中川翔子はしぶとい? 諦めないであがき続ける姿勢
INTERVIEW

中川翔子


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年09月09日

読了時間:約12分

 しょこたんこと中川翔子が9月9日、ニューシングル「フレフレ」をリリース。表題曲はTVアニメ『ハクション大魔王2020』のエンディングテーマとしてオンエア中で、キャッチーで耳に残るメロディ、大切な誰かにエールを送る応援歌に仕上がった。同曲の振付「フレフレダンス」は、SNS総フォロワー500万人超えのモデル、動画クリエイター、タレント、アーティストの“ねお”が担当し、ダンス動画も公開。カップリングには10年前に12枚目のシングルとして発表され、BiSHやBiSなどのサウンドプロデュースを手がける音楽集団スクランブルズ代表の松隈ケンタ氏が、作詞・作曲・編曲を手掛けた「フライングヒューマノイド」を2020 Ver.として、アコースティックアレンジで収録。大人な中川翔子を垣間見せた。インタビューでは、「フレフレ」に込めた想いから、YouTubeなど新しいチャレンジを始めたしょこたんの近況、これからどんな歌を歌い続けていきたいか、などしょこたんの今に迫った。【取材=村上順一】

原点回帰した「フレフレ」

「フレフレ」通常盤ジャケ写

――2020年になりコロナの影響で思うような活動が難しい状況かと思われますが、今どんな気持ちで活動されていますか。

 世界中の人がそうだと思うんですけど、人生が激変して新しい感覚にどんどんなっていかなければいけない、日々いっぱいいっぱいだったりすると思うんですけど、こういう状況の中でこの「フレフレ」という曲を歌わせて頂けることに本当に意味がある、ありがたいなと思いながら歌わせて頂けることに感謝しています。仕事が全てなくなっちゃって絶望したんですけど、YouTubeを始めました。人って何かやることがあるというだけで気持ちが前向きになるというか、逆にやりたいことはどんどん出てきていて日々楽しいです。

 去年はポケモンの映画とアニメの両方歌わせて頂いて、5年ぶりのアルバム『RGB ~True Color~』もリリースできて、燃え尽きるくらいいっぱいイベントをやって、全て出し切った感がありました。まさか今年もまたアニメの歌を歌わせて頂けるなんてびっくりで大感謝です。こうやってタイアップとか決まって、レーベルの方にも「中川翔子しぶといな」と言われて(笑)。それで“しぶとい”というワードが気に入っちゃって、今Twitterの名前も「しぶとい中川翔子」にしてるんです(笑)。

――そうだったんですね。昨年はすごく充実していたことが今のお話からも伝わってきましたが、コロナ禍で絶望を感じたと仰いましたが、中川さんは絶望を感じたとき、どんな風になってしまうのでしょうか。

 本当に『塔の上のラプンツェル』みたいな感じです。「もうダメだ、私はもう終わりなんだ」みたいな(笑)。仕事が全てなくなるってこんなに恐ろしいんだって。逆に今時間ができてしまったからには何かしないと腐るなと思って、YouTubeチャンネルを開いたんです。

――YouTubeチャンネルをこれまでやってこなかったのはなぜですか。

 やりたかったけど、本腰を入れて「本気でYouTubeをやるぞ」という覚悟と決意と環境がないと無理だなと思っていました。たまたま一緒に麻雀をやっていた仲間がYouTubeの仕事をしていると聞いていたんです。そのチームと今一緒にやっているので凄く気も楽だし、お仕事じゃなくてやりたいからやっている、という感じなので凄く楽しいです。

――活力となっているんですね。

 活力です! やりたいことというのは人間の大事な栄養素なんだなって思いました。全然仕事がなくなって時間が余ってYouTubeで時間が埋まってきて楽しくて、そこから仕事がだんだん入り出してきて。だから今までやらせて頂いてきたことがどれだけ尊いかということが毎日痛感しています。

――その中でシングル「フレフレ」のリリースも嬉しいですね。

中川翔子

 はい! またアニメの曲に携われて嬉しいです。 今回は歌い方など原点回帰したと思います。子どもの頃からずっとブレずに「アニメの歌が歌いたい」という想いがありました。そのきっかけが、アニメのエンディングで優しいお姉さんが素敵な澄んだ声で歌うアニメのキラキラした感じが授業中に頭の中を回ったりするのが好きで憧れを抱き出したというのが根源的にあったのを今回歌いながら思い出せました。

――作詞は岩里祐穂さんとの共作ですね。

 もともとは東京オリンピック・パラリンピックもあるはずの時期だったので応援歌にしたいな、というのはずっと思っていたので、「フレフレ」というタイトルがいいなとずっと思っていたんです。応援歌って元気で踊る感じなのかなって最初思っていたんですけどいざ書いてみたら難しくて…。今のこの世界というところに落とし込んでいただいた、岩里さんは凄いです。もの凄く歌詞をブラッシュアップしてくださいました。

