フレデリック フロントマンとしての意識、その変化に迫る
INTERVIEW

フレデリック

三原健司


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年09月21日

読了時間:約13分

 4人組バンドのフレデリックが22日、New EP『ASOVIVA』をリリースする。2020年2月に横浜アリーナ公演を成功させ、2021年2月23日に日本武道館公演も決定しているフレデリック。今年初となる音源『ASOVIVA』はリモートで制作され「Wake Me Up」、7月に先行配信された「されどBGM」など新曲4曲に加え、7月に行われたアコースティックオンラインライブ『FREDERHYTHM ONLINE「FABO!!~Frederic Acoustic Band Online~』より「リリリピート」「ふしだらフラミンゴ」、初回盤にのみ「終わらないMUSIC」DVDには「FABO!!」のライブ映像を収録。インタビューでは、横浜アリーナ公演を振り返ってもらいながら、彼らが提示するASOVIVAとはどんなものなのか、このコロナ禍で考えたていたことから、フレデリックのフロントマンとしての変化について、三原健司(Vo.Gt)に話を聞いた。【取材=村上順一】

自分達が“遊び”を提供する

『ASOVIVA』通常盤ジャケ写

――横浜アリーナという大舞台での公演、どのような気概で臨みましたか。

 今となってはこんなに新型コロナがここまで続くとは当時は思ってなかったです。今は目の前のことに、色んな状況がありつつも自分達の音楽を届けたくてあの場に立ちたかった。『終わらないMUSIC』というタイトルで横浜アリーナでやったきっかけも、康司の曲が音楽に対するラブソング、音楽のことを歌っている曲が凄く多いなということに気づいて。そういうものをアリーナで表現できないかなと思った時に、音楽をより深く聴いてもらえるアプローチをしたいと思った公演でした。約7カ月経ったいま、より意味が深くなっているのを感じてます。あのとき横浜アリーナをやれたのとやれてないのとでは、今の状況も全然違うだろうなと。

――7月にその模様を収めたDVDがリリースされましたが、その映像を客観的に観てどんな気持ちになりました?

 映像になった時も含めてどう楽しめるかということを演出も含めて考えていました。「峠の幽霊」の演出は真っ暗なんで、初めて観る人は驚くと思うんです。

――確かに(笑)。

 自分の理想通りのものができたし、DVDを観て「これ、フレデリックをもっと好きになるんじゃないか」と凄く感じたんです。「この曲あまり聴いたことなかったけど、歌詞はこんなこと歌ってたんや」とか、そこに改めて自分が気づかされる瞬間があったなと。やった自分自身がそう思うくらいなので、きっと初めて観る人は特にそう思ってもらえるんじゃないかなと改めて感じました。

――フレデリックのライブを何回も観ている自分も、凄く新鮮なライブでした。あの公演から間もなくして緊急事態宣言が出て、フレデリックが水面下でどう動いていたのか気になります。

 緊急事態宣言が出て、アリーナ規模のライブが軒並み中止になって、自分達としては3月も対バンイベントへの出演が決まっていたり、4、5、6、7月も自分達の企画をはじめとして、色々予定が詰まっていました。3月いっぱいライブができませんという状況になって。先のことがある程度予想できたので、レコーディングのことなど、色々話し合っていました。

 自分達の動きは決まりましたけど、お客さんに向けて何もしないというのはどうなんだろう、と考えました。その中で寄り添うことも大事だと思うんですけど、一緒に「大変だね」と寄り添うよりは、自分達が“遊び”を提供する、自分達の楽しいと思うものを提供し続けるスタイルは変わらず、ライブでやっていたものをそのままSNSに落としこもうということになって。3、4月は自分達のできる範囲でSNSで自分達の音楽を聴いてもらったり、その中に「ASOVISION(アソビジョン)」というコンテンツをYouTubeに作ったりしていました。

