高橋優「悟らずに転がり続けたい」歌い続けていくための気概
INTERVIEW

高橋優

「悟らずに転がり続けたい」歌い続けていくための気概


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:20年10月24日

読了時間:約11分

 メジャーデビュー10周年を迎えた高橋優が21日、7枚目となるオリジナルフルアルバム『PERSONALITY』をリリース。前作『STARTING OVER』より約2年ぶりに届けられたアルバムには、デジタルシングルとして先行配信された「one stroke」「room」「自由が丘」を含む全15曲を収録した。インタビューでは『PERSONALITY』というタイトルに込めた想い、ここからどのような気持ちで歌い続けて行くのか、「転がり続けていきたい」と話す、いまの高橋優の心情に迫った。【取材・撮影=村上順一】

まだ転がり続けていきたい

『PERSONALITY』期間生産限定盤B

――ジャケ写は3種類ありますが、それぞれのポーズにはどんな意図があるのでしょうか。

 通常盤と期間生産限定盤は僕のアドリブです。これ自分でスイッチを持って撮っているんですけど、最初は立って撮影して、それをやり切ったところで座って撮ったんです。期間生産限定盤Bは、優のYをリクエストしてもらった流れの中での高橋のTのポーズなんです。

――衣装はパジャマですね。

 眼鏡も外して撮影しましたし、よりパーソナルな感じを出したいと言うことでした。テンション的には服を脱いでしまっても良いぐらいの感じもあったんです。箭内(道彦)さんが10年前からずっとプロデュースしてくださっているですけど、タイトル『PERSONALITY』の“O”の部分も10周年のゼロと重ねてくれていたり。

 箭内さんが寝巻きみたいな格好で来て欲しい、とリクエストをもらっていたので、そのような格好で撮影スタジオに行ったんですよ。でも、現場に着いたらもっとパジャマっぽい衣装を用意してくれていたので、それを着て撮影しました。眼鏡を外したことにも繋がるんですけど、「ありのまま」というのをジャケ写で表現したかったんです。

――ジャケ写といえば、昔は顔のアップ写真が多かったですね。

 「リアルタイムシンガーソングライター」というキャッチコピーがあって、その時に「リアルサイズシンガーソングライター」というコンセプトもあって、ジャケ写が僕の顔と同じサイズになっているんです。それでだんだん全貌が見えて来るというのも面白いんじゃないか、と箭内さんと話していた気がします。

――さて、今作の1曲目を飾るのは「八卦良」です。

 この曲の歌詞にもある<すぐにシワがつく服みたい>というのは、僕が持っている服ですぐにシワになってしまうものが実際にあったんです。すごく面倒臭いんですけど着るたびに毎回アイロンを掛けていて、その時に自分はすごく人目を気にしているんだなと感じて。でも逆にクシャクシャでも良いじゃん、と感じている自分もいて、アイロンを掛けていることが化けの皮に見えてきたり。そこから、周りにも化けの皮を被っている人がいるのかなと思って書いた歌詞なんです。

――この曲を1曲目にした理由は?

 自分はこの10年でまだ何かを成し遂げたわけでもなく、まだ転がり続けていきたいという思いを象徴している曲で、デビューからやってきていることの延長線上にある曲だと思ったので、1曲目にしたいと思いました。

――次に「room」が来るのが面白いなと思いました。

 今回、ラブソングを沢山書きたかったんです。高橋優が思うラブソング、恋愛の形を色んな角度から書こうと思っていたなかで、ステイホーム中に書いた曲です。今作のほとんどはその期間に書いた曲で、「room」は歌詞の世界観など、これまで僕が表立って歌ってこなかった、やってこなかったことの集大成のような感じがあります。これまでラブソングはアルバムに入れても1曲くらいでした。それは“ライフソング”を歌いたいという想いが強かったからです。2020年はそれぞれの部屋に隔離されている時間が長かった、会いたいけど会えない時代がやってきたので、会いに行きたいという曲も良いなと思えて。

――創作意欲がすごかったんですね。ツアーが中止になって落ち込んだりしませんでした?

 ずっとツアーのために半年間ぐらい準備していたので、中止になった時は2週間ぐらい落ち込みました。、みんなもライブを楽しみにしてくれていたと思いますし、僕自身もすごく楽しみにしていたので、急に恋人から引き離された気分でした。ぽっかり心に穴が開いてしまった感じでしたが、そこから救ってくれたのが曲作りでした。曲を作っている間は生きていることを実感していて。

――そんな、高橋さんの栄養素になっていた楽曲制作ですが、最後にできた曲は?

