工藤晴香「希望やポジティブさを抱き続けたい」コロナ禍で感じた純粋さとは
INTERVIEW

工藤晴香

「希望やポジティブさを抱き続けたい」コロナ禍で感じた純粋さとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年10月02日

読了時間:約11分

 キャラクターとライブがリンクする次世代ガールズバンドプロジェクト『バンドリ!』氷川紗夜役としても活躍する声優の工藤晴香が10月7日、2ndミニアルバム『POWER CHORD』をリリースする。工藤は2020年3月25日、1stミニアルバム『KDHR』(読み:くどはる) でメジャーソロデビュー。約半年ぶりとなる今作は、コロナ禍で感じたことを落とし込んだ全6曲を収録。自身初となるラップや作曲にも挑戦し、工藤晴香の新たな側面を打ち出した1枚となった。インタビューでは『POWER CHORD』に込めた想いから、作曲やラップに挑戦した経緯など話を聞いた。【取材=村上順一】

おうちで“一人ワンマンライブ”

「POWER CHORD」_TYPE-Aジャケ写

――前作『KDHR』をリリースされてすぐに今作『POWER CHORD』の制作に入られたようですね。

 はい。その時はまだシングルなのか、アルバムなのか形も決まっていなかったんですけど、曲作りには入ってました。

――スピーディですよね。この半年間で感じたことが楽曲に込められていると思うのですが、その中でも一番強く考えたことは?

 誰も経験したことがない時代に突入した、と感じていました。その中でどうやって生きていくのか、未来には元の生活には戻れるのだろうか、というものです。不安や恐怖はみなさんも抱いていると思うんです。その中で少しずつ時間は進んでいて、生活も変わってきています。でも、希望やポジティブさを私は抱き続けたいなと思いました。そうしたら、ちょっとした出来事でも感動できるようになって。

――敏感になって。

 そうなんです。めまぐるしく変化はしているけれど、その中で喜びや楽しみを見つけられるようになったのかなと感じました。自分と向き合う時間が増えたり、あまり連絡をとっていなかった友達にも連絡をとるようになって。リモートでワイワイしたり、今までできなかったことができるようになったと思います。

――できることが限られてくるので、その中でどう楽しく過ごそうか、というのは考えますよね。

 探究心は、以前よりもめちゃくちゃ増えたと思います。

――ステイホーム期間中はギターの練習なんかも捗ったんじゃないですか。

 捗りました。自分でセットリストを組んで、おうちで“一人ワンマンライブ”とかしてました。それを話したらお仕事で繋がっている人は触発されて、「私もやってみたよ」と報告を受けて(笑)。

――伝染しているんですね(笑)。さて、この期間歌詞に関してはどのように考えていましたか。

 今作では昔のことを思い出しながら書いたんですけど、毎日おうちで過ごしていたので、景色は変わらないんですけど、外からは子どもたちが遊んでいる声が聞こえてくるんです。世界は大変なことになっているけど、子どもたちのピュアさとか、何でもないものでも遊び道具にしてしまう純粋さに感動したり。子どもはすごく想像力が豊かなんですよね。改めて私にもそういう時代があったなあって。

――確かに、大人になると固定観念が生まれて、柔軟な発想が出来にくいです。

 例えば滑り台にしても、今の私だったらきっと一回滑ったらそれで終わってしまうと思います。でも、子どもたちは、それを家に見立てて遊んだりしていて。私も幼少期は缶蹴りを飽きずに無限に遊んでましたから。それで、その子どものパワーを今の自分に落とし込めないかなと考えながら、歌詞を書いていきました。

――さて、1曲目の「GROOVY MUSIC TAPE」はノリノリですね。この曲はカセットテープに自分が好きなものを詰め込んだ経験を歌詞にしているとのことで。

 今作で一番最初に取りかかった曲なんです。前作『KDHR』の時の取材で、初めましてのメディアさんが多かったので、音楽との出会いやハマったきっかけをよく聞いていただきました。インタビューで色々と話していくうちに、いろいろ思い出してきて、音楽をあんな気持ちで聴いていたなあ、とかクラスメートの子とラジカセで聴いていたなあと、色々思い出しました。今あの時の初期衝動を私は感じているということに、自分で感動してしまって。それを曲に落とし込めたらいいなと思いました。

――この曲の歌詞で特に気に入っているフレーズはありますか。

 <巻き戻し擦り切れるまで歌いたいんだ 音の波の記憶を刻んでゆくMyTape>や、<耳を澄まし 声を探すAとBの狭間で>というのはカセットテープ要素も入っていて、気に入っています。小学生の時は車の中で音楽を聴くことが多かったのでカセットでしたし、色んなアーティストさんの曲を聴きたかったので、自分でオリジナルベストみたいなのを作ってました。

