工藤晴香「過去を肯定しながら未来を生きていく」ソロで魅せる新たな一面
INTERVIEW

工藤晴香「過去を肯定しながら未来を生きていく」ソロで魅せる新たな一面


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年03月26日

読了時間:約10分

 キャラクターとライブがリンクする次世代ガールズバンドプロジェクト『バンドリ!』氷川紗夜役としても活躍する声優の工藤晴香が3月25日、1stミニアルバム『KDHR』(読み:くどはる) でメジャーソロデビュー。高校生時代からモデルとして活動した後、2005年にテレビアニメ『ハチミツとクローバー』の花本はぐみ役で声優デビュー。2016年から『バンドリ!』の氷川紗夜役としてRoseliaのギターを担当。『KDHR』にはリード曲「MY VOICE」を筆頭に彼女の決意や想いが反映された全6曲を収録。インタビューでは初の作詞に挑戦した今作の制作背景から、ライブをする事に楽しみを感じている工藤にライブの醍醐味、今向き合っていかなければならないこと、ソロシンガーとしての展望など話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

工藤晴香として歌う

工藤晴香

――デビューが決まった時、どのような心境でしたか。

 ソロデビューに向けて頑張ろうとなったのが昨年の初夏だったんですけど、シンプルに嬉しかったです。個人のイベントをやっていてその中でオリジナル曲を2曲作りました。それがきっかけで本格的に準備をしていこうとなって。初めてのことが沢山あって今ワクワクしています。

――Roseliaというバンドもやっていますが、それとも違う楽しさがあって。

 全然違います。バンドではギターですけど、ソロではボーカルで歌詞も書いているので、まずそこに大きな違いがあります。共通して音楽というのは変わっていないんですけど、ベクトルが違う感じがあります。

――キャラソンなども歌われてきていますが、今作は工藤晴香として歌われています。そこへの難しさは感じました?

 逆にキャラソンの方が難しさを感じているんです。達人の方は本当にそのキャラに寄って歌えるんですけど。

――ソロ活動で楽しみにしていることは?

 作品が完成したので、今度はそれを届けたいという思いが強いので、ゆくゆくはライブをやりたいです。今作でもライブを意識して歌詞を書いたりしているので。全国のファンの方に会いにいけるのを楽しみにしています。

――さて、今作はPassCodeを手がける平地(孝次)さんが楽曲制作に関わっていることもあり、展開が激しい曲もあるんですけど、このプログレ要素もある曲はどう感じましたか。個人的には難しそうだなと感じました。

 私は歌の経験があまりないので、逆にスッと受け入れる事が出来たと思います。普通の展開とは違うところが面白いなと感じていて新鮮でした。感情の切り替えは声優の経験が上手く活きたのかなと思います。

――経験が活きていて。1曲目の「MY VOICE」は決意表明のような一曲になりましたね。

 この曲が最初に取り掛かった曲で、テーマを考えた時に自分らしさや強さ、前に進んで行く気持ちを出せていけたら良いなと思いました。それを軸にして歌詞を書き上げたんです。この曲は最初ということもあってすごく時間が掛かりました。そこからはコツを掴んで割とスムーズだったんですけど。「MY VOICE」のレコーディングの時は、ある作品のライブがあったので、合間を見てずっとダンスの練習をしていたのを思い出しました。

――特にどの辺りに難しさを感じましたか。

 この曲はデモの時から表題曲にしようと思っていました。なので歌詞もわかりやすいように、歌い出しは日本語、サビ頭もみんなが知っている英語にしたりとか、そこを特に考えたんです。私はヒップホップが好きなんですけど、日本語と英語が混ざり合った感覚はそこから無意識に得ているのかも知れないです。メロディが面白いからこういう言葉をはめてみようというパターンもありました。

――ヒップホップはどんなアーティストを聴いていますか。

 KOHHさんやZORNさん、中学生の時にDragon AshさんやKGDR(キングギドラ)さん、RIP SLYMEさんが流行っていてそこからヒップホップにハマって、今は『フリースタイルダンジョン』を見てPUNPEEさんとかも知って。

――今作を聴いていると言葉の乗せ方がヒップホップの流れを感じさせる部分もありますね。さて、「MY VOICE」はMV撮影もされていますが見どころは?

