花*花、癒し系デュオへの自覚 20年で変わった意識
INTERVIEW

花*花

癒し系デュオへの自覚 20年で変わった意識


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年04月14日

読了時間:約11分

 昨年、デビュー20周年を迎えた女性デュオの花*花が、4月17日に Billboard Live YOKOHAMAで20周年を記念したライブ『花*花 20th Anniversary 〜 bottoms up!〜 in Yokohama』を行う。花*花は2000年7月に「あ~よかった-setagaya mix-」でメジャーデビュー。同年末『第51回NHK紅白歌合戦』に出場し、その後も「さよなら大好きな人」をはじめ、多くのヒット曲をリリース。2003年より6年間の活動休止期間を経て、2009年3月、花*花誕生10周年を機に再始動した。インタビューではこの20年間を振り返り、今2人はどんな想いで音楽活動をしているのか、おのまきこ(Pf.Vo)とこじまいづみ(Pf.Vo)に話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

デビュー当時は時間に追われていた

――先月、1年ぶりとなった有観客ライブ『花*花 20th Anniversary 〜 bottoms up! 〜 in Osaka』を行いましたが、実際にやってみていかがでしたか。

おのまきこ 1年ぶりに皆さんにお会いできるということで、ライブが始まる前は本当に楽しみでした。でも、ビルボードでやらせて頂いたんですけど、ライブハウスとは違う緊張感がありました。

こじまいづみ みんなの顔が見えた瞬間に嬉しくて泣きそうでした。コロナ禍での開催ということもあり、普段のライブなら私はガンガン煽るタイプなんですけど、今回は我慢して(笑)。声が出せない中でみんなが一生懸命に盛り上げているのがすごく伝わってきました。声を出す以外でどうやって皆さんを楽しませよう、というのはすごく考えたライブでした。

――Billboardという場所に思い入れも?

おのまきこ 自分が好きなアーティストのライブを観に行っていた場所だったので、そこに自分が立つというのは中々ないことで、緊張しました。このピアノをあの人も弾いていたんだとか。すごく弾きやすいピアノでした。

――4月17日にはBillboard Live YOKOHAMAでライブがありますが、大阪とは趣を変える部分も?

こじまいづみ セットリストも変えるところもありますし、参加するミュージャンも変わるので、同じ曲でも雰囲気は変わります。大阪を観た方も楽しめるステージになると思います。

――ライブが楽しみですね。さて、昨年20周年を迎えましたが、振り返るとターニングポイントはいつでしたか。

おのまきこ 大きなターニングポイントは活動を休止してから再始動したところかなと思います。

――ちなみにメジャーデビューされた時はターニングポイントにならない?

おのまきこ デビューした時のことは、これまでやった事がないことがいっぱいあって、忙しかったということぐらいしかほとんど覚えていないんです...。もう脳がついていってなくて予備知識もないままテレビに出演したりしてました。なのでターニングポイントという意識があまりないんです。

こじまいづみ とにかく時間に追われていた記憶しかなくて、変なことしか覚えていなくて。例えば当時のマネージャーが飛行機に乗り遅れる瞬間だったり。

おのまきこ そうそう(笑)。移動が多かったのでそれにまつわることはよく覚えてます。キャンペーンはその場所に行ったら一気にラジオ局やテレビ局を回るので「ご飯いつ食べるんだろう?」みたいな感じでした。それがデビューしてから1年半ぐらい続いたんですけど、不思議と遅刻はした事がなかったんですよね。

こじまいづみ 新幹線とか乗り遅れそうな時もあったんですけど、レーベルのスタッフさんが私たちのために頑張ってくれていたんです。

――過密スケジュールだったんですね...。「第51回NHK紅白歌合戦」にメジャーデビューされた年に出演しましたが、さすがに印象に残っているのでは?

おのまきこ それもあまり覚えていなくて、本当に夢のようで、現実感があまりなかったというのが正直なところです。当時も自分が紅白に出てるなんて全然信じられなくて。

――周りの方がすごく盛り上がっていたり。

おのまきこ 私たちはその日のやることをやっていたという感じで冷静でしたけど、周りは確かに盛り上がってました。私としてはおじいちゃん、おばあちゃん孝行出来たなと思っています。加えて親戚もすごく増えましたから(笑)。

