INTERVIEW

井上祐貴

やる気だけは絶対に誰にも。
デビュー3年目で主演『NO CALL NO LIFE』


記者:鴇田 崇

写真:鴇田 崇

掲載:21年03月13日

読了時間:約7分

 若手注目俳優の井上祐貴が、優希美青とのダブル主演で、映画『NO CALL NO LIFE』に出演した。原作は壁井ユカコの同名小説で、親からの愛情を知らずに育った主人公の女子高校生・有海(優希)と、同じ境遇の不良少年・春川(井上)が織りなす、痛いほどに切ないミステリーラブストーリーだ。井上は、心に傷を背負った高校生を確かな演技で表現する。

 井上は、第42回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞後、2019月には連続ドラマ「ウルトラマンタイガ」で主演を務め、本作では所属事務所のホリプロ60周年記念大作という重責を担った。デビュー3年目にして人気・実力とも急上昇中の注目株は、ファンの存在が活力になっているとも。公開を前に話を聞いた。【取材・撮影=鴇田崇】

不良少年・春川という人物像

井上祐貴

井上祐貴

――今回の映画『NO CALL NO LIFE』は、擦り切れるような恋と言いますか、人生で恋がすべてになる瞬間も切り取っているわけですが、この世界観をどう受け止めましたか?

 真っすぐに育ちたかったのに、大好きな母親の愛情を受けられず、どうしても真っすぐではない方向に育ってしまった若者の話だと思いました。真っすぐって何?と言われたら正直わからないのですが、春川や有海からすると、自分が理想とする道ではない方向へ行ってしまった。ふたりにとっては苦しい、どこか悲しいような気持ちは、常にあるんだろうなと思いました。なので撮影中も、それは意識しながら演じていました。

――演じられた春川という青年は、ある意味で壮絶な人生が背後にあるわけですが、演じるにあたってまず何を意識しましたか?

 本当に、いろいろなことを考えました。望まない人生だったんだろうなと。そうなった人でないとわからない、理解したくてもし切れない繊細な要素がたくさんあるなと。考えて考えて脚本を読み進めましたし、何度も読み、監督に質問もしました。春川の全体的なテンションや、母親とのシーンについても確認しました。どのシーンでも確認していたような気がします。

――監督によると優希美青さん演じる有海は、優希さんそのものだったそうですが、春川については、どのような解釈だったのでしょうか?

 そこについては、あまり説明はなかったかもしれないです。役としてのリクエストというよりは、彼のテンションや温度感については、シーンごとに明るめ暗めという確認や微調整をしていただきました。有海みたいな演出は、春川についてはなかったと思います。

――自分自身を投影する瞬間はありましたか?

 少しはあったとは思います。有海に対して心を開いているけど、有海に言わずに母親に会いに行ったりするところは僕も同じ立場にもしなったら、たぶん言わずに自分だけで解決しようとすると思います。彼とは育った環境がまるで違うので、理解出来ないことが多かったのですが、自分だけで解決したいというのは理解できると思いました。

――優希美青さんとのシーンでは、ふたりのやり取りが自然で、お芝居の感じがまったくしなかったのですが、どうやって作り上げたのですか?

 クランクイン前のディスカッションや監督の演出ですかね。お芝居をするにあたっての擦り合わせは、しなかったように思います。それこそ監督を含めて3人で現場での段取りの確認はありましたが、ふたりの示し合わせみたいなものは、そんなになかったなって思います。クランクイン前、僕はまだ経験も浅いので不安もあったのですが、初日の撮影を終えた後から日を追うごとにわかっていった気がします。それがスクリーンを通して伝わってくれればうれしいなと思います。

影響が大きい「ウルトラマンタイガ」

井上祐貴

井上祐貴

――そしてホリプロ60周年記念作品ということで、責任も重そうです。

 そうですね、重いです(笑)。でも、ありがたく思っています。最初は大きすぎてピンとこなかった。どれだけすごいことなのかがわかりにくく、今ほどは理解できていなかったという想いが正直なところですが、どんどん実感していく感じでした。台本の「60周年記念」という文字を観た時、頑張らなきゃなって思いましたね。

――デビューして3年、俳優としての自覚も深まりましたか?