 大慶園という千葉のアミューズメントパークで撮影しました。ハプニングもなくスムーズに撮影は進みました。見どころは屋内では昼も夜もわからないけど、屋外で撮影したシーンで時間の流れを表現していて、そういったギミックもあるので、楽しんでもらえたら嬉しいです。

ライブは生きている

工藤晴香

――さて、2曲目の「IRON SOUND」はハードエッジなナンバーですが、音にインスパイアされてこういった歌詞に?

 そうです。聴いた時に強い曲だと思ったので、歌詞もそれに合わせて強い歌詞にしました。ライブを意識して作りました。

――工藤さんが思うライブの醍醐味は?

 同じライブというのは存在していなくて、一瞬一瞬がその時だけのもので、ライブという名の通り生きていると感じています。同じようにやろうとしてもそれは無理で、一度限りの空間というところが醍醐味だと思います。

――お客さんとのエネルギーのキャッチボールも生ならではですよね。

 それはすごくあります。人と一緒にやるというのは大きくて、それこそ声優のお仕事でも他の声優さんと一緒に録ることで相乗効果が生まれます。特に掛け合いの部分なんかは、こういう風に来るんだ、なら私はこういう風に返そうとか。その場で変わる事もあるので、生ものだなと思います。

――この曲でどういう風に盛り上がってもらえたら嬉しいですか。

 ドリンクを飲んで揺れているだけでも良いですし、もう自由に楽しんでもらえたらと思います。音楽の楽しみ方は自由なので、それこそ家で楽しんでもらっていてもいいですし。あとは弾いてみたとかでコピーしてもらえたら嬉しいです。

――工藤さん、今回ギターは弾かれているんですか。

 今作は弾いていないんです。スタッフさんから弾いてみる?と言ってもらえたんですけど、歌詞や歌など初めての事が沢山あったので、今回はそっちに集中したいと思って、ゆくゆくはやりたいなという気持ちはあります。

――そうだったんですね。さて、「それぞれのPLANET」は隣の芝生は青いというのを逆転の発想でポジティブに捉えた歌詞が印象的です。こういう風に思えた瞬間はどんな時だったんですか。

 10代前半の頃からお仕事をしていて、周りと比較されていました。でもそれは芸能界だけではなく学生さんや社会人の方々など誰しもが経験する事だと思うんです。それを、わかった上であなたも周りから見たらその一人なんだよと肯定したいと思いました。隣で肩をポンポンとしてあげているような感じです。

――この曲はどのように歌い表現しようと思いましたか。

 優しさと可愛さをプラスしたような感じで、その人の隣にいるような感じで歌いたいというのは意識しました。

――続いての「Thunder Beats」ですが、このタイトルはどこから出てきた言葉なんですか。

 造語なんです。歌詞にビリビリという言葉を入れたいと思い、そこから連想してカミナリからThunderになりました。曲調も面白いし、歌詞も面白いけど、「永遠なんてない」というのが裏テーマとしてありまして。

――そのギャップも興味深いですよね。自由で楽しいものに囲まれていたいとの事ですが、工藤さんはどんなものに囲まれていたいですか。

 私はマンガだったり、アニメやゲーム、そして映画が好きなのでそれらに囲まれていたいです。部屋にポツンといるイメージで、自分の部屋に嫌いなものって置かないと思うんです。

――確かに。もしかしてTYPE-Aのジャケ写はそんな好きなものに囲まれているイメージも?

 ギターとラジカセ、ゲームのコントローラー、バックはメダルゲームがキラキラと光っていて、「Thunder Beats」の世界観に近いものがあります。私、ゲームセンターがすごく好きなんです。朝か夜かわからない、時間を忘れて楽しめる場所なんです。

――TYPE-Cのジャケ写はビリヤード台ですけど、もしかしてビリヤードもお好きなんですか。

 それがビリヤードはまだやった事がないんです。でも、すごくムードが良かったので、ジャケット写真にしました。ビリヤードの球がミラーボールなんですけど、それはデザイナーさんのこだわりです。

今向き合っていかなければならないものは?

工藤晴香

――細部にも注目して欲しいですね。さて、「アナタがいるから」はファンの方や自身を取り巻く様々な方たちに向けた1曲との事で。

 そうなんです。バラードを一曲作ろうという事で、この曲は歌詞先行でつくりました。色んな人たちとの出会いがあって今の自分がいるというのが、私の中にあってそれを歌詞に投影しました。

――色んな方たちがいる中で、敢えてこの人がいなかったら今の私はいなかったと思える人は?

