ザ・コインロッカーズ「グループの一員としての責任感を」それぞれの想い
INTERVIEW

ザ・コインロッカーズ


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年08月16日

読了時間:約10分

 ガールズバンドアイドルのザ・コインロッカーズが7月31日に、デジタルシングル「夢がない僕が夢をみたんだ」をリリースした。秋元康氏プロデュースによるザ・コインロッカーズは、「夢は弾いてかなえろ!」をキーワードに、楽器、バンド経験、キャラクターも様々な個性豊かなメンバー総勢41人で結成。2019年6月に日本テレビ系ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』主題歌「憂鬱な空が好きなんだ」でデビュー。2020年よりメンバーを13人へと再編成。5月の2ndシングル「僕はしあわせなのか?」に次ぐ本作は初のデジタルシングルリリースとなる。船井美玖(Vo)、宇都宮未来(Vo)、田村愛美鈴(Key)、絹本夏海(Gt/cho)の4人にインタビューし新体制となった現在の心境に迫った。【取材=平吉賢治】

新体制となった現在のそれぞれの想い

ザ・コインロッカーズ「夢がない僕が夢をみたんだ」ジャケ写

――新体制を発表した昨年末のZepp Tokyoでのワンマンはいかがでしたか?

絹本夏海 それまで活動してきたメンバー38人での最後のライブということ、自分が約1年間活動してきたグループが13人体制になるということで、また気持ちを切り替えなきゃいけないと思いました。抜けたメンバーの気持ちや、メンバーのことを思い出すことによって、これからのグループの活動において、いかに他の人の気持ちを大切にしながら頑張っていけるかを大事にしています。12月23日のZepp Tokyoでのライブがあったからこそ今もこういう風に頑張れているので、忘れることはない大事な日でした。

田村愛美鈴 1年前から決まっていたライブなので、ずっと目標に頑張ってきたんです。そのメンバーでやるのが最後というのが悲しかったし、自分の中で戸惑いも凄くあって…13人になるとなってからも、すぐに気持ちを切り替えられませんでした。「自分でいいのかな?」というか。でも残して頂いたからには、いなくなったメンバーの分の気持ちも頑張りたいなと思うようになりました。

――気持ちの切り替えという点で、船井さんは?

船井美玖 切り替えはけっこう早かったと思っています。Zepp Tokyoのステージに立っている最中から「もう次に行かなければいけない」というのがあって。ファンのみなさんの顔を見ていたら「悲しんでいる暇はない」と思いました。

宇都宮未来 私はけっこう引きずりました。去年一年間はメンバーが多くて、なかなか真剣に話すことがなかったんです。でも13人になって深い話をすることが多くなってから、38人で活動してきた経験があるからこそ、今回のことは自分の表現力に繋げていけたらいいなというポジティブな考えができるようになりました。13人になってからの切り替えは早かったと思います。

――38人から13人というメンバーの変化は大きなことだと思います。心境の変化としては?

絹本夏海 38人の時はギターが9人はいて、私は初心者から始めてギター歴も1年も経ってない状態でZepp Tokyoのステージに立ったんです。現体制ではエレキギターが3人いるんですけど、ギターに対しての責任感が大きくなりました。

――ちなみにギターの練習はどのようにしているのでしょうか。

絹本夏海 レッスンを受けて練習しているんですけど、自宅で自己練習もしています。既存の曲を完璧に弾きたいという気持ちがあるので、クリック(自動演奏のテンポのガイド音)を聴きながらリズム感を改善したり一からやっています。クリック練習していることもあって、レコーディングの時は「リズム感が凄くよくなってるね」って言って頂けるので、頑張ってよかったなと思います。

――田村さんは13人になって心境面で何が大きく変わりましたか。

田村愛美鈴 責任感です。人数が多かった時はそれぞれが分散していた面がちょっとあった気がしていて。自分もそんなに意見を言わなくても物事が進んでいくという感覚も正直ありました。でも、13人になってからは「自分から積極的に行かないとな」と、グループの一員としての責任感を凄く感じるようになりました。

――パートのキーボードはどんな練習をしているのでしょうか。

田村愛美鈴 レッスンで教わったことを家に持ち帰ってやります。自粛期間は時間があったので、自分のグループの曲ではない曲を勉強して練習したりしました。SHOWROOMの生配信動画でNMB48さんの曲をいつか弾きたいなと思ってやり始めました。

――船井さんが13人体制になって最も大きく感じた心境の変化は?