――みんなを巻き込むというのはフレデリックの真骨頂だと思います。

 それと並行して、1年間スケジュールを出してまた来年の2月までに武道館のライブを発表していたし、そこに向けてちゃんと自分達がどういう音楽を残していくのか、ということを大事にしたかったから、絶対今年中にレコーディングをしたいとなったんですけど、東京は5、6月はレコーディングスタジオにすら入れない状況になっていて。

――厳しい状況ですよね…。

でも、そのまま先延ばしにして「いつか良いタイミングが来れば」というのもフレデリックらしくないと思ったので、全員で音楽機材を集めてリモートでレコーディングに挑戦したり。その間も並行して「ASOVISION」だったりYouTubeやSNSでお客さんに色々提供しつつも、裏では曲を制作していたんです。

――「ASOVISION」はこのコロナ禍で生まれた企画でしょうか。

 “ASOVIVA”とか“アソビ”というのは元々考えていたことです。こういう時期だから“遊び”を提供しようとなったわけではないんです。日本武道館でのライブを決めたときのことです。僕らは日本武道館を目指すことが目標ではなくて、そこで何をするのかがフレデリックにとって一番大事だと思っていて。

 その中で僕が「日本武道館を遊び場にしたい」という話をして、そこから“遊び”という言葉が生まれ、そこに向けて2020、2021年は走りだそうと始まっていたんです。コロナ禍が重なってしまいライブができない状況になってしまったけど、“遊び”というスタンスだけは変わらずに進んでいました。やりたいことをそのまま表現して、今はこの状況がよりその意味を作ってくれているような感覚もあります。

――『ASOVIVA』という今回のEPのタイトルは、“遊び場”を普通にローマ字に変換したら「ASOBIBA」だと思うのですが、“VIVA”=“生きる”という意味と掛け合わせているのがより意味を深めているなと思います。

 自分達の「されどBGM」という曲でも言ってる通り、<たかがBGM されどBGM たかが人生で、されど人生です>なんです。自分達の音楽を鳴らしたりとか、“遊び”というのがフレデリックにとっての人生というところもあるので、それもあって“ビバ”は“VIVA”にしようとなって。

――それによって意味の重さが変わりますよね。30代のフレデリックはこうなっていくのかと。ちなみに30歳になって、半年が過ぎましたが何か意識は変わりましたか。

 精神面は全然変わってないですよ(笑)。4人とも20代前半みたいなテンションですから。でも音楽やスタンスは意識するようにはなりました。でも、「30代なったからちょっと落ち着こうか」じゃなくて、「30代だから“遊び”という言葉を多用した方が面白くない?」という話をしていて。「30代なのにまだまだこの人達攻めるんや」という方が、僕は人生楽しいと思うし、そういう人達に憧れてきたので。そういうところで30代というのは意識しているところはあります。

――その中で、健司さんが「変わった方がいいこと」と「変わってはいけないこと」の2つで思うことは?

 変わった方がいいなと思ったのは考え方です。この状況って、何もしなければ本当に何もしないままになるじゃないですか? 自分達で言えば、レコーディングスタジオで録音ができなければ待つしかないという選択をしてしまうと『ASOVIVA』も生まれなかったし、その間に待っている人達も今いないわけで、自分達の音楽として、キャリアとしてのアップデートもできないわけで。そういうところで自分達の中で思考停止するよりかは、自分達さえ変わればなんとかなるところは絶対変えていこうと思いました。

――能動的に動くことは重要ですよね。

 変わらずにいたいなと思っているのは、自分の立ち位置を大事にしたい、芯は絶対にブレたくないなというのはありました。このコロナ禍において、人と人との繋がりもより意識するようになるというか、そう思わざるをえない瞬間ってあると思うし、普段こういう状況だからこそ見える人間性だったり、それに触れる瞬間も多かったからこそ思ったことです。自分は自分のやり方があるんだろうなと。そこに引っ張られそうだからこそ、自分はそのままのスタイルで行こう、何かを絶対作り続ける人であり続けようと。

純度100%のレコーディング

『ASOVIVA』初回盤ジャケ写

――今作『ASOVIVA』はコロナ禍で感じたことを歌われていますよね?

