LiSAが10周年を迎え、5月19日に全曲新曲のミニアルバム『LADYBUG』をリリースした。本作は幅広いアプローチで、アーティストLiSAとしての新たな世界観を広げる。ここではLiSAの新作を軸とした彼女の新境地に迫りたい。

 デビュー10周年という節目を迎えたタイミングで、「10周年を迎えたLiSAの軌跡を――」と、展開したいところだが、実力派アーティストであり、「紅蓮華」や「炎」のメガヒットや日本レコード大賞受賞に紅白歌合戦出場歴と、広く知られる軌跡がある彼女にいま注目するならば、やはり現在のアクションだろうか。国民的アーティストのLiSAの新たな魅力が含まれる新作という視点、そして直近の活動として、11日にTV番組『A-Studio+』に出演した際に歌唱して話題を呼んだ「サプライズ」にまずはフォーカスしたい。

 楽曲「サプライズ」は、25日公開の山崎賢人(※「崎」たつさき)主演映画『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』の主題歌。

 この映画の“1995年の僕と、2025年の僕で、絶対に、君を救う”というストーリーとの親和性を感じさせる90年代を彷彿とさせるサウンド(イントロのエレキギターとストリングスの導入、アコースティックギターや各サウンドの分離感などからそれを感じられるかもしれない)は、90年代サウンドを進化させたとも感じられ、映画作品に寄り添ったかたちとも言えるのでないだろうか。LiSAは同曲に対し、以下のコメントを寄せている。

 “そばにあるものの大切さと尊さを感じることができる私たちの心に、予想を超えて寄り添える“サプライズ”のような歌になればと願います。”

 楽曲「サプライズ」(作詞:LiSA、作曲/編曲:高橋浩一郎(onetrap))を聴くと、低音域から高音域までフルレンジに、LiSAのダイナミックな歌唱力がより鮮明に浮き出ている。どんなアレンジの楽曲であっても決して埋もれないLiSAの歌声の生命力が、ゴージャスなアンサンブルの中で解き放たれるように広がっている。

 SpotifyなどのサブスクでLiSAの人気曲ランキング10曲を見ると、「紅蓮華」や「crossing field」「ADAMAS」に「Catch the Moment」などのアップテンポなロックチューンが目立つ中、「炎」や「unlasting」などのスローでしっとり聴かせる楽曲も並ぶ。そんな中、「サプライズ」で聴ける温かい希望の光で照らすような壮大なテイストの楽曲、縦横無尽に輝く歌唱での表現は、LiSAの新たな表情を見せてくれたと言えるのではないだろうか。

今を更新し続ける「楽曲の幅の広さ」

 ミニアルバム『LADYBUG』全体に目を向けると、楽曲の幅の広さや、それらを表現しきるLiSAの進化がうかがえる。

 自身作詞作曲の「RUNAWAY」(編曲:PABLO a.k.a. WTF!?)のほとばしるロックテイストは“これぞLiSA”と表したいほどのパワフルな楽曲。そして、B’zの松本孝弘がサウンドプロデュースを手掛けた「Another Great Day!!」(作詞:LiSA、 作曲:TAK MATSUMOTO、編曲:TAK MATSUMOTO、YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA)ではヘヴィでワールドワイドなロックサウンドでLiSA×松本孝弘の熱いマリアージュが味わえる。

 また、「ViVA LA MiDALA」(作詞:LiSA、MAH、作曲:MAH、編曲:MAH)や「Letters to ME 」(作詞:LiSA、作曲:LiSA、編曲:下村亮介(the chef cooks me))など、ロックサウンドが比較的多くみられる中、「GL」(作詞:薔薇園アヴ、作曲:薔薇園アヴ、編曲:女王蜂、塚田耕司)のダンサンブルかつ情熱的なテイスト、そしてポップでガーリーな空気感の「ノンノン」(作詞:北川悠仁、LiSA、作曲:北川悠仁、編曲:野間康介(agehasprings))と、『LADYBUG』は幅広い楽曲が収録された豊かな内容だ。

 アルバム1枚の中でのLiSAの歌唱の多種多様な表現力と表情が存分に受けられる本作からは、LiSAの躍進を感じさせてくれる“未来”を存分にイメージさせてくれる。

 「サプライズ」の<キミとなら みたいミライ>という歌詞の一節や、同曲に寄せられたLiSA の “予想を超えて寄り添える“サプライズ”のような歌になれば”というコメントからもうかがえるように、本作からは、デビュー10周年を迎える LiSAの新境地、未来に対しての意思表明を感じさせてくれる。それは、最初のサビの<キミとなら みたいミライ>と、最後のサビの<キミとまだ みたいミライ>という部分の、“なら”と“まだ”の言葉の違い、それぞれの歌い方のニュアンスの開き方にも表現されているように感じられる。

 昨年12月におこなわれたオンラインライブでLiSAは、「――もっともっと最高な未来が私達に待っていますように。今日をもっともっと超えて行け!」と、オーディエンスに投げかけていた。本作は正に、LiSAのその言葉が具現化された作品とも言えるのではないだろうか。

 今を更新し続ける“サプライズ”ともとれる本作からは、10周年を迎えて更に進化するアーティストの多大な魅力を感じさせてくれる。これからのLiSAの邁進には今後も目が離せない。【平吉賢治】

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