 深まりました。春川という自分とはかけ離れた役を演じたことで、逆にもっともっといろいろな役を演じてみたい欲も高まりました。ホントまだまだなんですけど。

――一昨年のウルトラマンが、まず大きかったですよね。

 そうですね。ウルトラマンタイガの主人公に選んでいただけたことは、僕の俳優人生の中でかなり大きな出来事のひとつだと思いますし、それを機に知ってくださった方がほとんどだと思ってます。今回の映画でも知ってくださる方がいると思うので、すべての作品のことを忘れずに前に進みたいです。

――もともと俳優志望だったのですか?

 そうではなくて、2017年にホリプロタレントスカウトキャラバンを受けて芸能界に入りました。そのきっかけも自分ではなく、友だちの推薦でした。でも、そのオーディションの最中に本気になりましたね。

――何が魅力でしたか?

 表現することが楽しかったんです。初めて味わった感覚でした。

――主演作が続いてますが、どういう意識で取り組んでいますか?

 僕はまだ3年目で経験が浅いので、その中で主演のお話はすごくありがたいのですが、主演だから何かをするっていうことでは、僕の中で意識が追いついていないかも知れません。僕にできることを精一杯する、その役に取り組む姿勢というか、気持ちを見せるしかないのかなと正直思っていて、だんだんと自分の中でこうしたいと思うようになってきたら変わるとは思うのですが、今は取り組む姿勢も含めて、やる気だけは絶対に誰にも負けないようにと思ってやっています。

――将来像は?

 役者としていろいろな役をやっていきたいということに尽きますかね。近い将来では、こういう役をやりたいみたいな希望はあります。

――たとえば、どういう役でしょうか?

 アクションがやりたいです。ウルトラマンタイガでアクションを体験して、放送を観ていてかっこいいいなと思ったんです。アクションをしている自分ではなく、アクションという表現方法について、もっとカッコよくできるようになりたいなと思いました。それがきっかけで熱が入りました。アクションができる役者になりたいから、体を動かせるように意識をしたりはしています。ですが、まずは役者として知っていただくことかなと思っていて、実力をつけて頑張りたいです。

――エンタメ界もコロナ禍の影響を多大に受けていますが、発信する側の人として今自分に何ができるかなどは考えますか?

 すごく考えます。昨年末にカレンダーを出させていただいたのですが、それを発売するにあたってのイベントをやったんです。本当は直接お会いしたかったのですが、オンラインでの実施となりました。そのイベントが終わった後にお手紙やSNSなどでメッセージをいただいたのですが、仕事が大変だけど今話せて元気をもらったし、カレンダーを見て毎日頑張れます、というコメントをいただくと、こちらこそ!という感じになるんですよ。そのコメントで僕のほうこそ頑張れます、という感覚になり、自分ができるこの仕事の醍醐味のひとつを改めて実感したんですよね。直接会えないけれど、いろいろな方法で交流出来るとすごくうれしいですし、励みにもなりました。

――そのファンのみなさんに、この作品、どう届けたいですか?

 みんな同じような育ち方をしてきたわけじゃないので、いろいろな境遇の方がいると思うんですけど、どこかしら自分ひとりで解決しようとすることがあると思うんです。もしかしたら誰かに相談すると、いい方向にいったかもしれない。なのでこの作品自体に、ちょっとしたことですが共通点があると思うんですよね。学生ならではの悩みだったり、そういうものを少しでも感じていただけたらと思います。この作品は一見すると、ちょっと難しかったりもするのですが、ミステリー的なところもあるので、楽しみながら観ていただけたらと思います。

井上祐貴

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『NO CALL NO LIFE』
公開表記:全国公開中
配給:アークエンタテインメント
(C) 2021 映画「NO CALL NO LIFE」製作委員会

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