 ちょっとうろ覚えなんですけど「自由が丘」は7月ぐらいに出来た曲なので、割と最後の方だったと思います。この曲は自分の個性や人の個性を受け入れられた時の喜びを、こういう自分、あなただったけど繋がる部分ってあったんだね、と言った喜びを書けたらと思いました。例えば自分のことを映像で観た時に、自分ってこんな癖があったんだと思うときってあるじゃないですか。

――めちゃくちゃあります(笑)。

 周りの人達はそう言ったところを嫌というほど見ているはずなのに、それでも笑って一緒にいてくれるんだと思ったら、僕は嬉しくなることがあるんです。こんな癖だらけの不完全な人間なのにって。そんな人間の繋がりを歌えたらと思いました。

――深いですね。タイトルの「自由が丘」にはどのような意味が込められているんですか。

 自由が丘に学園通りという通りがあるんですけど、そこに点滅しかしない信号機があるんです。その信号機をずっと眺めていたことがあって、そこですれ違う人達を見ながら書いた曲だったので、このタイトルになりました。曲が完成したのは最近ですけど、着想としては3年くらい前からこのテーマで書いてみたいなと思っていました。コロナ禍で、これまで手をつけられていなかった曲をたくさん制作できるようになったんです。今作も厳選して15曲に絞ったんですけど、この倍ぐらい曲は作ったので、まだまだあります。

――他の曲も聴いてみたいです。さて、アルバムラストを飾るのは「PERSONALITY」ですが、ラジオの事を歌っていますね。

 ステイホーム期間中はスタジオに全然行けなかったんです。なので部屋の寝室を使ってラジオを収録していました。

――なぜ寝室だったんですか。

 僕の部屋の中で一番キレイだったので(笑)。それでラジオってどんなものだっけ? と改めて考えた時に、目の前にマイクがあって、横を向けばディレクターさんがキュー出しをしてくれて、スタッフさんがスタジオの外で見守ってくれている、そんな当たり前の景色というのが、恋しくなったんです。あとこのPERSONALITYという言葉も面白いなと思って。個性とか個人という意味もあって、これからそういったものがより一層求められていくと思ったので、この言葉を使いたかったんです。この曲がなかったらアルバムのタイトルも違うものになっていたかもしれないです。

絶対ニヤニヤしてこの曲は歌わない

高橋優

――「東京うんこ哀歌(エレジー)」は高橋さんの実体験ですか。

 これは友人の話なんです。ライブが中止になって落ち込んでいた時にLINEに、「実家に帰ろうと思って品川駅に来たらうんこが落ちてて泣きそう」と入りまして。この品川駅・うんこ・泣きそう、という3つのキーワードが面白いなと思って、曲にして友達に送り返そうと思ったんです。よく考えたら「久しぶりに曲を書いたな」と思い、スタッフにも送ったんです。そこから制作意欲が止まらなくて、フルコーラス作って。テーマがテーマなのでスタッフは最初心配してましたけど、この曲からモチベーションが出て来ました。

――こんなにもカッコいいうんこの曲は初めてです(笑)。

 嬉しいです。でも、両親は最後までこの曲をリリースする事を反対していました。スタッフは大賛成で、選曲会議でも「うんこは入れるでしょ」、みたいな感じでした。スタッフは僕の一番近いリスナーであって、僕の曲を楽しみにしてくれているというのは、10年やれている大きな理由の一つだと思います。

 この曲を収録するからには、僕は絶対ニヤニヤしてこの曲は歌わないと決めています。この物語をメロウなバンドサウンドに乗せて歌う曲にしたいと一致団結して作りました。でも、聴いてもらう人には笑って聴いてもらってもいいし、お父さん、お母さんに怒られるかもしれないですけど、子どもたちもぜひ真似して歌ってもらえたらと思います。ライブでもうんこをコール&レスポンスしたいと思っていて、それができる日が来たらコロナを超えられるんじゃないかと思います。

――その光景、観てみたいです。さて、「LIFE」に出てくる<新しい世代 若く逞しい 追い抜かれ慣れたyesterday>というフレーズは、高橋さんが感じていることですか。