――温めていたタイトルなんですね。

 最初は普通に元気な曲の案とかもあったんですけど、テーマが「優しくてキラキラしている感じ」になりました。歌って本当に宝石というかタイムカプセルというか、その瞬間の、それまでの積み重ねの集大成として残るんです。今だからこそ染みる言葉ってたくさんあって、それがシンプルであればあるほどそうだなと思います。<僕らはまた会える>というのが本当に一番の願いであり約束になると思います。

――まだ、リリースイベントなど簡単には出来ない状況ですから…。

 今リリースイベントができないのは悔しいですけど、今回「フレフレ」のダンスをTikTokなどで募集させて頂いたら、子ども達からいっぱい応募がきまして、泣けちゃうくらい嬉しくて。<僕らはまた会える>とか<誰かが誰かのために 元気を送るよ>というところも、それこそYouTubeでゲーム実況をやっていて感じたことだったんです。好きなことは海を越えて繋がれるって凄く素敵なことだというのを改めて実感しました。

――他にも気に入っているフレーズはありますか。

 <あたりまえの日々がずっと続くと思ってた 両手いっぱい抱えきれない 思い出と並んで歩いてく いっしょに  きっと きっと 忘れないでね いつか 夢の空 大きな虹を架けるから>というところが大好きです。ここが原点回帰で、大人のお姉さんが優しく歌うキラキラした感じを全部ぶつけたいということで、<夢の空>という部分は何回も録り直しました。

――このセクションいいですよね。落ちている感じはあるけどサビにも負けないキャッチーな感じもあって。今の時代に合った曲と感じます。今回ダンスがありますが、MVの撮影はいかがでしたか。

 今をときめく「ねお」ちゃんが振り付けをつけてくれるというのは嬉しかったです。私はこの世で一番踊りが苦手なんです…。振り付けの映像を撮るためにフルサイズで踊るというのが凄く難しくて。何回もやってノーミスで踊れたのが多分一回だけだと思います(笑)。何度も失敗するんですけど、その度にねおちゃんが「しょこたんさん、とっても素敵に踊れてます!」と褒めてくれるんです。

――MVを拝見した限り、苦手そうには見えませんでした。

 ありがとうございます。でも、体育の成績は「1」ですから…。それこそある番組で走った後ろ姿が「ポケモンのナットレイみたいだよ」って言われるくらい本当に運動神経がひどいんです。でも、重ねてやっていくといつかはレベルが上がるものなので、繰り返しこの歌を披露できるようにして、いずれノーミスで踊れるようにしたいです。できたときの楽しさは格別だよというのは伝わったらいいなと思います。昇り続けないと人間って落ちちゃうだけだから、良いチャレンジの機会を頂けたなと思います。

――苦手なことにも挑戦するマインドは素晴らしいです。

 振り付けもシンプルなようで派手だし面白いんです。<ハートで祈ってる>のところはアクビちゃんっぽくて可愛いし。本当はリリースイベントとかして一緒に歌って踊ってということをしたかったんですけど、TikTokで募集してみたら子ども達からたくさん応募が届いたので本当に嬉しかったです。覚えて踊ってくれたというのは絶対に思い出になることだし、一緒に今を生きた証を残せるというのも嬉しかったです。

アコースティックアレンジは大人の余裕!?

中川翔子

――今作では10年前にリリースされた「フライングヒューマノイド 2020 Ver.」が収録されていますが、この10年前を振り返るとどんな感じでしたか。

 あの頃はイケイケで無敵感があった頃で、体調的にもテンション的にも凄く楽しかった思い出があります。でも、逆に未来のことを考える余裕がなかったというか、その時は未来を考えるのが怖かったんです。ブログを書く度に「1日ずつ死に近づいているんだ。怖い」とか思っていたので。逆に今は10年後が楽しみになっています。考えても想像してもいなかった未来があって、一番やりたかった歌うことを続けられているのは本当に奇跡だと思います。

 そういう凄みや貫禄を身につけてたら出る表現もあるんじゃないかとか、10年後もまた挑戦できてたらいいなと思えるようになりました。それこそレジェンドと呼ばれる皆様の優しさや強さを目指して、「小さい頃『フレフレ』聴いてました!」みたいな、そんな後輩のアーティストさんとコラボしたりとか、そういうのが未来にあったらいいなと思います。

――歌い方や声も10年前と比べたら変わりましたよね?

 めちゃくちゃ変わりました。「フライングヒューマノイド」はライブで歌い癖がついちゃっているところもあるんですけど、今回はアコースティックバージョンなので、ゲリラ的な勢いもありつつ、強い感じではなくあえて力を抜いた感じ、大人の余裕というのを目指して歌ってみました。最後に勢いで歌ったテイクが採用されて。

――アコースティックアレンジにしたのは大人になったという意味も込められている?