――マイベスト作るのってすごく楽しかったですよね。さて、2曲目は「ROCK STAR」ですが、なぜロックスターをテーマに書こうと思われたのでしょうか。

 ステイホーム中、ソロの作業と向き合っていました。私の部屋にはビートルズの『アビイ・ロード』のポスターが貼ってあるんですけど、ジョン・レノンがもし生きていたら今どんなことを言っていたのかな、どんな曲を書いているんだろうと妄想をしてました。私も一人の表現者と思っていただいていると思うし、きっとそうなんだと思った時に、どうやって自分の思いや気持ちを歌詞に書いて伝えていくのがいいのかなと考えました。その中でできた曲が「ROCK STAR」なんです。

――イチ表現者としての答えはありました?

 色んなものに背中を押されてやってきて、私はそれを受け取るだけではなくて、今度は自分がファンのみんなや人々に向けて背中を押してあげたいと思いました。「私が誰かのロックスターになりたい!」という願望が生まれたんです。なりたくてなれるものではないと思うんですけど、それは聴いてくれる皆さんが決めてくれることなので、だからこそ、その気持ちを書きたかったんです。

――「ROCK STAR」はロックなナンバーですが歌詞を乗せるにあたって気をつけたことはありますか。

 すべての歌詞に言えることなんですけど、嘘や背伸びしたことは書きたくなかったんです。「正直でありたい」というのは歌詞を書く時に考えていたことでした。全然思っていないけど、言葉のハマりがいいからというのも避けたかったんです。それは自分が歌った時やこの歌が世に出た時、こうやってインタビューを受けるときに、自分の首を絞めてしまうかもしれないと思いました。「ROCK STAR」はその中でも強めの言葉を乗せたいというのがありました。

いつだってスタートは切れる

「POWER CHORD」_TYPE-Bジャケ写

――続いての「KEEP THE FAITH」は初のラップに挑戦した曲です。これは誰かからのご提案だったのでしょうか。

 実はラップは私からの提案なんです。ヒップホップが私が好きなこともあって挑戦してみたいなと思って。最初ふわっと「ラップをやってみたいんですよね…」と、恐る恐る切り出して。

――完成したものを聴いてみて、初ラップに何点をあげますか。

 え〜難しい(笑)。ラップ自体の実力は全部出せたと思います。リリックに関しては50点くらいかなあ。

――それは厳し過ぎませんか。

 曲を通してのテーマにもあっているし全然良いんですけど、リリック単体で見たらそのくらいかなって。もちろん今の全力は出させていただいていますけど、「まだまだ伸びしろがあるぞ」、というところで厳しめに50点にしておこうかなって。

――次回ラップパートがあったら楽しみですね。この曲は「KEEP THE FAITH」ということで信念や信仰といった意味合いがありますが、これもステイホーム中に考えていたことですか。

 この曲は8月に作っていた曲なんですけど、デモをいただいた時に、他の曲で書きたいことを書き切ってしまっていました。なので、まずはメロにハマらなくても良いから自分が今思っていることや、前から感じていたことを紙に書き出していくことにしました。

 その中でグッとくる言葉を拾って、それをテーマに歌詞に落とし込んで行きました。数字だったり年齢であったり、いつだってスタートは切れる、生きている間は終わりなんてない、ということを伝えたいと思いました。挑戦し続けている人の方が人生はきっと楽しいんだろうなと思ったんです。

――やらずに後悔するよりやって後悔したいというのもありますよね。

 失敗してしまって終わらせてしまっている人も沢山いると思います。また再び同じことに挑戦するというのも大事だと思いますし、新しい場所で新しいことにスタートを切ることもできるじゃないですか。そこで楽しさや幸せを見出すことができたら素敵なことだなと思います。

大変だった初めての作曲

「POWER CHORD」_TYPE-Cジャケ写

――「君へのMHz」は感受性が変わって、些細なことでも感動できたところから生まれた詞なんですよね。ラジオがテーマになっていますが、工藤さんがラジオが好きな理由は?

 10代の頃からずっとラジオは聞いています。映像のメディアも見ますけど、視覚で情報が入ってくるよりも、聴覚で入ってくると喋っている女性の容姿だったりいろいろ想像できるんです。それがすごく楽しくてラジオをよく聴くようになりました。パーソナリティの方の何気ない会話が、人の日常を覗き見しているみたいで、それが好きなんです。

――想像できるというのがキーワードなんですね。

 そうなんです。テレビでもそこに映っている人よりも、画面に映っていないカメラマンさんや音声さんが姿を想像してしまうんです。

――ということはマンガよりも小説の方が好きだったり?

