INTERVIEW

吉田美月喜

目の奥の感情。個性が明確に現れた『Petto』『ドラゴン桜』
MIRRORLIAR FILMS Season1


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年09月17日

読了時間:約8分

 吉田美月喜が、短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS Season1』(17日公開)の一編『Petto』(枝優花監督)で主演を務める。演じるのは、夢を抱えながらも親が希望する進路を目指そうとする高校2年の主人公・春乃。その春乃が憧れを抱く幼馴染のめっちゃん役を横田真悠が務めた。吉田は、今年4月から放送されたTBS日曜劇場『ドラゴン桜』で高校生バドミントントップクラスの岩崎楓(平手友梨奈)とペアを組む清野利恵を好演した。全く異なる作品だが、2作にみえるのは彼女の役者としての個性だ。その真意を聞く。【取材・撮影=木村武雄】

横田真悠演じる“めっちゃん”(左)と、吉田美月喜演じる春乃。『petto』シーンより。(C)2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT

『ドラゴン桜』

 Netflix『今際の国のアリス』では物語の鍵を握るアサヒ役を好演。最近は日本テレビ系ドラマ『ネメシス』など話題作への出演が続き、今年4月から放送され話題を呼んだTBS日曜劇場『ドラゴン桜』では、平手友梨奈演じる岩崎楓と“イワキヨ”ペアというダブルスを組む清野利恵を演じたことも記憶に新しい。日曜劇場初出演ともあって、彼女にとっては大きな経験になったはずだ。

 その清野は常にトップを走る岩崎への嫉妬心からある行動を起こすのだが…。

 「(岩崎)楓のライバル役ということもあり、視聴者の方をイラつかせることができるのか、不安を抱きながら撮影に臨みました。中途半端にやってしまったらモヤモヤが残るだけなので、『清野がムカつく』と思って頂けたらすごく嬉しいです」

 実力を持ちながらも岩崎を超えることができない。ただ“イラつかせる”だけでなく、清野のそんな悲しさが吉田の芝居には滲み出ていた。

 「(清野)利恵は、楓のカッコよさを一番分かっていると思っていて、人として負けている部分があるというのを気づいていたと思うんです。それが第2話の終盤の試合のシーンに表れていて、楓がかけてくれた言葉によって改めて『私は選手としてだけじゃなく、人としても負けたな』と思ったと思うんです。周りからどう見られるかということだけを考えて演技すると『この役を良く見せたい』と思ってしまうと感じたので、利恵に関しては自己中心的にいようと心掛けていました。利恵の悲しさに気付いて頂けたのは嬉しいです」

 試合ではペアとして息の合ったプレイも見せているが、楓を演じる平手の感情を引き出す役割もあった。

 「クランクインの1カ月前から平手さんとバトミントンの練習をしていたので、撮影の時には良い関係性を作れていたと思います。利恵は、楓に対する執念と言いますか、思いが強い子。イラつかせられるかという不安もありましたが、意地悪な顔なども含めて新しい表現もでき、演じるのは楽しかったです」

 それを経ての本作、と思いきや、実は撮影時期は重なっていた。

 『ドラゴン桜』の清野は役を作り込み、一方の『petto』の春乃はありのままを意識した。「それぞれの個性をどう出すか、考えるきっかけになった」と語る吉田だが、清野の芝居にも見られた、キャラクターが抱える多くの感情が、春乃にも表れている。セリフには描かれない心情を、表情や雰囲気などで伝える、それこそが吉田の表現、個性ともいえる。それが2作ではっきりと見えた、いわば彼女にとって大切な作品になったに違いない。

 ここからは『Petto』について一問一答。

吉田美月喜

『Petto』

――『Petto』の撮影はいかがでしたか。

 春乃は、迷いがあったり、言いきれない弱さ、人に流されやすいところが、私と似ていると感じました。枝監督には「この作品はありない事や衝撃的な事など色々な事が起きるけど、そのものが何を伝えようとしているかは考えずに、ただ目の前に起きているものを素直に受け止めるだけでいいんだよ」と言って下さいました。その言葉が、同じ時期に撮影していた『ドラゴン桜』との気持ちの切り替えが出来たのだと思います。『ドラゴン桜』は自分で役作りをして色々考えて演じていましたが、春乃は私自身のままで演じられたので、監督の一言に感謝しています。

――同時期に異なるものをやった経験は、ご自身にとってどういうものになりましたか。

 難しさや色々とごちゃまぜになるのかなと思ったんですけど、割り切って出来た気がします。これがもし、キャラクターが似ていたら、それぞれで違う個性を出すのにもっと難しさがあったんだろうなと。そういった意味でもいろんなことを考えられるいい経験になりました。

――横田さんは、吉田さんの印象を目で物事を語るのですごいと。逆に、横田さんの印象は。

 「めっちゃんそのものだな」という印象がありました。柔らかい雰囲気を持っていますが、セリフや日常会話での一言に重みや説得力があって、しかもめっちゃんみたいに綺麗で。私にとっては、余裕がある綺麗なお姉さんみたいに見えて、春乃が憧れるめっちゃん像というのも、私が見ている横田さんのような感じなんだろうなと思いながら話していました。