 もしかしたら大人の余裕というのはテーマかもしれないです。 松隈(ケンタ)さんとは2010年以来でした。私は10年前の色んな記憶が飛んでいて、松隈さんによると当時23歳の私はレコーディングにきたものの異常に疲れていたみたいで。10年って凄いですよね。生き延びて色んなことを乗り越えてきて、また同じスタッフで集えるというのは色んな奇跡が重なった奇跡だと思います。松隈さんもそれを噛み締めながら作ってくださったという感じがしています。

――今シンガーとしてどのような歌を歌いたいと思っていますか。

 やっぱり出来る限りアニメの歌を歌いたいというのは変わらずにあると思います。童謡とかも歌ってみたいです。童謡って本当に難しいんです。子ども達が物心つくかどうかという頃に聴くから、ピュアで真っ直ぐじゃなければいけないと思うんです。山野さと子さんとか選ばれし歌声の人しか歌えない気がしています。これからの目標のひとつです。

 幅を広げたいといところでは、シャンソンを歌いたい夢もあります。それと、最近ジャズとかを聴くのにハマっているので、ジャズにも挑戦したいです。ジャズを聴きながら絵を描く作業をするとはかどるんです。「大人はジャズだ」と思って一人でニヤニヤして聴いています(笑)。

――10年後の自分にメッセージを送るとしたら?

 え〜難しいですね。レベルが上がっても気持ちはずっと立ち止まらないで進化していってほしいなと思います。そして、できれば親子でポケモンバトルとかしていてほしいですね。あと「鬼のアンチエイジング頑張れ」と言いたいです(笑)。子ども達にとってレベル35(35歳)とかあんまり関係ないんです。いつまで「しょこたん」って呼んでもらえるかわからないんですけど。「それでも大丈夫な感じの雰囲気を漂わせていてくれ」と言いたいです(笑)。

「いのちだいじに」かつ、内面は「ガンガンいこうぜ」

「フレフレ」通常盤ジャケ写

――中川さんは子ども達をすごく大切にされていますが、そういった想いが芽生えてきたのはいつ頃からでしょうか。

 20代後半くらいです。今やることや、ずっと自分がやりたかったことを叶えたい、ということで走るのにいっぱいいっぱいだったんですけど、その頃に一回お仕事を続けられないくらいメンタルが落ち込んじゃったことがあって、「辞めよう」というくらいの出来事があったんです。

 でも、思い返した時に凄く落ち込んだことも多かったけど、自分の今と叶ってきたことを支えてくれたのって子どもの頃に見つけたことだし、10代の時に見つけた好きなことって一生物だなっていうのに気づきだして、思い出に残る言葉や歌を残せるかもしれないことをさせて頂いているから、そういう気持ちで「次の世代の未来の地球を支える子ども達にバトンタッチするつもりで色んなことをやろう」と、考えたんです。

――使命感のような感覚もありつつ今活動している?

 そうですね。それがどんどんはっきりくっきりとしていっている感じです。去年本当にたくさんの子ども達と会えたのが夢のようにキラキラしていて。でも夢じゃなかったんです。また覚えていてくれたらいいなと思うし、また会えたらいいなというのは今の夢です。「フレフレ」の<僕らはまた会える>というのはとってもシンプルだけど、<離ればなれ 遠くにいても いつも君のそばにいるわ>というのと、今色んなことを考えている子ども達がハッて思う瞬間が来てくれたらいいなと思います。

――ところで、今色んなことをやられている中で達成したい目標はありますか。

 YouTubeチャンネル登録者数100万人いきたいです(笑)。今33万人ぐらいで、まだまだ始まったばかりですけど、100万人のハードルは高いと感じています。他にはなんだろな…「しぶといな」という言葉を言って頂いて嬉しかったので、しぶとい何かを更新していきたいです。

 ずっと全部好きなことだったり挑戦したり楽しかったりするけど、基本的にずっと自分に自信が持てないままここまで来たから、いつまでも「どうだ!」みたいになれないというのがあるので強くなりたいなと思います(笑)。

――今も自信はない?

 いまだに自信はないですし、緊張するし、落ち込むというのを、いい加減直したいんですけど難しいです。

――改めて今作「フレフレ」は中川さんにとってどんな作品になりましたか。

 今と未来への心の応援歌だと思います。「フレフレ」は離れていても心はいつも隣にいる、そしてまた会えるという夢を楽しみに今をキラキラと生きていける、輝ける宝石のような思い出を胸に抱きしめて、またいつか会おうねという約束にもなっていると思います。ぜひ親子で観て、聴いて頂きたいなと思います。<僕らはまた会える>という風に繋がるための今のこの瞬間たちだと思います。会えた時にどんな楽しみが待っているかなと思うとワクワクします。だから楽しみをいっぱい見つけてチャージできる時間にこの「フレフレ」を聴いてほしいなと思います。

――最後に、今RPGゲームの作戦コマンドで言ったら「いのちだいじに」という感じですか。

 「いのちだいじに」かつ、内面は「ガンガンいこうぜ」ですね。今止まっちゃうと取り残されてしまう気がするから、ちゃんと新しい海に飛び込んでいかなきゃいけないんだなというのはYouTubeをやって思ったことかもしれません。音楽業界も大変な今ですけど、ここで諦めちゃったら全部止まってしまうと思うと、10年以上歌い続けてこられた奇跡、今こういう状況でも歌えるということも凄くありがたいことだから、その奇跡の泉の流れを止めたくないので諦めないであがき続けます。

(おわり)

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