 えっー誰だろう? いっぱいいすぎて難しいです。実はタイトルも最初「アナタたちがいるから」にしようと思っていました。でも、「アナタたち」にするとメロディにハマらないし、歌うのが大変だなと思って(笑)。セリフでもめちゃくちゃ言いにくいんです。

 色々考えたんですけど、やっぱり響きが良いのは「アナタ」だなと思いました。この世界に入ったきっかけでスカウトしてくれたマネージャーさんというのもありますけど、やっぱり親ですかね。あとはこれから出会う人たちに向けた1曲でもあるんです。

――まだ見ぬ方たちへ向けた曲にもなっているんですね。詞先との事ですが、メロディを乗せるにあたり、ここを変えて欲しいみたいなオーダーはありましたか。

 それがなかったんです。逆にさらにメロディが増えていて、追加したんです。今度はメロディに歌詞をはめていったので大変なところもあって。

――増えてるのは面白いですね。レコーディングはいかがでした?

 広いスタジオで1人で歌っていたんですけど、孤独でした。しっとりと歌いたかったので、その広さが良くて。歌うに当たって環境も大事だなと思いました。

――ブースの照明を落としたり雰囲気作りをする方もいますからね。さて、最後に収録されたのは「Memory Suddenly」ですが、直訳すると「突然の記憶」で合ってますか。

 合ってます。これも造語なんです。韻を踏みたかったというのもあります。あと、記憶について歌って見たかったんです。

――この曲の歌詞を読んで思ったのですが、もしかして誰かお亡くなりになられて...。

 いえ、誰も亡くなってはいないんです。悲しい経験も沢山してきて、忘れたい記憶もあるけど、それらを突然思い出す瞬間ってあるんですよね。なので、歌詞は人に限定はしていなくて場所や物だったり、それらを抱えて未来を生きていくということを歌っていて。

――こうやってお話を聞いているとこのミニアルバムには人が生きていくためのものが詰まっていますね。

 はい。生きていくために向き合っていかなければならないものがあると思っています。

――工藤さんが今向き合っていかなければならないものは?

工藤晴香

 自分の周りの人たちも含め、過去を肯定しながら未来を生きていくことです。あとは貯金かなぁ(笑)。

――さて、ソロ活動の目標はありますか。

 色んな人に知ってもらえるので、フェスに出たいです。学生時代に私もフェスに行っていて、そこで色んなアーティストさんを知る事が出来たんです。そして、全国ツアーをやりたいです。全国の方に曲と歌を届けに行って、ファイナルを日本武道館で行えたら最高です。

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

 1stミニアルバムということで、色んなくどはるが詰まっているので是非聴いて下さい。落ち込んだ時に聴けば励まされたり、楽しい時に聴けばより楽しくなったり、色んな楽しみ方があると思うので宜しくお願いします!

(おわり)

作品情報

工藤晴香
Major Debut Mini Album「KDHR」(読み:くどはる)
2020年3月25日発売

●TYPE-A(CD+M-CARD) CRCP-40600 3182円+tax
CD ※全タイプ共通
1. MY VOICE ※テレビ朝日系全国放送「musicるTV」3月度オープニングテーマ
2. IRON SOUND
3. それぞれのPLANET
4. Thunder Beats
5. アナタがいるから
6. Memory Suddenly

M-CARD TYPE-A
・「MY VOICE」Music Video
・Music Video メイキング映像
・工藤晴香バースデーライブ 「KDHA ROOM〜MY VOICE MY LIVE〜」 LIVE映像

●TYPE-B(CD+M-CARD) CRCP-40601 3182円+tax
TYPE-B
・「MY VOICE」Music Video
・工藤晴香バースデーライブ 「KDHA ROOM〜MY VOICE MY LIVE〜」 ドキュメント映像
・ デジタル・フォトブック

●TYPE-C (CD) CRCP-40602 2273円+tax

※M-CARDに収録予定の『工藤晴香バースデーライブ 「KDHA ROOM〜MY VOICE MY LIVE〜」 LIVE映像 』並びに『工藤晴香バースデーライブ 「KDHA ROOM〜MY VOICE MY LIVE〜」 ドキュメント映像 』に関しましては、公演の延期に伴いアップロード時期に遅れが生じてしまう事となりました。
お客様には大変ご迷惑をお掛けしますが、振替公演実施後速やかにアップする予定ですのでご了承ください。具体的な日程が決まり次第、改めて告知させて頂きます。

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