 今回の4曲の歌詞、メッセージはこの期間で感じたことを康司が書いています。

――音楽としてどんなところを今は重要視していますか。

 これまでどおりダンスミュージックというのは大事にしつつも、今作はリモートで自分たちでレコーディングしたり、そのチームの編成を少し変えてみたんです。『ASOVIVA』というタイトルなので、自分たちも新しい挑戦、新しい音楽ジャンルへも挑戦してみたいよねと。「Wake Me Up」や「正偽」はシンセサイザーの打ち込みを、いつもとは別の方にお願いしてやっていただいて。

――ミディアムテンポというのも、ここ最近の趣向が出ていますよね。

 そうですね。今僕らは世界のトレンドや日本トレンドというより、自分たちの中でどれだけ満足できるか、というのは追求しているところがあります。

――新しいことのひとつだと思うのですが、リモートでのレコーディングはいかがでした。

 レコーディングスタジオに入ってやるときは、みんなのちょっとした意見が大事になってくるんですよ。例えば(赤頭)隆児がギターを5テイク録ったとして、隆児は2テイク目が良かったと思っていても、他のメンバーが3テイク目の方がベースとの絡みが良いんじゃない、とか様々な意見が出た上で、最終的に隆児がその中から選ぶ。意見が重なった中でテイクを選んで、それがどんどん形になっていくのがレコーディングスタジオで録る良さだと思っています。でも、リモートではそのちょっとした「これどう?」みたいなのがあまり聞けない。

――レスポンスは悪くなりますから。

 そうなんです。同じ時間を共有しているわけではないので。その回答をもらうまでも時間が掛かったりするので、ある程度自分が良いと思ったものだけで構成していくのが必要だなと思いました。それが大変な部分でもありました。

――やっぱりスタジオで録りたい、という思いも強くなった?

 と思いながらも、リモートで作業しているうちにそれに順応していくんですよ。メンバーがあげてくれたテイクを聴いても全然問題ないし、これはこれで純度100%みたいな感覚もあっていいなって。そこに掛けた時間も含めて良い時間になっているんじゃないかなと思いました。あとミュージシャンとしてのレベルもすごく上がりました。自分たちでやることで機材の勉強もしましたし、これまでなかった知識も得ました。

――メリットもあったと。

 逆にレコーディングスタジオでは難しいなと思ったところもありました。スタジオはその部屋を時間で借りているので時間制限があるんです。ミュージシャンによってその時間は様々なんですけど、例えば8時間借りたらその中で1曲を完成させる、自分たちの正解を見つけなければいけないんです。妥協と言ったら言い方が悪いですけど、こだわりたいけど、こだわりきれないところが出てくるのも事実で。それがリモートだと丸1日レコーディング時間として使えるので、そこはリモートならではの良さだなと感じましたし、すごく選択肢が広がったと思います。今後レコーディングスタジオで録っていくと思うんですけど、曲によってはリモートでもいいんじゃない、できそうだなと思いましたから。

――でも、ドラムを自宅で録るのはハードルが高そうですが。

 武ちゃんはエレドラ(電子ドラム)を買って、音を作ってました。完成した音を聴いてもらうとわかると思うんですけど、クオリティは宅録と言わなくても良かったんじゃないかって(笑)。自分たちの中でも満足が出来る音に仕上がりました。

――エレドラだとは思わなかったです。テクノロジーの進化がすごいです。

 そうなんです。ミックスダウンに関してもAudiomoversというソフトがあって、それを使ってやりました。今回はカナダでミックスダウンをやってもらったんですけど、そこでミックスしている音を劣化させずに、リアルタイムで聴けるというソフトなんです。

――リアルタイムというのはすごいですね! カナダでミックスダウンというのは初めて?

 過去にも「LIGHT」や「対価」でやってもらったことがありました。でも今回はそれに加えてその方に「Wake Me Up」と「正偽」の打ち込みもお願いしました。自分たちのガイドラインもありつつ、素材を送って「面白くしてくれないか」と投げました。そうしたら、「Wake Me Up」のような音が戻ってきたので、これめちゃくちゃ面白いなって。

フレデリックには自分が必要なんだ

――今回収録された4曲で「ここに注目して欲しい」といったポイントは?