――お互いに引き出して、引き出されてというようないい関係性だったと思います。

 私自身、横田さんの演技でグっときたのが、最後のバスで「私は人生責任を持って生きている」というセリフのところです。演技をしながら見ていて、春乃自身にも刺さったと思いますが、私自身にも刺さりました。横田さんだからこそ出来ためっちゃん像であり、その言葉が私自身に刺さったのも横田さんだったからだと思います。

――明るく軽い感じで言うのがいいですね。

 なかなか言えないですよね。実際、私が言えるかって言ったら、今は言えないと思います。でも、横田さんなら言えそうという説得力を持っていらっしゃって。めっちゃんというより、横田さん自身が言っているのかなというくらい、めっちゃんのまんまだと思いました。

――自分の人生に責任を持っているかといったら、まだそうでもないかもしれない?

 なかなか言えないですね。

――でも、役に対しては責任を持って生きているわけですよね。

 そうですね、役に対しては。責任を考えるようになったのは、高校卒業してからです。今年3月に高校卒業したので、オーディションで「高校3年生です」と言えなくなったのは大きいなって思います。「高校生」という立場に甘えることができないというのと、誕生日が3月なので、高校卒業のタイミングでちょうど18歳になりました。18歳になると、オーディションで受けられる役も増え、仕事が出来る時間帯も伸び、大人への第一歩を踏んだ感じですが、気持ちがまだ追い付けていない感覚があって、早く大人になりたいというか。

――追いついていないという話もありましたが、なぜ大人になりたいのですか。

 信念を持った女性がかっこいいと思っていて、そういう女性になりたくて。責任を持っているかって言われたら、今は人生に責任を持って生きているとは言えないからこそ、早く言えるような大人になりたいなという気持ちがあります。でも、そう思っているのも子供だなと思うんですけど…。

――その時の感情はその時しかないから、大事にしたほうが良いと思うんですよね。そんなに焦らなくても。でも高校卒業してちょっと“特典”がなくなったんですね。

 オーディションに参加する人たちは年代が一緒なので高校生の子と会うこともあって、ひとりずつ自己紹介した時に、高校〇年生ですとか、中学三年生ですとかみんなが言っているのを聞いて、「あ、そうだ、わたし学生じゃないんだ」って(笑)。「18歳の吉田美月喜です」と言うと、「もう高校生じゃないんだ」という現実というか、甘えてられないなって感じになります。

吉田美月喜

――『今際の国のアリス』の時に、主演の山崎賢人さん(※崎は立に可)を見て、現場を明るい雰囲気にする役者になりたいという話をされていました。今回は主演でしたが、どうでしたか。

 枝監督が、話しやすい雰囲気を作って下さる方で、この作品は色んな不思議な事が起きて、違和感だらけの作品なんですけど、そこに枝監督の温かくて優しい雰囲気が出ていて、素敵だなと思いました。私自身が現場に影響を与えられたかと言ったら分からないですが、楽しくて、温かい雰囲気の現場でした。

――自分でも心掛けたんですか。

 一番年下だったというのもあるんですけど、皆さんに支えられた感が大きかったです。横田さんの持っている柔らかい雰囲気と、枝監督の雰囲気が居心地良くて。私自身が意図して現場の雰囲気を作れたかと言ったらそうじゃないかもしれないです。まだまだですね。

――ポスタービジュアルにもなっていますが、机に顔当てて見つめる姿。めっちゃんの席を眺めているシーンですが、すごく印象的でした。あれはどのような事を意識されましたか。

 単純に私が憧れる人を遠い所から見ている時の目かなと思っていて、見ている席にめっちゃんがいなくて、「どこでどうしているんだろう」とか、横田さん自身のめっちゃん像をそのままイメージしていました。横田さんが私にとって、めっちゃんみたいな存在なのかもしれないと思うぐらい、すごく不思議な雰囲気を持った方で、かっこいいと思ったので、そのまま表現した感じです。

――『ドラゴン桜』もそうですが、吉田さんの芝居は一つだけの感情じゃなくて、色んな感情が伝わってきます。そのシーンだけでも、憧れだけでなく、虚無感など様々な感情が複雑に絡み合ってのあの表現とも受け取れました。それは自然となっていたのかもしれないですか。

 ちょうどあのシーンの直前に、クラスの子が「(めっちゃんが)パパ活しているらしいよ」という言うシーンを撮っていました。私自身に実際、めっちゃんみたいな人がいて、私も心の中では憧れる部分もあるけど、仲良くなりたいのか、近い存在でいてほしいようないてほしくないような、色々な感情を思っていました。それがそのままの雰囲気として表れたかもしれないです。

(おわり)

吉田美月喜

ヘアメイク:横山藍
スタイリスト:鈴木美智恵
撮影協力:Fogg Inc.

<衣装>
シャツ¥35,200、パンツ¥47,300/共にミオズモーキー(Koun showroom)
そのほか/スタイリスト私物
※税込価格

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木村武雄

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