INTERVIEW

波多野貴文監督

「コールドケース3 ~真実の扉~」
選曲の裏側


記者:編集部

写真:Maho Korogi

掲載:20年12月09日

読了時間:約5分

 WOWOWプライムにて人気ドラマのシリーズ最新作、「連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~」の放送が始まった。吉田羊演じる石川百合率いる神奈川県警捜査一課チームが、闇に葬られた悲劇的な事件の真実を暴いていくクライム・サスペンスで、これまで語られなかった個々のドラマも含め、シーズン3にしてシリーズ史上最大のスケールが見ものだ。吉田以下、永山絢斗、滝藤賢一、光石研、三浦友和のチームワークも光る。

 その放送を記念して、シリーズを育て上げた波多野貴文監督にインタビューを行った。マンネリ化を避けながら、新たなチャレンジも加味したシーズン3の魅力のほか、本国版「コールドケース」同様、シリーズでは欠かすことができない<音楽>についてもインタビュー。時代背景にマッチした選曲は、どのような過程を経て決まっていくのか。話を聞いた。【撮影=Maho Korogi】

Maho Korogi

波多野貴文監督

――今回のシーズン3では、たとえば前後編で始まる1回目や、メインキャスト5人のシーンが比較的多めなど、これまでのテイストを踏襲しながらも新しいチャレンジも多いとうかがっています。

 そうですね。踏襲するという意味では5人の深まる関係性を追い求める一方で、前編後編でお届けするチャレンジもありました。たとえば扱う事件も現代に即した内容にするために何度も見つめ直したり、これどこまで話ていいのかわからないのですが(笑)、10話だけエンドロールが違うんです。今までがあって、さらに5人の関係性を深めていく展開はあります。

――それは衝撃的なレベルですか?

 衝撃的……ですね。みなさんの反応が楽しみです(笑)。世界観を広げつつも、ギュっと濃縮しているような感じです。

――それにしても改めて豪華キャストだなとしみじみ思いますが、あの安定したチームワーク感は、どうやって演出しているのですか?

 5人のチームワーク感については、今さら何も演出はしていません(笑)。普段の感じがそのまま画に出ているようなもので、みなさんも撮影スタッフも成熟してきた感じはあります。そこは楽であり、怖いところでもあるって感じですよね。

――怖い???

 マンネリ化ですよね。捜査一課でのシーンは、説明も多いですし、動きも少ない、お任せで撮影を始められるのですが、その始まりをどう撮るか、毎回一番悩ましいところでもあるんです。ロケ場所に左右されないというか決まりの場所なので、ロケ場所に頼れない。ポジションもだいたい決まっているので、ともすれば毎回同じ画になってしまう。

――確かに、過去の刑事ドラマを思い出しても、捜査一課はそうですね。

 いや、たぶんそれは“定番”だと思うんです。“定番”は観ていて退屈しないけれど、マンネリは「また同じことをしている」と思われてしまう。シーンには前後がありますよね。画になっていない、そこを作る作業が捜査一課は難しいわけです。なぜそこにいるのか、何をしていたのか、そこが難しい。でも、そこに、5人の個性を上手く組み合わせると、生きたシーンになるんです。

――シリーズでは時代背景にマッチした選曲も見逃せないですが、どう決めているのですか?

 これは本当に難しいんですよ(笑)。本国版「コールドケース」では、時効がないので古い時代ほど、みんなの定番曲になっている事が多いわけです。誰もが聞けば一発で、その時の曲と時代を思い出す曲を使っているのですが、日本は時効が1995年からと浅いんです。

――つまり歴史が浅いために一曲に絞れない?

 洋楽を聴いている人もいれば邦楽を聴いている人もいて、人によって時代曲にばらつきがあるんです。しかも日本語の歌詞が耳に入ってしまうので、それがいい時もあれば歌詞が気になってしまう時もあるんですね。なので毎回、苦労しています。プロデューサーと選曲さんと一緒に決めるのですが、それぞれの好み、時代感、作品とのマッチング具合と本当に難しいんです。単純に当時の人気一位をかければいいだけの話ではないので、日本版「コールドケース」は難しいですね。

――なるほど。歌詞で当時の曲を覚えている人も多いですからね。

 そうなんですよ。あまりにも想い出の深い曲の場合、ストーリーが薄まってしまうんですよね。最後のスローのシーンでは物語にも合っていないといけないですし、カット割りの順番もあるので曲の盛り上がりも気にします。でも当時のことを懐かしんでほしいわけです。バランスが非常に難しいですね。当時曲は、選曲に毎回難航しますね。

――今回の選曲の自信のほどは?

 もちろんあります(笑)。これどうですか?って反応をうかがいたいです。それは楽しみです!

――WOWOW30周年記念作品ということでのプレッシャーはありましたか?

 そうですね。でも後から聞いたんですよ。シーズン3をやるって決まった後に30周年だったことを知るみたいな(笑)。でも正直なところ、記念作品に選ばれた事はうれしいです。1と2をやった甲斐があったと思います。カンヌにも行かせてもらいましたし、30周年の節目の年にメインコンテンツのひとつを撮らせてもらえていることは、感謝ですね。

――自信を持って送り出すという感じでしょうか?

 そうです!本当にどのエピソードも面白いと思います。いろいろなパターンがあります。よくキャストやスタッフの間で「何話が好き?」みたいな話をよくするのですが、そういう投票をやってほしいですね。シーズン1~3まで。そういうの見てみたいですね。

――なかなか選べなそうですよね。今回、過去の作品を改めて観て、印象がガラリと変わったこともありました。

 「コールドケース」って、そういうことが起こるんですよね。そこがまたいい(笑)。観る時の環境や自分の気持ちによっても違いますし、家族や愛する人がいるかどうかでも変わってくる。受け止め方も多様なので、そこも面白い要因のひとつかもしれないですね。

「連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~」
WOWOWプライムにて放送
毎週土曜22時~全10話(第1話無料)
(C) WOWOW/Warner Bros. Intl TV Production

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