度こそ、はじめてのホールツアー!”」を東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)からスタートさせた。

 もともと昨年3月に開催が予定されていた「はじめてのホールツアー」が新型コロナウィルス感染拡大の影響で全公演中止になり、仕切り直しで開催された今回のツアー。今年2月に初の日本武道館ワンマンを成功させ、大きく成長を遂げたバンドの現在地を全国に届けるべく、昨年予定されていた4ヵ所4公演から10ヶ所12公演に大幅に本数を増やしたかたちでの開催になった。

(撮影=白石達也)

 その幕開けとなった東京2Daysの2日目、9月30日のLINE CUBE SHIBUYA公演は、「新しい曲もいっぱいあるので、気合いを入れてやります」と、せとゆいか(Dr)が意気込みを伝えたとおり、8月にリリースされた5枚目のミニアルバム『レイジーサンデー』の最新音源が数多く披露された。天井の高いホール会場を生かした美しいライティングが楽曲とシンクロした「シンデレラボーイ」や、「やっと満足のいくSaucy Dogの“東京”ができました」と、石原慎也(Vo/Gt)が手応えを語り、エネルギッシュな演奏を聴かせた「東京」。さらに、ドラマーのせとが初めて一部メインボーカルを務めた不器用で切ないミディアムナンバー「リスポーン」など、いままで以上に“歌の良さ”を追求し、新たなチャレンジも詰め込んだ『レイジーサンデー』の魅力があますところなく表現されていった。

(撮影=白石達也)

 新曲だけではなく、この日はバンドのキャリアを総括するようなオールタイムなセットリストが用意されていた。石原が弾き語りで歌い出した「煙」では、途中で加わったバンドサウンドが一気に疾走感を加速させ、会場がミラーボールの光で包まれた「雷に打たれて」では、全身を使ったアグレッシヴなプレイでも魅了する秋澤和貴(Ba)が頭上で手を叩き、お客さんのハンドクラップを煽った。バンドが現体制になった2016年以降、ライブという空間を大切に活動してきたSaucy Dogの「ライブバンド」としての持ち味は、ホール会場でも変わることなく発揮されていた。

(撮影=白石達也)

 ワンマンライブ恒例のアコースティックコーナーでは、前作ミニアルバム『テイクミー』の収録曲「film」が披露された。この曲について、石原は「僕はめちゃめちゃ未練がましいほうで、なかなか前の彼女の写真とかを消すことができないんですけど。みんなにも当てはまるところがあるといいなと思います」と説明。せとがカホン、石原がアコースティックギター、秋澤はエレキギターという編成で届けた、やわらかな3拍子のミディアムバラードが会場をアットホームな雰囲気で包み込んだ。

 MCでは、「2,000人近くの人がひとつの夜を過ごすことはなかなかできることじゃないと思います。薄っぺらい言い方だけど、奇跡に近い」と、久々に客席を満員にしてソールドアウトとなった会場に立つ感動と喜びを伝えた石原。さらに、「みんながいないとライブをする意味がないし、音楽をやる意味がない。みんなの生活の一部にSaucy Dogの音楽がなれたら」と、コロナ禍に改めて強く感じたという音楽を届ける意味を、真っ直ぐに伝えた言葉が印象的だった。

(撮影=白石達也)

 ステージ上でメンバーが「すごく楽しい!」と何度も口にして、最高のスタートを切った「今度こそ、はじめてのホールツアー!」は、12月2日の東京ガーデンシアターまで、2ヵ月にわたって開催される。石原は「楽しいなって言い合えるような間柄にしたいと思っています」、せとは「ガーデンシアターでは成長した姿を見せたい」と、ここから始まるツアーへの想いも語っていた。ツアーを重ねるたびに自信をつけ、ロックバンドとしての進化を積み重ねてきたSaucy Dogは、大きな挑戦となる今回の初のホールツアーを完走したとき、きっとまた一回り大きなバンドになっているだろう。【秦理絵】

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