こじまいづみ 本当にすごい増えたよね。これがよく聞いていた親戚が増えるという現象かみたいな。

――(笑)。その後、所属していた事務所が無くなってしまい、それが活動休止に繋がったと思うのですが、過去の記事を読むとそんなに悲観されてなかったみたいですね。

おのまきこ そうですね。忙しい状況がずっと続いていて、純粋に音楽と向き合う時間がなくて「私達って一体何屋さんなんだろう?」みたいな感覚がありました。今ならわかった上でお仕事も出来るのですが、若かったからかそういう感覚にはならなくて、音楽がやりたいという気持ちだけで動いていた部分もありました。でも解散してしまったらまた始めるのは大変だなと思ったので活動休止という選択肢を取らせていただいたんです。その選択は間違っていなかったなと思っていますし、短かったですけどデビューしてからの4年間はすごく貴重な時間だったなと思っています。 

こじまいづみ 6年間ぐらい花*花としての活動をお休みさせて頂いて、10周年の時に周りから「活動休止て言っていたけど何かやらないの?」と話してもらうことがあったんです。それを聞いてライブをやってみようと思いました。10周年といっても活動してる期間が4年間で6年間休んでいたので、休止期間の方が長かったんですけど、その間もずっと私達の楽曲を聴き続けてくれている人たちがいるということに気付きました。

――ヒット曲なので聴いていた方は沢山いますよね。

こじまいづみ でも、当時は何を以ってして売れていたのかというのは数字上でしかわかっていなくて、リスナーに届いているという意識はあまりなかったんです。でも、楽曲というのは私たちが活動していなくても、聴いてくれている人たちの中で育っていくんですよね。それが再始動してからすごく私の中で大きく感じました。その10周年以降ちゃんとわかった上で音楽を届けられている、という意味で転機になったんじゃないかなと思います。

おのまきこ そこからの10年は自分たちがやりたいことをやれているんです。

こじまいづみ もうやりたくないことはやらないですから。そう決めてからは自分たちが興味を持ってできることがすごく増えてきました。今はしっかりと自分達の信念を持って音楽を届けられているので、デビューした時とは意識が違います。

――やりたくないことにノーと言えるのもすごいですよね。

こじまいづみ 絶対それに向いている人、私達よりもふさわしいミュージシャンがいるんじゃないかなって。昔は自分に自信がないから、というのもあったんですけど。

おのまきこ 自信はないけどやりたいという気持ちが勝ってお引き受けすることをもちろんあるんです。ここ最近だと映画や朗読劇の劇伴はこれまでやったことはなかったので自信はなかったんですけど「やってみたい!」と思って挑戦しました。

こじまいづみ 花*花でやっている時は、私たち2人がOKだったらそれで大丈夫なんですけど、劇伴は大勢の方が携わっているので、その方たちにまず気に入ってもらえないとダメなんです。その方たちに寄り添いながらの制作は大変でしたけど、すごく楽しかったです。

――充実されているのが伝わってきます。

おのまきこ 10周年からここまでの10年はあっという間で、気が付いたら20周年を迎えていたという感じです。そして今が一番楽しいと自信を持って言えます。

――とはいえこの10年間でも葛藤はあったのでは?

こじまいづみ すごく自由にやれているので葛藤はなかったです。ありがたいことに周りの人たちがいろんなお題を私たちに持ってきてくれるんですよ。これを花*花でやったら面白いんじゃないかとか、それが劇伴だったりもするんですけど。自分達だけでやったら大変なこともいろんな人たちを巻き込んでやれているので、いつのまにかいろんな人が私たちの力になってくださって、花*花というものがすごく大きくなっていってるのを実感しています。 

癒し系デュオへの違和感

――この20年で花*花の武器は変わりましたか。

こじまいづみ 当時「癒し系デュオと呼ばれることについてどう思いますか」という質問をよくされていました。自分たちでは誰かを癒しているという実感はなくて、癒し系デュオという言葉にしっくりきていなくて。私たちの曲の中に誰かが元気になってほしいという内容はそんなに入ってなくて、きっと他の歌手の方の方がそういった要素は沢山入っていたと思うんです。なのにそう呼ばれることに違和感があって。私たちの武器として皆さんが先見の明で見抜いていたとしたらすごいなと思うんですけど。

おのまきこ 当時は自分たちもかなり天邪鬼で、そういう感じの曲ではないものを作ろうとか思ったりしてましたから(笑)。

こじまいづみ 実際、音楽で人を癒すというのはそんなに簡単なことではなくて。被災地などでライブをやっていくうちに気づいたことがあって、聴いてくれた方が「これで前に進める気がします」と言ってくださった時は、音楽で癒すというのはこういうことなんじゃないかなと思いました。それからはどのライブも、どうぞ「笑ってください」「泣いてください」という気持ちでやっているんですけど、それは舞台をやった時にも同じことなんだなと感じました。最初は周りから言われていた武器だったんですけど、やっと私たちもレベルが上がって、その武器の価値、意味がわかったなと思っています。