船井美玖 38人の時はグループ分けがあって、曲ごとに5~6つのチームに分かれていたので、そこでしかコミュニケーションをとらない状況だったんです。だから全員でバンドとして「どう成長していきたいか」という、意見交換をする場がそんなになかったんです。

 それもあって、13人になった時にまず「これから私達はどうなっていきたいか」という話をしました。私の中では、バンドメンバーであるからには意見交流が凄く大事だったんだなと思いました。今までに欠けていたのはそこで、凄く変わったと思うところです。話しやすくもなったし、私達が目指す場所とか、どういうジャンルでどの層に受け入れてもらえるかとか、そういう細かいところも話し合えるようになったんです。

――なるほど。船井さんは歌の練習はどのようにしていますか。

船井美玖 みんなと同じようにレッスンもしているんですけど、楽器の音をしっかり聴いて練習するようにしています。ツインボーカルというのもあって、宇都宮と「ここで目を合わせようね」とか話し合ったりもします。そういう、周りとのコミュニケーションを大事にして練習しています。

――宇都宮さんの心境の変化は?

宇都宮未来 去年を思い返すと、人数が多いから故に“こなしている感”みたいなものがあった気もするんです。その時は自分なりに凄く頑張っているつもりでもできていない部分があったりしたので、13人になって一人ひとりの責任感が重くなったので、自分のことを客観的に見ることができるようになったと思います。けっこう難しいことなんですけど、自分を客観的にみると悪いところもよいところも見つけられると思っています。

――自分を客観視するというのは大事ですよね。歌の練習はどのようにしていますか。

宇都宮未来 レッスンの時に先生がしっかりと悪いところもよいところも言ってくださるんです。言って頂いたことをしっかりと家で直したり伸ばしたりします。オケを聴いて、周りの音をちゃんと聴いて、あとは体幹を鍛えたりしています。

――周りの音をしっかり聴くという点は船井さんと共通していますね。

宇都宮未来 ボーカルの先生がそこを強く言ってくれるので、しっかりと意識しています!

夏、青春、焦燥感、あらゆる要素が詰まった新作

――本作は夏らしい爽やかな楽曲という印象を受けましたが、みなさんはどういった印象でしょうか。

絹本夏海 青春時代が蘇ってくるような印象でした。過ぎ行く夏に対しての焦燥感、モヤモヤを感じている主人公がいるんですけど、凄く共感できる部分も多いんです。メロディも疾走感があふれていてストレートで大好きな曲です!

田村愛美鈴 この曲は今までの表題曲の中でも一番“ザ・アイドル”って感じの曲だと思います。個人的にはアイドルは夏曲というイメージがあって、それをザ・コインロッカーズで出せるというのがまず嬉しかったです。

船井美玖 ザ・コインロッカーズの曲はどこかひねくれた要素が少しあって、ちょっと遠回しに言ったりすることがあるんです。今回の曲も、夏に青春したいモヤモヤみたいなのが入っていて、青春の中で誰もが思うような、他の人が羨ましかったり、自分だけが置いてけぼりの気持ちになったり共感できるところがあるんです。

 でも、そういう意味じゃなくても、コロナ禍で例えばリモートの授業の学校があったり、ちゃんと通える学校があったり、環境の違いで「あの子はちゃんと学校に行って青春してるけど私はずっとリモートだ」とか、今だからこそリンクする部分が歌詞にあるんです。「私の状況と似ているな」とか「こういうモヤモヤってあるよな」という、共感して頂ける歌詞がポイントであるので、そこに注目してほしいなと思います。

――ひねくれた要素というのはどのあたりでしょうか。

船井美玖 <あいつらみたいに「普通」になること>という歌詞があるんですけど、「あいつら」って言い方は普段しないじゃないですか? だから恋愛や進路がうまくいっているあの人達みたいになりたいのに、という憧れと、その反面妬ましさみたいなものもちょっと歌詞に出ているなと個人的に思っているんです。

――宇都宮さんもこの楽曲から、今の特殊な状況とリンクする部分もある?