 これはたぶん僕じゃなくても、同世代の方だったらこう思うことって普通になってくるんじゃないかなと思って。でも、そんなこと30歳を過ぎて言いたくないじゃないですか。

――わかります。

 若い方が良いという価値観はもしかしたら女性の方が感じているかも知れないんですけど、女性は頭が良くて、30代になれば30代の男性を好きになる、でも、男性はずっと20代の女性が好きだったりすると聞いたことがあって。

 僕の周りでも歳を重ねることに悩んでいる人もいるんですけど、僕は歳を取っていた方が味わい深くなって行く人の方が魅力的で、経験値を増すごとに美しくなっていくと思っています。ここで歌っている主人公は追い抜かれ慣れているから言える、だから次を見ることができる、ということをメッセージとしてみんなに届けば良いなと思いました。僕はライフソングというものを考えて書いてきましたけど、その中でも一番のライフソングが歌えたような気がしています。

輪を大きくしていくことが大事

『PERSONALITY』通常盤

――「one stroke」は、昨年から今年にかけて行われたツアー『高橋優 -LIVE TOUR 2019-2020「free style stroke」』でも披露されていましたが、いつ頃書かれていた楽曲なんですか。

 去年の10月ごろに書いていた曲です。11月にオケは完成していたので、せっかくなのでツアーで歌おうと思いました。その時は歌詞が全然違っていて、ツアーの中で歌詞が変化していきました。

――この「one stroke」という言葉はギターのストロークから?

 その意味もあるんですけど、ストロークって一連の流れという意味があるんです。10周年も一連の流れとも言えるし、ギターのストロークも一連の流れだったりするので。改めて一連の動きを考えた時、ストロークするのは衝動的なことが多いなと思いました。最初の「one stroke」は、幼少期の出来事なんですけど、一緒に遊んでいた友達が車で帰ってしまう時に「またねー」と走って、車を追いかけていた時のことを思い出して書きました。車に追いつけるわけがないので、大人になるとそれは時間の無駄だと思うんですけど、その無駄とも言えるストロークを描いていて。

――大人になると生産性を求めたりしてしまいますから。

 でも、あんなにピュアで一生懸命、心のままに走っていたことは、すごく貴重な時間だったんじゃないかなと思いました。そういう風に考えていたらライブで拳を上げることや、声を上げることも、お腹の足しになるわけでもない、「だから何?」と言われても言い返せない無意味ことだと思うんです。でも、その一連の仕草が僕らの生活を実は支えてくれていたんじゃないかなと思って。それを忘れないように、歌詞でも<聞こえるよ 聞こえるよ>と連呼しているんです。

――ここから10年はどんな気持ちで活動していきたいですか。

 「八卦良」でもお話しした、悟らずに転がり続けたいというのが一つあります。それは、僕ぐらいの年齢になってくると振り返ることがカッコいいと思っている人も少なからずいると思うんです。でも、僕はまだ人生のピークは来ていないと思っていて。日本武道館をやった時も、横浜アリーナでやった時もピークだったのかも知れないですけど、「まだピークはあるな」という気持ちがすごくあります。なので、生意気だと思われたとしても、「転がり続けたい」、まだまだ身を挺して次のステップに行きたいと思っています。

 でも、一人で、というニュアンスではなくなっています。今感じているのが人と人の輪があると思って、「10th Anniversary 高橋優」の“ゼロ”の部分はその輪を象徴していたりします。この輪を大きくしていくことが大事で、その輪にいる一人ひとりにもワクワクしていて欲しいし、これからも一緒に音楽を奏でていく中で、「何か高橋優、面白いな」と思ってもらえた方が楽しいと思うんです。ファンクラブも8月から心機一転して始まったんですけど、それも一つの輪ですし、みんなが「もう少し見ててみるか」みたいな輪が大きくなっていって、そこで自分ももっと楽しんで、面白い曲をみんなと一緒に歌っていければと思います。

――ちなみに、リアルタイムシンガーソングライターというキャッチコピーもありますけど、今もその感覚ですか?

 箭内さんがつけてくれたんですけど、ちょっと僕にはカッコ良すぎるなと思っていて。Twitterには「歌を作って唄っています。」としか書いてないんですけど、それはシンガーソングライターというのがカッコ良すぎる節があって。たまに「シンガーソングライターの高橋優です」と言ってしまう時もあるんですけど、自分では内心「今カッコつけちゃったな」と思っていて(笑)。でも、その感覚は失わずにいきたい、地に足がついた状態で飛躍させずに輪を大きくしていきたいなと思っています。

(おわり)

スタイリスト 上井大輔(demdem inc.)
ヘアメイク 内山多加子(Commune)

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