 今回自分たちが思ったのはタイトル通り、フレデリックは面白いことをやっている、というのが自分たちでも感じ取れる作品になりました。音色だったり、そう思ってもらえるポイントがちりばめられていると思います。4曲目の「SENTIMENTAL SUMMER」では808と呼ばれるリズム・マシンの音を使っていたり、楽器をやっている人には、こんな挑戦もしているんだと感じてもらえると思います。歌詞に関しても、こんな毒気のある事も言うんだとか。

――「正偽」ですね。

 この曲はこれまでフレデリックがやってこなかった2ステップと呼ばれるジャンルに挑戦しています。こういう状況だからこそ作れる音楽があると思って、作った曲でもあるんです。

――正“義”ではなく正“偽”にしているところも面白いですね。

 今の状況の中で康司が感じたものを形にした曲です。本当に正しいものを見極めることが大事というメッセージ性も含めて「偽」という言葉を使ったんだと思います。かと言ってこの状況を揶揄している曲ではなくて、康司の尖っている部分が出た時は、その歌詞のどこかに救いの言葉があるので、そこも感じて欲しいポイントです。

――その歌詞の本質をみなさんにも捉えて欲しいですね。さて、「Wake Me Up」はMVも撮影されていますが、今回どのようなイメージで制作されたのでしょうか。

 「Wake Me Up」のダンスミュージックとしての要素も含めて、踊れるというのを表現したいというのがありました。「LIGHT」から外国の方にも踊ってもらえる、ボーダレスなところがあるんですけど、そこからどんどん広がっていって、人じゃないところでも表現できないかと、クリーチャーみたいなキャラが登場したという背景があるんです。今回は「TOGENKYO」や「飄々とエモーション」でもお世話になった山口(保幸)監督が今作でも手伝っていただけたので、すごく話も早かったです。

――スタイリッシュで、フレデリックの良さがすごく出ていると思いました。さて、私は何年も前からフレデリックを観てきて、こうやってインタビューしてきた中で、年々健司さんのフロントマンとしての意識に変化を感じてきています。今、どのような姿勢でフレデリックのフロントマンとして、活動されていますか。

 デビューした時は、康司の楽曲ありきの自分、康司の曲があるから自分が存在している、そんな感覚がありながら活動している節がありました。その中で自分がもっと前に出て、フレデリックの曲を広めていきたい、と思った瞬間がありました。

――それはいつ頃ですか。

 どこのタイミングというよりは、ライブをやっているうちに自然とそうなっていった感じなんです。例えばMCでのたった一言でも、それまで僕らに興味がなかった人がフレデリックの曲を深く好きになるきっかけがあるなと感じたんです。それらが積み重なっていくにつれて、フレデリックには自分が必要なんだ、自分がいるからフレデリックなんだと思えるようになって。それが今もどんどん強くなってきているんです。

 康司は自分の中から出てくるものを歌詞にしていくことも多いんですけど、僕の言葉を受けて曲に落とし込んで行くことも増えてきたのも変化としてありました。そういった変化からバンド全体を引っ張っていくフロントマンとしての立ち位置が、自分の中に出来上がってきたのかなと思います。

――フレデリックを背負っている、そんな気概を感じました。では、最後にファンの方へメッセージをお願いします。

 ここからはこの期間をどう活かすかが大事だと思っています。2021年に武道館に立った時に、2020年のフレデリックを振り返って、自分たちはあんな状況下でも遊んでたな、と思えるようなものを作れていると思います。これからもどんどんそういうものを作って提示して行くと思うので、これからも皆さん遊びに来て下さい。9月27日にはオンラインでのライブ『FREDERHYTHM ONLINE「ASOVISION〜FRDC × INT〜」』も開催するので、宜しくお願いします。

(おわり)

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