宇都宮未来 はい。まず、タイトルにもありますけど、夢をみるのって簡単なようで難しいと思うんです。その「夢がない僕」が夢をみたのが、息を吐くように恋をすることだったり、<あいつらみたいに「普通」になること>だったり、そういう普通や、普通に恋愛をすることって簡単にみえて難しいじゃないですか? そういった部分は自分でも共感していて。例えば自分が中学生の頃って、高校生になったら普通に青春を送れて、普通に恋愛できるんだろうなって思ってたんですけど、やっぱりそれって一番難しいことなんだなって自分でも感じていたので、そういった部分には凄く共感しました。

どのファン層にもヒットするようなグループに

――本作はただの夏ソングというわけではなく、色んな感情や要素が詰まっている楽曲なのですね。「夢を持つのは難しい」というのは確かにあると思います。そこで、みなさんの夢は何でしょう。

宇都宮未来 ザ・コインロッカーズとしては、2年後に武道館に立つことがブレない夢です。

船井美玖 私は(テレビ朝日系音楽番組)『ミュージックステーション』の階段をみんなで降りたいです(笑)。

田村愛美鈴 私はとにかく『TOKYO IDOL FESTIVAL』に出たいです!

絹本夏海 昨年初ライブでファッション&音楽イベント『GirlsAward』のオープニングアクトに出演させて頂いて、そのこと自体も凄い嬉しいことなんですけど、今度はメインステージでパフォーマンスしたいです。

――様々な大きな夢がありますね。さて、現在は特殊な時期ですが、こういう時期だからこそザ・コインロッカーズが伝えたいこと、やりたいことなどはある?

船井美玖 2ndシングル「僕はしあわせなのか?」の発売もずれたりして、そこからライブもずっとできていなくて…まず、私達が13人になったことをライブでみなさんにお見せできていないんです。とにかくライブがしたくて! だから無観客ライブがしたいです。こういう時期だからこそ、CDではなく本作はデジタルシングルだったりしますし、TikTokやYouTubeなどでも気軽に聴いて頂ける楽曲になってほしいです。

――TikTokでのアルバム配信が決定されたようですね。

船井美玖 「夢がない僕が夢をみたんだ」は7月31日にリリースなんですけど、その日から8月14日まで15曲がTikTokに毎日上がるんです。私達もTikTokのビデオに参加していて、1日ずつ上がった曲を最後に集めたらアルバムになるという形です。

――面白いアプローチですね。TikTokはみなさんにとって馴染み深いSNSかと思われますが、こういったアクションは嬉しいのでは?

宇都宮未来 そうですね! 10代の子達は今は暇さえあればTikTokを見ていることが多いと思うので。私自身も自粛期間はTikTokをけっこう見ていたので、同世代の目撃者を増やすという点では凄く嬉しいなと思いました。

――田村さんはTikTokをやっている?

田村愛美鈴 グループのアカウントがあって、そこでメンバーがランダムで投稿していったりしています。

――TikTokアルバムは楽しみですね。

絹本夏海 TikTokならではの曲の長さで、20秒や30秒のものが15曲アップされていて、全部まとめて聴いても約11分という前例のないアルバムなんです。だから反応が凄く楽しみです!

――MVについてですが、デビュー曲「憂鬱な空が好きなんだ」はロンドンで撮影されたそうですね。今回は?

船井美玖 前は楽器の演奏シーンやリップシーンが多かったんですけど、今回はそれがメインというよりも13人全員で何かをするというテーマなんです。13人でフラッグのペイントをしたり、それを持ってみんなで走ったりとか。あと、今回はダンスにも注目してほしいです! 空っぽのプールの中でダンスしていたり、プールサイドで楽器を演奏するシーンがあったりして“ザ・夏”というMVになっています。

――最後に、ザ・コインロッカーズは今後どういったグループになっていきたいですか。

宇都宮未来 どのファン層にもヒットするようになりたいです。アイドルファンの方にも全力でアプローチをして、もちろん私達は楽器も弾くので、ライブができるようになったらライブでしっかりと格好良いパフォーマンスをお見せしたいです。今はひとり一人おうちで凄く練習しているので、第一印象と演奏を観た時のギャップがあるグループにしていきたいです!

(おわり)

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