 どちらも好きです。私にとってラジオは小説と一緒で、マンガと映画が同じ感覚です。ちなみにマンガという存在は本当に尊敬しています。

――ベクトルが違うんですね。この曲のタイトルもすごく印象深いですが、スッと出てきた言葉ですか。

 いえ、ずっと違うタイトルが付いていて、仮タイトルは工藤(910)で「910MHz」でした。そこから改めて考え直して、曲が完成してから付け直したんです。

――「910MHz」も面白いですね。さて、5曲目は工藤さんが作曲に挑戦した「Magic Love」です。

 2ndミニアルバムの制作が決定したタイミングで、「やってみたいこととかある?」と聞かれまして。作詞は引き続きやるし、ギターを弾くのも最低限はできる、と考えた時に「作曲に挑戦してみたい」と思いました。本当にゼロからのスタートだったので大変でした。

――どんなふうに進めていったのでしょうか。

 メロディはぼんやりと浮かんでは来たんです。でも、コードに乗せてそのメロディを歌うとしっくりこなくて…。「なんか違うかも」となって作曲が止まってしまいました。難し過ぎてそこで作曲すると言ってしまったことを後悔して(笑)。それで、先にコードを決めてしまおうと思いました。ひたすらパワーコードで楽曲の進行を作って、そこにメロディを乗せるやり方にシフトしました。

 それで作曲に詳しい人に「どうやったら作曲できるのか」とアドバイスを求めました。その方からは「サビをとにかく量産する」と、アドバイスをいただきました。なぜかというと使えるサビができた時に、今まで作ってきたサビの中に、AメロやBメロに使えるものが見つかるとのことでした。なのでひたすらサビを作っていったんですけど、次の日に出来たメロディを聴いたら微妙で、毎日その繰り返しでした。歌詞は、自分で作ったメロディだったこともあり、いまだかつてないほど最速で書けました。

――パワーコードで作曲していたとお話しに出てきましたが、それもアルバムタイトルに関係あるのでしょうか。

 その関係性は特になかったです。普段ギターを弾いている時もパワーコードという単語を何気なく使っているんですけど、「そもそもどういう意味なんだろう?」と思って調べたら「純粋で力強い音」という意味を知って、今作のテーマにぴったりだなと思ったので、アルバムのタイトルにしたという経緯があります。

――そうだったんですね。「Magic Love」の聴きどころは?

 ラストサビ前のクラップしているセクションがあるんですけど、この曲の聴きどころなんじゃないかなと思っています。きっと聴いてくれた方が、ここで高揚してくれんるんじゃないかなと思います。

――そして、アルバムの最後を飾るのが「My Story My Life」です。

 人生とは、というのを書いた曲です。でも、そこまで重い感じではないんです。私は小説も好きなんですけど、それは登場人物の人生を自分も生きている気持ちになれるからなんです。他の人から見たら私の人生も一つの小説になるのかなと思って。私から見た街行く人たちにもそれぞれが面白い人生を歩んできて、きっと彼らの人生も小説みたいなのかなと、いろいろ考えていた時に、それを歌詞にしたら面白いんじゃないかなと思いました。

 この曲の最後は<走れ>という言葉で終わっているんですけど、この曲のデモをいただいた時に、日本語でも英語でもない仮歌が入っていたんですけど、その箇所が空耳で<走れ>に聞こえて。その場にいたスタッフさんも「これは絶対走れと言っている」と盛り上がって(笑)。

――<走れ>きっかけなんですね(笑)。

 はい。それでこの<走れ>を活かした方がいいなと思い、テーマも何も決まっていないのに<走れ>に着地することをイメージしながら書いて行った歌詞なんです。

――面白い作り方をされていたんですね。最後にファンの方へメッセージをお願いします。

 作品を届けるからには沢山の人に聴いてもらいたいと思っていますし、長きにわたって聴き続けてもらいたいという想いがあります。10年、20年経っても新鮮な気持ちで聴いていただけるような作品になったら、と思いながら作ったので、皆さんに是非聴いていただけたら嬉しいです。

(おわり)

▽工藤晴香「POWER CHORD」CDお渡し会

10月6日(火)SHIBUYA TSUTAYA8階イベントスペース
(1)18時~(TYPE-A購入者)
(2)19時~(TYPE-B購入者)
(3)20時~(TYPE-C購入者)
(4)21時~(TYPE-C購入者)

▽工藤晴香「POWER CHORD」発売記念配信イベント

日時:2020年10月27日(火)20:00~
内容:スペシャルトーク
出演者:工藤晴香

視聴方法:

タワーレコードオンラインで、対象商品を2020年10月7日(水)23時59分までに購入、10月12日(月)中までに商品の受け取りを完了された方全員に、タワーレコードメンバーズのマイページにて配信視聴のURLとシリアルコードをご案内。

イベント詳細はこちら:http://www.crownrecord.co.jp/artist/kudo/whats.html

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