おのまきこ 今はその癒し系というのも受け入れて活動しているんですけど、癒すといっても人によって変わってくると思うので、その人にとっての癒される曲が私たちの曲の中に1曲でもあったら嬉しいなと思っています。

――今お2人がチャレンジしてみたい楽曲のジャンルとかはありますか。

こじまいづみ 今まさに新曲をレコーディング中なんですけど、私が今アーリーアメリカン、アメリカのフォークミュージックにはまっていて、その方向に傾倒しています。 年末にザ・バンド の映画『かつて僕らは兄弟だった』を観て、若い時に聴いていたけど、改めてそのサウンドに魅了されてしまって。そこから音楽もボブ・ディランだったり レナード・コーエンのような音楽をよく聴いています。

楽しい事を探し続けていきたい

花*花

――この長いキャリアの中で壁にぶつかることもあると思うんですけど、お二人はどうやって壁にぶつかった時、乗り越えてましたか。

おのまきこ やっぱり曲が出来ない時というのがあるんですけど、そういう時は結構自分を追い詰めてしまうことが多いんです。そうならないように、自分の中で「なんとかなる」と呪文のように言い聞かせて乗り越えています。諦めるわけではないんですけど、一回止めてしまうと言いますか、自分の中で一呼吸おいてます。自分をポジティブな方向に持っていくように心がけています。やりたいことがあればあるほどそういったスランプになってしまうことが私は多いです。

こじまいづみ 私にとっての壁は飽きてしまうということなんです。すごく凝り性なんですけど飽き性の部分もあって、本当に全く興味がなくなってしまうので怖いんです。音楽だけは唯一そうなってないんですけど。最近わかったことがあって飽きてしまうということは、その物事と側面しか見ていなかったんだなと思いました。ある一面しか見ていなかったから飽きてしまっただけで、また違う側面から見れば楽しめるはずだなと思いました。

――確かにそうかもしれないです。

こじまいづみ なので音楽でも飽きそうだなと思ったら、旅、映画、絵画とか全く違うところから吸収していくんです。今作っている作品は音楽からインスパイアを受けて音楽にすることができたんですけど、これまでの作品では音楽とは違うところからインスパイアを受けて曲にしていくことが多かったんです。

――物事を多角的に捉えるというのは、長く続けていく上でのコツかもしれないですね。最後にこれからの展望を教えてください。

こじまいづみ まず私たちが飽きないこと、そして皆さんから飽きられないことを願っています(笑)。

おのまきこ この20年ですごい変化がありましたし、ここからもきっと変わるんだろうなと思っています。面白いこと探し、そのスタンスは変わらないと思っています。そうしたらまたすぐ10年、20年経ってるじゃないかなと思います。今までもそうしてきたと思うんですけど、もっと楽しい事を探し続けていきたいです。

(おわり)

ライブ情報

タイトル:花*花 20th Anniversary 〜 bottoms up!〜 in Yokohama
日付: 2021.4.17(土)
会場: Billboard Live YOKOHAMA
ワンマンライブ
オープン:[1st stage]15:30[2nd stage]18:30※完全入れ替え制
スタート:[1st stage]16:30[2nd stage]19:30※完全入れ替え制
料金:以下詳細
出演:花*花

[料金]7,500円(税込)
※ともに要飲食代別途(カジュアル席のみ1ドリンク付き) ※未就学児入場不可
座席図:http://www.billboard-live.com/club/y_index.html
[チケット]
■チケットぴあ(TEL:0570-02-9999/Pコード:192-289)
 https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2100591&rlsCd=001&lotRlsCd=

■イープラス
 https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=%E8%8A%B1%EF%BC%8A%E8%8A%B1

■Billboard
http://www.billboard-live.com/reservation/t_index.html
[お問合せ]
Billboard Live YOKOHAMA
TEL:0570-05-6565
[主催]
ビルボードライブ大阪
[会場]
Billboard Live YOKOHAMA
〒231-0003 神奈川県横浜市中区北仲通5丁目57番地2 KITANAKA BRICK&WHITE 1F
TEL:0570-05-6565
http://www.billboard-live.com/access/y_index.html

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