技巧派バンドDIRTY LOOPSの魅力とは(2014年8月17日)

横浜で行われた『LIVE MONSTER LIVE』で熱演するDIRTY LOOPS

 8月16日・横浜赤レンガパークで開催されたライブイベント『LIVE MONSTER LIVE』に、今世界一番で注目されていると言っても過言ではないバンド、DIRTY LOOPS(ダーティループス)が来日出演した。彼らの斬新な音楽スタイルは世界でも評価は高く、日本でも近頃、ミュージシャンが“DIRTY LOOPS STYLE”というDIRTY LOOPS風のアレンジを取り入れているほどだ。久しぶりに出た逸材ともあって音楽ファンなら既にご存知の方も多いと思うが、ここで彼らの魅力に迫ってみたい。

 DIRTY LOOPSは、日本では2014年4月16日にデビューしたスウェーデン出身の3ピースの大型新人バンドだ。

 セリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストンなどを手がけた音楽プロデューサーのデイヴィッド・フォスターが目をつけ、あのマイケル・ジャクソンや『WE ARE THE WORLD』で有名なクインシー・ジョーンズ、そして、スティービー・ワンダーなどの大物ミュージシャンからも絶賛されている。日本においてもプロミュージシャンのファンが多く、前述の『LIVE MONSTER LIVE』ではホスト役を務めたDREAMS COME TRUEの中村正人も絶賛していた。

 ■魅力は「キレ」の良さ

 メンバーはVocal&KeyboardのJonah(ジョナ)、BassのHenrik(ヘンリック)、そしてDrumのAron(アーロン)。3人ともスウェーデン王立アカデミー(スウェーデンの学士院)出身のいわゆるエリートだ。

 曲のジャンルはEDMとフュージョンを足した物に近い。曲は勿論のこと、とにかく楽器のテクニックが半端ではない。タイトな演奏とソウルフルな歌が絡み合いエレクトリックなギミックを取り入れた新しい音楽と言えるだろう。

 その斬新な音楽は4月に発売されたアルバム『Loopified』でも垣間見えることができる。とにかくリズムが気持ち良い。それぞれの楽器のアクセントを揃える、いわゆる「キメ」を強調する仕掛けが爽快だ。

 「キメ」は曲のメリハリ感を演出するのに最適な技法で、日本でも多くの楽曲で取り入れられている。だが、彼らの違うところはこのキメの入れ込み方が単純ではなく細かいパッセージ(楽節)になっているところにある。

 この「キメ」の仕掛けはアルバム全曲に対して多種多様に施してある。特に、この作品の2曲目にある「SexyGirls」はカッコ良い。このバンドのキャッチコピーも秀逸で「音楽をやりたくなるか、止めたくなるか」。筆者は彼らの音楽を聴き俄然前者の方を選んだわけだが、なかには止めたくなった人もいるのではなかろうか。

 ■スティービー・ワンダーも絶賛

 正直、「3ピース&テクニカル」と聞いていたので彼らの曲を聴く前の印象はRUSHみたいなプログレシッブロックのバンドなのかと思っていたが、いざ聴いてみると全く異なっていた。良い意味で裏切られた。

 フュージョンがベースであることでコード進行もアカデミックであるし、ディストーションギターも入ってないためロックが苦手な人でも聴きやすいのではないだろうか。イントロがスティービー・ワンダーをほうふつさせる楽曲もある。スティービーが彼らを絶賛するのも頷ける。

 そして日本盤のボーナストラックには、宇多田ヒカルの代名詞「Automatic」のカバーも収録されている。この曲もDIRTY LOOPSの軽快なアレンジになっていて小気味良い。このバンドのカラーに変えたテンポも魅力がある。ちなみに『LIVE MONSTER LIVE』でも披露し大歓声を受けた。

 他にもジャスティン・ビーバーやブリトニー・スピアーズの楽曲もカバーしているが、この日本盤には残念ながら入っていない。しかし10月8日にUniversal Music Japanより完全版として『LOOPIFIED COMPLETE EDITION』が発売される。

 このアルバムには4月に発売された『Loopified』の楽曲と先述のカバー曲、そして未発表の新曲が収録された2枚組の発売が予定されている。

 ■日本でもブームになりつつある

 先にも述べたように“DIRTY LOOPS STYLE”というDIRTY LOOPS風のアレンジが流行っている。近いところでメジャーアーティストでも、8月6日に新曲『突キ破レル-Time to SMASH !』をリリースしたT.M.Revolutionが初回生産限定盤DVDにDIRTY LOOPS風のアレンジを施した同楽曲のMVを収録している。参加しているミュージシャンも実力派で爽快なアレンジになっている。

 DIRTY LOOPSは8月16日の横浜赤レンガパークの『LIVE MONSTER LIVE』で、日本で生演奏を試みた。このライブの為だけに来日したとのことで貴重な一夜となった。「Circus」「Automatic」「Hit Me」を含む全11曲を演奏、日本のリスナーに衝撃な印象を与えた。

 CD音源程のタイトさはないものの安定した素晴らしい演奏を聴かせてくれた。野外ということもあり若干音響がこもる感じがあったが、それを差し引いてもすばらしいライブだった。ラストの「Hit Me」では彼らを知らない人達も口ずさんだり腕を振り上げたり盛り上がっていた。

 ■キャッチ―さも魅力

 テクニックだけでなくキャッチーさもあるのがDIRTY LOOPSのスゴいところ。大体テクニック至上主義になると楽曲のキャッチーさが失われて行くことが多い中、DIRTY LOOPSは良いバランスで成り立っている。テクニックだけならスゴい人は多くいると思われるが、このバランス感覚とセンスはそうそう真似出来ないであろう。

 気が早いが次作への期待も高まるライブであった。そして今後どのように進化していくのか楽しみなバンドである。11月には初の日本ツアー『ヒット・ミー ジャパンツアー2014』と題して東京、名古屋、大阪でライブを行う予定だ。 【上村順二】

<東京公演>2014 年11月26日(水) 豊洲PIT
<名古屋公演>2014 年11 月27 日(木)ダイヤモンドホール
<大阪公演>2014 年11 月28 日(金)なんばHatch

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